魔法科高校に訪れた白い夜   作:マーボー

12 / 20
第10話:疑惑

 

姉さんからの誘いを断った俺は、部屋で一人読書をしていた。

内容が「読本・現代史」とタイトルがつけられた魔法師向けの教材ファイルなだけに、これを純粋に読書と言えばいいのか少しあれではあるけど……。

 

「今頃、姉さんたちはどの辺りを歩いているんだろうなぁ」

 

なんだかんだ言って散歩を断りはしたが、実は少し一緒に行きたかったりもしていたのだ。

けれど、実は散歩というのは連れ出す口実で、連れ出された先で兄さんと姉さんに何か言われるのでは? と考えついてしまうのだ。

これには自分でも被害妄想が入っていると思いはするものの、やはり過去の出来事を思い出すと、自ずとそういう方向に考えが行き着いてしまう。

 

「ていうか、まだ謝罪すらしてないよね……」

 

まともな会話ですら行なってないのだから、謝罪も何もない。

最早こうなっては読書をする気分でもなくなってくる。

ここは潔く読書をやめて、姉さん達のことについて考えることにした。

 

「そういえば、ここに来るまでの間、兄さんと姉さんって話してないよね?」

 

思い出すのはここまでの道中のこと。

俺が別居するまでの間、俺たち三人は仲が良かったし、それは俺がいなくなってもずっと続いているものだと思っていた。

しかし、二人からはどこか他人行儀なようなものを感じていたのだ。

 

「まぁ、兄さんがガーディアンとして接しているんだから、姉さんもそれに習って振る舞っているだけかなのかなぁ」

 

実の兄妹と言えど、ガーディアンである兄さんが、姉さんに気安く接することが禁止なのは暗黙の了解のはずだ。

だから姉さんも、兄さんに迷惑がかからないように接しているのだろうが――

 

「もしかして……あの二人の仲が拗れていたりは……ないよね?」

 

どうも"あの時"と同じような引っかかりを感じてしまう。

もしそれが現実なものとして、俺になにか出来ることはないだろうか。

 

「……ない、よね」

 

せっかく再会したのにも関わらず、まともな会話すらできていない俺が間に入ったところで、余計に仲が拗れるのは目に見えた。

 

「それに実際にそうと決まった訳じゃないしな」

 

あの二人の仲がそう簡単に拗れるわけはない。

そう結論づけた俺は、そろそろお昼時なこともあって、台所へと向うことにしたのだった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

「深雪さん、何かあったんですかっ?」

 

台所へ向う途中、穂波さんの慌てた声が聞こえてきた。

どうやらあの二人が散歩から帰ってきたらしいが、穂波さんの様子が気にかかり、声が聞こえた部屋を覗き込む。

 

「ちょっと……男の人に絡まれてしまって」

「まぁ……!」

 

なんてやり取りが聞こえてきた。

 

(だからあんな顔色が悪そうだったのか)

 

聞いた時は怒りを感じはしたけど、隣に直立している兄さんを見たら溜飲も下がった。

そして、逆に絡んだ男に同情してしまいそうになる。

とそこで、兄さんがこちらに歩いてきた。

 

(やばっ。兄さんがこっちに来る!)

 

ちなみにだけど、兄さん達が居る部屋は玄関から入ってこられる扉の他に、俺たちの部屋とへ通ずる扉がもう一つある。

部屋からこの場へやってきた俺は、当然のことながら、その扉から中の様子を伺っていたのだけど、兄さんも部屋へ戻るらしく、こちらの方へと歩いてくる。

兄さんのことだから、既に俺の存在には気がついているかもしれないけど、まだ面と向って対面するには心の準備が出来ていない。

そのことから直ぐにその場を離れようとした……しかし――

 

「あ――」

 

一足遅かった。

背後から扉の開く音が聞こえ、兄さんの視線が俺を捉えているのを感じる。

 

「白夜」

 

年齢の割には芯が通ってはっきりとした声で俺の名が呼ばれた。

 

「…………」

 

姉さんの時と同様、その声に応えることが出来ずにその場で直立したままになってしまう俺に、兄さんがため息をつきながら近づいてくるのがわかった。

 

「白夜……」

「――ッ!」

 

そして、肩に手を置かれた瞬間、またしても背後の扉が開く音がした。

 

「……二人だけでなにをしてるんですか?」

 

普段の姉さんからは想像できないような、少し棘を感じさせる言葉。

 

「白夜。わたしとは話さないくせに、兄とは話すのね」

「ち、ちがっ――……」

 

違う。兄さんとも別に話してなどいない。そう言いかけようとしたところで、また口が言うことを聞いてくれない。

結果、またもそこで黙ってしまうことになり、そのことが姉さんの苛立ちを爆発させてしまった。

 

「言いたいことがあるならはっきりと言いなさいよっ!!!」

 

張り上げられた怒声は、きっと穂波さんたちにも聞こえてるだろう。

そして、こんなに荒げた声を出すところを見たことがなかった俺は、その場でたじろいでしまう。

 

「ふんっ」

 

姉さんは俺のことを追い越してその場から去ろうとする。

 

「ご、ごめん」

 

その背に向ってようやく謝罪の言葉だけを口にすることはできたが、姉さんは何も応えてくれなかった。

 

「まぁ……俺も姉さんのことを無視しちゃってたししょうがないか……」

 

さっきの怒声が頭の中からはなれることはなく、ずっと再生されている。

それほどまでに衝撃的だったのだが、そのぶん、余計に嫌われてしまったという後悔が大きくなっていた。

 

「白夜」

「えっ、あ……」

 

声をかけられたことで、さっきから兄さんが居たことを思い出した。

 

「な、なに、かな?」

 

身体の力が抜けたおかげか、しどろもどろではあるけど、今度は返事をすることが出来た。俺としては早くこの場を離れたいのだけど、どうやら兄さんにその気はないらしい。

 

「言いたいことは色々とあったが、まずは――何をそこまで俺たちに怯える必要があるんだ?」

「おっ怯えてなんか……」

 

いないとは言い切れない。

現に俺はこの二人と会うことを、話すことを避けてきていたのだ。

それは二人に嫌われているだろうという怯えからきていることである。

 

「……」

 

一刻も早くこの場を離れたいと思っていた思考を切り替える。

俺だって、あの頃のように兄さん達とまた楽しく過ごしたいと思っているのだ。

ただそれは、嫌われているのではないかという思いが邪魔をして叶わない。

だったら――兄さんだけでも、ここで確認してみよう。

そこで本当のことを話して、俺の推測する結果になったらこれから先生きていける自信はないけど、いつまでも話さないまま隠れるのはフェアじゃないと思えるし、むしろ、本当のことを話して嫌われていることを確認できたら、その罪を再度受け止めて償っていこう。

 

「……」

 

思考を切り替えたおかげか、今は冷静に兄さんの顔を見ることが出来るようになっていた。

今まではただ避けることを考えていたせいでもあるのだけど、考え方一つでこうも違ってくるものなのかと内心で驚愕していた。

 

「兄さん……ちょっと部屋に来てくれない?」

「あぁ。いいだろう」

 

再会してこんな早い段階で話すことになろうとは思っても見なかった

こんなことならもっと早くに話して確認するべきだったのかもしれない。

今までの自分がいかに子供だったのかを深く反省しつつ、それでもまだ二人に対しての恐怖を拭い切れていない重みに身体が押しつぶされそうになりながら、二人してして部屋へと向った。

 




更新が遅くなってしまいました!
申しわけありません!
ちょっとここ最近はゴタゴタしていまして……。


今回もたくさんの感想も頂きました!
感想返しは後ほどさせてもらいますね。

では、次話も宜しくお願い致します!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。