「はぁ。わたしは何をしているの……」
白夜の気配が遠ざかったことを察知して、深く息を吐き出す。
せっかく白夜の方から話しかけてくれたのに、わたしはというとそれを拒否してしまった。
シャワーを浴びている最中に感じていた答えのでない悩みが未だに胸中に残っている。
わたしだってまだ幼い。
白夜と話せることで、その悩みの一つは解消できるとわかっていても、その話しかける勇気がまだちゃんと定まれていなかった。
これがしっかりとした物にならないと白夜と面と向って上手く話せそうにない。
その勇気が定まっていないのは、ここ数度のやり取りで、わたしの中にあった白夜と仲良くなろうという想いが、無くなってはいないものの、少し疲れ果ててしまっているから。
「わたしがこんな気持ちじゃ駄目じゃない……でも……」
ベッドに仰向けになり、天井を見上げるも、直ぐに視界が揺らぐ。
視界をぼやけさせていた雫は頬を伝い、流れ落ちるが、直ぐにまた溢れ出てくる。
中々止まりそうにない想いを無理に抑えるようなことはしない
今ただ――
「白夜から話しかけられちゃったわ」
白夜から話しかけられた、その喜びの余韻に浸る。
今はまだ、面と向って話せないけれど、絶対にこの旅行中の間に自分の気持ちに整理をつけて白夜とちゃんとお話ししよう。
そのためには――
「白夜だけじゃない。兄のこともちゃんと考えないと、ね――」
口にした言葉が自分の耳に入るのと同時に、ドアがノックされる。
今度は白夜ではなく、穂波さんのようだ。
わたしは名残惜しむように溢れ出る涙を拭って、応答した。
◆◇◆◇◆
「え……。それ、俺も行くの?」
「当然よ。せっかくあちらが招待してくれたのだから、行くのが礼儀です」
何故か俺だけが呼び出された母さんの部屋で、今はあまり耳にしたくない話が舞い込んできていた。
それは偶然にも、同じくこの場へバカンスへ来ているという黒羽家からのホームパーティー招待の話だった。
いつも母さんの近くで控えているはず穂波さんの姿は見えない。
きっと兄さんや姉さんたちに伝えに行ってるのだろう。
「なんで俺だけがこの場に呼び出されたのさ?」
「貴方、ついさっき自分で言ったことも忘れたのかしら? ちゃんと呼び出して私から直接言わないと行くつもりなかったでしょう?」
言われてみて一理あると思った。
理由はもちろん、前までの俺なら兄さん達も同行するだろうから。
しかし今は違った理由でその招待を断りたいと思っていた。
「実は姉さんとちょっと喧嘩みたいなことになってて、顔を合わせづらいんだ。だから俺は行きたくない」
穂波さんだったら、「今回はしょうがない。でも早く仲直りすること」なんて言って俺の提案を受け入れてくれるだろう。
しかし、目の前にいるこの人はと言えば――
「良かったですね。深雪さんと話すことが出来たのは大きな前進です」
「俺の話を聞いてる? その姉さんと喧嘩を……」
「それも知っています。少し前に深雪さんの癇癪を耳にしましたから。私たちも驚きましたよ」
私たち、というのは母さんと穂波さんだろう。
「だったら――」
「だからこそ、これを機に謝るなりなんなりして、仲良くしなさい。貴方たち二人は姉弟なんですから」
「二人じゃない。兄さんだって俺たちの兄妹だ」
「達也は違います」
きっぱりと言い切る母さんを見て、俺はため息をついた。
「今はそういうことにしておくよ。今は。それで、招待の件は」
「白夜さん。正式に通達します。黒羽家の招待に応じること。拒否権は――」
そこで口角を釣り上げ微かな笑みを浮かべる母さんを見て、やはり真夜さんとは姉妹なんだと痛感した。
「はぁ……わかりましたよ」
「では、直ぐに準備なさい」
そもそも招待するにしても急すぎるんだよ。などと心の中で悪態をつきながら、準備を始めた。
今話では、白夜と深雪の想いを文章にしました。
え、相変わらず話が進まない?
どうもすみませんでした!
なるべく頑張ります。
では次話も宜しくお願い致します。