「あー。結構寝たなぁ」
昨夜は遅くに戻ってきたこともあって、起きてみれば昼時まで熟睡していた。
既に上がりきった太陽にボーッとした視線を向けながら、今日も姉さんの部屋へ向おうか考える。
黒羽家から帰ってきた姉さんは、何やら浮かない表情をしていたのを思い出す。
あの様子じゃ、まだ対面で話はできなさそうではあるけど、こいうのは毎日継続することが大切だったりする。かといって、相手にその気がないのに続けても、うんざりさせてしまうかもしれない。
判断が難しいところではあるけど、まだ旅行は続くと言うこともあって、今日は控えることにした。
「にしても、この旅行に来なかったら自分から姉さんに話しかけようだなんて考えもしなかっただろうなぁ」
その点だけについては、真夜さんに感謝をしなければならないかもしれない。
……いや、確かに原因を作った張本人たちではあるけど。
あの人自身も、現状の俺たちのことを思って動いたのかも、などと、これまた前までだったら思いもしなかったことが思考が生まれる。
「まぁ、今あれこれ考えててもしょうがないか」
もう一度時間を確認し、朝食兼の昼食を食べにキッチンへと向った。
◆◇◆◇◆
「あら。随分と遅い起床ですね」
「あ、いたんだ」
リビングを通ってみれば、珍しいことに普段は書斎に籠もっているはずの母さんの姿があった。
「私がいては何か不都合なことでも?」
「そんなことは聞かなくても察するでしょ」
「白夜さんが答えればいいことですからね」
「さーて、昼食でも食べよううかな」
「時間も時間ですし、私たちもお昼にしましょうか」
「……ねぇ、それはわざと?」
「察してみなさい」
相も変わらず、この人とは世間の親子のように楽しく話せそうにない。
そんな俺の心なんてとっくに見透かしてるだろうに、いや、見透かしてるからこそと言うべきだろうなのか、母さんは俺の嫌がることを平気でしてくる。
「奥様、ただいま昼食の準備中なので、もう少々お待ちいただけますか?」
「構いません。白夜さんの分も用意してもらえる?」
「畏まりました」
本当なら自分で簡単な物でも作って済ませようと思っていたのだけど、せっかく穂波さんが作ってくれるのだから、ここは頂くことにしよう。
それにしても……
「流石は穂波さん。用意が早いというか……」
穂波さんのことだから、既に俺の分も用意してくれていたのだろう。
だとしても、10分も立たずに、テーブルには二人分の食事が並んでいたのだ。
「いえいえ。そんなことありませんよ」
微笑みながら、奥から更に料理を運んでくる穂波さん。
なに、まだあるの? ちょっと多くない?
「さ、せっかくだから頂きましょう」
母さんが席に座り、俺にもそうするように視線で促してくる。
ここは料理を用意してくれた穂波さんの手前、直ぐに席を着いて見るからに美味しい昼食を頂くことにする。
沖縄にちなんだ料理が多く、どれから食べようか、空腹の胃袋と相談していると、食べ始めている母さんから声を掛けられた。
「そういえば、深雪さんと達也はビーチに行ってますけど、貴方は行かなくても良いの?」
何を考えているのか、この旅行中は良く母さんから話しかけられる。
(まぁ一緒に旅行に来ていればそれも自然なことなの、かな)
「俺は良いよ。まだ姉さんと仲直りもしてないし」
「仲直りぐらい、とっととしてしまえばいいのに。貴方達は姉弟なんだから」
だからそれをどの口で言うのか。
あくまで思っただけで、深くは考えずにスルーして、俺も料理を食べ始めた。
◆◇◆◇◆
昼食後、自室で読書をしながらゆったりまったり過ごしていた。
本来の魔法師ならこんな読書ばかりではなく、魔法の鍛錬やCADの調整など、やることは多いものだ。
けれど、俺はCADを所持しておらず、更には魔法の鍛錬もする必要がなかった。
まぁ身体の調整などはすることもあるけど、それはわざわざ旅行中にすることでもない。
だからか。ここ数日は自室で過ごすときはほぼ読書をしていた。
ちなみに読書は紙だったり電子媒介だったりと、読める物であれば特に拘りは持っていなかった。
「どうやら二人が帰ってきたみたいだね」
二人の気配を感じとりながらも、その場からは動くことはなく、そのまま読書に続けている。ちなみに今読んでいるのは、随分と昔に流行ったらしい恋愛小説だ。
恋愛に興味があったわけではないけど、かつて流行ったという物に興味を持って読み始めてみれば、納得のいく出来の物で、続きも気になるところ。
だからまぁ、今日はこのまま読書に集中して――
「白夜さん」
「…………」
思わぬ呼びかけに、ドアの方へと視線を向ける。
開いてはないから姿は見えてないけど、聞こえた声で誰が訪ねてきたのかなんて一発でわかった。
「なんですか……」
「深雪さんが帰ってきたの。だからこれからセーリングにでも行きましょう」
「ああそう。いってらっしゃ――「貴方も行くんですよ」……拒否権は?」
「あるはずないでしょう。10分ほどしたら玄関へ来なさい」
「…………」
母さんが一方的なのは今更ではある。
けれど、まさかこっちの合意の返事も聞かずに去るとは……。
「まったく」
母さんの思惑に乗るのは釈然としないけど……
(これも良い機会と言うことで)
読書を中断して、特に準備もする必要なかった俺は玄関へと向った。
まさかの二日連続投稿
これはまさしく快挙です(白目
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