クルーザーに乗り込み、セーリングを楽しむこと早一時間。
操縦士による操作手順を熱心に見つめている兄さんと、船首に一人いる俺以外の三人はセーリングに楽しんでいるように見える。
ただ、姉さんはその三人に含まれているのだけど、時たまこちらや兄さんのほうへ視線を送っていた。
俺はともかく、兄さんとも何かあったのだろうか。と一瞬思ったけど、兄さんのことだ。何かあってもきっと上手く乗り越えるだろう。
今の兄さんは姉さんのことしか関心がない――という言い方だと単なるシスコンになるけど――のだから、姉さんのご機嫌の取り方も熟知しているはずだ。
それを知っていてなお、俺にその術を教えてくれないのは、これぐらい俺自身が何とかすると考えてのことだろう。
なんだかんだ、兄さんは俺のことにも気を配ってくれているように思え、自然と頬がゆるんでしまう。
「白夜も混ざってきたらどうだ?」
「あ、兄さん」
そんなことを一人考えていると、もう操作の様子を見終えた、または理解したから必要なくなったのか、兄さんが俺の元へとやってきた。
「あそこに混じるのは……姉さんも今は俺と近くにいたくないだろうし」
船尾にいる姉さん達へ視線を向ける。
「だからお前一人船首に居ると言うことなんだな」
「そういうこと。それに、まだ話す機会はあるんだから、今は距離をとっておこうかと」
「そうだな。悪くないだろう」
淡々とした会話ではあるけど、これが今の俺たち兄弟の会話だ。
端から見たら素っ気ないような感じに受け取られるかもしれないけど、お互いがお互いに事情を知っているものだから特に違和感はない。
「兄さんは? 姉さん達のところに行かなくても良いの?」
「何も四六時中一緒に居なくてはならないわけじゃないからな」
「そんなこと言って、兄さんも姉さんと何かあったから気まずくってこっちに来たんじゃないの?」
二人の――主に姉さんの態度が気になった俺は、直接聞いてみることにする。
しかし、兄さんは表情も変えずに、首を傾げるだけだった。
「俺と深雪に? そんなことはない。いつも通りだ」
「あぁ、そうなの……」
期待していた訳じゃないけど、何もないとは……ますます姉さんの視線の意味が気になる。これは仲直りをしたときにでも聞いてみることにしよう。
「そろそろ切り上げる頃合いだな。行くぞ、白夜」
「いや、俺はまだここに――」
「深雪のことを気にしているのなら心配するな。ああは言ってもさっきからお前のことを見ているから、もう話しかけても言い頃合いだと思うぞ」
「えぇ……姉さんが見ていたのは俺だけじゃなくって兄さんのこともなんだけど」
「それも知ってる。ほら、行くぞ」
昔のように手は引っ張ってくれたりしなくなったけど、態度で引っ張ってくれる兄さんの姿を追って、俺も船尾へと向った。
次話では、魔法を使う! ……かもしれません。
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