魔法科高校に訪れた白い夜   作:マーボー

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第01話:仲良し兄妹

「ほら、白夜。こっちへ来てごらん」

 

この世界での俺の名前を呼んでくれるのは、一つ年上の兄。

物心つく前から遊び相手をしてくれる面倒見の良い兄である。

今日もそんな兄さんに甘えてしまっているが、彼は何一つ嫌な表情をせずに接してくれていた。

整った顔立ちをしていることもあり、優しく微笑まれた日には相手が女性なら惚れ込むこと間違いなしだろう。

 

「お、お兄ちゃん。深雪も!」

 

ふと、背後からの声に反応して振り向くと、そこには愛嬌のある笑顔でこちらにやってくる女の子が居た。

彼女は俺の双子の姉である。彼女もまた、愛らしさを兼ね備えた顔立ちをしていて、綺麗な白い肌と肩程まで伸ばされている黒い髪がマッチしていた。将来は美人になることを間違いないだろう。

俺たちの元へ駆け寄ってきた姉さんは、小さく一息つくと、これまた可愛らしい笑顔で微笑んでみせる。

誰もが見れば微笑ましく思えるような笑みに、俺と兄まで、自然と頬が緩んだ。

 

兄の司波 達也と、双子の姉の司波 深雪。この二人は俺にとって自慢とも思える、掛け替えのない存在なのだ。

 

 

閑話休題。

俺と深雪姉さんは二人でベッドに寝転がっていた。

さっきまで兄さんに相手してもらっていたのだが、母さんに呼ばれたらしく、今は大人しくしているように言われたところだ。

俺と深雪は揃って不満の声を上げたのだが、母さんに呼ばれたのなら仕方がない。

この司波家の大黒柱とも言える存在ある母さんからのお達しを無視することはできないのだ。

だからこそ、兄さんも、すぐに戻ってきてくれると約束してくれた。とは言っても、やはり時間はかかってしまうだろう。

深雪と相談して、兄さんが戻ってくるまでは休憩していることにした。

二人並んでベッドに寝転び、次は何をして遊ぼうか、などと話をしていたけど、いつのまにやら姉さんの口からは返答の代わりに寝息が聞こえ始めた。

 

(よっぽど遊び疲れたんだろうな)

 

規則正しく寝息を立てる姉さんに薄い毛布を掛けてあげた俺は、この世界に生まれてからのことを思い出す。

俺は、彼女――レイによって転生という新たな人生を歩むことになった。

彼女と別れてからのしばらくの間の記憶はない。けれど、意識を持つようになるにつれて、徐々に記憶も蘇ってきた。とはいっても、"レイと出会うまでは何をしていたのか"。

ともあれ、俺はレイのおかげで第二の人生を楽しく歩めていた。

 

「俺って今、希有な体験をしているんだよなぁ」

 

呟いてからハッとして、視線を横に向ける。

深雪はどうやらまだ眠っているらしい。そのことに安堵して、気を引き締めた。

意識がハッキリしていると言っても、まだ年齢で言うと5歳。大人びた口調をしていると気味悪がられるかもしれないと思い、今の今まで言葉使いや仕草には気を遣ってきている。

 

(たま~に気を抜いちゃったりするんだけどね。気を付けないと)

 

心中で気を引き締め直すのと同時に、欠伸が漏れ出る。

まるで引き締まっているように感じられないが、子供の体力では疲労には敵わないらしい。

俺も姉さんに習って、眠りながら兄さんの帰りを待つことにした。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「ん……」

 

どのぐらい眠っていたのだろうか。

仮眠のつもりだったはずが、目を覚ますと、辺りは真っ暗になっていた。

 

「ん、んん~……」

 

横にはまだ眠っている姉さんが居る。

ということは、まだ兄さんは帰ってきていないということになる。

 

「すぐ帰ってくるって言ったのになぁ」

 

部屋の灯りを付け、時計を確認してみると、兄さんが母さんの元へ向かってから5時間ほど経過していた。

用事と言う割には時間が掛かっていることに少し気がかりを覚えた俺は、未だ熟睡中の姉さんを揺すって起こすことにした。

 

「お姉ちゃん。起きて。お姉ちゃ~ん」

「んん……んぅ」

 

これだけ眠っても、まだ眠り足りないのか、毛布を頭まで被ってしまう。

本当なら気の済むまで眠らせてあげたいのだが、どうも胸騒ぎがするので、ここは心を鬼にして少し強引に起こしてみることにした。

 

「お姉ちゃん、いい加減に起きないと、夜眠れなくなっちゃうよ?」

 

時刻は20時を迎えようとしているから、既に今も夜なのだけど。

しかし、姉さんは頑なに起きようとしない。

 

「奥手の、使うしかないか」

 

普段はあまりやりたくはない奥の手なのだが、心を鬼にした今の俺に慈悲はない。

頭まで被っていた毛布を強引に引きはがし、小さく丸まっている姉さんの耳元に口を近づけた。

 

「ふぅぅぅ~」

「ひゃっ!? んっ……!」

 

そっと息を吹きかけると同時に、姉さんの身体がぴくんと反応する。

 

「ほら、起きないとやめないよ?」

 

何度か息を吹きかける続けながら、軽く揺さぶること数回。

ようやく姉さんの意識が覚醒し始めたのか、眠たげな瞳をしながら俺の名前を呼ぶ。

 

「びゃく、や……?」

「うん。おはよう、お姉ちゃん」

「いま、何時なの?」

「えっと……夜の8時?」

「……おやすみ」

「って、寝ないでよ!」

「じゃあ、一緒に寝よ?」

「寝ないってば! ほら、起きて!」

「ん~……おやすみなさい」

 

一度は起きかけたのに、再び睡眠に入ろうとする姉さん。

 

「だ、だからもう起きてってば~!」

 

 

 

それから数分後。

慌てて同様の起こし方で、どうにかして姉さんを起こすことに成功した。

 

(もうあれは奥の手でも何でもなくなっちゃったよ……)

 

普段の姉さんは寝覚めの良いほうなのだが、時折、中々起きないときがある。

そんな時に編み出したのがあの技だったわけなのだが……、最早ただ息吹掛けるだけの、奥義でも何でもなくなったことにがっくりと肩を落とした。

そんな俺に、手を繋ぎながら隣を歩く姉さんは心配そうにこちらを見てきた。

 

「どうしたの? 白夜。もしかして怖い夢でも見たの?」

「…………」

 

見当外れだけれど、弟の心配をしてくれる姉に対して気を使えないほど子供じゃない。見た目はまんま子供だけど。

 

「違うよ。お兄ちゃん、帰ってこなかったなぁって思って……」

「う~ん。忙しいのかな?」

 

姉さんも少しは気になっているらしく、さっきまでとは違った意味で心配そうな表情をする。

 

「でも、直ぐに帰ってきてくれるって……」

「ふふっ」

 

俺の言葉に微笑んだ姉さんは、掴んでいた手を離し、そっと頭を撫でてくれる。

 

「大丈夫よ。お兄ちゃんは帰ってきてくれるわ」

「お姉ちゃん……。うん、そうだよね」

 

優しい姉さんに、優しい兄さん。

俺にとって自慢の二人は、いつだって大切な存在だ。

今でも、精神年齢では圧倒的に俺の方が大人なのに、こうして励ましてくれる。

 

「それじゃあ早く、お母さんのところに行こう?」

「うん! 早く行こう!」

 

再び姉さんに手を繋がれた俺は、二人して足早に、母さんがいるであろう部屋へと向かったのだった。




01話ですね。

あまり進んでいませんよねぇ。
進みは遅いですけど、そこは気長に待ってもらえればと思っています。

そして
紅 幽鹿様、ご感想ありがとうございます!
感想というのは、もらえるだけでも嬉しいものですね。

では、次話も宜しくお願い致します!
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