よくあるイジメの遺書らしいのだが。

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ハイテンションいじめられっ子

『へいへい! 今日も元気にやってるかい、みんな! え、俺? 俺の名前なんてどうでもいいじゃん。ただのイジメられっ子だぜ! イェイ! まぁまぁ、俺の名前どころか俺のことだってどうでもいいじゃん。みんなだってアフリカの奥地にいるどこかの民族が風邪引いたかどうかなんて正直どうでもいいだろ? コンビニに赤い十字の募金箱があってもお釣りを入れたりしないだろ? それと同じ同じ。俺の名前も俺のこともどうだっていいんだよ。どうせ、後八十年ぐらい経ったら俺も含めてこれを読んでる人達のほとんどは死ぬ訳だし、要はただの時間の無駄だぜ。時間の無駄だから別に破り捨てたって構わない。ネットに出回ってるならブラウザを閉じるか、左上の左矢印をクリックすればいいんだよ。どうせこんなの見たって、ウザいと思うか、面倒クセェと思うか、馬鹿だなと思うか、くらいだろうし。こんな遺書なんて。そ、俺のことなんてどうでもいい。俺のことよりももっと哲学的な話をしようぜ。俺のことなんて本当にどうでもいいんだよ。本当に。本当にどうでもいいんだよ、俺なんて。そうだな。テーマは善悪とかでいいかな。善悪。物の善し悪しだったり、者の善し悪し。イイコトとイケナイコトなんてカタカナで書くとエロい意味で受け取る青少年のみんなは善いのか悪いのか、みたいなくだらない話からしていこうかな。いや、面倒くさいからいいか。青少年って大抵エロいもんな。十八禁とか全然関係ねぇもんな。「十八禁ってエロやグロだから十八歳未満は禁止」って意味だけどレベルの高い青少年になると「十八禁」って単語で興奮する輩もいるしな。ってか俺だけど。あーっと、俺の話はどうでもよかったー! たはーっ! やっちゃったー! ウェイ! まぁ、あんまり卑猥になるとそれこそコレが十八禁になるかもしれないからやめとくとして。果たして「悪」ってのは悪いことなんだろうかね。いや、何を言ってるんだって話かもしれないけど、実際に考えてみてよ。いつものように空気を呼んで悪目立ちしないようにしてるんじゃなくてちゃんと考えてみてよ。自分で考えてみてよ。誰かの意見と同じみたいな「考え」じゃなくて思考してみてよ。思って考えてみてよ。どう思う? 悪って悪いことなのか。さて、考えたか考えてないかなんて俺には分からないことだから考えた体で進めていくけれど、俺は悪って実は良いことだと思うんだよね。何言ってるんだお前は、って? うん、俺もそう思うよ。間違ってると思うよ、常識的に考えて。けど、光があるから影があるなんて言うし。けど光がなくても影はあるんだよね。闇を影と同義にすればの話だけどね。同じように善があるから悪もある訳だ。善が無くても悪はあるけれど。うん、本当に何言っているんだろうね、俺。さてさて、まぁ思考してみようぜ。俺のことじゃなくて俺の意見について考えてみようぜ。ついでに俺のことも考えている? ふぅ~、モテる男は辛いなー! モテてるのはいじめっ子にだけどな、はははっ! さてさて、だからまぁ、悪が悪いことかどうかは置いておいて、イジメが悪い事かどうかを考えてみようぜ。いや、うん。まぁ、当然のようにイジメは悪いことだけど、果たして「イジメが起こっている状況」というのは果たして悪なのか、って話だ。何言ってんだPartThree(ここはかなりネイティブに発音すると面白いかも)かな。だけどさ、イジメが起こっているってことは、「もうこれ以上イジメが起きない」可能性が高いって訳だ。ならば誰かがイジメられている状況ってのは、イジメられている奴以外にとっては良いことだって意味なんだよな。ははっ、屁理屈ってか。屁理屈も読んで字の如く理屈だぜ。屁みたいな理屈なだけで。ってことはだ、もっと考えるなら、イジメをなくそうとすることは、「イジメられてる奴以外にとっては良いこと」であることを消そうとしている訳だ。イジメられる可能性を増やしている訳なんだから、それはもう十分に悪なんじゃないか、って話だ。ってか悪だよな。完全に悪。完全悪じゃないけど、完全に悪。所謂、必要悪なんだよ。さてさて、じゃあ、もし、イジメを失くすことが必要悪だとしたら、イジメられている人間が消えること、もしくは死ぬことって悪なのかな。っていうか、直接言うなら、自殺は悪なのかな。逃げることはダメだなんて言う奴は当然のように逃げる要素のない奴らばっかりで、本心は「自分良いこと言ってんだろ?」って奴らばかりで、本当に相手のことを思ってるならちょっとは綺麗事宣ってねぇで行動してみろやゴミクズ共が! って話じゃん? っていうか、イジメられ続けるのもダメだって言うけれど、反逆出来ねぇからイジメられ続けてる訳じゃん。まるで立ち向かうことが正義で逃げることは悪だなんて言う風潮が最近の流行りなのかもしれないけれど、そういう奴って大抵死ぬじゃん。ちょっとは漫画とかラノベとか小説とか読めよ。読んで学べよ。ってか死ねよ。死んで詫びろよ、今までにそんなこと宣った奴。俺はもう死んでるけど、お前らも死ねよ

 

 ――ってかのうのうと生きてやがる奴らは全員死ね』

 

「……で、自殺した少年が残したのがこれですか」

「はい。えっと先輩、どこまで読みました?」

「十八禁のくだりで読む気なくした」

「ですよね。えっと、自殺した人間にこんなこと言うのは何ですけど敢えて言いますけど。遺書にしてはテンション高過ぎますよね。テンション高いのに内容は滅茶苦茶暗いし。ちょっと捜査しづらいですよね」

「そうか、よかったな。今日改めてその少年の家の中を探したら机の裏からメモが偶然出てきたんだよな」

「えぇ……、最後の一行のままですよね。この世界に生きてる人間全員恨んでますよね」

「だろうな。だって誰にイジメられていたかどうかとか証拠を全く残してねぇもんな」

「はぁ、こうなったら読みますか。先輩も巻き添えですよ」

「ああ、分かってる」

 

『警察の皆様、恐らくこの手紙よりも先にあの長ったらしい文書を発見していると思います。すいません。あれは勢いとノリで書いただけです。申し訳ありません。もう耐えられません。僕は、藍屋由美子、梨草青砥、渡瀬高貴、松井零太朗、青口健太、虎谷魚々子、筑紫春にイジメられていました。証拠は彼らの携帯を探れば全て見つかると思います。最後の最後まで

僕の味方だった双子の弟、天馬蒼汰にごめんなさいと告げておいてください。天馬黄太』

 

 後日、マスメデイアでこの手紙が名前を伏せられた状態で報道されたが、ツイッターやライン、フェイスブックにて盛大に拡散され、七人は社会的な死刑宣告を受けた。

 

 

 更に余談だが、自殺したとされる天馬黄太は未だ生存している。

 




二枚目の手紙。どうして、蒼汰に「ごめんなさい」だったのでしょうね。「ありがとう」ではなく。


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