IS×00 夢を目指す者   作:王天君

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 とうとう、プロローグ合わせたら十話目になりました。
 これからも頑張っていきたいと思います。


第九話 戦いの終わりと新たなる始まり

 体が動く。

 けがをした箇所からの痛みこそ引いていないが、負担をまるで感じずに体を動かすことが出来ている。その証拠に、動きに難のあった右足もほぼ苦痛を感じずに動いている。

 両手両足全てに装甲が展開され、構えるだけで負担になっていた【葵】も今では重量を感じない。ISからの補助が働いているという事だろう。

 

(両手両足、問題ないな。これだけ動けばまだ戦える。

 いや、だが・・・)

 

 全身を僅かずつ動かして、全身の動きを確かめる。

 戦うのに支障が出るような部分はないが、身体の痛みはまだ引いていないのが問題だ。痛んでいることを知られて集中攻撃を浴びれば、気を失う可能性はまだある。

 そして、シールドエネルギーの残量も問題だった。

 視界にガイド表示が出現して、俺の現在の状態や武装、スペックなどを教えてくれる。そして、そのうちの一つはこの機体のシールドエネルギー残量を示していた。

 この【打鉄】に残されたシールドエネルギーは残り《82》。一撃でどこまで減るかは未知数だが、何発も攻撃を受けて平気な量でないことは確かだ。

 こいつが言ったように、時間が押しているのは同じということになる。

 

 目を起こすと、いつの間に距離をとったのか、俺から離れてこちらを観察しているらしい敵と目が合う。

 ようやく上げた顔には、今は何の感情も浮かんでいない。狂気を感じた笑いも、あれほど圧倒してきた雰囲気も何も残っていない。

 抜け殻のような顔、というのが適切な表現だろうか。

 いや、あの表情が敵とつながっているとも限らないのだが。

 

「・・・イレギュラーと呼んだが、本当にそのようだね。

 男性でありながらISを動かすとは。どうやったのか、聞いてもいいかな?」

「知るか、お前を倒す手段があるだけってことで十分だ!」

「やれやれ、何度も言うようだけど、それ以上戦うならば死を覚悟しないといけないよ。

 僕も、命まで奪うのは好きじゃないんだ。」

「・・・御託はもう良い!今度こそ、お前を倒す!」

「死にそうになってもなお、闘志を失わないか。ならいいことを教えよう。実はそこで倒れている方の奮闘で、僕の機体のシールドエネルギーは残り少ない。

 上手くやれば1撃で勝敗を決められるかもしれないよ。」

 

 そう言って、それまではとらなかった、敵なりの構えらしきものを見せ始める。

 剣は体の右後方に倒して、剣先が地面を擦りそうなほどに傾ける。足は前後に開かれ、両足が地面すらも掴むように、しっかりと腰を落としている。

 半身の姿勢から、こちらに横薙ぎに切りかかるつもりだろうか。

 

 対して俺は、そんな型を持っているわけでもない。今までと同じく、【葵】を正眼に構える。

 だが、ISの補助がある今なら、これまでの様に敵の剣をそらす必要はない。跳ね除けて、体勢を崩した敵を切り伏せれば済む話だ。

 そう考え、ひたすら動かない、待ちの姿勢で敵の動きを誘う。

 お互いに何もしゃべらないまま、静かに時が過ぎる。

 緊張感がその場に満ちて、全く気を抜けない。互いに感覚を集中し、相手の意識が自分からそれる瞬間を探し続ける。

 

 唐突にその時は訪れた。

 試験官が身体を動かしたのか、あたりに散らばる荷物の一角が崩れ、小さく音を立てる。

 その次の瞬間には、再び奴は俺との距離を一気に詰めて、横薙ぎに払おうとする。

 

「二度も通るかよ!」

 

 しかし、一発不意打ちで食らったこの技は、俺も警戒している。先程の様に簡単に、懐に入れたりはしない。相手の剣を防ぐと同時に、叩き落すべく、敵がこちらに接近しすぎる前に【葵】を振り下ろす。

 これで、俺が勝つ、その筈だった。

 

「僕も剣に精通しているかもしれない相手に、短時間で同じ攻め方はしないよ。」

「何!?」

 

 俺の間合いに入る直前に、敵の体が後ろへと一瞬で下がる。そして、既に横薙ぎにしていた剣を起こして、今度は間合いの内側にまで距離を詰めたかと思うと、袈裟懸けに切り下ろしてくる。

 ISの瞬時加速(イグニッション・ブースト)――確か資料では、一度取り出したエネルギーを再度取り込み爆発的な加速を得ること――を使った。と、遅れて理解する。

 だが、確かあれは前面に対してしか、効果が高くない筈の技だ。今のこいつのように、後ろに目掛けて行ったり、連続で反対方向に行ったりするなど、試合をいくつか見てきたが相当な難易度のはずだ。

 試験官と戦っても出さなかったはずのものを、今出しているということは、あの時も全力ではなかったということだ。

 

「僕の奥の手だよ、多重瞬時加速(マルチ・イグニッション・ブースト)というんだ。

 生身で楽しませてくれた、君への敬意だよ。一瞬の勝利への喜びを胸に、沈みたまえ。」

 

 もう間に合わない。振り下ろされる軌道に対して剣を合わせるのは無理だ。

 やむを得ず、俺は迎撃を諦め、先に一撃を入れることに全力を注ぐ。

 攻撃タイミングは敵の方が一瞬戻ったことで遅れたが、俺も目標までの軌道修正にかかってしまったので時間的差はほぼない。

 どちらの一撃が先に決まるか微妙な状態の中で、敵の方が一瞬早く俺にあたりそうになる。勝利を確信したのか、操られている子の口元が愉快気に歪む。

 だが、そこで何が起きたか、敵の動きが止まる。

 

「何だと!?」

 

 これまでで一番、敵の感情が込められた声。なにか、俺以外のイレギュラーが起きたのだろう。

 だが、俺もこの隙を逃すわけがない。動き出す前に、相手の胴に一撃を加える。

 

「もらったぁぁぁ!」

 

 敵の言った通り、シールドエネルギーは残り僅かだったようで、一撃が決まると装甲が次々と消えていく。女の子も操りの糸が切れたように、身体から力が抜け、倒れこむ。

 

「終わった・・・」

「やれやれ。退屈な実験だけと思えば、全く予想外のことばかりだね。」

「!!」

 

 ISが消えたはずの場所から、声が響く。

 

「お前、まだその子を操ってるのか!」

「心配しなくてもここは僕の負けだ。潔く引こう。

 後これは、近くから君のISに周波数を合わせて声を届けているだけだから、そこの彼女はもう問題ないよ。」

 

 それを聞いて、倒れた女の子に近づき脈を測る。特に問題はなく、安堵で気が抜ける。

 

「良かった・・・。」

「本当に不思議だね。彼女一人に命を懸けるだけの義理があるのかい?」

「お前は良くない!ここで、倒してやる!」

「丁重にお断りしよう。

 いや、だけど一つわかったよ。君は彼女を傷つけたことが許せないのではなく、

僕の様なことをしている者が許せないのだね?」

「・・・だとしたら何だって言うんだよ」

「自分の大切な人を傷つけられたことではなく、人を傷つける者が許せない。まるで、昔子供と見たアニメのヒーローの様だと思ってね。

 それとも、そうなりたいのかな?」

「・・・」

「答えないなら、図星と思わせてもらうよ。

 その上で、年長者からの助言と思って聞きたまえ。そんな生き方は止めておいた方がいい。今回もISが起動しなければ、とっくに死んでいたかもしれないんだよ?

 命は自分のためにこそ大切にするべきものだ。アニメのように、死んでも生き返ることなど出来ないのだから。」

 

 まさか、敵から俺の人生について心配されるとは思わなかった。

 だが、死ぬことは別に恐れてはいない。

 イクサに誓ったように、孤独でなければそれでいいのだから。

 だから、返す言葉も決まっている。

 

「・・・お前らみたいなのがこの世からいなくなったら、止めてやるよ。」

「ふむ、お互いに引くことが出来ない一線もあるようだ。

 君のような人間は本当に貴重だから手元に欲しいけど、そうもいかないか。

 仕方ない、実験も済んだし名残惜しいがここで帰らせていただくよ。」

「!待て!お前ら一体何者だ!」

亡国企業(ファントム・タスク)、それが僕らの名前だ。

 そして、僕のコードネームはレムナント。

 ああそうだ、君の名前も教えておくれよ。」

「・・・織斑、一夏だ。」

「織斑、織斑・・・なるほど、そういうことか。

 ブリュンヒルデの弟が相手なら、もう一度戦うのも楽しみだよ。ではね、イチカ。」

 

 それ以上の声は返らない、と思ったが、

 

「ああそうだ、さっきイチカの攻撃が通ったのは、誰かからの援護があったからだよ。

 それで動きを止めてしまってね。いや、負け惜しみではないからね。僕の得意なのは、近距離戦ではないのだから。」

 

 それだけ言って今度こそ、その声は消えた。

 

亡国企業(ファントムタスク)レムナント(残骸)、あんな奴らがいるのかよ。」

 

 今まで見てきた平和な社会とは違う、6年前のような暗い部分が再び俺の前に現れたのだ。俺がこの先も正義の味方を掲げていけば、また戦うこともあるだろう。

 望むところだ、と決意を固める。大切なものを守れるようになると誓ったのだから、どれくらい強くなるべきかの目標はあった方がいい。

 そしてレムナント、奴はその目標には最適なくらいに強い。

 

「そうだ、アイツを越えられないと、俺は誰かを守るなんて口にはできない。」

 

 誰かは知らないが、援護をくれた人がいなければ、俺が負けていたのは確実だ。それを認めない程に俺も子どもじゃない。

 イクサ、千冬姉、レムナント、彼らを超えるくらいに強くなることが、俺の今からやるべきことだ。

 理由は不明だが、ISも動かせるようになった。これから先の俺が鍛えることのできる上限は、かなり跳ね上がったと見ていいだろう。明日からの鍛錬にも、もっと頑張ることが出来る。

 そう、俺が思ったところで、身体が倒れる。

 

「あれ?」

 

 ISの展開は切れていないが、身体がまるで動かない。

 今まで無視していた身体のダメージが、身体に追いついてきた、と気づいた時には意識が飛んでいた。

 

 

――IKUSA Side――

 

「ったく、アイツ、いきなり無茶しやがって。」

 

 そうため息とともにつぶやく。

 敵は予想外だと言っていたが、そんなものはこちらも同じだ。

 予想外の事件との遭遇。予想外の時間でのIS起動。あげくに予想外の戦闘。挙げ始めればきりがない。

 特に戦闘に関しては色々とギリギリだった。どうにか間に合ったものの、自分の援護で、敵が動きを止めなければどうなっていたことか。

 

「だが、これでお前も理解したはずだ、一夏。

 お前はこの先、仲間を頼らなければ勝てない戦いも多く出てくるだろう。その時、お前は仲間を頼ることを忘れるかどうかで、人生の選択が変わってくるんだ。」

 

 今回はのほほんさんに助けを呼ばせたことが好手だったが、次がどうなるかはわからない。どちらにしても、俺は俺のなすべきことをするだけだ。

 

「間違うなよ、一夏。・・・にしても、また雪か。こっちにも因縁でもあるのかもしれないな。」

 

 そして様子を見ていたイクサも、倒れて気絶した一夏を懐かしいものを見るように眺めた後、その場から消えた。

 

 

――side out――

 

 

 

 

 そして、その日から3ヶ月経った5月某日。

 俺はIS学園の1年1組のクラス前に立っていた。

 

 見事、念願のIS学園への入学は叶ったが、それは整備科ではなく、普通科。ISを動かすことをメインにするコースへと入学していた。なぜこうなったかというと、あの後俺が気絶してからも一騒動あったらしい。

 

 本音が入り口に行くと試験官がいなかったそうで、近くの店に寄って電話を借り救急隊とIS学園に連絡。先に到着したIS学園関係者は俺の状態を見て、男の操縦者が現れたことをすぐにばれるわけにはいかないと、政府直轄の病院に入院させたらしい。面会謝絶にして情報漏洩を防ぎ、その間に俺の処遇を考えようとしたようだ。

 らしい、ようだ、というのは、俺にその間の記憶が全くないからで、目覚めたのは1週間後だった。怪我は大したことがなく、初めての実戦による緊張と、それから解放された安堵によって疲労が溢れたというのが、医者が見立てた理由だ。

 そのあとは、政府のお偉いさんなどからの話し合いや、学園から今後の俺の扱いについて長々と説明されるだけで、退屈極まりなかった。余計なことを言われても困ると、病院からは出ることも許されなかったことも退屈さを増した原因だ。

 少しだけよかったのは、面会謝絶が俺の知り合いには解除されたことで、弾と蘭や千冬姉、それに本音と例の友達も見舞いに来てくれた。(ここで、初めてかんちゃんという人物のフルネームが『更識簪』だというのも知ることになった。)

 なお、傷だらけになったため本音が俺に約束を破った罰を提案してきたが、それはまた別の話だ。

 

 亡国企業については偉い人に聞いても、1世紀以上前から活動しているテロ組織、だということぐらいしかわからなかった。簪のISを遠隔操作したのも、彼女を狙ったのではなく偶然だと話されたが、詳しいことは何もわかっていない。レムナントについても同じくだ。

 

 ともあれ、俺はIS学園に入学させておくことで、世界から手出しできない3年の間にどうするかを決めようということになったらしい。

 そんなわけで、俺は入学時期が遅れてしまったが、今初めて自分のクラスの前に立っている。試験は通常のものを突破していたので、IS適性だけ後で測る形で免除となった。

 

「えっと、織斑一夏君でよかったですよね。」

「はい、そうですよ。」

「私のこと覚えていませんか?

 あの時、うちのクラスの本音ちゃんを助けに来た子が、なんだか似ている気がしたので。」

「・・・ひょっとして、あの時の試験官さん?」

「はい、山田真耶といいます!これから、よろしくお願いしますね。」

 

 あの高度な戦いをしていた人が、目の前のおっとりした人とイメージが重ならない。スタミナが少なさそうだという位が見た目からの共通点だろうか。

 人のことをあまり詮索しない方が、怒られないので聞かないでおく。この人の実力はこれからの3年間で、よく知ることが出来るだろうし。

 

「では、私は中で入ってくる段取りをしておきますので、静かになったら入ってくださいね」

 

 そう言うと、騒がしい教室の中に入っていく。

 彼女が視界から消えたのを確認して、身だしなみをチェック。第一印象で甘く見られると、パシリやその他に使われるかもしれない。警戒するのは当然の事だった。

 

「はーい、皆さん静かにしてください!」

 

 その一声で、中の騒動が治まる。成程、確かに教師というだけあって、入学から1カ月で生徒のコントロールを成し遂げているらしい。先程の失礼な考察も訂正するべきだろう。

 

「何と、今日は転入生が来ます!」

『おー!』

『どんな子だろう?』

『やっぱりあの世界でただ一人の男性操縦者、って人じゃない?』

「あ、あれ、皆さん!静かにして下さいってば!」

 

 静かにしろと言った後に騒がしくさせる、中々高度なテクニックだ。

 だが、静かにさせないと転入生も入ってきにくいと考えるだろう。どうやってここから、静かにさせるのだろうか。

 

「え、えーっと、それでは入ってきて下さい!」

「いや、静かになってないけど!?」

 

 責任を放棄してしまった。本当に教師なのかが心配になる。

 だが、言われた以上は俺も入らざるをえず、今時手動のドアを開けて中へ入る。

 

『男の子だー!』

『結構カッコいいー!』

「み、皆さん静かに!

 織斑君、私の横で自己紹介お願いします!」

 

 全く効果のない声を上げつつ、山田先生はそう俺に頼んでくる。

 断るわけにもいかないので、仕方なしに、俺も壇上へと上がり自己紹介をする。

 

「織斑一夏です。男ですが、元々整備関係に興味があったので志望しました。

 ISを動かせる男ってことになってますが、普通に接してもらえると嬉しいです。

 夢は、・・・夢は正義の味方になることです。

 これからよろしくお願いします!」

 

 こうして俺のIS学園での生活は幕を開けた。

 




 ここで、第二章終了。ようやく入学しました。
 入学編を一か月以上やってたアニメもあったし、問題ないよね。

 第三章はこんどこそ、セシリア戦まで行きます。ええマジで。

 オリキャラの名前も判明しましたね。また一夏とも顔を合わせる予定ですが、いつになるかは不明です。

 次回の投稿はセシリア戦次第ですが、9月初めくらいを想定しています。

感想・質問・批評等、お気軽にどうぞ。


没ネタ
fateから影響受けてるし、レムナントに多重瞬時加速の応用とか言って、

『秘剣 燕返し!』

とかやらせようかと思った。後悔はしていない。
出来なくもなさそうだしね。
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