IS×00 夢を目指す者   作:王天君

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 初めての方は初めまして、続けて読んでくださっている方はお久しぶりです。
 今回一番苦労したのは、セシリアとの戦う理由づけでした。
 原作のように失言もするタイプでもなし、喧嘩を売るタイプでもなし、試行錯誤で何とかまともになったとは思いますが、違和感がある方も多いかもしれません。

 戦うのが大事で、理由なんてどうでもいいわ!なんて人もいらっしゃるかもしれませんね。自分が、細かいことが気になるのがいけないんですけど。

 とにかく本文でご確認ください。

 ・・・そして最後、ついに主人公機が明らかに。


第十二話 決闘

 俺たち3人どころか、成り行きを見守っていたらしいクラスのみんなも声のした方を向く。そこにいたのは、布仏本音と、受験の日に俺が助けたもう一人の少女、更識簪だった。

 昼休みはいつも本音を見かけなかったが、簪のところに行っていたのか。

 

「・・・布仏さんに3組の更識さんですわね。私が言ったことに文句がありますの?」

「織斑君に…謝って。彼は…口だけの人じゃない」

「私達はおりむーを、偽物なんて言われたくないかなー。」

 

 淡々とした様子の二人。気のせいか、怒ってないか?

 

「お断りしますわ。そんな男に謝るほどの価値があるとは思えませんもの。」

「どうして…そこまで…織斑君のことが、気に入らないの?」

「男の優しさなんて口だけですもの。

 この男だって、お金を積まれたり、痛めつけられたりしたら、あっさり手のひらを返すに違いありませんわ。

 重ねていえば、夢も願いも語るには相応の力が必要ですわ。正義の味方になる、だなんて大言壮語をしておいて、大した実力も持っていないなんてただの嘘つきでしょう?」

 

 入学してまだ1週間なんで、実力の見せようもないことは考えてもらえないのか。

 勉強とかは授業中の俺を見れば、明らかに遅れていることだけが伝わっていたとは想像できるけどさ。

 

 

「私のように入試で試験官を倒してみせろ、とまでは言わなくても、嘘つきでないと見られたいなら相応に力を示すべきですわ。」

「実力なら…心配いらない。」

「おりむーはISと生身で戦った経験持ちだよー」

「・・・何ですって?」

「一夏どういうことだ、説明しろ!」

 

 力の抜いた隙に、今度は箒に首を絞めあげられる。黙っていたな、そう言えば。

 結構な力のせいで、酸欠になりかねない。

 

「箒、待てって!別に悪いことしたわけじゃないから!」

「危険なことをしておいて、黙っていたのが許せんのだ!」

「それ…だけじゃない、少なくとも…織斑君の…優しさは笑っていいものじゃ…ない。」

 

 箒の目が本気で吊り上がっている。二人が庇ってくれるのはありがたいが、結果的に俺の首を絞めることになっているのを考えてもらいたい。

 俺達を放置したまま、彼女らはオルコットに入試の一件を説明している。

 

「自分を大事にしろと言ったのに、そんなことをしていたのか、お前は!」

「状況的に仕方なくだよ!

 最初は戦わずに逃げる予定だったんだって!」

 

 箒が俺を締め上げ、本音と簪は説明を終えると静かに見つめる。見つめられた、オルコット自身は黙って俯く。

 

「…分かって…くれたなら、訂正して。」

「・・・納得できませんわ。男性操縦者がそんなことをしたなら、もっと話題になっている筈ではありませんの。ですがそんな話は聞いたことがありませんわ。

 だいたい、どんなに実力や経験があろうと、人から語られただけで、それを認めることなど出来ません。」

「だったら、どうしたいのー?」

 

 あの入試の件は政府の偉い人から、事故で片づけるように言われたので、世間でもISが暴走したくらいにしか知られていない。

 ISを動かしただけでも火種になるというのに、事件の当事者にまでなられると、対処しようがなくなるから黙っていてくれ、と直接頼まれた俺以外は、そのくだりは説明されなかったのだろうか。

 そこでオルコットの目が鋭く俺を捉える。空気を察してか、箒も力を緩めて沈黙する。 

 

「貴方、近いうちにあるクラス対抗戦はご存知?」

「行事関係はまだ詳しくないな。」

「クラスから一人代表を選んで、各学年のクラス順位を決める戦いのことですわ。このクラスからも当然代表者が選ばれます。ですが、この行事の出場者は自薦・他薦を問いませんの。私も立候補するつもりでしたが、少し変えましょう。貴方も代表者に立候補しなさい。

 そして、その代表者の座をかけて私と決闘することを命じますわ、織斑一夏。

 布仏さんたちが言うことが事実だというなら、証明してみせなさい。

 私が負けたなら、訂正も謝罪も、必要なら土下座でもしてあげますわ。」

「あいにく俺は、代表者とかになる気はないぞ。クラスメイトと戦う気もないしな。

 俺達以外にも出たがる子はいるだろうし、その子とも戦うのか?」

 

 現時点でも勉強が遅れていて、取り戻すために大変だというのに、これ以上大変なことになる気はさらさらない。オルコットは目立つのが好きなのかもしれないが、俺がやりたくない以上その決闘を受ける理由もない。

 なにより入学して間もない時期の行事とくれば、参加したくなる人間もいるはずだ。俺とオルコットが立候補しても、他に誰か出てくれれば決闘を起こすための理由もでっち上げられない。

 

「貴方が私との決闘から逃げるのは結構ですけど、他の人の立候補は期待するだけ無駄ですわ。」

「どうして言いきれる?」

「1年の専用機持ちは2人、私と更識さんだけですのよ。学校が貸してくれる打鉄やラファール・リヴァイヴで、わざわざ専用機持ちに挑む物好きがいると思いまして?」

 

 ・・・それは盲点だった。

 量産型の打鉄やラファール・リヴァイヴと違い、専用機はそれぞれが全く異なる性能を持つ。第3世代型が現在の専用機では主流になっているらしいが、第1世代でもドイツの【ジークフリート】やイギリスの【ペンドラゴン】に代表される【ブレイブス・シリーズ】が有名だ。他にもフランスの【アストルフォ】、【ローラン】などIS世界大会に出場した強者達のおかげで、専用機の強さは知れ渡っている。

 専用機持ちだと分かっている相手に、量産型で挑もうと考える奴は確かにいないだろう。

 

「待て、それでは一夏も貴様と戦うのは不利ではないか!」

「ISを装着せずにISと戦ったことがあるのでしょう?

 それが本当ならば、量産型でも十分私と戦えるはずですわ。」

「言った張本人の私が言うのもなんだけど、それはおりむーに不利すぎると思うよー?」

「貴女方がいくら言ったところで、決めるのはそこの男ですわ。

 外野は黙っていてくださいな。」

 

 周りを黙らせ、再度俺を見つめなおすオルコット。

 

「早ければ今日か明日か、織斑先生からクラス対抗戦を説明されることでしょう。そこであなたが言わなければ、私がクラス代表に決定して終わりですわ。

 私に謝らせる機会も、その時を逃せば次はいつになるかわかりませんわよ。

 どうします、受けますの?受けませんの?」

「・・・わざわざ戦う必要もないだろ。IS適性とかで俺の能力を調べることも―――」

「貴方はさっきから、そればっかりですわね。負けて恥をさらすのが怖いんですの?

 不利な条件だと言った以上、そう思うのも無理はありませんけど。

 言い出した以上はこちらがハンディをつけるくらいはしますわよ。」

「・・・そうじゃない、別にクラスメイト同士で戦う気はないってだけだ。オルコットに恨みとかがあるわけでもないだろ。」

「貴方は私が自分の夢を侮辱しているのを聞いても、何も感じないんですの?」

 

 『夢を侮辱』、確かにオルコットは俺の夢を侮辱している。

 別にそれは構わない。この夢が人に理解されないことはこの6年ほどでよく知っている。適当に思い付いただけに受け取られてしまうことも、無かったわけでもない。

 俺自身ですら、イクサと出会っていなければこんな子供じみた夢は持たなかった。だから、オルコットが今更馬鹿にしたところで、怒りを感じたりはしない。

 だが、

 

「他人に理解してもらえないのは知ってるからな。」

「・・・本当にどうしようもないですわね、自分の夢に誇りも―――」

「でも、間違っているとも思ってない。お前にどう思われても俺は自分の夢が正しいと思ってる。」

 

 他人がどう思うかじゃない。俺がやりたいと思ったから、この夢は俺の胸にある。

 侮辱されても、大した重みを持っていないと思われても、俺が正しいと信じていることだけはこいつに示さないといけない。

 

「だからオルコット、俺はこの決闘を受けるよ。

 夢を侮辱するお前を否定するためじゃなく、俺の夢の正しさを示すためにお前と戦う。

 俺が勝ったら、俺の夢が適当だって言ったことは、取り消してもらうぞ。」

 

 夢を馬鹿にされてもいい、理解されないことは十分知っている。

 だから他人のためではない。『正義の味方になることは正しい』と俺が思っていることを示す為に、俺はオルコットと戦わないといけない。

 そんな心境を知らずに答えを聞き、オルコットの目が嬉しそうに輝く。自信満々といった表情を浮かべて、俺に指を突き付ける。

 

「いいですわよ、勝つのは私ですもの。

 正義の味方になるだなんて夢も、周りから誇られる優しさとやらも、所詮は嘘つきの妄言と証明して差し上げますわ!」

 

 彼女が宣言するのに合わせて、視線を受け止める為に目を見つめ返す。

 だが、不思議な話だが、その時合わせた彼女の目の中には嫌いな相手を叩き潰せることを、喜ぶ感情があるだけには見えなかった。

 

 

 

 

 こうして、俺とオルコットの『クラス代表選抜戦』の名目での決闘開催が決まった。

 騒ぎを聞きつけた千冬姉と山田先生が、表向きの理由による決闘開催を認めたことで正式に許可が下り、クラス代表選抜を賭けたアリーナを使用しての模擬戦、という風に上には報告したと聞いた。

 千冬姉の弁によると、

 

『生徒にISを生で見させ、学ばせる良い機会だ。せいぜい派手に戦え。

 安心しろ、責任はとる。』

 

 とのことだ。

 即ち学習の機会も兼ねてしまおう、という目論見だそうだ。

 他人事とはいえ、弟が戦うのを教材にする姉が若干悲しい。

 ルールも明文化され、勝敗条件と制限時間、さらに整備・調整要員として何名かをピットに入れることなどが決まった。世界大会で使用される公式ルールは把握していなかったので、この特別ルールの設定はまさしく天の助けだった。

 

 試合が1週間後と決まり、メカニック担当には本音と簪に協力を仰ぎ、対オルコット用戦術構築を急ぐことと、基本動作の詰め込みを頼む。その一方で箒とは剣道の稽古相手をしてもらう、と方針が固まった。

 

 

 

 

 

「・・・ごめんね、おりむー。私たちが出しゃばったせいで。」

「ごめん…なさい…。」

「俺も何も思わなかったわけじゃないし、二人が気にすることじゃないぞ。」

 

 ところ変わって学園内の整備室の一角。機材設備ともに充実したここを当日までは自由に使え、と千冬姉から言われた。俺達だけの特別扱いではなく、オルコットも他の場所が与えられているらしいが、場所までは知らない。

 

「いざ部屋を貰ってみたけど、俺の機体無しには戦術の立てようがないな。」

「織斑先生は…専用機を用意してやる、って…言ってたけど。」

「中身不明だもんねー。そんなくらいなら、量産機を使えって言われた方が楽なのに。」

 

 戦闘を行うにあたり、俺にも機体は必要だが、千冬姉曰く『束が専用機を作ってくれる』だそうで、量産機で戦う展開だけは避けられるようになった。

 ただ届くのに時間がかかる上に、機体情報は千冬姉も知らされていないそうで、事態が好転したかと言われると疑問の余地が残る。到着予定は下手をすると、試合前日の可能性もありうるとのことだ。

 

「機体は後回しにして、セッシ―の攻略法から考えようよー。」

「それが…賢明…かも。」

(セッシーって、オルコットのことか。俺のあだ名といい、本音のネーミングセンスは理解できないな。)

「オルコットについてのデータは、調べてくれたんだろ?」

「これを…見て。」

 

 簪が手元の機械を操作し、部屋の中央にあるモニターに画像を表示させる。本音がその文章を読み上げていく。

 機体のデータは本来トップシークレットで易々と手に入ったりはしない。俺もその問題を考慮して、情報収集から行き詰まりそうになった。が、本音がオルコットの過去に出場した模擬戦の録画や、製作企業の発表しているデータを見つけて、纏めてくれた為に、時間のロスが出ずに済んだ。

 

「搭乗者名『セシリア・オルコット』。イギリス代表候補生。

 機体名【ブルー・ティアーズ】。今はやりの第3世代型ISだねー。6個のビットがあって、名前は同じ【ブルー・ティアーズ】だってー。」

「特殊武装は…それだけ…。メインウェポンに67口径レーザーライフル【スターライトmarkⅡ】を…装備してる。

 射撃が得意だけど…ビットの操作も得意分野で、過去戦の決め手は…ビットになることが多いみたい。360°死角なしのオールレンジ攻撃は…間違いなく脅威になる。

 でも…録画を見る限り、操作に弱点もある。勝てない相手じゃ…ない。」

「攻略の鍵は、そのビットへの対処が出来るかどうかにかかってるわけか。」

「ビット持ちの人は他にいないから聞けないし、イメージトレーニングあるのみだね~。」

 

 直接練習できる相手がいないのは残念だが、武装が分かっただけでも前進といえる。

 それよりオルコットも代表候補生という方が驚きだった。縁でも結ばれているのか?

 山田先生の話だと1年生には三人いるわけで、後一人でコンプリート出来る。

 簪が日本、オルコットがイギリス。最後の一人は何処の代表なのやら。

 

「それじゃ、セッシー攻略の為に、試合動画試写会耐久レースいってみよう~。」

「…特訓の間に死にそうだな。」

「大丈夫…織斑君なら…きっとできる。」

 

 次の日からのイメージトレーニングを確実にするため、1日ぶっ通しでオルコットの試合映像を見る羽目になった。

 貴重な練習の時間をこんな風に使って間に合うのか、と気づいた時にはすでに夜だった。

 

 余談だが、耐久を頑張っていたのは俺だけで、二人はすっかり寝てしまっていた。

 

 

 

 

「・・・一夏、一体何があった?」

「聞かないでくれ。前の特訓がハードだっただけだ。」

「稽古のつもりでやってきて、相手が真っ白に燃え尽きていれば聞きたくもなるわ!」

 

 さらにところ変わって、学園の剣道場。あらかじめ頼んでおいた箒との稽古にやってきた。

 相手が近接タイプでないとわかった今では、この稽古の成果自体が必要なくなるかもしれないが、打てる手はすべて打っておくにこしたことはない。

 

「・・・どうせまた無茶をやったのだろうから、何をしたのかはこの際置いておくとして、 私に何の稽古をつけろというんだ?」

「実戦の相手を頼むよ。戦闘の勘を取り戻すには行動あるのみ、ってな。」

 

 2月にレムナントと戦って以来、命がけの戦闘などしていない。地元の剣道場にもしばらくはいけなくなっていたので、腕がなまっている可能性が大いにあった。

 

「最後に戦ってから三ヶ月近くか。確かに腕が鈍るには十分すぎる時間だな。」

「反射神経だけは病院でも鍛えてたんだけど、身体の動かし方は経験者と戦うのが一番いいリハビリになるだろ。」

「ひとまず理由は分かった、なら全力でやった方がいいだろう。

 構えろ、一夏。」

 

 竹刀を構え、お互いに距離を保ったまま睨みを利かせる。防具をつけてとはいえ、箒の一撃がピンポイントで当たれば、負傷は覚悟しないといけない。

 見合って数秒後、剣道場に竹刀の風切り音と交わる音、防具を打つ音が次々に鳴り響いた。

 

 

 

 

 準備を進める一夏。彼の夢をかけた戦いは、すぐそこまで迫っていた。

 




 え、終わり!?と思った方、安心してください。Cパートです。

――1組代表選抜模擬戦(決闘)前日 深夜――

『織斑先生、やっと届きましたよ!』
「来たか・・・!」

 職員室で番をしていた織斑千冬は、その一報で舟を漕ぎ出していた意識を覚醒させた。
 携帯電話に応答して、荷物が届けられたという模擬戦会場横の倉庫へと向かう。

『最初はアメリカに届いたらしくて、その後日本へ渡る際に税関で呼び止められたためにここまでの遅れが出たと、政府の方から連絡もありました。』
「送り主は?」
『送り主どころか、積載した特殊コンテナごと降ってきたそうで、『日本政府に届けてね by篠之野束』と30か国以上の言語で書かれた紙が貼ってあった以外は中身も不明です。』
「分かりました。中は予想しているものだと思いますが、一応私が行くまで不用意なことは避けてください。」
『触りませんよ!早く来てください!
 どこに落ちても届くようにしたんだと思いますけど、暗いところに文字だらけの箱って怖すぎるんです!』
「・・・。」

 無言で通話終了を押す。
 あの友人は変に気を回しすぎる。おかげでまた自分の頭が痛くなる。

「一夏専用の機体、お前はどんなものに仕上げたんだ、束?」

 照明も落とされた廊下を駆けていく。





 走って数分、その倉庫に辿り着く。

「山田先生。」
「待ってました、織斑先生!」

 真っ暗な中から、同僚の山田真耶が顔をのぞかせる。
 どうして明かりがついていないのか、と問おうかとも思ったが、薄暗がりの中に見えたコンテナに意識が持っていかれる。

「もう本当に怖かったんですよ。文字もそうですけど、大きくて。」
「アレが例の物か。」

 千冬が向ける視線にも動じず、それは鎮座していた。
 真耶の言うことは正しく、その箱は背の高い千冬でも見上げる必要のある大きさだった。
 箱そのもののサイズは約3㎥ほどで、ISを積んでいるにしてもかなりの大型。平均的サイズの打鉄が待機状態で一般人より一回りほど大きい位だから、その大きさがよく分かる。
 通話中に真耶が叫んでいたことも正しかったようで、その側面1つ1つに隙間なく黒い文字が書かれている。しかも下地の部分は赤色で、一人で見ているのが怖くなるのも納得だ。

「到着は少し前か?」
「はい。22時過ぎに正門の守衛さんから連絡を貰って、運び込んでもらいました。
 もう遅いですし、織斑君に渡すのは明日の試合直前にしますか?」
「それしかないだろうな。整備班には…アイツが自分で頭を下げれば済むか。
 一次移行は試合と同時にさせればいい。」
「そこまですると、織斑君が可哀想に思えますけど。」
「…分かっているさ、冗談だとも。
 かといって安全面の問題で朝から生徒を何人も倉庫に入れることはできないし、授業開始前か第一時限の時に来させればいいだろう。」

 そう言っておいて、真耶には職員室へ戻るように指示する。

「織斑先生はどうされますか?」
「少しこの箱を眺めてから戻るよ。
 コーヒーでも入れておいてくれると助かる。そのあとは仮眠をとっておいてくれ。」
「分かりました。私ももう眠いので、先に寝ちゃいますね。
 おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。非常時には起きてくれよ。」
「当然ですよ。」

 気配が去ったのを確認してから、再度箱へ眼を向ける。
 用心しながら手をかけると、案の定文字を書いてあるのはダミーで簡単に剥がせて、中から黒地の無機質な箱が姿を現した。
 束の性格から推測するに、この色合いは意味がない可能性が高い。どうせ、『超秘密で開けられない、真っ黒な箱。これがホントのブラックボックス、なんちゃって』とか言いながら決めたのだろう。

「開けるための扉は・・・・あった。」

 幸い開閉用の扉は側面に備え付けてあったが生体認証が必要らしく、これまた無機質なウィンドウに『織斑一夏が触れてください』と表示されるだけで、扉の方はビクともしない。
 いざとなったら破壊することもできるが、明日になれば開くものを壊す必要もないので放置しておく。
 それから残りの側面も見たが、機体の形式番号と名前に加えて、妙なものが彫り込まれた面が見つかっただけだった。

『GNY-001 GUNDAM ASTRAEA』

 そして、左上にⅧの数字と真ん中で上下反転して、Ⅺの数字を右下に描いた絵柄付きのカード。
 描かれているのは、上半分に黄金の剣と秤を手に持った女性が玉座に腰かけている図。下半分に女性に撫でられる獅子の図。
 千冬はその絵と数字に心当たりがあった。

「正義と力、お前なりの応援か、それとも皮肉のつもりなのか。
 なぁ、束。」

 その真意を知るものはここにはいない。


 謎と思いをそれぞれが抱えたまま、やがて決戦を迎える。





 今度こそ今回も終わりです。
 締め切りなんて自分で決めるもんじゃないね。疲れるったらありゃしない。

 主人公機は今のところ、00外伝、00Fから【ガンダムアストレア】となりました。
 予想していた人も多かったでしょうか?
 このままどこまで戦うかは未定です、セシリアと戦っている間に一次移行して退場かもしれないし、福音までコイツで続くかもしれません。
 機体が太陽炉持ちで無双かと思っている人に警告、前にも書きましたが主人公無双はそうそうありません。
 頭と武装と剣を使ってボロボロになってまで勝つのが、この小説内戦闘の基本です。

 終盤はチート化すると思うけどね。


――恒例 どうでもいい余談――

 正義だの力だの、千冬が言っているのはタロットカードのことです。
 メタ的には最初に機体を【アストレア】に決めた後、由来を調べたらタロットだったと。
 上下別なのはマルセイユ版とウェイト版で数字が逆になっているから。同じ一枚にしたのは、こっちの都合があるからですが。
それぞれの意味を調べるとびっくりするかもなので、また皆さんもよければお確かめください。

 ではまた次回。感想・評価・批評、お待ちしています。




 しっかし、正義の味方を目指す主人公の機体を考えて偶然選んだ機体の名前が、『正義の女神』を由来にしてるとか、これも何かの運命なのか。 
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