IS×00 夢を目指す者   作:王天君

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 初めての方は初めまして、続けて読んでくださっている方はお久しぶりです。

 先の投稿は、更識家のお家事情となりました。簪の思いについて語る部分がほとんどですが。

 先に言っときますが、かなり暗い気がする。

 暗い話なんかへっちゃらだぜ!、という方は本編をどうぞ。
 無理な方は、後書きにお家事情だけ纏めときます。


大嫌いな私

 私は私が嫌い。

 世界で誰よりも私が嫌い。

 外見や行動力や実力のない自分が嫌い。

 お姉ちゃんへの嫉妬をする自分が嫌い。

 比較だけしかされない自分が嫌い。

 私を見ようとしない周囲への恨みを、彼らにぶつけられない弱い自分が嫌い。

 

 でもそれ以上に、内に隠した醜さを告白する勇気がない私が嫌い。

 

 

 

 

 この前、少しだけ自分を好きになれた。織斑君と本音と一緒にセシリア・オルコットさんを倒せたことで。

 自分は安全な場所で指示を出しただけで、もっと言えば彼が戦う原因を作ったのも自分だった。そのせいでまた自分が嫌いになった。

 でも彼に自分たちは仲間だと言って、否定されなかった。それだけで、彼の勝利を支えられただけで自分がいてよかったと思えた。

 勝利した後に色々と大変なことになったけどとても楽しくて、織斑君達と一緒に学校にいられて、自分をこれからもっと好きになれるんじゃないかって、そう思った。

 勝った日の夜、かかってきた電話が、また私に嫌いな私を思い出させるまでは。

 電話は一言、

 

「今週末も帰ってくるように。」

 

 たったそれだけの言葉で電話は切れた。私の発言なんて聞く価値が無い、そう言っているようなもの。

 ああやっぱり、私は自分が嫌いだ。切られる前に、試合で勝ったと言ってやればよかった。父に、いいやあの男に、自分にも価値があることを突きつけられたのに。

 ・・・一笑に付されておしまいかもしれなかったが。

 

 いつからだろう、自分の醜さを見つけたのは。

 嫌いになのは昔からでも、醜いと自覚してしまった原因は彼に、織斑君に出会ってしまったからだと思っている。

 彼と出会ったことで自分のことが大嫌いだと気づいた。気づいてしまった。

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん...お花の水、換えてきたよ...。」

 

 それは白い部屋だった。壁紙もカーテンもベッドも机も、色という色をすべて洗い流したように白い部屋だった。外界の賑わいも花瓶を手に持った簪がドアを閉めれば、この部屋には届かない。室内にある音は時計のチクタクという音と、時計と同じく規則正しい音を奏でる機械のみ。

 私が花の水を入れ替えて戻っても、その部屋は変わることなく彼女を迎えた。

 椅子を一つ引き出して、ベッドの側に寄る。

 

「一昨日…ね、織斑君が…ISで戦ったんだ…。私は…話してただけだったけど。すごく…格好良かったなぁ。アニメに出てくる…ヒーローみたいで。」

「仲間って言ったらね…織斑君も否定しなかったんだ。私にも…友達が…できたんだよ。」

「それとも織斑君は…最初から友達のつもり…だったのかな。お姉ちゃんは…どう思う?。」

 

 相手が返答しないのも構わず、私は一人で話し続ける。相手が言葉を返さない独り言には慣れてしまった。こうして病室のベッドの傍らで、身近で起きたことを話すのももう10回、20回では足りない。

 

「それでね、次はね・・・次は・・・」

 

 喋り続けて10分もした頃か、それまで饒舌に語っていた口が詰まった。止めてはいけない、次の話をしよう、と口を開くが息をするだけで音にはならない。

 

「お姉ちゃん・・・私・・・わたし・・・」

「早く、早く起きてよ・・・。もうすぐ昔のお姉ちゃんと…同じ名前になるかもしれないんだよ…。」

「あのとき…どうして私を庇ったの…?無能なままの妹なんか…守ろうとしたの?」

 

 いつしかただ吐くだけの息は哀願の声に変わる。私はベッドの中で眠り続ける姉に、いや言葉を返さない姉にだからこそ、縋り付いて泣いた。

 そして縋り付かれた先では、人工呼吸器や脈拍測定器、他にも多数の機械を体に繋げられたまま眠り続ける姉がいた。

 点滴につけられたネームプレートには『更識刀奈』とあった。

 

 

 

 

 簪の姉は偉大な姉だった。あのブリュンヒルデに比べれば見劣りしてしまうが、それでもそこらの人間など寄せ付けないだけの才能を持ち合わせていた。簪と比べるまでもなく優れた姉であって、その差を比較されるのが簪の存在だったというのも間違いでない。

 ISを一人で組み立て、改造までして、軍人とも格闘戦で拮抗でき、頭脳明晰で文武両道、明朗快活な人柄。簪に勝ち目などあるわけもない。

 幼き頃に刀奈が簪に言い放った言葉は今も胸に残っている。

 

「私が全てやってあげるから、あなたは無能なままでいなさい。」

 

 刀奈に比すれば無能だった簪に、返せる言葉などなかった。

 比較されるのを怖がって他人を遠ざけ、本音以外に知り合いはおらず、友人もいなかった簪には眩いばかりの太陽で、同時に妬み嫉みの象徴だった。

 IS学園に入学してからもそれは変わらず、入学生主席、一年生にして生徒会長。凄すぎる姉の陰で、彼女は生きていた。姉との比較に抗おうともせず、助けを求めなかった彼女は本音だけが友人のまま、自分ができることをやり続けた。

 この先も比較され続けて、簪の功績は日の目を浴びることなく消える。自分の人生も姉の陰に消えるのではないか、そんな不吉なことまで思い始めた矢先に事件は起きた。

 刀奈が1年生で生徒会長という偉業を成し遂げた直後、彼女の実家がテロ組織に襲撃を受けたのだ。

 

 

 

 

 事件のことで私が覚えていることは多くない。

 長髪の女が主導して、家のあちこちで火の手が上がる光景。専用機を展開して戦っている姉の背中。

それに、

 

 姉が私を庇って、高笑いする長髪の女に刺された光景。

 

 誰にも言えなかった。比較されて下に見られ続けた自分が、姉の未来を奪ったなんて。

 事件の結果、姉は意識を失って、ISも奪われて内密に楯無の名も剥奪された。

 目を覚まさない姉が病室に入り、あと半年もせずに一年が経つ。休学扱いとなっているが、急がないと退学処分を出される日も来るかもしれない。後から見れば、姉の不幸は私がいたせいで引き起こされたも同然だった。

 きっとそのことを神様も見ていたのだろう。私の罪に姉の眠りは深い罰を与えていた。

 

 

 

 

「来ていたのか。」

「!」

 

 声に反応して、飛び跳ねるように身を起こす。

 ドアを開けて入ってきたのは簪と刀奈の父、『更識鍔切(つばきり)』だった。糊のきいたスーツと固めた髪型で、家族である簪も親しみを感じない。この男はいつも同じだ。姉が倒れた日も舌打ち一つしただけで、心配するそぶりすら見せなかった。

 泣いている簪を一瞥すると、簪とベッドの近くによって話し出した。

 

「言い渡した期限まで半年を切ったが、覚悟は決めたか?」

「それは・・・」

「・・・まだか。猶予はやったが、時間が経てば流れると思っているなら大間違いだぞ。こやつが倒れてから一年の猶予を忘れるでないぞ。」

「そんなこと…分かってる…!」

「たとえ覚悟が決まらなくても、期限が来れば無理矢理に継承させることだけは忘れるな。

 こやつが眠ったままな以上、お前が『楯無』の名を継がねばならんのだ。」

「・・・だから、私に…楯無を継ぐ力は…ないって――――」

「だとしてもだ。お前の意思は関係ない。継がないなら勘当だ。」

 

 反論の余地などないと、私の言葉を皆まで聞かずに遮る。悔しさから父親の鉄面皮を睨んでも表情を動かさない。目だけを動かして私を睨みつけると、不満を明かすように再度話し出した。

 

「私とて、貴様程度に楯無の名を継げるとは思っていない。だが分家筋に名を持っていかれるくらいならば、貴様を刀奈が目覚めるまでの影武者に使うのもやむなし、と思っているだけだ。」

 

 簪を苦しめる家の問題であり罰だと思っているのが、この『楯無』を巡る問題だった。

 簪の実家、更識家では当代最強の更識の人間に『楯無』の称号が与えられる。それは与えられた人間にとってもう一つの本名となって、輩出した家は周囲から格上の存在として扱われるのだ。しかし最近では楯無を継げるのが本家筋の者だけになっており、分家筋はどうにかして地位を奪い取ろうとしている裏事情があった。

 今代の最強にして簪の姉、更識刀奈も慣例に基づき、『楯無』の名前を継承したのだが、その矢先に襲撃事件が起きた。刀奈は意識不明となり、彼女のIS【ミステリアス・レイディ】もテロ組織の手に落ちてしまった。言うまでもないことだが、大失態である。

 事態を知った父(先代楯無)は箝口令を敷き、刀奈を一族の経営する病院に極秘入院させた。それがこの病室だ。

 その処置のことを刀奈が再びテロ組織に狙われることを恐れてと見るか、分家に失態を知られて楯無を継がれることを避ける為と取るかは人次第だ。私は確実に後者だと推察している。

 

「分家の人に…あげちゃえばいいのに…。そんな肩書…。私より強い人も…いっぱいいるのに。」

「馬鹿を言うな!

 もし盗られでもしてみろ、鬼の首を取ったように見下してくるに決まっている!」

 

 自分が過去にやってきたことを棚に上げて、勝手を言っている。実の娘すら見下していた男が、誰かに見下されていないとでも思っているのだろうか。

 今代の楯無候補だった刀奈の実妹ではあっても、戦闘の才能が劣りすぎている私に親戚や従兄弟は、同情的に接してくれることが多く、父親の悪評も彼等からよく聞いていた。

 加害者家族と被害者のようなその関係も、簪にとっては数少ない縁なのだが、刀奈の影武者役になるか『楯無』を継げば断ち切られてしまうだろう。

 だが父親は簪の苦悩など露知らず、病室に来て五分と経っていないが、腕時計を確認すると足早にドアへと向かう。ドアの閉め際、横目で簪をもう一度見据えた。

 

「今日も夜には家に着いておけ。貴様の覚悟が決まらなくても、継げるようにするための鍛錬は施しておかねばならんからな。」

 

 今度こそドアが閉まり、足音が遠ざかっていく。

 

「・・・お姉ちゃん…私…どうすれば…いいのかな?

 織斑君に…助けてって…そう言えたら…助けてくれるかな…?」

 

 人工呼吸器を僅かに曇らせる程度の呼吸しかできない、それ以前に意識の戻らない姉には答えられるわけもない。

 それでも誰かに聞いてほしかった。この思いを打ち明けたかった。今簪が置かれた状況を知って、味方でいてくれているのは布仏本音だけだが、彼女にも心の内を暴露したことはない。

 葛藤する私の脳裏に映るのは、数日前共に強敵を倒した織斑一夏のこと。

 

「織斑君は…ヒーローなんだ。入試の日に…操られた私を…助けてくれたんだよ。」

 

 姉にこの話をするのも何度目だろう。病室に来るたびに言っているかもしれない。

 それだけ鮮烈に記憶に焼き付いていることの証だった。操られて意識もほとんど残っていなかった自分に、傷だらけになっても立ち向かってきた人影。動かない筈のISを使い、機能停止に追い込んだ力。そして操る力が外れて体と意識が崩れ落ちた時、腕をとって生きていることに安心して見せた笑顔。

 私が好きなアニメや特撮に出てくる、本物のヒーローの理想像だった。

 彼なら事情を知れば、力になろうとしてくれるかもしれない。

 

「でも…怖いの。家のことを話して…織斑君に嫌われたら…ひどい女だって思われたら…どうしようって。」

 

 期待と同時に生まれたのは同量の不安。

 九分九厘、彼がそんなことをする性格ではないと分かっていても、一抹の不安を拭い去ることが出来ない。友人と過ごす楽しいひと時を知った今、また中学までの様に寂しい日々を送ることになるのは想像を絶する恐怖だ。

 常に自分だけの力で刀奈を越えようとしてきた簪には、他人に助力を求めるのは甘えという考えもある。勝利の手伝いをすることは出来ても、手伝いをされてもいいのかと思い悩んでしまう。

 

「私…どうしたらいいの…教えてよ…!お姉ちゃん…。」

 

 面会終了を知らせる『蛍の光』が鳴り始めるまで、私は姉の枕元で泣いて悩み続けた。

 

 

 

 

 週明けの月曜日早朝、午前6時前に簪は寮の玄関前まで戻ってきていた。土曜の夜と日曜で続けて行われた、鍛錬という名目の虐待で体が痛む。

 姉が積み上げてきた位置に1年で辿り着くには仕方ないとしても、身体の悲鳴は慣れることが出来ない。現に今も着替えを入れたキャリーバッグを引きずるだけでも腕が引きつったように痛む。

 

「…痛いし…寒いな。」

 

 6月がもう間もなくに迫った今朝でも風は少し肌寒くて、薄着で実家を出たことが後悔される。土曜の夜から雨が降っていたからその影響かもだ。

 寮の階段を上がるには荷物が少し重く、引きつった腕では持ち上げることもままならない。寒さも追い打ちをかけて、中々階段を上がる気になれない。

 

「他の人に…見られる前に…部屋へ戻らないと。」

「簪、そんな大荷物持ってどうしたんだ?」

「うひゃう!?」

 

 帰ってくるのを見られて余計な詮索をされるのを防ごうと、いざ力をこめた途端に背後から声が聞こえてつんのめる。

 荷物ごとこけそうになった私を受け止めてくれたのは、

 

「織斑…君。」

「よ、おはよう。大丈夫か?」

「お…おはよう。うん…大丈夫だから。」

 

 彼から身を離して荷物を起こす。中身は着替えなどだけでも、思い人に見られるのは恥ずかしい。地味な下着だな、なんて思われるんじゃないかと邪推してしまう。

 

「織斑君は…こんな朝早くに…どうしてここにいるの?」

「ランニング。基礎体力も大事だって、箒から言われてさ。」

 

 確かに上下スポーツウェアで、首にタオルを巻いて、ペットボトルを片手に握っている姿は紛れもなくランニング中だ。それなりの距離を走ってきたらしく、汗がうっすらと滲んでいる。

 

「それで簪は、大荷物抱えてどこ行ってたんだ?本音から週末は出かけている、とは聞いていたけどよ。」

「えっとね・・・」

 

 答えに窮する。真実を告げるべきか、お茶を濁して場を切り抜けるべきか。どうあっても自分に不利益が生じてしまう二択に、即決は容易ではない。

 口をまごつかせる私から何か察したのか、彼は私の荷物を持ちあげた。

 

「寮室まで運ぶんだろ?ついでだから持って行くよ。」

「わ、悪いからいいよ。自分で運ぶから。」

「痛そうにしてただろ、無理するなって。」

 

 そう言ってさっさと歩きだす。部屋は彼も知っているので迷うことがない。

 

「ち、ちょっと待って!」

 

 彼の好意に甘えて語るのを止めていいのか悩むものの、ひとまず走って追いかける。

 健康体の彼にかかれば荷物も軽いものらしくて、歩く速度もまるで衰えない。特に話すこともないまま自室の前についてしまった。

 

「部屋の中まで入るのはよくないだろうし、ここでいいか?」

「うん、ごめんね。迷惑かけちゃって。」

「気にするなよ。困った時はお互いさまって言うしな。

 それじゃ、俺も朝食に遅れたらまずいし、部屋に戻って用意するから。本音にはちゃんとどこ行ってたのか説明しとけよ。」

 

 彼自身は私にさっき以上のことは聞かず、歩き去っていく。

 背中が遠くなっていくことに、言いようのない感覚が襲った。何も言わないと、後に尾を引いてしまうような、間違えてしまっているような。

 

「織斑君!」

「うお!?急に大声出すなよ、びっくりしたぞ。」

「ご、ごめん。」

「別にいいけど・・・。どうしたんだ、呼び止めてまで。」

 

 彼にどう言うべきか。去っていかれることへの恐怖からたまらず呼び止めてしまったが、何を言ったらいいかは考えていない。

 

「あ、あのね・・・」

 

 寮の玄関前と同じく、息が詰まったように次の言葉が出てこなくなる。

 言って嫌われてしまわないか、なら言わない方がいいのではないか。一方で後から他人に知らされて、言わなかったことで失望されるんじゃないか。頭痛がするくらいに考えを巡らせても、どちらが最善なのかは分からない。

 

「私は・・・私は、ね。」

「いいよ。」

 

 それでも何か言わないと、と思って絞り出した言葉は先んじた彼に止められた。

 

「で、でも。」

「言おうとしても言えないのは、それだけ簪にとって苦しいことだって思うからさ。だから今は言わなくていい。

 言えるようになったら言ってくれれば、それでいいから。」

「・・・私がすごく…悪い子かも…しれないんだよ?それに…仲間が隠し事しててもいいの…?」

 

 自分で言いだした『仲間』のワードも、今は私の動きを縛る鎖に他ならない。だけど織斑君は、軽く笑って首を振った。

 

「いくら付き合いが短くても、簪が悪い奴じゃないことくらいは知ってるから大丈夫だ。

 それに人間生きてれば、隠し事の一つ二つはあるのが当然だろうし。仲間に全て秘密を明かさなきゃいけない決まりなんて、どこにもないしな。

 俺だって全部が全部、簪に話しているわけじゃないから。」

「そういうもの…かな。」

「そういうもんだよ。話してもいいと思えたら言ってくれ。そこまで待ってるからな。」

「うん…待っててね。」

 

 彼の背中が遠くなっていく。でももう引き留めることはしなかった。角を曲がって消えていくのを見届けると、身体に入れていた力が抜ける。

 

「ふう・・・」

 

 自分の部屋のドアを開けると、奥から本音が飛び出してきた。

 

「かんちゃんお帰りー!」

「ほ、本音…重いからどいて…!」

「おっとごめんねー。」

 

 抱き着いて押し倒してくる友人に呆れながらも、やはりこの日常が幸せだと感じる簪だった。

 

 

 

 

 織斑君に会って、私は見ようとしなかった自分の嫌いより酷い、醜い一面を知った。

 彼にいいところを見せようと自分の長所を探せば探すほど、姉がいたころから内面に隠された悪意が浮かび上がってくる。

 

 外見や行動力や実力のなさ。

 お姉ちゃんへの嫉妬。

 比較だけして、私を見ようとしない周囲への恨み。

 その悪意を彼らにぶつけられない弱い自分への怒り。

 

 その感情があっても、認めずに見ないようにしていた。認めずにいたせいで、今でもその火は消えずに私の内に燻り続けている。

 気づかない方が幸せだった。本音だけが友達の世界にいれば、その醜さもずっと見なくて済んだのかもしれない。

 でも気づいたきっかけ、あなたとの出会いがなければ幸せな日常は手に入らなかった。そして今さら、孤独な世界には戻れない。

 地上に憧れた人魚姫のように、あなたに助けられて、あなたや本音や篠ノ之さんと過ごして、一人では得られない温かな日常を知ってしまったから。

 

 織斑君、本音、いつかもっと私に勇気が持てたら、あなたたちに隠した私の全てを語ります。私の弱さも醜さも全て。

 

 

 だからどうか、その時がきたら大嫌いな私を受け止めて下さい。

 




 鬱だ、寝よう。





 アホなこと言ってないでまとめますと、

・原作での楯無、更識刀奈は亡国企業の襲撃で意識不明。IS強奪。楯無剥奪。
・分家に楯無の名前をとられないように、簪に楯無を継がせるか、刀奈の影武者に。
・簪が覚悟を決める期限は刀奈が倒れてからの一年後まで、原作で言うと学園祭まで。
・分家筋には簪より強いのがいるので、継ぐと問題がこじれる。
・しかし頭の固い父親は、自分が下に見られないよう継がせようとしている。
・継げるようにするため、週末に呼び戻されて虐待まがいの鍛錬。
・継がなかったら勘当される。

 現状こんなことになっております。よくもまあ、こんなに面倒にしたもんだ。
 簪はここに加えて、一夏達と一緒にいようとするせいで自分の悪所を見てしまうこととなって悩む。
 最後にいつか告白しようと決めはしても、苛む声は消えるわけでもなく、今後彼女が物事に積極的に行動することを助けるようになります。災い転じて福となすといいな。
 自分の悪い所を分かっていても、目を背けて振り払おうとするしかできないからね。良いことか悪いことかは人によります。

 学園祭編に入れば答えを出すことになりますが、継ぐか継がないかはまだ決めておりません。告白できるのかについても。

 どっちにしても、オータムとの因縁からも

 オータムVS簪

 の組み合わせになる可能性は高いです。

 本編についてはこの辺りで。次回は予告通りセシリアに絡む話。ただし少々ややこしいことになります。

 ではまた次回。

 感想・評価・質問・お気に入り登録、何でもよろしくお願いします。

――祝シリーズ化 どうでもいい余談――

 簪の悩みとかは、ベルセルクの卵使徒の台詞と似てる。
 そこで言われてる人より前向きになろうとしてるだけ、簪はマシかも。一夏のことよりも自分を嫌ってるし。

付け加えると、第三章第1話で山田先生が話した一年生の代表候補生の3人目が刀奈。
この時点では、簪とセシリア以外に一年生の代表候補生は原作では学園にいない筈なので、小さな伏線となっていました。

後、鍔切は簪から見た面しか描写されてないことに注意

 暗い話ばっかだったので、最後は少し燃え要素を。Cパートです。

※予告編?いかようにも解釈ください 少し長め




 6月に織斑君と本音に全てを語ろうと決意してから、半年以上たった。まだ彼らに打ち明けることは出来ていない。それでも変わったことはある。

『更識、状況は?』
「地下区画、現在敵影なしです。」
『了解、気を緩めるな。』

 通信機で織斑先生からの定時連絡に応答する。今はまだこの場に敵は現れていない。亡国企業によるIS学園への宣戦布告によって学園には、第1種警戒体制が敷かれている。
 織斑君たちが不在の今、学園に攻めてくる戦力を相手できるのは私を含めてもわずかな戦力しかいない。
 特に大部隊が来るのは空からだと、残有戦力の多くは地上に配備されている。都心とつながる地下区画を守るのは彼女のみだ。
 そして敵が自分なら、確実にこの場所から来ると、彼女は踏んでいた。


 敵の侵入経路を予想して、地下通路を守っていた簪の前にもついに敵が現れた。
 敵は軍事用IS【アラクネ】。背中に装備された八本の機械製の脚が特徴の機体だ。顔はバイザーをつけて見えないが、その長髪が簪の記憶を刺激する。
 正体に思い当る前に、敵が攻撃が簪目掛けて飛び掛かる。

「やっぱ戦争は、白兵でないとなぁ!」

 【アラクネ】から伸ばされた八本脚が薙刀で受け止められ、両者の間にスパークを散らす。
 スパークに照らし出された敵の顔が、かつて姉を襲ったものと同一だと簪は気づいた。

「お前は!」
「なんだ、あの時のガキじゃねぇか!
今度こそあの世に送ってやるよ・・・姉貴も一人じゃ寂しいだろうからなぁ!」
「ッ!」

 お前程度に殺されるほど自分は弱くない、姉だってそうだった。
 汚い手に出たコイツに、負けただけだ。
 そうだ、だから自分はこいつに勝つ。勝って、

「お姉ちゃんに、謝らせてやる!」
「てめえが殺されない心配が先だろうが!」

 薙刀ごと脚を跳ね上げ、バランスを崩したところ目掛けて呼び出した荷電粒子砲を見舞う。
 両足を狙って放たれた極大の一撃は、しかし当たることはなかった。
 攻撃に使っていなかった脚を軸に大ジャンプをした【アラクネ】が、天井に張り付いて躱したのだ。

「安心しとけ、墓石は並べてやるからよ!」

 脚部備え付けのマシンガンを放ち、切れ間に脚自体の斬撃を交えて攻撃してくる。
風切り音を立てて飛び来る銃弾を受けた荷電粒子砲が爆発、さらにはシールドエネルギーを貫通した脚が顔を襲い、頬から血が伝う。
 喰らってばかりもいられない。廃材になった荷電粒子砲を投げ捨てて、こちらも新たに呼び出したマシンガンで応戦する。
 
「どうした、姉貴の方が強かったぜぇ!」
「黙れ!」

 飛び道具出現に合わせて飛び降りた敵が、再び近距離戦に転じる。間合いを詰められては狙いにくいマシンガンでもたついたところを、脚による攻撃で手元から飛ばされてしまう。
 だが砲撃が交わされた時に、不測の事態への落ち着きは手に入れている。飛んだマシンガンを追うことなく、【アラクネ】目掛けて薙刀を振り下ろす。

「お前だけはこの手で!」
「やれるもんならなぁ!」

 もちろん易々と受け止められるが、狙い通り。今度は簪の番だ。
 片手で呼び出したミサイルポッド群が簪の背後で左右に展開、一瞬のロックを終えると白煙を上げて【アラクネ】に迫る。

「―――ちぃ!?」

 【アラクネ】は簪を払いのけて脚部マシンガンで全弾撃ち落としにかかる。瞬く間に撃ち落とされ、警戒を緩めてマシンガンを下ろすが、

「そこ!」

 新たに飛来したミサイルが『後ろから』飛来する。事態を把握しきれなくなって動きを止めた【アラクネ】は格好の的だった。
 着弾の火花をあげるミサイルに合わせて、簪もまた斬りかかる。
 簪を見つけて、【アラクネ】も咄嗟の防御に出るが間に合わず、ブレード加工されていない関節を狙った攻撃で脚の2本を斬り飛ばす。

「雑魚かと思ったらやるじゃないの、眼鏡女!」

 宿敵の評価など欲しくもない。追撃せずに一旦距離をとった簪は賞賛されても、警戒を解かず、薙刀を握りこむ。

「眼鏡女じゃない…更式簪って名前がある!」
「そうかい、墓石にゃそう刻んでやるよ!」
 
 姉の無念を晴らすため、学園を守るため、そして簪自身を苦しめる原因を断ち切るため、【打鉄弐式】を駆って【アラクネ】に挑みかかっていった。





 終わり。本編でこの展開になるかは知らない。
だって、作者の即興だもの。読まれた方も意味不だろうし。
 サーシェスVSライルのオマージュ的な面が強い。
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