00の劇場版のエピローグから約20年後から物語は始まります。
大体、サブタイで誰のことかはわかるかもしれませんね。
プロローグ 天才と天災
時は西暦2092年、のちに世界への武力介入を行い、世界を変革させた私設武装組織『ソレスタルビーイング』の活動が開始される西暦2307年より、約200年前のことである。
かつての世界とは違うこの時代に、今大きな変革が起きようとしていた。
地中海に浮かぶ小さな孤島に一つの屋敷が建っている。白色を基調とするその建物は、見る人によっては画家が作品製作に取り組むアトリエにも、金持ちが避暑地に使う別荘にも見えるものだった。
どちらにしても、潮騒と動物たちの鳴き声しか聞こえない静かな孤島に住まうことを好む『彼』は、どちらとも違う人間であったし、その推測を聞いたとしても何ら興味を示さなかっただろう。『彼』の思考は常に、そんなところの一つ向こう側を見据えていたからだ。
今そんな孤島に1隻の船が到着した。
船から降り立った緑髪の訪問者は、彼のことを良く知っているが、やはりこんなところに住むのは不便だろうという思いが先に立っていた。
「……常人とは違うからこそ、こんな辺鄙なところに住もうと考えるのだろうけどね。」
訪ねてくる側としてはもう少し交通の便が良い所に住んでほしい、と思いつつ訪問者はここからでもよく赤い屋根の見える家に向けて歩き始めた。
10分ほど炎天下の中を歩き続けて、汗だくとなった訪問者だったが、ようやく家の玄関へとたどり着いた。
家主曰く『押す人間がほとんどいないから必要ない』、との理由でインターホンもドアベルも無いため、ノックで来訪を伝える。
30秒ほど待ってみるが、反応がない。
訪問者は軽くため息をつくと、勝手にドアを開け、家の中へと入る。
「必要ないといっても、最低限の設備はつけておくべきじゃないのかい?」
家そのものは広いが、何度も訪れたことのある来訪者には、家主の居場所はなんとなくだが、想像がついている。
そして、どこかからキーボードをたたく規則的な音も聞こえてきた。
家の中でも海に面し、夏の暑さを象徴する日光が一層降り注ぐ部屋に、ここに住まう『彼』の姿を訪問者は見つけた。
仕事場と同時に居間でもあるだろうか。『彼』が黙々と叩き続けるキーボードを中心に、幾つもの光を放っているモニターや、栞が間に挟まり読みかけの本、描きかけの絵画が無造作に置かれている。
本も絵も途中で置かれているところを見ると、『彼』は一つのことに飽きやすい人間なのかもしれない、と考える人間もいることだろう。
だが、その無造作さは『彼』が複数のことを同時に成立させることのできる稀有な人間故であることを、部屋の入り口から見つめる訪問者は知っていた。
部屋へと訪問者が入ってきたことを、靴が絨毯とすれる音で感じたのだろう。それまで規則的に叩かれていた音が止まり、『家主』は靴音のした方へと顔を上げた。
「…ああ、レイか。久しぶりだな、前にあったのはいつだったか。」
「やあ、イオリア。ちょうど一カ月ぶりだよ。」
『家主』イオリアはかけていた眼鏡を外すと、眉間を揉みながら『訪問者』レイへと声をかけた。
「すまないな、こんな孤島では訪問者もろくにいないので、時間が経つことも忘れてしまう。飲み物はコーヒーでいいかね?」
「できればワインがいいな。あぁ、動かなくていいよ。僕が用意するから。」
と、椅子から立ち上がろうとするイオリアを制して、レイは棚へ飲み物の用意に向かう。
「すまないな、客にお茶の用意をさせるとは。」
「構わないよ。動くのも杖なしでは厳しいんだろう?」
レイが目をやった先には、イオリアが軽く手の中で杖を遊ばせている。
「そうでもない。無いと多少不便なだけだ。」
「効率を考えれば僕が動くのが適切だろう?それだけのことさ。」
申し訳なさそうにするイオリアに、そう告げると彼は苦笑いを浮かべる。
「なるほど。だが、こんなに明るいうちから酒を嗜むとは、感心しないな。」
「相変わらず他人と関わろうとはしないのも感心しないね。」
「必要最低限の関わりはしているとも。ただ、人間の時間は有限だ。できる内にやるべきことをしておかねば、後で後悔はできんよ。」
「そうして、過労死でもしてしまったら、笑えないことだと思うけどね。」
コーヒーとワインを片手に軽口をたたき合う彼らは、緑髪の訪問者『E・A・レイ』と片眼鏡が特徴的な老人『イオリア・シュヘンベルグ』。
両名とも、世界に並ぶものがそうそういない程の学者であった。
年齢はレイが四十代であるのに対し、イオリアは既に六十代で普通ならば友人と呼ぶ関係にはならない筈である。だが、天才仲間だからか、この二人と、まだ来ていない一人を加えた三人は全く年代が異なるにも拘らず、学友であるかのように友誼を育んでいた。
「そういえば、束は来ていないんだね。晴れた日には、よく顔を見せていた気がするけれど。」
「彼女は我々以上に天才で、同時に気分野な人だよ。
規則性など求める方が間違っていると思うがね。」
「『天災』の間違いじゃないかい?」
「違いないな。」
彼らの話題となっている『束』とは、彼ら共通の友人であり、また彼らと同様世界で著名な科学者として名を轟かせる人物だった。
彼らとは唯一年齢だけが異なっており、既にその道の大成者として知られる彼らとは異なり、未だに学会などでも現役の存在だった。
もっとも、本人は滅多に学会などには顔を出さないらしいが。
「まあ、心配はいらないさ。今日は私が連絡してあるから、じきに来るだろう。それより、彼女の話をすぐに進められるように、こちらの話題の整理だけでも済ませておこう。」
イオリアはそう言うとモニターの一つを操作し、天井の映写機から壁に向けて、像を結ばせる。
本来ならばもう一人もいた方が良いのだが、降るかも分からない雨を警戒して傘を持っていくようなものであるため、ひとまず置いておくことにした。
「…進捗状況はどうなっているかね?」
「かねてから、試行錯誤を繰り返していた量子演算型処理システム『ヴェーダ』は、ようやく十%ほどが完成しているよ。残念ながら、出来ているのは基礎部分のみで、宇宙への設置はまだまだ時間がかかりそうだけどね。
太陽炉やイノベイドたちを作るには、もっと時間も環境も必要と予想されていて、前途多難だよ。」
「どの道私は間もなく長い眠りにつく。目覚めたときに計画が達成されているのならば、その過程にどれほどの時間が費やされようとも構わない。
…話がそれたな。とにかく、ヴェーダが完成さえすれば計画の開始は大幅に早められる。それを待って計画の序章、武力介入は開始される予定だ。」
「機動兵器ガンダムによる武力介入、現行兵器を大きく上回る存在、それらによる世界各国への軍事的打撃、追い詰められた各国は連合軍を結成し、ソレスタルビーイングを殲滅にかかる。」
レイがレポートでも読み上げるかのように計画の道筋を、読み上げていく。
「そして、ガンダムとソレスタルビーイングは壊滅する。後に連合国家は一つの軍隊に集約され、意思統一を図り、やがて来る異種との遭遇に備えることが出来る。
…大まかな流れはこの様に僕らは考えているけれど、実際にはやってみないとわからない。連合軍が出来たところで、意思はまとまるかどうか。
無謀という言葉がぴったりだね。」
「意思統一のために、武力介入の間にばらまかれたGN粒子によって、革新者(イノベイター)が出現することも予想しているが、これも希望の範囲でしかない…。
元よりこの計画は、私の勝手な妄想をもとに始めたものだ。無謀なことは重々承知だとも。どんなに綿密な計算も、完璧な計画も一つのイレギュラーで崩れ去ってしまう。まして、相手が世界では、起こること全ての想定をするなど、奇跡のたぐいだよ。」
自身で奇跡と語るような計画を進めるのには、彼なりの理由がある。
いずれ来るであろう、宇宙からの訪問者。そして、人類の外宇宙への進出。どちらも避けられない事実を前に、イオリアはある懸念を抱いていた。
即ち『人類は統一されることなく、異種との対話を行えるのか、そして地球を離れられるのか?』ということである。
時代は22世紀を目前に控え、有名なネコ型ロボットの誕生もおかしくない。
しかし、あの夢にあふれたフィクションと同じ世界はいまだ作れてはいない。そればかりか、世界各国は第二次世界大戦が終わったころと変わらず、地上の支配権をめぐって争い続けている。技術の進歩とは名ばかりで、進んでいるのは無人偵察機や無人爆撃機、効率よく大国が人を殺せるようにする道具ばかりである。
だからイオリアは考えた。このままで良いのかと。
答えを求めて幾度となく繰り返された計算、思考、計算、思考、計算……
だが、世界に誇れる頭脳を持った彼でなくとも、その答えがいつでも〈NO〉でしかないことは分かりきっている。それでも彼はこの星を愛していた。太陽系で青く輝き、唯一生物の住むこの星を。
「…人は変わらなければならない。変わらなければ、世界とは向き合えない。」
「そのためにどれほど多くの人を巻き込むことになるのか、想像もつかないけどね。」
「………。」
「…すまない、言い方が悪かったね。君を責めているわけじゃないんだ。
ただ、計画が動き始めて20年が経った今でも、どうにも割り切れることばかりではなくてね。」
話題が話題であるだけに、二人の間には陰鬱な空気が漂う。
既にレイもイオリアの計画には最初期から賛同し、この20年を共に計画を進めるために捧げてきている。今更、異論をはさむつもりは毛頭ない。
それでも、時折頭をかすめてしまうのだ。自分たちがすることは、平和に生きる人々にはテロ行為でしかないということが。
そして、それ以上にこの計画は完成されなければならないものであるということも。
しばらくの沈黙ののちお互いに次の言葉を紡ごうとして、口を開けては閉じるという行為を数度繰り返したころだった。海岸の方から風を切り裂く音と何かが着地したと思われる轟音が響く。
「どうやら、彼女も来たようだね。」
「来るたびに砂浜を掘り返されては自然が崩れるというのに。変わらないな、彼女は。」
二人がそうつぶやいたと同時に、海に面した窓から小柄な影が飛び込んできた。
「やーやー諸君、皆のアイドル『束さん』こと、『篠之野束』さんだよ!」
飛び込んできた人物はエプロンドレスにウサミミカチューシャという、どこから突っ込んだらいいのかわからない服装と、まだ10歳にも満たない容姿を特徴にした子供だった。
そんな人物を前にしても、残りの二人はさして動じず、彼女を出迎えた。いや、正確にはイオリアは少々疲れた顔をしているが。
「…人の庭にクレーターを作る趣味はそろそろやめてもらえんかね、束。」
「む、趣味じゃないよ、実験だよ!」
「実験?砂浜に突っ込んでくる必要がある実験なのかい?」
「その通り!開発中のISに搭載する装甲の耐久値実験だよ!」
『IS』
それは篠之野束が研究しているマルチ・フォームスーツ兵器である。ビーム兵器の実装や、独自のエネルギーシステム『シールドエネルギー』を使った防御、など多数の新装備を備えた最新式のマシンであり、宇宙空間での展開も想定されている。
完成すれば現在の兵器のほとんどが、追いつけない程の性能になるだろうとまで予想されるものだ。最も開発者である束としては、このマシンを兵器として作っているわけではなく、シールドエネルギーの開発ついでに思い付いた機能を色々と付けていたら、兵器になっていたというのが事実であったりもする。
ただし、今のところは設計途中であり、彼女の言うように実験などを繰り返している途中であった。
「だからといって、人の庭にクレーターを量産する理由にはならんのだがね…。まあ、君の事だ。言ってやめるタイプではあるまい?」
「勿論だよ!」
傍で聴いていると熱血系のような台詞だが、彼女は興味があるものに全量投球しているだけなので、また飽きるんじゃないか、とレイは声には出さずに思った。
(前は綺麗なホットケーキを焼くことに1カ月拘っていたから、料理関係に目覚めたと思ったら、次は未知のシステムの研究とは。イオリアは予想していたみたいだけど、どんな思考をしているのか…)
そんな彼の心境を知らず、束はニコニコ笑ってイオリアと会話している。
〈どこから持ってきたのか分からないが、いつの間にかカップの中に氷山が出来るほど砂糖を入れたコーヒーを片手に持っている。〉
「やっぱりエンジンを別なものにするべきかなー、とも思うんだよね。」
「だが、あれ以上に火力が出せるのは核か、私の理論上設計可能な太陽炉位のものだろう。」
「そうなんだよー。でも核は壊れたときの影響が怖いし、後よくある展開だし、太陽炉は木星に行かないと作れないって話だからね。」
「結局君の進めているのが一番というわけだ。」
「もちろん、束さんの研究だからねー」
学門的な面でも話の通じる二人は、お互いの研究課題への意見交換も行う。
ただ、今日はイオリアが彼女を呼び出したはずなのに、要件になかなか入らない。
無駄な引き伸ばしをイオリアは好まない筈なので、レイは不思議に思っていたが、特に口は挟まなかった。
しばらくして、話すことにも飽きたのか、束の方から水を向ける形となった。
「それでイーちゃん。今日はイーちゃんから用があるって連絡してきたから、急いで飛んできたんだよ。何の用なの?」
「ああ、それなんだがね。…言いにくいことだが、実は…」
「うんうん♪」
「君のISの開発を止めてくれないか?」
彼のその一言で場の空気は一変した。束は先程までと同じく笑っているが目が笑っていない。そして、ウサ耳が細かく痙攣している。
これは彼女が不機嫌であるサインであり、この時の彼女に関わった為に、ストレス解消として実験につき合わされたことがレイの記憶には何度もあった。
一番ひどいものだと、紐無しバンジージャンプをやらされそうになったことだろうか。
「…ちょーっと、冗談にしちゃキツイよ、イーちゃん?」
まさか、そんなことを言い出すとは思っていなかった為、レイは二人に比べて反応が遅れた。
流石に老人のイオリアにまで虐待まがいの行為はしないと思われるが、束に常識は通用しない。
「イオリア、いくらなんでもそれは…、彼女にとって受け入れ難いことじゃないのかい?」
「分かっているとも。その上での頼みだ。」
明らかに不機嫌な様子の束を見ても、イオリアは眉ひとつ動かさずに彼女の視線を受け止めている。いや、正確には足の間に立てた杖を握る両手がわずかに震えている。既に高齢のイオリアに過度なストレスは、やはり体にこたえるらしい。
「とりあえず、理由をきかせてほしいかな?」
「君と私では人類の宇宙進出に対しての考え方が違う、それだけのことだよ。」
「束さんは宇宙に人類が進出すれば、人は新たな道を開けると思ってるよ。」
「君はそうだ。だが私は、宇宙に進出する前に人類が1つにまとまることが必要だと思っている。
そして、君のISが女性にしか使えないものとして広まれば、確実に人類は新たな分裂を体験することになるだろう。そんなことになれば人類の統一など夢のまた夢になってしまう。だから、君には計画を諦めてもらいたい。」
その言い分にレイはとりあえずイオリアの思いは理解できた。だが、同時に理解できないことがあった。
なぜ、今の、既にISの開発が半ば以上進んでいる今、こんなことを言い出すのか。止める機会はいくらでもあったはずなのに。
疑問が頭の中に渦巻いていたが、それよりもレイは束がすんなり要求を受け入れるとは思えなかったことが、心配だった。
「イーちゃんは心配しすぎだね。人は宇宙に出れば新たな可能性を示してくれるはずだよ。束さんは人の可能性を信じているよ。
第一、男女なら今だって不平等じゃない。逆になるだけだもの、大したことないよ。」
「変化には犠牲がつきものだ、良くも悪くも。レイとも話していたが、私の計画でも多くの犠牲が付きまとうだろう。これに君の計画がくっつけば、何が起こるかもわからなくなってしまう。それは避けたいのだよ。」
「ISには関わってないから不確定要素を恐れて、自分の計画への影響が心配なのはわかるけどね。それは束さんがISの開発を止める理由にならないよ。逆によい方に転ぶかもしれない。犠牲も同じだよ、結局終わってみないとわからないじゃない。」
二人の意見はなかなか一致しない。ISの存在が不確定要素だとするイオリアと、その存在が状況好転につながるかもしれないとする束。
目指すのは共に人類が1つにまとまることだが、お互いの計画への妥協は出来ないのだと思われた。束がイオリアに計画をあきらめろ、と言いださないことが奇跡的だった。
徐々に、特に束の機嫌がさらに悪くなってくる。レイは、これ以上2人の空気が険悪になることを避けるために、口をはさんだ。
「・・・イオリア、君たちの意見が出たところで、僕からも1つ聞きたいんだ。」
「何だね?」
「どうして今になってこんな話をするのか、だよ。IS開発の話は1年前からあった。彼女が世界に発表するといっていた時期も、迫ってきている。今更過ぎる気がするんだよ。」
「それに関しては、今日来てもらったことと理由が同じだ。」
そう言うとイオリアは机の引き出しから、厚い紙の束を取り出して2人に渡してきた。
「これは?」
「彼女の説得が出来なかった場合、私が彼女の計画に便乗できるように考えてきたプランだよ。あまりにも非常識かつ、非現実的なのでここまで二人にも内緒にしていたのだがね。」
そこに書かれた内容には、レイも呆れざるを得なかった。
それは、ISや太陽炉などとも比べ物にならない程、想像の域に踏み込んだ物。
『タイムマシン』の基礎理論と設計図だった。
「よりにもよって、タイムマシンとはね・・・。」
「これを使って、今の時代に太陽炉を届けさせるっていうの?
さすがに無理があると思うな。」
「どちらの計画も断念はできない以上、どちらも進めるしかないだろう?
そして、考えついたのがこの計画だよ。タイムマシンを使って太陽炉をこの時代に持ち込み、ISの中に搭載させることで、お互いの計画のキーパーソンとする。
君のISによって起こる分裂の解消もやってくれるかもしれない。
いや、うまくいけば、はるかに早い時間で人類の統一もなしえるかもしれない。犠牲も少なく済むのかもしれない。そう思ったのさ。
つまりは束君の言う人の可能性にかけるやり方だよ。」
「他力本願にもほどがあるね。
仮に、その計画はよいとしても、タイムマシンはどうするんだい?
はっきり言って太陽炉より、よほど実現不可能な代物だろう?」
「無論承知の上だ。私も試作品すらできていない。」
「だったら、やっぱり無理なんじゃないのー?」
今度は束が訝しげに尋ねる。彼女もこんな突拍子のない話は初めてなのだろう。先程までの怒りも薄れてしまったようで、ウサ耳がフラフラと揺れている。
「あくまで希望だ。予定としては今日この日に届くよう、書置きのプログラムを残して未来に残すのだよ。
もしかすると、計画完遂後から何百年か何千年かも先に見つけた誰かが、これを見つけて送ってくれることを祈る、そんなメッセージボトルのような計画だよ。」
「……イオリア、君の執心ぶりはわかるけれど、流石にこれは、」
あまりにも非現実的だろう、と続けようとしたところで
眩い光が海岸の方で炸裂した。
「何だ⁉」
「束さんが見てくるよ!」
言うなり束は、元々自分が入ってきた窓から束が飛び出して行く。
「…束といい、今の何かといい、ここの島は墜落用のガイドでもついているのかい?」
「さて、私はそんなものを書いた覚えはないな。だが…」
呆れるレイの横で、イオリアはそう言葉を濁すと、
「祈りは届いたのかもしれんな」
そう言って、どこか満足したような笑みを浮かべる。
彼女が戻ってくるまで、レイは彼の傍らで窓を眺め続けた。
その彼らの傍を一握りの粒子が通り過ぎ、やがて雪のように溶けて消えた。
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第一章はほぼ完成しているので、近日中に投稿します。