IS×00 夢を目指す者   作:王天君

35 / 62
これが年内最後の更新になるかな?

新話投稿です。


第二十五話 空回りの優しさ

 ターゲットは一夏。

 その言葉に誤りなく、俺目掛けて向かってきた【ガラッゾ】は両手に10本の光条を生やす。爪にも見えるそれを、予想を飛び越えた速さで迫って、俺に向けて振り下ろしてきた。

 後方に庇った鈴は【ガラッゾ】の速度に反応が間に合わずに動きが遅れている。

 爪、それでなくとも近距離武装と判断した俺は、【GNブレイド】を2本とも受け止めに回して対処する。

 壁にすべく構えた【GNブレイド】と、敵の光が接触した箇所から激しいスパークが出て、その光の正体がビームサーベルだと俺に教える。敵のスペックか攻撃の勢いか、俺の防御をものともせずに切り刻まんと近づく【GNビームサーベル】に押され、一歩足が下がる。

 

『反応は中々ね! でもそんな防ぎ方じゃあね!』

「くっ!」

 

 それでもどうにか踏みとどまり、こちらも力で振り払おうとしたときに【ガラッゾ】がさらに動いた。受け止めている10本の【GNビームサーベル】をそれぞれ5本ずつ、指先を揃えて束ねる。

 10本の長剣、【GNビームサーベル】が、2本の直剣、ビームソードとでも呼ぶべき形に変わった。

 さらに輝きとスパークを増した剣に嫌な予感を覚え、後退しようとしたが遅かった。

 それまでの抵抗が嘘のように【GNブレイド】へ【GNビームソード】が滑り込む。一瞬の内に【GNロングブレイド】は、鈴の青龍刀をなぞるように両断された。

 かろうじて【GNショートブレイド】は切れ込みが半ばまで達したところで斬り合いから外れたが、もはや剣としての用をなさない。

 

『だから言ったじゃない。 そんな防ぎ方で大丈夫かってね!』

「たかが2本!」

 

 もはや鉄屑の【GNロングブレイド】を投げ捨て、【GNショートブレイド】は腰へとマウントし直す。

 実体剣では不利ならばと、両肩から【GNビームサーベル】を抜刀。武器破壊に油断しているであろう【ガラッゾ】めがけて切り払った。

 だが、

 

『敵の油断を狙うのはいいんだけどー・・・行動が直線的すぎよ!』

「ごはッ!?」

「一夏ぁ!」

 

 その切り払いを予知していた方のように、【ガラッゾ】は機体を横に回転しながらしゃがむだけでかわしてみせる。それどころかしゃがんだ姿勢から、【エクシア】の胴部に蹴りを入れて反撃してきた。

 ただの蹴りといえど侮るなかれ。【GNシールド】で受けていた衝撃砲など比較にならない威力で大きく吹き飛ばされる。

 【GNビームサーベル】は離さなかったが、庇っていた鈴の近くに飛ばされたところで体勢を立て直す。

 

「一夏!ダメージは!?」

「大丈夫だ。キッツい一撃もらったけど体は頑丈だからな。

 鈴が退避する時間稼ぎくらいはって思ったんだが。」

「馬鹿、あたしだってまだ戦えるわよ!

 一人で何でも解決しようとしないでよ!」

「そうもいかないんだよ。俺のせいで敵はやってきてるんだからな。」

 

 【甲龍】の手でガクガクと揺さぶる鈴に不安を与えないよう、表情は平静を取り繕った。

 【エクシア】を蹴飛ばした【ガラッゾ】は追撃してくるでもなく、手を数回開閉して首を回す。余裕綽々の姿に腹が立つも、今考え無しに突っ込めば機体が【GNブレイド】の二の舞になる。

 焦りを悟られないように、静かに立ち構える。そうして敵の出方を探りながらも、顔に出さない部分で焦燥と警戒にまみれつつ、今後を思案する。

 

(なんて機体だよ。近距離だけに限ったら性能は【エクシア】より上だ!

 鈴と一緒でも勝てるか―――)

『来ないならまたアタシから行っちゃうわよ!』

「ちっ!」

 

 考える余裕すら与えようにビームサーベルの両手で襲い来る。まともに受ける愚を繰り返さないために、思い切って空中へと飛んだ。振り切った一撃をかわされても【ガラッゾ】は止まることなく一夏へと向かってくる。

 つかず離れずの距離を保ちながら2機は牽制し合い、空中に剣閃の火花を散らせた。

 

 

 

 

「一夏、あたしも――」

『キミは動かないでもらおう。』

 

 鈴が空へと昇った二人を追おうと力をこめると、いつの間に接近していたのか、リヴァイブと名乗った者の乗っている【ガデッサ】が【エクシア】と似たタイプのビームサーベルを鈴の喉元へと突き付けていた。

 IS無しに触れれば人間の体など容易く焼いて溶かすビームサーベルが眼前にあっても、鈴は強気な態度を崩さない。

 

「アンタがあたしの相手? いいわよ、やってやるわ!」

『じっとしていてくれ。ヒリングとの戦いを邪魔しなければ危害は加えない。』

「勝手に人の学校にやってきといて偉そうに。」

『勝負に横入りが無粋なのは承知だよ。それでもこちらも仕事でね。

 最低限として、観客や部外者には危険を及ぼさない。織斑一夏と戦うのを邪魔さえしなければ、という条件付きでね。』

 

 生真面目に鈴の言葉へ対応してくれるリヴァイブは良い人柄なのだろうが、落ち着き払った物言いは今の鈴にとって火に油を注ぐ様なものだ。

 

「一夏がターゲットって言ったわね。1回しか聞かないから言いなさい。何をするつもり?」

『僕らと戦ってもらう、それで彼の中にある資質を、そして危険性を見極めるのさ。』

 

 核心を伏せた物言いで多くを語らないリヴァイブに鈴がやることはただ一つ。二度も質問を繰り返すほど気長ではないし、一夏ともう少しで決着がつきかけたのを邪魔された恨みもある。

 

「あっそ、だったら力づくで詳しく聞かせてもらうわよ!」

『交戦は・・・自衛のためではやむを得ないか。』

 

 両手のクローを展開した【甲龍】に、【ガデッサ】もビームサーベルを手元に戻すことで交戦可能な状態へと移行する。突きつけた脅しではなく、斬りつけることも可能な体勢だ。

 

『殺しはしないつもりだが、死んでしまっても文句は言ってくれるな。』

「アンタがね!」

 

 獣のように足のバネとスラスターを使って飛び掛かった鈴のクローをリヴァイブのビームサーベルが受け止めた。

 片手のクローはビームサーベルで受け止め、反対の手は【ガデッサ】が突き出した手と恋人のように指を絡めあうが、それは逃げを封じる鎖だ。お互いを逃げられないように掴み合わせ、先に相手の手を破壊せんと力が込められる。

 

『剣に爪で挑む・・・人類史への反逆だな。。』

 

 軽口には答えずに、両手に加える力だけを増やしていく。手同士とは逆のビームサーベルと干渉しあうクローも溶けることなく刀身を捉えて離さない。

 【甲龍】のクローは先端が武器使用可能なように研磨されて、切れ味保持の加工まで施してある。【GNブレイド】に斬られたスパイクとは違い、完全に武器使用が念頭に置かれているのでビームサーベルでもすぐには溶断できない。

 火花を散らしても持ちこたえるクローにリヴァイブが少し感心したような声を漏らす。

 

『シールド以外でも【GNビームサーベル】と干渉できるのか。200年前の技術もやるものだ。それでも、この私と【ガデッサ】の敵ではないけどね。』

「武器の性能だけで勝負は決まんないわよ!」

 

 両手のクローを使った物理攻撃を体の上方に集中したのは、有効打を求めたからではない。敵の注意を前にある2つに向けさせて、本命を隠すためだ。

 両手を使わせると間髪入れずに、衝撃砲の照準を【ガデッサ】の無機質に光るアイレンズを備えた頭部へと合わせた。クローにビームサーベルと手で対応していた【ガデッサ】は、【甲龍】の背後で動いた衝撃砲発生装置にも気づかない様子だ。

 

(一発でその偉そうな鼻をへし折ってやるわ!)

 

 的確に敵に合わされた衝撃砲が空気を噴き、リヴァイブの意識を刈り取るべく顎へと撃たれた。そのまま行けば頭部装甲を砕いて敵の顔を露出させるか、昏倒させるはずの攻撃は、

 

『これが狙いかい?』

「嘘!?」

 

 【ガデッサ】が顔を仰向けに背けることで虚空へ飛び去った。

 

(こいつ、衝撃砲の弾を見切った!?)

『太陽炉搭載型と互角のたたかいを演じる相手だ。機体スペックはともかく技量まで過小評価はしないよ。』

 

 告げた【ガデッサ】が掴まれていた手を振りほどき、新たなビームサーベルを掴んで光の刃を形成させる。

 

『こんな風にね。』

 

 そしてあまりに無造作に、その凶刃をもって【甲龍】を切り裂いた。

 

 

 

 

「鈴!?」

 

 足元の地上で【甲龍】と【ガデッサ】が戦闘状態に入り、鈴が斬られたのを見て一夏が驚きの声を上げる。狙いは自分であるなら、片方を引き付けていればもう片方は監視や牽制程度しかしないはずだと見越していたのに、いったいなぜ戦っているのか。

 腕全体を一本の槍のように突き出した【ガラッゾ】のビームサーベルに、こちらもビームサーベルを合わせて直撃からそらす。

 鈴が敵から攻撃を受けたことに、【ガラッゾ】から攻撃を受けたときとは別の焦りが生まれる。

 

(俺は何をやってるんだ! 最初からこいつらを学園の外、海にでも連れだせればこんなことには・・・!)

 

 よろしくない環境に気をとられ過ぎたのだろう。沿わせたビームサーベルに重みが無くなったのを感じて前を向くと、【ガラッゾ】の姿が消えている。

 

『上方注意ね!』

「あがっ!」

 

 ぶつけ合わせていたビームサーベルの部分を中心に前回りをし、俺より一段高い位置に陣取った【ガラッゾ】が踵落としに似た要領で蹴りを頭に叩き込んできた。

 

『人の心配する前に、坊やは坊やの心配をしたら? アタシがいるのに他の女を見られたら妬けちゃうわ。』

「・・・気が利かないのは性分なんだよ。家族にも友達にも怒られてばっかりだ。」

 

 少しふらついたが戦闘続行に問題はない。まだやれる。

 また正面から斬りつける【ガラッゾ】の剣を受け止め、今度は目を離さない。

 剣を介して分かったが、【ガラッゾ】は性能面だけなら【エクシア】をはるかに凌駕している。こうしてビームサーベル同士を押し付け合うパワーだけでも、気を抜いた瞬間に振り払われることだろう。

 【甲龍】のように一時的な能力上昇ではなく、元からのスペックがどれも高水準にまとまっている。だから【エクシア】でも【甲龍】に対して程の力を使わずに受け止めが効くが、反面どこかの装備を壊しても性能が下がるわけではないのが長所だと見受けられる。

 

(束さんが作った機体なら、【アストレア】と同じでどこかに突破できる弱点の1つ2つがあってもおかしくないはずだ。)

 

 【エクシア】なら【アストレア】より機動性と近距離適性が上がる代わりとして、防御力系統及び各装甲や機構の強度が低下する。【甲龍】と3度目の衝突時に負担をかけ過ぎた左手は、今もそのせいで動きに違和感を覚える程度に支障が出てきている。おそらく解放されていない他の形態も、上昇と同時に下降するパラメーターを持っていることと思われる。

 俺が近距離を得意としていても【アストレア】が価値を持つのはその辺が理由だ。つまり篠ノ之束の設計の癖に『完全ではない』という部分が含まれているなら、【ガラッゾ】にもどこか欠陥は存在してもおかしくないのだ。

 

(俺にだけ欠陥機を押し付けた・・・ってことはない・・・よな。)

 

 あの人の気まぐれぶりを思うと、正解を予想したところで当てるなどまず無理なので、この仮説も希望的観測に過ぎない。

 しかし鈴に気をとられながらでも。【ガラッゾ】の挙動や制動、バランサーに至るまで細部を注視しても問題がある部分は見当たらない。見えない部分に欠陥があるのか、近接以外は何もできなくて、防御面が弱い【エクシア】と同じ問題を抱えていたりするのか。

 

『だ・か・ら、アタシから気をそらさない!』

 

 剣から一夏が思考を巡らして、注意が向いていないのを鋭敏に感じ取ったヒリングがドライヴの力を引き上げて受け止めていた剣ごと【エクシア】を地面へと叩き落とした。

 狙ったように鈴のすぐ近くへ落ちるも、今度は敵の力も予想している。激突寸前で粒子を放出、脚から着地することでダメージはほぼなく済ませる。

 

「鈴、無事か!?」

「ぜんぜん平気よ。一回斬られただけ。」

 

 斬られた後もまだしばらく戦っていたらしい鈴が横目で一夏を確認すると、強気に言葉だけを送ってきた。

 なんでもないことのように話す鈴の【甲龍】には、右肩から左腰にかけて熱でザックリと焼き切られた線が残っている。体の構えもその傷を庇うようにしていて、鈴の言葉ほどに軽いものでないことは窺い知れた。

 一定の距離をとって対峙していた【ガデッサ】の隣に【ガラッゾ】が降りたち、奴らが現れた当初と同じ位置取りが再現された格好だ。

 

(素であれだけの力が出せる奴に近距離でこだわっても勝ちは薄いよな。【アストレア】の出番をここで使ってしまうか?

 けど武装の性能にはまだ難があるし、【エクシア】位に使えるのはほぼない。決め手になるかも未知数だ。)

 

 しかもまだ後衛には【ガデッサ】が控えている。鈴が戦っていたようだが、あれ一機でも【ガラッゾ】と同等の性能なだけで楽に勝てないくらいは分かる。

 やはり、こいつらは強敵だ。装備からして遠距離型の【ガデッサ】だけでも、これ以上は鈴と戦わせるわけにはいかない。入試の時のように命がかかるかもしれない戦いに付き合わせる、そんな危険は冒させられない。

 だが鈴はやりだしたら止まることはないだろう。鈴の性格からしてどう言い方を変えても、納得のできないうちは下がってはくれない。

 

(手荒いが、これしかないか。)

「鈴。」

 

 剣を構え直す動作に重ねて、鈴に呼びかける。

 動揺を出すな。ただ静かに、まだ隠し手があるように敵に警戒させろ。

 この戦闘始まって一番のハッタリをかますために、構えから力みを抜いていく。【ガデッサ】と【ガラッゾ】も空気が変わったのを感じ取ってか、緩めていた全身に再び力が入ったのが分かる。

 俺とヒリングたちの動きだけの牽制に気づかない鈴が振り返る。

 

「なによ、いち―――」

 

 その後の行動は鈴だけでなく、ヒリング達も想像していなかったことだろう。振り返った鈴の言葉途中で、彼女を抱いて後方へ、自らが出てきた控室へと全速力で飛ぶ。

 あれだけ攻撃していくような雰囲気を出していただけに、ヒリング達も動き出しが遅れる。

 

『あ、こら!逃げるな!』

 

 そんなことを言われて逃げない奴はいない。追いつかれる前に控室のIS射出口へと機体を奔らせた。

 

『追いかけっこのつもり? 逃がさないわよ!』

『いやヒリング、追わなくていい。』

『なによ、リヴァイブ。見失ったら面倒じゃない。』

 

 追おうとしたヒリングをリヴァイブが止めている。疑問は尽きないが、速度を出して控室へと急いだ。

 一夏達が控室の射出口に到着して振り返っても、2機はアリーナ中央に陣取ったまま動かなかった。

 

 

 

 

 本来出てくるためにある射出口の入り口へ、一夏は鈴を投げ入れた。

 抱きかかえられた衝撃に呆けていた鈴は自由落下、満足に受け身も取れず床を転がる。

 

「鈴、ここでじっとしててくれ!」

 

 それだけ言い残すと一夏は射出口に設置された非常用シャッターを動かす。

 重々しい機械音と共にシャッターが降りはじめ、アリーナと控室を遮断する。

 

「ま、待ちなさいよ!一夏!」

「来るな!」

 

 それでも代表候補生。直ぐに立ち上がって一夏の元へと駆けて来ようとする鈴。

 当たらないように最大限注意して、【GNショートブレイド】を鈴との間につきたてる。

一夏が攻撃してくるとは予想もしていなかったらしい。鈴がたたらを踏んで立ち止まった。

 理解できない、そう深く傷ついた顔をする鈴に心が痛むが動揺を顔には出さない。

 

「一夏、どうして・・・あたしはまだ・・・。」

「・・・奴らの目当ては俺だ。俺だけ戦えばいい。だから鈴はそこにいてくれ。」

 

 控室側のシャッター昇降ボタンを破壊し、完全に降りきったのを確認してから開けて出てこられないよう、基部自体も【GNビームサーベル】で壊しておく。

 少なくともこれで鈴は敵から遠ざけられた。

 アリーナにつけられているシャッターなら、ISの多少の攻撃くらいではビクともしないはず。鈴が出て来ようとしても時間は稼げる。

 後はあの二人をIS学園から引き離さなければ。

 

 

 

 

 やるべきことを再確認した一夏の耳に、ヒリングの退屈したような声が届く。

 

『ちょっと、さっさとしてくれない?早く戻ってきてくれないと、観客襲っちゃうわよ。』

「やめろ!」

 

 鈴を逃がしたところだというのに観客から被害が出ては元も子もない。

 一息に距離を詰めて【GNビームサーベル】を、今にも観客席を向こうとしている【ガラッゾ】へ叩きつけた。

 【ガラッゾ】も【GNビームサーベル】を再度出力、交差させて受け止める。

 

「みんなを巻き込むな!狙いは俺だろうが!」

『アタシら放置してくれたのは坊やでしょ。』

 

 どこか憮然とした声音でヒリングが応じる。追うのを止めていたリヴァイブに何か言われたのだろうか?

 

「場所を変えさせろ!俺はもう皆を巻き込みたくないんだ!」

『・・・だってさ、リヴァイブ?』

『許諾しよう。こちらとしても注意散漫で本気を出してもらえないと仕事が進まない。』

 

 後ろに控えていたリヴァイブの【ガデッサ】が動いた。

 腰につけてあったサーフボード状のパーツを外して、腰だめにアリーナ上空へと向けて構えた。

 箱の爆発で空いた穴は既に埋まったシールドに向ける構えから理解する。【ガデッサ】が持つものの正体は砲撃用の大砲だ。

 アリーナ上空、学園を覆うシールドに向けられた先端が三辺に分岐、圧縮粒子の光が砲口に溜まり始めると、うねるようなパルスが砲身全体へと巻きつき始める。【アストレア】の【プロトGNバズーカ】とはかかる粒子充填速度も圧縮率もまるで比較にならない高性能さだ。

 充填を終えた大砲を構える動作に頭の奥が警鐘を鳴らす。

 

「まさかお前―――」

『ここが最短の脱出経路だ。異論は認めない。』

 

 何をしようとしているか、瞬時に察する。止めようにも一夏が集中を解けば、【ガラッゾ】が容赦なく機体を切り裂くことを暗示するように、手にビームサーベルが現れる。

 動けない一夏の前であまりに無造作に、【ガデッサ】はトリガーを引いた。

 

『リヴァイブ・リバイバル。【ガデッサ】、【GNメガランチャー】撃つ。』

 

 大砲――リヴァイブの言葉を借りるなら【GNメガランチャー】――から極大の光が躍り出る。地上からシールドまでに空いていた距離を1秒とかからず無にしたその光が、シールドに激突。箱がぶつかった時以上の衝撃がアリーナを襲う。

 間もなく【GNメガランチャー】から放たれた光はシールドを貫き、IS1機どころか5機は楽に通れるほどの大穴を開けて空の彼方まで飛んでいった。

 

『行くよ。・・・外でないと僕もやりにくいしね。』

『坊や、もし逃げたりしたら―――分かってるわね?』

「分かってる。逃げたりするかよ。」

 

 腰に【GNメガランチャー】を戻したリヴァイブの【ガデッサ】と、【GNビームサーベル】を消したヒリングの【ガラッゾ】が大穴に向けて昇っていく。

 一睨みをくれて念を押すヒリングにひるむことなく応え、一夏もその後に続く。

 しかし向かおうとしたところで、通信が教員席から飛んできた。

 

『織斑、学園外でISを使用することは法律と条約に引っかかる。学園から出るな。』

「・・・織斑先生、生徒を犠牲にしてもいいと?」

『違う、今教師が学園のISを全機起動させにかかっている。順次避難も始めている。

 貴様のなすべきことはそこで時間を稼ぐことだ。すぐに応援を向かわせるから喰らいつけ。学園上空からの瓦礫程度なら観客席のシールドで防げる。気にせず戦え。』

「・・・」

 

 千冬姉の提案は正しい。

 一夏がこの辺りで時間さえ稼げば先生たちが到着して、性能差も数で巻き返せるだろう。下へ向かわせず、このIS学園上空で戦えば皆も被害を受けずに済むかもしれない。

 なにより条約や法律に抵触すれば【アストレア】を巡って外交問題にまで発展しうる。

 それでも、それでもその提案は呑めない。

 

「ゴメン、千冬姉。これは俺の戦いだから。

 箒たちだけじゃない、先生たちも含めて俺は皆を巻き込みたくない。巻き込めないんだ」

『待て織斑!行くな、勝手な行動をとるな!

 織斑、織――ら、――お――――ら、――――、一夏ぁ!」

 

 最後だけ徐々に遠くなる声の中ではっきりと聞こえた声は、教師ではなく姉として心配してくれたことが分かったが、一夏は迷わずに通信を切る。

 鈴に巻き込めないと言った。千冬姉や箒にセシリア、簪と本音、それに他の学校の誰かだって巻き込みたくない。

 みんなを守りたいと誓った俺が、自分絡みのことでみんなに迷惑をかけたり、あまつさえ怪我をさせたり命を失わせるようなこと。

 それだけはあってはならない。

 孤独な戦いに心細さや迷いはあったが、それを振り捨て4本の剣を失った【エクシア】と共に穴の外へ出て、先を行く【ガデッサ】たちの後を追った。

 

 その先は海。

 太平洋と一般に呼称される大海が広がっている。

 




以上、第25話でした。

 元は【GNブレイド】折られたらそこで鈴を逃がす段取りだったんですが、リヴァイブ達の強さ描写が足りないというかリヴァイブが完全に空気化してたので少し伸ばしました。
 前回の後書きで今話が戦闘少なめとか言いましたが、そんなことはなかった。

 次回にも海上に場を移した一夏の戦闘シーンを描写するかもしれませんが少なくなるか多くなるか。
 千冬が言ったようにIS学園の外でISを使うと法律だの条約だのに引っかかるので、一夏を追う人達にも覚悟や考えが必要になります。原作と異なった分でそれぞれ考えないといけなくなるのでそのあたりが次回は主になるかもしれないです。

 ではこのへんで。

感想・質問・評価、何でもよろしくお願いします。

――年末でもやるよ!どうでもいい余談――
 まだ一回戦で一夏もヒリングも全力は出していません。
 【ガラッゾ】は言わずもがなで、一夏も【アストレア】を使っていませんから。だからと言って、一夏が思いっきり有利になることはないですが。
 鈴も今回はクローで戦いましたが、まだ苦し紛れの手は考えてあるのでもう一度参戦することはあってもクローばっかりでは戦いません。

皆さんご存知ですか、【ガデッサ】のビームサーベルって緊急用だそうですよ。原作では登場する度に使ってたような・・・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。