今回は戦闘を少し入れた後に千冬と束の方が描写されます。またそれに合わせて前倒しで新たなオリキャラが登場します。
どんな役割を持ったキャラかはこれからも掘り下げていく予定。
世界3大勢力の2つ目についてもここで話します。というか設定をいくらかまとめて書いておこうかな。
そして最後に・・・
『フォーメーションA31。』
『はいはーい。』
ビームサーベル片手の指示と思しきリヴァイブの言葉によって、ヒリングが放っていた【GNバルカン】を撃つのを止めたかと思うと、両手の【GNビームサーベル】を輝かせて一息に距離を詰めてきた。
一夏も応戦する為に左手を腰に回し、【GNビームサーベル】の柄を隠し持つ。そして折り畳んだ【GNソード】で高速で飛んできた【ガラッゾ】を受け止めた。
×を描く形に重ねられた【ガラッゾ】のビームサーベルに、【ライフルモード】の【GNソード】が眩いスパークを放って一夏の目を灼き、熱量の凄まじさを物語る。
『そおれっと!』
踏みとどまろうとする一夏をヒリングは拍子抜けしそうなほど軽い掛け声で腕を広げて振り払い、一夏の背中側へと切り抜けた。
『アタシにばっかり集中して大丈夫?』
バランスを崩して傾いた機体を立て直そうと躍起になる一夏の眼に、黒い何かが新たに飛んできたのが目に入る。ガードも迎撃もできないのをおして、傾いた無理な姿勢から更に傾けることでどうにかよけることに成功した。
その何かをかわし切ったことに安心する暇もなく、【ガデッサ】が【GNビームサーベル】で一夏に斬りかかってくる。
『その機体と託された君の資質、私達の目で量らせてもらう。』
「何のことだ!」
リヴァイブが淡々と事実だけを述べるように静かに言葉をつづけるが、その間にも【ガデッサ】のビームサーベルは勢いを弱めることなく、【エクシア】の身を切り裂くためににじり寄る。
『その機体も、そしてこの戦いも、すべては計画を遂行するための一部に過ぎない。』
「何の話だ!?」
『君もいずれ知ることになるさ。【ガンダムアストレア】に隠された機能とその目的を。
だがそれに見合う力がないというのなら―――ここで渡してもらおう!』
「冗談!」
気になることは多々あっても、斬る。
間合いを計って斬りつける【エクシア】や【ガラッゾ】とは違い、全体重をかけてジリジリと刃を押し込んでくる【ガデッサ】には回避手段がない。身体を後方に少しずつ傾けて、がら空きになった胴部へ隠し抜いた左手のビームサーベルを突き上げる。
だが刃が届く寸前に【ガデッサ】は今までの苛烈さが嘘のように身を後ろへと投げ出し、宙返りしながら大きく距離をとった。当然、ビームサーベルは空を斬る。
『二機いることを忘れないことだ。』
『そういうこと♪』
余裕綽々の様子を見せるリヴァイブに同調するヒリングの声が後ろから聞こえたことで頭に警鐘が鳴る。間髪入れずに機体の攻撃警報がけたたましく騒ぎ立てた。
【エクシア】をその場から退かせようとするも、一足遅く放たれた熱線に右脚、人間ならふくらはぎの部分までが呑み込まれて溶解、GN粒子と装甲構成材の混合煙を噴き上げて小爆発を起こす。
「くっそっ!」
一夏が脚を失った衝撃とシールドエネルギーを確認しながら後方を仰ぐと、【ガラッゾ】が排熱機構のせり上がった【GNメガランチャー】の砲身をゆっくりと下に向けるところだった。
(大砲を投げるのかよ!)
【ガラッゾ】の切り払いの後に横切った黒いものが【GNメガランチャー】だったのだろう。一夏に受け止められたり、奪われたりしないように姿勢を崩させて、攻撃ついでに投げつけるふりをして味方に武器を渡したのだ。
(連携もかなり慣れてる。【ガラッゾ】を倒す算段もついてない、盾も剣も4本失った【エクシア】じゃ長くは戦えない。【アストレア】を使うべきか・・・)
『続ける。N23からF68をブラフにB54で片腕を落とす。』
『【アストレア】出さなかったら死んじゃうかもね、坊や。』
迷う一夏に安息の時など与えられるわけもなかった。
◇
軌道エレベーターに支えられたエネルギー分配をめぐって世界を3分する勢力、EU、中亜連合、最後の1つがアメリカ大陸に根ざした企業連合体『United Global Armaments』、略称『UGA』だ。
IS登場後に世界中の現行兵器が、その地位を取って代わられたのは周知の事実だ。だがヨーロッパ諸国・中国を中心にしたアジア・アメリカはISが量産できない事実から、兵器としては欠陥品だと新兵器の開発に尽力。完成時期にバラつきは生じつつもISに何らかの長所で上回る性能とその開発力から周辺諸国を吸収、大陸や州ごとに力を得た。
中亜連合は量産性を切り捨てる代わりに得た巨体と圧倒的破壊力、有り余る人口を逆手にとっての操作の単純化と分化がISに勝った。
EUは割愛するとして、アメリカは中亜連合とは真逆の方針に量産性を求めた。個の実力に重きを置いた設計を元に、数を揃えたパーツを優れた個人が選び抜いて運用することで中亜連合の巨大兵器に劣らぬ国家戦力としたのだ。これがのちの【P.A.】、【Powered Armaments】の先駆けである。
そしてその設計や開発戦略に力を注いだ企業(『オーメル・サイエンス』・『インテリオル・ユニオン』を代表とする複数企業)は【P.A.】完成後に合併、『U.G.A』となった。またたく間に広がったその経営規模はアメリカ全土に支配圏を伸ばし、IS開発企業すらもその内に取り込んだ。
近年、政治にも口を出せるほどの影響力を持つようになり、企業体の最高部は大統領にも対等に口を聞けるのではないかという噂まで立つほどだ。
そしてこの後ろ暗い部分も多々ありそうな企業こそ、千冬にとって最後の頼みだった。
織斑千冬は篠ノ之束という人物のことをよく知っている。常人にはまず理解できない思考回路と行動力を兼ね備えた彼女が、必要となれば他人の迷惑など省みないということも含めてよく知っていた。
だからこそIS学園に配備されたISが使えなくなる可能性も頭の隅では危惧していた。なまじ行動力のある天才だけにやることも派手にやるので想定はしやすかったのだ。
だが対抗策に何が出来るか。これは容易ならざる課題であった。ISの性能に関するすべての知識は束が秘密にしているため、外部干渉を跳ね除ける工作は期待薄だ。
ではどうするのか?
『ISと互角の戦力を持つ団体にバックアップを頼めるようにしておく』。それがいざというときの策だったのだ。
◇
千冬は人気の絶えた職員室で受けるためではなく、かけるために受話器を取り上げる。事態に先んずるために、円滑な話を通す取り決めはされているのだが気が重い。
第1回IS世界大会にて顔を合わせて以降、知り合いというほどには相手の名も顔も知っているのだ。ただその相手も当てにする先としては最後にしたくなるような人間性をしている。
「・・・迷っている暇はないな。」
受話器を下ろしそうになった腕を止めて、6年前に教えてもらった通信回線のコードを入力する。しばしの無音ののち、電子音声と機械音に切り替わった。
『・・・はい、こちらUGA社代表取締役社長のユビアスです。』
「私だ。織斑千冬だ。」
『・・・あなたでしたか、ブリュンヒルデ。それで本日はどのようなご用向きでしょう?』
「私がドイツからIS学園に移る際に話したことを覚えているか? お前に約束を果たしてもらう時が来た。」
『IS学園に一国家の軍が出向くほどの何かが起きたということですか、大変ですね。』
「・・・学園の事情は他人事だろうが、『有事においてはIS学園に協力する』という約束を忘れたとは言わないだろうな。」
『ええ、その約束は確かに存じ上げていますね。『代償次第である』という部分についても。』
IS学園と緊急事態での相互協力体制と言おうと、IS学園側から提出できる戦力などそう多くはない。まして世界的大企業との相互協定に釣り合うものなどただ一つしかなかった。
つまりは織斑千冬という個人最高戦力の処遇決定権。
たびたび軍事演習や新型機のテストにつき合わされることで、その万が一の可能性に対しての備えとしてきたが、出来ればいつまでも実際にこちらの権利を使う場は来てほしくはなかった。
(日本にいる時間も削られたせいで、一夏にも五反田家の方々にも迷惑をかけてしまったし。調子に乗ったUGAにさらに色々と呼びだされるのは目に見えていたからな。)
日本とアメリカを交互に行き来する生活が数年続いたので、一夏には古くから付き合いのある五反田食堂に居候させてもらえるように頭を下げてきた。実家にはもう何年帰っていないかもわからない。
これまでは短期で協力するという形で何とかなってきたが、これで協力の前例を作ったためにさらに上乗せした要求をされる恐れもあったからだ。後に噴出するであろう課題を思うと気が滅入る。だがそれでも生徒と弟を守るために出来る最後の手段を、自分の負担を言い訳にして使わない選択肢などない。
『ですが申し訳ございません。本件におきまして、私共の持つ傭兵を派遣することは少々難しいかと。』
「なに!?それでは話が違う!」
『この約束は私とあなたで個人的にかわした約束事です。
正式な取引もなしに国内を我が社の【P.A】が飛行しては、日本国政府としても面子が立ちませんでしょう?
ですので、今回の場合は派遣するわけにはまいりません。』
「貴様、最初から守るつもりなどない約束をエサにしたのか・・・!
これまで私を好き勝手にこき使っておいてタダで済むと思うなよ。」
『お怒りをお鎮め下さい。難しい・まいりません、とは申しましたが、出来ないとは言っておりません。
正式な契約という形をとりましたら、喜んで傭兵を向かわせていただきます。この会話を録音しておりますので、これから出す提案に乗っていただくだけで契約完了とします。』
堪忍袋の緒が切れそうな言い様だった。千冬一人に降りかかった問題であったならば、今すぐにでも受話器をたたきつけていただろう。
だが、ことは自分に関わるだけではない。個人的な感情は飲み下すしかない。
「・・・分かった、契約内容は?」
『織斑千冬様のオーダーメイドで新型の【P.A】を製作したいと考えておりまして、そちらの性能試験や技術面にご協力いただければ。
もしご不満でしたら、生徒の何人かをこちらでテストパイロットに――』
「受ける!だからさっさと兵を現場に向かわせろ!座標と状況はこちらから転送する!」
今度こそ受話器をたたきつけて通信を打ち切った。
あと一分でも声を聞いていたら、あたり構わずに怒鳴り散らしていたことだろう。
これだから奴、ユビアスには頼りたくなかったのだ。
相手の弱った部分に平気でつけ込み、どんな窮地であろうと他人事として処理する。金と契約に執着するくせして、その契約内容にある抜け穴をついてさらに要求を押し付ける。
自分も含めたすべてを他人事のように語る性格からか、客観的に物事を判断し、情け容赦なく冷然と物事を進めるのが奴の特徴なのである。
「だがこれで一夏にも救援は送れるはずだ。耐えていてくれよ、一夏。」
疲れきった体を堅い木の椅子に沈めて、千冬は送るべき座標データの収集にかかるのだった。
◇
――米国 UGAワシントン本社 社長執務室――
「・・・切られてしまいました。」
室内灯に明るく照らされた室内で、ダークブラウンのスーツに身を包んだ妙齢の美人が頬杖をついている。彼女こそ千冬の電話相手ユビアスその人であり、奇妙な偶然でユビアスもまた一人で切れた通信機を握っていた。
職員室の木製椅子とは比べ物にならない位に金のかかった革張りの椅子に座って、切れてしまった受話器を見やる。反対の手で長い金のブロンドの髪を弄んで考える。
挨拶もなしに切られたことを気にしたり、傷ついたりしたからではなく、疑問があったのだ。
そこまで怒るような内容だっただろうか?
こちらとしては厳密な取り決めもせずに口約束程度に留めていたのを、都合よく利用させてもらっただけだ。何故か彼女がこちらに頼むのは今日が初であるが、一方的に契約をしていたわけでもないので怒りの矛先を向けられる謂れはない。
これをいい機会にして、織斑千冬もこの会社を荒事用にもっと役立ててくれれば万々歳だ。
「千冬様も短気ですね。お呼びしてご協力いただいた時に契約書の作成を命じてくだされば、何度も電話でやり取りなどせずともいいものを。
お怒りになられるようなこともありませんのに。」
ユビアスにとって優先されるのは自社、UGAの利益。
そのためなら何でも好きに利用するし、契約の穴を突くこともする。だが決まったことを反故にしたりはしないので、千冬から契約書を作られた場合には従うつもりだった。
こちらから相手の益にしかならないことをするのは、ビジネスにナンセンスなのでこちらから言い出しはしないが。
「学園を襲撃したテロリストへ囮として生徒の一人が先行、他生徒は退避済み、現在の交戦が予想されるポイントは領海限界の海の上。
あの必死ぶりからすると先行しているのが弟様ですか。」
弟の名前は、
「織斑一夏・・・一夏・・・イチカ・・・?
はて、最近どなたかから聞いた気がしますね。」
ユビアスの記憶にはあまり覚えがない。お金と契約絡みだと1年2年経っても忘れもしないので、自分には関係が無いこと話で聞いただけだったのかもしれない。
「・・・まぁいいですね。思い出せないなら我が社には重要ではないことだったのでしょう。」
それより誰を向かわせるかだ。
日本に駐屯している部隊、もしくは部隊長で向かわせられる人材をリスト化して捲っていく。
「雷電は海上戦に不向きですし、他に向かえる部隊は・・・」
横浜駐屯地に一人いるのが見つかるが彼は海の上が鬼門なので見送る。他には沖縄に任務終わりの2部隊長が見つかった。現在補給中で急がせれば30分ほどで現場へと向かわせられる。
(増援を送ると言っても、結果的に間に合わなかったと言い張れば問題はありませんね。)
『はい御用でしょうか、コール社長?』
「沖縄で補給を受けている2名に新たな任務通達を。仔細は添付された資料に書いてあります。」
『かしこまりました。ではそのように。』
追加で任務を送ろうとしたユビアスは一旦手を止め、任務詳細に記した内容をいくらか変えて通信部へと送った。
◇
――宇宙空間のどこか――
「ヒー君たち、リっちゃんから聞いてたより強いなー。びっくりしちゃったよ。」
『型落チ品トハイエ、イノベイター相手ニ撃墜サレナイ【アストレア】ノ方ガオカシイ。』
部屋に所狭しと取り付けられたカメラ群には地球の映像が映っている。
束とリボンズは一夏VSリヴァイブ・ヒリングペアと学園で起きていることを逐一観察していた。2機のISのカメラが連動して、束たちの元でも見られるようになっているのである。
「学園はどうなってるかなー?
・・・およよ、ちーちゃんたら束さんが何かやるってわかってたみたい。外部の力を借りるなんて、束さんの知ってるちーちゃんならやらないのに。」
『出シ抜カレタノカイ?』
「過保護だねー。束さんには信じられないなー。」
『人ノ事ヲ言エルノカイ。学園ノ介入阻止ハ妹ヲ巻キ込マナイ為ニダロウ?』
「まだまだお子様な箒ちゃんはお呼びじゃないの。でも、大事な家族は危ない目に合わせたくないのもホントだよ。」
学園の様子を中継しているのは、2機が侵入した時に爆散した箱に仕込みがあった。シールドエネルギーを開発した束には無効化装置を取り付けるのも容易かったが、堅牢な盾を逆に利用し、破壊されたように見せかけて大量のナノサイズカメラを散布したのだ。
これで何時でも学園の様子をリアルタイムで知ることが出来る。まさかただ破壊されるだけに終わった箱に、こんな仕掛けがしてあったとはだれも思うまい。
「これからも学園にはちょっかいをかけるからね。いやー、計画通りに行って良かったよ。アリーナの中に散布できたおかげで全部の生徒たちにくっつけることが出来たもん。」
『・・・ソレデ、ココカラハドウスル?』
「別にどうもしないよ?
いっくんと【アストレア】なら勝てるかもしれないし、負けても殺さないように言っておいたから特訓になるしね。箒ちゃんやちーちゃんが出てこれないようにブロックはしたから時間も稼げる。
アメリカが出てきたのはちょこっと驚いたけど。」
『僕モ知ラナイ過去ノ機動兵器・・・名前、【P.A.】トカ言ッタネ。
ISニ対抗シテ生マレタ兵器、軍をブツケラレテモ大丈夫カナ?」
「大きさはISの2倍くらいだから恐れる相手じゃないもん。
いざとなったら隠し玉を使って逆転できるし。」
軍が相手となっても恐れる様子を見せない束。自分が開発した兵器への自信がそうさせるのか。
「そろそろ休憩を終わって戻らないと、デッカちゃんがまた暴れだしちゃうから戻ろっか。」
『先ニ行ッテテクレ。モウ少シ眺メテカラ行クヨ。』
「あんまり遅くなっちゃ駄目だからねー。」
モニターの並んだ部屋から束が退出していくのをリボンズは手を振って見送る。なお休憩と言ってはいるが、サボっているだけである。
『サテ、僕モ少シ手ヲ加エテオクトシヨウカ。』
廊下を滑っていく気配が遠ざかったのを確認して、コンソールに機械の腕を伸ばす。束がIS学園に配備されたISへとかけたシステムロックの項目を呼び出し、素早く視線を走らせる。
(ロックの暗号コードを解析・・・クリア、続いて部分干渉開始。)
リボンズもヒリングたちと同様に脳量子波や機能には制限がかけられている。それでも彼らとは一線を画する実力をもってすれば、一部への干渉は朝飯前だ。
(織斑一夏への助力は止められているが・・・)
リボンズにとってみれば織斑一夏がどうなろうと、あまり興味が無い。一連の計画も首謀者は束であって、リボンズは関係者だ。他人の計画を横取りするのもイオリア計画の時にやって、見事に打ち負かされてここへとやってきた今、繰り返すのも馬鹿馬鹿しい。
ではなぜこんなことをやっているのか?
(アレハンドロ・コーナーとは価値観も趣味も合わなかったけれど、1つ共感できたね。どんなに素晴らしい計画も夢も、その行く末は今を生きる人間の手に委ねられるべきだと。
織斑一夏、彼の仲間たち、この計画、いやこの世界の主役は君らだ。どうするかは君らが決めればいい。僕は舞台裏から束と一緒に隠れて手を出しつつ、君らの選択を傍観させてもらうよ。)
時間はかかったがある条件付きでロックが緩んで、解除できなくはないように細工できた。リボンズにかかれば遠隔操作で数機を操ることもできるものの、あえてここまでしかしない。
ISが動くようになる条件とは『篠ノ之箒が触れること』。
もし織斑一夏が篠ノ之箒と情を深めていれば、これで助けに行くだろう。情が浅ければ助けにもいかず、織斑一夏は一人であの2人を相手にしなければならなくなるが—――彼が革新者に至る資格者だとするなら、あるいは・・・。
『ソシテ篠ノ之箒、ソレハ君モダヨ。』
(可愛い子には旅をさせよとも言うし、危険から遠ざけるだけが愛情ではないよ、束。)
誰にも知られないように注意しながら、リボンズは一人嗤った。
◇
――U.G.A.社 日本駐留基地沖縄支部――
基地の中でも特に重要な物資のみが集められるハンガーの中ではあたふたと整備士たちが忙しく駆け回っている。そして整備士たちを睥睨するように、現在背の丈10m前後の2機のロボットが格納されていた。
1機は全体が胴に比べて膨らんだ四肢を持った機体。両手に握った【デュアルハイレーザーライフル】と【ガトリング】がそれをさらに際立たせている。両背中にも形の違うミサイル発射管が見て取れ、実弾エネルギー双方に通じた高火力装備の支援型機体だ。
また1機は対比するように細身の機体だ。サンドブラウンの機体色にほっそりとしたフォルムの中では、膝に直接つけられた四角い脚部スラスターが一層目を引く。両腕には【レールガン】と【レーザーブレード】、背中にはこれまた四角い【パルスガン】と羽根にも見える【デュアルハイレーザーキャノン】を装備し、前線仕様な機体だと分かる。
二機に共通するのは左肩にあしらわれた星条旗。米国産の兵器だ。
「駄目だ、いくら火気厳禁でもフルーツの香りがする煙草なんて吸った気がしねえ。」
一人の男が作業員たちから離れた、大柄な機体のコックピット近くで電子煙草をふかしながらスパナを回していた。その時男の腰から端末がピロリンと音を鳴らす。片手で端末を操作してよそ見しながら、調整を続ける。
「ん?本社からメールか。」
彼の立っているの地上5,6mにある足場の不安定な空中作業場だ。そんなことをするのは自殺行為なのに、男はまるで気にした様子もない。スパナで肩を叩きながら、送られてきたメールに目を通す。
30〜40歳の作業員といった出で立ちで、くたびれた作業着がよく似合う。髪は茶色に顔は渋めと、一見ちょいワル親父にも受け取られそうだが、鋭い目つきには戦士だけが帯びる剣呑さがある。
「へー、あのおっかない社長にしちゃ珍しいじゃないの。」
「機体整備中によそ見をするな。戦場から生きて帰ってきて、整備で死んだなどお笑いにもならないぞ。」
「そいつは嫌だな、死ぬのは美人に看取られながらがいい。それより依頼だぜ。」
順調に読み進めていると横に並べられた前線仕様な機体を看ていた金髪のショートヘアの女性が咎めた。年齢は男よりやや若い。作業着の方は恐ろしく似合わず、スーツかジャケットが合いそうだ。
鉄臭い格納庫にいるのがおかしい美人だが、やはり目つきが只者ではないことを強烈に主張している。
そんな美人の忠告も軽口で聞き流した男は、そのメールを見せた。
「IS学園付近の海域に落ちた不審物の確認依頼だと?」
「補給が終わり次第迎えとのお達しだぜ。あの社長ならテロリストの迎撃をしろなんて言い出すかと思ったのによ。」
「・・・じき整備も終わる。依頼通りに動くぞ。部隊は置いていく。ついてきてくれるな、ロイ?」
「海上デートとは洒落てるな。死ぬ時は看取ってくれよ、ウィンディ。」
社長が沖縄に駐留中とした傭兵、電子煙草の男『ロイ・ザーランド』と金髪の女『ウィン・D・ファンション』は再び機体に【マイブリス】と【レイテルパラッシュ】に取り掛かった。
アメリカがここでまさかの顔出し。
ホントはもう少し後にする予定で、ここで出てくるのは自衛隊の予定だったんですが、ここで自衛隊の名前を出しても後に続かないので変えました。
あとこのまま戦っても原作をなぞるだけで変化がないので。一夏の物語の裏でも世の中が動いていることを表しています。
最後にACfaから二人と二機を出しました。
お詫びですが最後に出てきた2人は今回というか鈴編での参戦は『しません』。
ユビアスが参戦しないよう仕向けてます。
ここから学園外の勢力とまでドンパチやったら鈴編がいつまでたっても終わらないので、今回は名前と存在感だけを出しています。ただ、遠からず戦闘に出てくる予定。
では、今回はこのへんで
感想・質問・評価、何でもよろしくお願いします。
ーーどうでもいい余談ーー
近くこの作品と世界観の設定を投稿するかもしれません。
ロイとウィンディ以外もいずれ本編に出てくるかも。
あとさらっとですが、一夏が何故本作では五反田食堂で暮らしてたのかの理由説明回でもありました。