IS×00 夢を目指す者   作:王天君

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何とか書きあがったので、投稿させていただきます。

前書きも退屈なので、ミニコーナーでも始めた方がいいですかね?


第一章 織斑一夏の始まり
第一話 織斑一夏


――西暦2112年1月 五反田食堂2階 一夏の居候部屋―― 

 

「・・・あー、疲れた。」

 

 俺は、ため息とともに言葉を吐き出す。

 目の前には一枚の紙きれ。「進路希望調査票」と書かれた、敵の姿がある。中学2年も終わりに近づいたある日、担任から渡された紙に、俺はとんでもなく追い詰められている。

 進路は勿論、進学だ。問題は何処にするのか。候補は2つあった。

 1つは比較的近くにある「藍越学園」。友人の弾たちも学費の安さから候補に入れているらしい。ただそれ以外に見どころがないので、第1志望にするには疑問が残る。

 もう一つはここから離れた所にある「IS学園」。女尊男卑社会を作り上げた原因のISについて専門的に学ぶことのできる機関だった。こちらは学費がそれなりにかさむので、資金面に何のある俺は特待生にならなければ通うことは難しかった。

 

「親父さんと千冬姉は食費と学費をそれぞれ出してくれる、っていうけどそれに甘えてちゃいけないんだよな。」

 

 机に用紙を放り出し、そこまで広くはない畳敷きの床に寝そべる。

 個人の心情的にはIS学園に進みたかったが、特待生になれるかは分からず、下手をして高校浪人になどなるわけにもいかないので誰にも話すことが出来ずに悩んでいた。

 用紙をもらってからもう2週間。他はみんな提出してしまったので、担任も声をかけてくるようになっている。

 

「どうにも、決心がつかないんだよなあ…」

 

 ゴロゴロと特に何かをするわけでもなく、転がり続ける。

 そんなとき窓の方で何かが光って見えた。

 

「ん?」

 

 怪訝に思って窓ガラスを開けてみると、

 

「雪か。」

 

 日光を照り返して輝きながら、雪が町に降り積もっていた。

 

 

 

 

 22世紀に入った現在では、雪というのは過去と比べると珍しいものになっている。

 西暦2060年代、あまりに深刻化した地球温暖化が世界中から雪を消し去ってしまった。数年の統計を経て、本当に雪が消えてしまったことを自覚した国連は自然現象すらも消し去った人間の行為を悪と断じてエネルギー政策の大転換を宣言。

 ある科学者の提唱した、軌道エレベーターに設置した無数の太陽光パネルをもって地球圏全域の電力を賄う計画を始めた。

 軌道エレベーター自体の完成にはまだ(ISの登場によってはるかに工事が効率化したとはいえ)、時間がかかるとされているが、連盟各国も環境問題への責任を自覚し、少しずつ化石燃料に頼った発電方法からは脱却していった。

 そして今から11年前の2100年、アメリカで再び雪が観測される。

 それ以来、年に1度降るか降らないかだが、雪はまた降るようになった。

 

 

 

 

 雪を見つめる俺の前で、沈みかけの太陽が放つ光に照らされ、雪が一瞬赤く光る。

 

「赤い、雪……」

『雪じゃないぞ』

 

 それに俺は、強く記憶を刺激される。

 赤い雪の降る光景に俺は、かつて俺を救って、俺に生きる目的を与えてくれた一人の英雄のことを思い出す。

 これからのことは俺の思い出話。

 俺が小学3年生のとき、第1回IS世界大会で誘拐された時のことだった。

 

 

 

 

「……い、……おい!起きろ、ガキが!」

「ッつ!」

 

 鈍い痛みが頭に走って、俺は目を覚ました。

 痛む頭を振りつつ、周りを見渡してみるとそこはどこかの工場のようだった。段ボールや鉄パイプなどが散乱しているところを見ると、既に使われていないのだろうか。

 目の前では覆面を被った男が複数いて、そのうちの一人が電話で誰かと話していた。俺の横にも銃を突き付けている奴がいるが、おそらくさっき俺を殴ったのはこいつだろう。

 

「おらクソガキ、いつまでも寝てるんじゃねえ!

 てめえにはまだやってもらう事があるんだからな!」

「いきなりお前ら、何なんだよ‼俺に何の用だよ⁉」

 

 頭に向けられた銃を無視して、男に怒鳴る。

 

「うるせえ、黙ってろ!」

 

 もう一度、今度は銃で殴られ地面にたたきつけられた。再び身を起こそうとして、自分の体が縄で縛られていることに気が付く。少し力を入れてみたが、まるでほどけそうにない。

 おまけに銃で殴られた拍子に、出血したらしく鈍い痛みと同時に、血の垂れる感触がした。

 

「…くそっ」

「逃げようたって無駄だぜ、そう簡単にはほどけないようにしといたからな。」

 

 今度は俺が縄をほどこうと、動いているのが間抜けに見えたのか、男が嘲笑ってきた。

 

「とにかく、じっとしてろ。そうすりゃ命までいただくつもりはねえからよ。」

 

 そう言うと、少し距離をとって座り込み、こちらに視線を向けるだけであとは何もしてこない。銃を持っていても俺に向けていないところを見ると、どうやら本当に、俺の命には興味が無いらしい。

 

(くそっ、姉さんに誘拐には気を付けろって言われてたのに!)

 

 身を起こすことは諦め、横になりながら俺はどうしてこうなったのかを振り返る。

 今日は第1回IS世界大会、通称『モンド・グロッソ』の、決勝戦が行われる予定の日だった。

 その出場者の一人である『織斑千冬』の弟、俺『織斑一夏』は応援に行っていたんだが、どうやらそこで誘拐されたらしい。

 試合開始前に近所の人にアメリカ土産でも買って帰ろうと思い、会場から出て一人で通りを歩いていたのだが、これがまずかった。

 一瞬で口に布をあてられて気を失い、運ばれた記憶がよみがえってきた。あの手際では通行人が目撃していたとしても、何も反応できなかっただろう。

 

(…俺なんか誘拐したって、身代金なんか出ない。俺に恨みがあるわけでもない、はず。

 それで襲ってくるってことは、千冬姉が狙いか。)

 

 遠くの男たちが見ているらしいテレビから漏れ出てくる音を聞いていると、さっきまでいた会場の、司会者らしい男の特徴的な声が少しだが耳に入った。ここまでくれば間違いなく、自分ではなく姉が本命なのだろう。

 小学三年生なりに頭を回したが、自分の状況把握はこれくらいが限界だった。これだけ考えられるのも銃を向けられていないからだろうか。

 縄を解くのも無理そうだと諦め、周りを観察し始めた俺に、

 

「どうした、姉ちゃんが心配か?」

 

 男はさっきと同じく、覆面で分かりにくいが薄笑いを浮かべ、今度は話しかけてきた。

 確かに千冬姉のことは心配だったが、それ以上に思うのは俺がまた、千冬姉のお荷物になっていることだった。

 

 

 

 

 ISの操縦技術の高さで名を上げて、全国大会、世界大会と駆け上がってきた織斑千冬。その名前は確かに輝かしかった。その陰に弟が隠れてしまう程に。

 最初は気にする様なことではなかった。まだまだ名前が知られていないころは、学校の友達から有名人が家族で羨ましがられる程度だった。

 だが、世間は少しずつ変わっていく。

 

「アレが織斑千冬の弟か」

「彼女と同じく、素晴らしい才能があるだろう」

「だが、男ではな…」

「あんな平凡な男が、千冬様の弟だなんて認められない!」

「IS以外も特に才能がない」

「大した努力もせずに、よくもあの女の家族なんてできるわね。

 私だったら耐えられないわ。」

 

 勝手に思い込み、勝手に結論を出していく。

 気づいたころには、一夏は「優秀な姉にくっついたできそこない」、「名作が出来る際の不純物」、そんな風に見られるようになっていた。

 もちろん一夏は努力を欠かさなかった。勉強は小学校とはいえ、学力テストで全国上位に入り、武道も友達から教えてもらい、今も続けている剣道で全国大会への出場もある。

 だが、そのすべてが「織斑千冬」の名前には敵わない。その名前の前では彼の力とは関係なく、織斑一夏は凡才にしかなれなかったのだ。

 そして、いつの間にか努力をすることは当然の事で、それだけしか思えなくなっていた。目的は姉を超えること、ではなく姉の背を追うこと。

 世界最高峰の姉を持つ弟がするべき義務として、その後を追うことが当然、と。

 それはもはや、彼の人生ではなく、織斑千冬の影が生きているだけでしかないのだが、まだ彼はその自らが抱える問題に気づいてはいなかった。

 

 既に歪んでしまった彼だったが、周りの人たちは彼を認めようとしていた。

 彼と少しでも深くかかわった人は、彼の生き方に問題があることに気づいていた。

 だが大人は彼がそれまでにどれだけ辛い目に遭っていたかを知っているため、生き方を否定できない。それがたとえ、自分の生き方でないと気づけば、どれだけのショックを受け、傷つくかもしれないとしても。

 子どもは彼のやっていることがすごいとは思っても、彼の苦しみまではわからなかった。だから努力のし過ぎで倒れないかを心配することしかできなかった。

 

「一夏、お前と私は違う。世間はそれを悪いようにしか見ないが、私はお前にしかできないこともあると思っているぞ。」

「千冬さんは確かにすごいけど、お前は俺の友達の中で一番すごい奴だぞ。」

「一夏お兄ちゃんはすごいもん!お兄ちゃんを馬鹿にする人がおかしい!」

「一夏、お前がどれだけ大変な環境にいるかは、分かっているつもりだ。

 だがな、うちの店にいる奴はそんなこと気にする奴はいねえ

 だからお前ももう少し、うちの弾くらいにガキらしく生きろ。」

「虐められていた私を助けてくれたのは、千冬さんではなく一夏だろう!

 だから私にとっての一番はお前だ、一夏!」

「千冬さんの後ばかり追うのは止めろ、お前が壊れるぞ。」

 

 彼らの言葉で少しずつ、心に何かが残ってはいたが、まだ生き方を修正するには至らなかった。

 

(今回もせめて、千冬姉の邪魔だけはしないようにしたかったのに)

 

 素晴らしい姉がいること、それは確かに一夏にとっての誇りであった。だが同時に、その後を追うことは何よりも自らを縛る枷でもあった。

 足を引っ張らずに、姉の弟として恥じない生き方をする。

 それが自らの夢ではなく、周りからの期待によってできた、まがいものだと彼が気づくのはもう少し先のことだ。

 

 

 

 

「おい、人が話しかけてんだから無視すんな!」

 

 また男が怒鳴ってくる。

 殴られることへの恐怖もあったが、理不尽に怒鳴られたことへの怒りの方が強かった。

 

「…さっきは黙ってろって、言ったじゃないかよ。」

「騒がなけりゃ、少しぐらい話したっていいんだよ。

 つーか暇だし、お前も退屈だろうから、話し相手になってやるよ。」

「大きなお世話だ!」

 

 誘拐犯となんて仲良くしたいわけがない。下手をしたらいつ殺されるかもわからない状況なら特に、だ。

 

「第一暇だからって、俺を使って身代金とか要求するんじゃないのか?」

「そういうのは上の考えることなんだよ。

 俺やここにいるのはお前を見張ってるのが仕事だ。

 で、お前が逃げられるわけもねえし暇になるんだよ。」

「…こんなことしてるんだから、絶対助けが来る。余裕かましてられるのも今の内だ。」

「ハハッ!それはねえだろうよ。お前を誘拐した時も誰も見てないことは確認したしな。」

「…」

 

 考えてはいたが、やっぱり見つからないようにしてたのか。

 悪事を働くなら当然とはいえ、やはり直接言われるのと想像しているのでは、衝撃が違った。

 助けが来ることは難しい、となると脅迫状を受けた姉は自分で探しに行こうとするのではないか。

 あの姉ならば、試合を放り出して、弟を探すぐらいのことはしかねない。

 

(結局ここで俺はまた、千冬姉の足を引っ張るだけなのかよ!)

 

 悔しかった、何もできないでまた迷惑をかけるだけの自分が。

 いっそここで死んでしまうことが、一番の姉への孝行なのではないか。そんな風に思ってしまう。

 

 

 

 だが、そんなただ落ち込むだけの思考は、いきなり中断させられた。

 彼らのいる倉庫に突き刺さった、赤色の光によって。

 




というわけで、これが第一話です。

ええ、言いたいことは分かります。思いっきりオリ話ですよね、すいません。
ただ、一夏の性格が少しとは言え変わる理由を、あっさりするのもなんだか違う気がしたもので、今回の話を書きました。

とりあえず推敲を繰り返して、第一章の全五話までは書けたので、順次投稿していきます。

感想、質問、ぜひお願いします。

ーーーどうでもいい余談ーーー
お気に入り登録が14もある!
いきなりこんなにもらえるとは思ってなかったので、めちゃくちゃうれしいです。
今後ともよろしくお願いいたします。
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