IS×00 夢を目指す者   作:王天君

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夏休みなんで早く投稿できました。

余談に書くことかもですが、先日の8月3日を以て連載1周年を迎えることが出来ました。これも今まで読んでくださった皆様のおかげと存じます。
これからものんびりと更新しますが、どうぞよろしくお願いいたします。

何で今回特別賞が作られたかの説明から入ります。

では本編を。





第三十三話 タッグは誰と?

 タッグマッチのルール変更とシャルルが部屋に引っ越してきた日の夜、一夏はやらないといけないことを整理していた。

 放課後呼ばれて真耶と話したときのことを思い出す。

 

 

 

 

 職員室に入った一夏は真耶に促されて席に座り、特別ルールの使用にした理由を説明された。

 

「イベントへの参加意欲の向上・・・俺とシャルルはそのために巻き込まれたんですか?」

「大まかなところはそういうわけです。」

「今回だけ特別ルールを作った理由はそれだけじゃないんじゃないですか?」

「そ、そんなことありませんよ?」

 

 答える真耶の目は泳ぎまくりで素人目にも怪しい。

 

「嘘は言ってないんです。ただ・・・」

「ただ?」

「参加意欲より上級生からの要望があって変えざるを得なかったんです。」

「俺を参加させろって?」

 

 この時の真耶の言葉は一夏も予想していなかった。

 

「逆です。織斑君をどうにかしてくれないと参加したくないと言われてしまって。」

 

 生き方が他人とは違う一夏でも人からどう思われているかは気になる。分不相応な夢を抱えたり、努力バカであったりしても、一夏もまたただの高校生の面もある。

 バクバクする胸の内とは裏腹に、冷静にここ2カ月の行動をざっと振り返ってみても怪しい所はない。

 女性の着替えの現場に突入したことも、アクシデントを装ってセクハラした覚えもない。誰かから好かれもしない代わりに嫌われる理由もないと思っていたが違ったのか。

 ・・・初対面でラウラにいきなり首を絞められたことはノーカンだと思いたい。流石にアレに俺の落ち度があっても理不尽すぎるだろ。

 

「あ、織斑君の素行に関する話じゃありませんよ? 織斑君が嫌われていた…なんてこともありません。」

 

 補足するように真耶がそう言ったのを聞いて安堵する。不必要に体に入っていた力も抜けて息が漏れた。

 

「ふふふ。」

「・・・あの、俺がどうかしましたか?」

「いえ、織斑君でも周りの人がどう思ってるのかは気になるんだって思って。生徒の可愛い部分を知れたときって嬉しいじゃないですか。」

(今俺自分勝手な人だと思ってましたって言われたよな?)

 

 同意を求められても、その立場になったことの無い一夏には分からない。

 今は教師の地位に収まっているヒリングたちもその内、そんな感覚で自分たちを見るようになるのかもな、とひどく的外れな考えが浮かんだだけだった。

 

「ええっと、どこまで話しましたっけ?」

「先輩方が俺をどうにかしろって言って、でも俺が嫌われていたわけじゃなかったって話です。」

「そうでした。

 それでどうにかというのはですね、今までの二戦が原因なんですよ。」

 

 二戦・・・セシリアと鈴との試合のことだ。ヒリングたちとの数を加えると三なのか、鈴のカウントに含むのか。

 一夏が思い返す限り、特に印象に残るようなことはなかった、と思う。(【エクシア】や【キュリオス】、ハレルヤなどのことは他人にはわからないので問題ないだろう。)

 

「あれの何が問題に?」

「結果だけ見ると織斑君はオルコットさんと凰さんに勝っています。オルコットさんの時は逆転でしたが、凰さんの時はおそらく完勝出来たかもしれないです。」

 

 セシリアはともかく鈴は武器の相性が良かったせいである。完勝なんて言おうものなら鈴が断固否定するに違いない。

 

「あれは―――」

「事実がどうあっても周りからそう見えたのが問題なんです。その後のテロ騒動も更識さん達が口をつぐんだので、織斑君が中心にすべて解決したって噂みたいなんです。」

「俺の知らないところで武勇伝が・・・」

「それで元々タッグマッチに出場するつもりだった子たちも出場を辞退してしまうようになってしまって・・・」

 

 今度は真耶の方がため息を吐く。一夏よりも日頃から疲れがあるせいかため息も重く深い。

 

「織斑先生もこんな時にアメリカへ行ってしまうし、転校生だって来るのに・・・。せめて去年の生徒会長さんがいて下さったら。」

「・・・うちの姉がすみません。」

「あ、すみません!わたしったら生徒に愚痴を漏らすなんて。織斑先生には内緒にしておいてくださいね?」

「それはもちろん。」

 

 姉のことを一夏が謝罪するというのも珍しかったが、怖さは良く知っているので真耶の頼みにはすぐに首を振る。

 

「その後私が困っていたら、ある方からいい考えがあるって教えていただいて・・・」

「あまり確かめずにのってしまったと。」

「落ち着いてみると駄目ですよね。お金がかかってますし。物でやる気を引き出すなんてよくないことは分かっているんですけど。」

「金銭のやり取りは大目に見ても、その金は用意できるんですか?」

「IS学園のバックには各国の援助がありますから。お金なら多少のことで動じないんです。」

「・・・」

 

 ある方の正体や噂の真偽はさておき、圧倒的な強さが広まっている奴と量産機で戦いたがるのは余程のもの好きだ。一夏自身もそんな化物相手に、学校行事の賞品を巡ってそんなに本気になろうとは思わない。辞退した上級生の理由もそう考えたなら説明がつく。

 そこで少しでも戦わせようと優勝しなくても得られるメリットを用意したということだ。それで金を使うように言った誰かさんは感覚に問題ありだろうが。

 

「とにかくそんなわけなので、織斑君には参加してもらわないといけないんです。悩むかもしれないんですがよろしくお願いします。」

 

 頭を下げる真耶に文句をつけるわけにもいかず、一夏は寮へと帰ったのだった。

 

 

 

 

 

「ああ言われてもどうすりゃいいんだ。」

 

 真耶も苦悩していたが巻き込まれた一夏にも苦悩はある。この場合、一夏は誰と組むかを慎重に選ばないと部費に極端な偏りが生じて、部活間で問題を生む恐れもある。

 最悪のケースとして一夏と組んだ人間、そして一夏達に賭けた人間、この二人が同じ部活に所属していれば部費は倍どころかその倍、4倍にまで膨れ上がる。学校内でカースト制度まで創り出しかねない格差だ。

 以上の事実を考えても、部活に所属していない人間と組むのが最善策だ。

 しかしそこに「ある程度は戦える人」という条件が加わると候補が恐ろしく絞り込まれる。今から頼んでもどうすればいいか。

 

「どうしたらいいんだ・・・」

 

 毎度のように頭を抱える一夏に、明るい声が気遣うように語りかけた。

 

「あはは。考えすぎで倒れちゃ駄目だよ、織斑君。」

「他人事みたいに言うなよ・・・もう荷物の片づけ終わったのか? 言ってくれたら手伝ったのに。」

「荷物って言っても僕は着替えくらいしかないから。織斑君も男の子のし、下着を直す手伝いなんてしたくないでしょ?」

「そりゃ好きで男の下着に触れたいとは思わないだろ。」

 

 シャルルは持ってきた荷物が一夏と比べても少なかった。朝、教室に持ってきていた学生鞄で所持品はすべてだ。一夏のように部屋に他の荷物が送られてくる、なんてこともなかった。

 着替えもさっさと仕舞うだけで片付く量しか持ち合わせていない。寮なので家具まで持ち込むことはないが、私服とかも持ってきていないのは珍しい。

 知り合いで一番身軽に引っ越してきた鈴でもボストンバッグに荷物を詰め込んでいた。記録更新だな、と場違いな感動を覚えるのは一夏くらいか。

 例えばセシリアは部屋が二人部屋のところを一人で使っていた分、部屋がパンクしそうな量の服を持っている。箒と相部屋になって、いくらかイギリスの実家に戻したらしいが。

 男と女で身だしなみに使う気の量は差があるし、個人のことと言えばそうなのだが印象に残った。

 

「それでどうするの? 誰とタッグを組むとしても試合まで2週間。早く決めるほど有利だよね。」

「それは分かってるんだけどなぁ。」

 

 分かっていても即決できるものでもない。天井のシミの数を数えても答えが出てきたりはしない。

 だが悩んでいても前には進めないのも事実だ。参加しない選択肢が無いので誰と組むかを考えるとしよう。

 瞑目して考えを展開する。

 

(消去法で考えていくと・・・箒はまず無理だな。)

 

 剣道部所属の上に専用機は持っていないし、戦闘経験も他の候補に比べるとどうしても目劣りする。

 ラウラが一夏と戦いたいと思っているなら、その間一人で戦ってもらうの技術は必要だ。

 

(セシリアはテニス部で鈴はラクロス部、と。二人とも結構部活は好きそうだったし、特別賞は欲しいだろうな。)

 

 仮に好きでなくとも専用機持ちを部長が放っておくとも思えない。

 すでに試合での経験を持っている二人もダメとなるとどうすればいいか。

 

(ん、待てよ・・・)

 

 目の前にいるシャルルはどうだろう?

 実力は未知数としても部に入っていないので第1条件はクリアだ。あとは実力のほどだが・・・

 

「・・・なぁ、シャルル。」

「うん、なあに?」

「タッグマッチはシャルルこそどうするつもりなんだ?」

「うーん、ちょっと悩んでるんだ。転校してきたばかりだから知り合いもいないし。」

「それなら――」

 

 話がまとまりそうになっていた矢先、部屋を控えめにノックする音が会話を遮った。シャルルに断ってドアへと向かう。消灯時刻も近いのに誰が訪ねてきたのか。

 ノックの気弱そうな音から訪問者はなんとなく想像がついた。

 

「はいどちらさま・・・って簪じゃないか。どうしたんだ?」

 

 思っていた通り、外に立っていたのは違う階にいるはずの簪だった。

 なんだか思いつめたように深刻な顔で、扉を開けた一夏の顔を見つめ返している。だがそれでいて質問には答えず、じっと見ているだけだ。

 

「おーい。」

「あ、あの。」

 

 声が上ずった話し方は簪の極度の緊張が現れている。これ以上刺激してはまずいと、簪が次は自分で話しだすのを待った。

 深呼吸するように胸を押さえて、一夏を見上げてくる。

 

「織斑君…タッグマッチの相手…もう、考えた?」

「いま悩んでたところだ。試合で戦った皆は部活に所属してるから、誘うわけにもいかないし。」

 

 すぐに決まるとは思ってないから焦っては無いけどな、と付け加える。

 ひとまずの一夏の答えを聞いて簪は何かをためらう様子を見せる。だが、それも一瞬のことで制服の胸を掴んだまま、決然と声を上げた。

 

「わ、わたしと・・・タッグを組んでほしいの!」

 

 

 

 

(・・・今日決まったことにもう対策を考えるなんて有能じゃない。ま、男装っ娘の方は思い通りにはいかせないけどね)

 

 まだ一夏とシャルルが話し込む部屋の明かりの届かない廊下から、ひっそりと顔をのぞかせていた球体が動いた。誰と言うまでもなくヒリングだ。

 真耶をけしかけたのを根掘り葉掘り聞かれても面倒なので遅く帰ってきたのだが、中の会話の進捗具合を見て先手を打たせてもらった。

 

(あの眼鏡っ子はこれで第一候補になったわね。飛び込ませて正解♪)

(ヒリング。やりすぎという自覚はあるかい?)

 

 簪の剣幕に気おされつつも了承した一夏を見て、いい気分に浸ろうとしていたヒリングを同じく闇からの声が引き止める。

 

(・・・リヴァイブ、邪魔しないでくんない。アタシは今を楽しく生きてたいの。)

 

 機械の体なので表情に変化はない。それでも冷たさを言葉に滲ませてヒリングはリヴァイブに反論した。

 

(邪魔はしないさ。だが問題を起こしすぎるのは今の身分に反すると言いたいだけだよ。)

(真面目ちゃんだこと。死ぬ前と変わらない人生に意味なんてあるわけ?)

(ヒリング!)

 

 まだ何か言おうとしているリヴァイブを置き去りに、別の階へと向けてヒリングは跳ねていく。

 追いかけてくる気配がなかったから、そのまま部屋に戻ったのだと思われる。

 

(・・・終わりの見えてる人生。好きに生きなきゃ損ってね。)

 

 聞かれている気配も消えたところでそう一人漏らした。

 

 

 

 

 一夏がうんうん唸ったり、シャルルと相談していたりする頃、鈴は海外から電話を受けていた。相手は――

 

『どもどもっス、鈴さん。元気してたっスか?』

「・・・なんか用? あたしも忙しいんだけど。」

 

 寝ようとしたところにかかってきただけに鈴の機嫌はすこぶる悪い。

 

『またまたー、愛しの彼氏さんに告白した鈴さんがこんな夜に忙しいなんて・・・はっ! まさか学生の身分を越えたスキャンダラスな――!』

 

 気が付いた時には携帯を壁に叩きつけていた。

 

「んなわけないでしょ!!! だいたい、い、愛しの彼とか誰のこと言ってんのよ!」

『ほんのおふざけっス。それに織斑さんが気持ちに気づかないって国際電話してくれたでしょうが。』

「だ、だからってあたしが一夏のこと好きだとか愛しとか決めつけないでよ!」

『今更過ぎるっス。ツンデレにしても誤魔化せる時期過ぎてます。』

 

 長い付き合いだけにズバズバと臆することなく踏み込んでくる。

 

「あ、あの時はあたしも頑張らなきゃって思っただけで、別に今でも一夏のことが好きとか・・・」

『ま、んなことどうでもいいんス。本題に入りますね。』

「・・・ねえ野球やらない? あたしがバッター、アンタがボールで。」

『残念スけどお付き合いできないっス。こっちは社会人なんで遊んでる暇ないんスから。』

「・・・もういいわ。アンタのペースに振り回されるのも今に始まったことじゃないし。で、用件は何よ?」

『簡潔にまとめれば一点だけ、もうガッコの夏休みまで【甲龍】を壊さないようお願いしたいんス。』

「それだけ? わざわざ電話してこなくても壊したりしな――」

『三日前に大破したから直してくれって言いだしたのは誰っスか。』

「・・・」

 

 それを言われるとぐうの音も出ない。

 だが誰が想像できるだろうか。試合途中で所属不明機が殴り込みをかけてきた上、それと戦うために海の上まで行くことになるとは。

 交戦後、学園に帰投してから確かめたところでは機体の損傷具合もひどいものだった。ビーム製の弾丸を大小問わず受けたことで装甲は無事な箇所の方が少ない。武装も青龍刀は狙撃タイプの敵の主砲と相討ちにさせる形で喪失、衝撃砲【龍砲】も一夏の攻撃と海上戦闘の酷使でともに砲身が潰れた。

 メールでその事実を伝えると『3日は修理にかかる』との返事があった。本国にいたころから模擬戦で損傷したことは何度もある。もちろんここまで大きくはなかったが、3日も修理にかかるのはおかしいと思っていたところだ。

 

「いつもなら機体の修理にアンタが文句なんて言わないじゃない。」

『修理すんのは俺じゃないっスから。自己修復もやってくれるっスしね。ただそれでも今回は俺が伝えないといけないことが起きたんで。』

「・・・何か中華領であったの?」

『一応社外秘ってことなんスけど・・・ま、鈴さんも関係者だからいいっスかね。いいことと悪いことがあってそれが原因ス。どっちから聞きたいっスか?』

「勿体ぶってんじゃないわよ。いい方から教えて。」

『前に鈴さんにお話しした追加武装ありましたよね?そん中の【GFAS-X1 黒雷】って覚えてまスか?』

「・・・あの戦争前提のやつね。どんな奴が考えたんだか。」

『あれの正式採用型が出来たんス。ISの強化装甲型として10mサイズと戦略級武装としての50mサイズの2タイプが。』

「戦略級の方は乗らないから。作るだけ無駄だっての。」

『俺もそう言ったんスけどねー。どうも社長より上から命令が下りてるみたいで強行されました。ま、とにかく競技でもある程度使えるようにさらに改造して夏休み後には実装させます。

 これが良い方。』

「どこに良い要素があったのよ?!」

 

 兵器が出来たよ、と報告を受けただけだ。それも鈴が最も望まない方向での。

 この男は鈴がこの手の武装を欲しがらないことを忘れたのだろうか。

 

『【黒雷】を原型留めないくらいに改造して強化するんスから良い話っしょ。それよりこの次が問題です。』

「・・・はいはい、で何よ?」

 

 声のトーンが一音低くなる。社会人などと言いながらまだ漂わせていたおちゃらけた雰囲気が霧散した。

 

『製作にあたって【黒雷】は性能調整やデータ採取のためにプロトタイプが先行して造られてました。数は三機、いずれも戦略級武装に使える50mの方です。

 それらが()()強奪されました』

「っ、強奪!? 誰が――ってこんなことできるのは。」

『お察しの通り、首謀者は亡国企業だと見られています。本当に()()なのかは正直怪しいんスけど。』

 

 テロリストを倒すために開発していた武装を対象に奪われるとは本末転倒だ。

 そして今回奪われたのは一機でも都市を壊滅できる性能、社外に漏らすわけにはいかないのも納得できる。機密保持という面もあるだろうが、おそらく開発を促した社長より上の権力保持者たちは他陣営に付け込まれる隙を作りたくないというのもあるのだろう。

 思っていた以上の深刻さに鈴が絶句していると、ファンミンが元の浮ついた雰囲気に戻った。

 

『・・・・とまあそんなわけで技術者も異動と移動が重なりまくってるんス。奪われたものをどうするかとか、進行中のプロジェクトの担当者が責任を問われて更迭とかで。

 で、もし今、鈴さんがこれ以上【甲龍】をぶっ壊しでもしたら、担当できる人間がいないんで修理を待ってもらわないといけないんスよ。』

「分かってる分かってる。心配しなくてももう負けたりしないわ。」

『言っときますけど、悪化させすぎたら夏休みの間ずっと本国で調整とかもありうるっス。今回はフリじゃないっスからね。』

「だから分かってるわよ。気をつければいいんでしょ。」

『あ、あと彼氏さんと進展あったら――』

「うっさい!」

 

 投げつけるようにして電話を切った。

 途中脱線はあったが、こうして鈴のタッグマッチ参加には制約がかけられたのである。

 

 

 

 

 夜、誰もいないIS学園。

 そこはある種の聖域のような静謐さがある。夜の帳の降りた学園に沈黙を破ることのできる者など存在しない。

 そのはずだった。

 

 アリーナの機構の一つ、フィールド生成機能によって生まれたビル群。それらのひしめき合った建造物は遮蔽物としてしっかり景色に溶け込んだまま機能している。

 一夏と簪の練習からも分かる通り、銃弾やミサイルを多少受けただけでは倒れもしないのだ。

 

 そのビル群の一角が轟音と共になぎ倒された。

 

 かなりの質量を誇ったビルが鉄屑に変えられる。建材が舞って煙のようにあたりを覆い隠す。

 その煙の中でも衰えることなく存在感を放出するのは、天を突くように伸びた黄金の輝き。周囲のビル群よりも高く伸びた()()がビルを薙ぎ払った元凶なのは誰の目にも明らかだった。

 そしてその発信源にたたずむのは黄金にも劣らない存在感を発する純黒の鬼だった。黄金の正体はその鬼の右手から発せられる【ビームサーベル】だ。

 ビル群にも隠れることの無いその巨体もさることながら、頭部は金色の角と血のように紅い瞳が圧倒するほどの気を放っている。背中のスラスターや機体を支える脚部など、機械と分かる特徴がなくては怪物としか見えなかった。

 不意にその鬼の目から光が抜けると、体が上部からパーツへと無数に分解されていく。

 全てが消えて失せると後に残っていたのは、鬼の半分以下の大きさになったIS【シュヴァルツェア・レーゲン】だった。

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・全力での使用は・・・1つしか使いこなせ、ないか。・・・負担も大きい。だが・・・奴相手には・・・これくらいの無茶は・・・必要だ。」

 

 【シュヴァルツェア・レーゲン】も解除したラウラはその場にへたり込んだ。

 そして疲れも溜まっていたのか、その場で眠ってしまった。

 眠りが深まるにつれてラウラの目にまた何かの景色が近づいてきた。

 




というわけでこの引きからわかるように次回に続きます。
 特別賞が作られたのは一夏が原作より強くなりすぎたのが問題だったわけです。3戦全勝してきているようなのと戦いたがるって常識人にはいないわな。
 会長がいれば今から目をつけられていたかもしれないんですが。

 原作と組み合わせが変わりそうだったり、イノベ組の隠れた所が出たり、久しぶりに脇役が出てきたりと色々ありますが、またこれ以降をお楽しみに。

 今回はこの辺で。
 感想・質問・評価、何でもよろしくお願いします。

――1周年を迎えたどうでもいい余談――
 気づくと簪が優遇され過ぎている気がする。
 一番最初から本編に出て近くにいるので動かしやすいというのもありますが・・・
 まぁ、彼女も動きを決めないといけない時は迫りつつあります。姉の不在の影響かなこれも。
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