IS×00 夢を目指す者   作:王天君

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英中vs独仏戦始まるよー(サッカーか)




長くなったので2話です。
後編は近日投稿。



第三十六話タッグマッチ初戦 前編 悪意再び

――IS学園アリーナ 試合当日――

 

 

「・・・ところで鈴さん。貴女はなぜタッグマッチに参加を決めましたの?」

「試合直前にそれ聞くわけ?」

 

 機体の起動もセットアップも終わり、相手が入場してくるのを今か今かと待ち受けていた二人は軽い雑談をかわしていた。

 もっとも鈴の言う通り、参加動機を今更尋ねるのはおかしなものだ。

 

「私は部費の件で部長から『優勝以外ないわ!』と参加させられましたから。タッグも鈴さんから誘われてちょうどよく便乗しただけですし。」

「あーやだやだ、お金絡みでドタバタするのって。」

「あら、経験がおありでして?」

「親の離婚とか見てると嫌になるわよ。・・・それで参加した理由だっけ?ちょっと参加しないわけにもいかなくなったってだけ。」

「例の噂ですの?」

「・・・」

「まさか出所も知れないあんな噂を鵜呑みにしたわけでは――」

「ないわよ!べ、べつに『一夏と付き合える権利を使って今度こそ一歩進んだ関係に』とかぜんぜん思ってないから!」

「はいはい分かりましたわ。お好きにどうぞ。」

「聞き流すなぁ!」

 

 試合前とは思えない程の緊張感のなさだったが、それも対戦相手が姿を現すまでだった。

 

「大切な一試合目が貴様らのような中途半端が相手とは、縁には恵まれんらしい。」

「わたくし達のこと、前哨戦程度お考えですの?」

「違うというつもりか?貴様ら二人とも、あの織斑一夏に負けた負け犬ではないか。奴を倒すための前座以上になれはしない。」

「・・・何?アンタ、試合外でボコボコされたいの?」

「ふ、凰さん、暴力は駄目だよ。」

「鈴さん、フライングで失格になりますわよ。」

「オルコットさんも注意するところが違うよ!?」

「分かってるけどさ。ムカつくでしょ。・・・で、アンタはなんで参加したの?」

 

 視線を移して今度はシャルルが口を開く。

 

「僕は・・・一夏に確かめたいことがあるからかな。」

「何確かめるってのよ。あの唐変木相手に。」

「一夏に僕がどう見えてるか。それだけ知りたいの。」

 

 質問に答えてはいるが、どこかぼんやりと夢の中にいるような抑揚のなさが全身に付きまとっている。ツッコミをした時とはまるで違う覇気のなさだ。

 これから試合に臨む人間としてはあり得ない精神状態だといえよう。

 鈴でなくとも気にしない方がおかしい。

 悩んだ末、セシリアは特に何もすることはなかった。体調管理も選手の仕事であり、ベストの状態で試合に出て来ず負けるならそれは選手個人の責任である。

 対戦相手に気遣われてはむしろ彼の誇りを傷つけよう。

 ともあれ後は試合開始を待つだけである。

 

 

 

 

 

『さあさあまもなく試合の開始ということで会場の興奮もマックスに近づいてます!

 本日は山田先生が連日の激務で体調を崩されたとのことで、実況と解説に識者としてリヴァイブ先生、ヒリング先生のお二人にお越しいただいております!』

『ヨロシクネ、ヨロシクネ。』

『ヤラセテモラオウ、ヤラセテモラオウ。』

(・・・眠い。)

 

 リヴァイブとしては朝いきなり呼ばれたので始まるまでが拷問である。山田先生に付き合って昨日も夜遅くまで仕事に追われていたせいで気を抜くと眠りに落ちていきかける。

 どれくらいかというと倒れた真耶が羨ましくなるくらいだ。

 それでも識者扱いは悪い気はしないし、特別席に座っているのも優越感を感じられる。

 だが機械の身体になって苦労を積んだせいで、眠気の恐ろしさを身に染みて知っている。イノベイターの時よりもずいぶん苦労しているのには正直笑えない。 

 

(ポップコーンっての結構いけるわ。キャラメルが良い感じ。)

(・・・気楽でいいね)

 

 では相棒はどうかと思って見るとすでに観客モードに入っている。

 なんだか腹が立ったので、最近の行動を探ってみた。

 

(ハグハグモグモグ・・・)

(ポップコーン齧ってないで説明しろ。最近こそこそ何をしていた?)

(別に何もしてないって。ちょろっと学校に噂を流しはしたけど。・・・塩味も案外イケるわね。)

(どうせ下らないことだろう?)

(優勝したら坊やが言うこと聞いてくれるって噂。尾ひれがついて付き合う権利に化けたんだってさ。)

 

 まさか鈴たちも学校に蔓延した噂をこのグレーの球体が噂させたとはつゆほども思うまい。

 学園中を騒ぎにさせた張本人はそんなこと意にも介さぬ様子でポップコーンを齧っている。どうも相当お気に召したようだ。

 

(付き合うくらい、好きにすればいいと思わない?)

(それが出来ないのも人間さ・・・それで何を思ってそんなこと。)

(男装っ子いたじゃない?なんか企んでるみたいだから動きにくくしとこうかなって。)

(シャルロット・デュノアのことか。それで首尾は?)

(坊やが自分でGNドライヴの情報渡しちゃっておしまい。)

(何だと!?)

『うおっと!?リヴァイブ先生、急に跳ねてどうかされました?』

 

 思わず跳ねたせいで放送席の生徒が怪訝な顔をする。

 

『落チ着キナサイヨ。落チ着キナサイヨ。』

(誰のせいだと――)

 

 能天気にまだポップコーンを食べながらこちらを注意するヒリングに怒りを飛ばす。

 それを受けても彼女は動じずに、機械の口を開いては閉じを繰り返すだけだった。

 

(・・・分かっているのか。太陽炉はこの時代には早すぎる。万が一、創られでもしたら。)

 

 この先に続いている筈のイオリア計画は修正では済まされない被害を受ける。

 

(ま、いいんじゃない。創られたなら創られたで。どうせ本当にこの時代がアタシらの時に繋がってる保障もなし。)

(責任を感じないのが羨ましい。リボンズ・アルマークが聞けば何と言うか。)

(はあ?なんであんなやつのこと気にしなくちゃいけないの?そんなことより・・・)

 

 まもなく始まろうとする試合会場ではなく、観客席の一角。この学園唯一の男子の座る席をヒリングは見つめた。

 

(坊やも何考えてんだか。自分の機体の秘密、頼まれたからってホイホイ渡す?)

(求められたことに応えようとし、なおかつ相手に踏み入ることはしない・・・ニンゲンにしても不可解が過ぎるな。)

(最初はお人好しが服着て歩いてるイメージだったのにさ。戦った後も含めて変わってなかったんだけど・・・データ渡したのはただの馬鹿かって。)

(一見すれば善人だが、彼の本心はまるで見えないままだ。)

(男装っ子騙してるって風でもないのよね。なんていうか――ニンゲンじゃないみたいな。)

(彼の中身は彼しかわからないからね。)

 

『それではこれより・・・試合開始です!!!』

 

 開始の合図と会場の方から上がった歓声で二人の会話はいったん打ち切られた。

 

 

 

 

「まずは気の抜けてるのから!」

「あ、ちょっと!」

「来るぞ、シャルル!」

「・・・え。う、うわああああ!」

 

 どこか心ここにあらずと言った様子だったシャルルが真っ先に狙われる。ラウラに声をかけられて動き出したがあまりにも遅い。

 鈴にラリアットを喰らわせられ、腕を掴まれてラウラと引き離されていく。

 

「・・・あいつめ。誘っておいて気を抜くとは。」

 

 攫われるように移動させられたのは罠ではなかったらしく、苛立ったような口ぶりでタッグ相手を睨んでいる。

 

「もう!勝手ですわね!」

「お互い、選ぶ相手を間違えたらしいな。」

「珍しくそこは気が合いますわ。ついでに負けてくださいませんこと?」

「ほざけ。」

 

 軽口を叩いているようで既に駆け引きは行われている。

 動揺を見せないよう努めるセシリアにラウラと【シュヴァルツェア・レーゲン】は決定的な波を全く起こしていない。

 

(一夏さんのお話通りなら目か手のどちらかで相手の動きを縛るのにだけ注意。どちらが正解かを掴まないと攻め札も考えられませんわね。)

 

 戦闘においては敵の手の内を図らないまま突撃を仕掛けることは敗北に直結する。かといって恐れに身を縛られ過ぎては一切の行動を封じられ、これも敗北につながる。

 蛮勇とは違う勇気、それをどこで晴れるかが自分を勝利に導くカギとなる。

 

(それでは・・・私から動いてあげますわ!)

 

 【ティアーズ】は展開せず、ライフルによる射撃を見舞った後一気に相手へと加速する。

 射撃は体を僅かに動かしただけで避けられてしまったが、牽制なので気にすることはない。

 さらに掌はセシリアとは明後日の方向を向いている。

 次は頭部に射撃をして・・・と考えたところで、狙いをつけたスコープ越しにラウラの目が映った。

 

(・・・っ、違う!)

「情報よりはマシだが・・・お得意のビット兵器も出さずに様子見とは舐められたものだ。」

 

 視線から感じた寒気に突き動かされて横へ急制動をかけようとするも、それは戦闘中にしては遅すぎる判断だった。

 

「ぐっ!?」

「本気を出せ。今の貴様には視線だけで足りる。」

 

 手を動かすでもなく、ラウラが強く睨みつけただけでセシリアは横へ回避した姿勢のまま固められた。

 

「く、この!!」

「何をしようと拘束された側の攻撃でその拘束は解けん。改修前なら通じたかもしれんがな。」

 

 捕まえて気が緩んだラウラがうっすら笑みを浮かべる。

 腕1本、動かせない完全な拘束。試合開始5分でもう決着がついたかに見える。

 実際、並の相手ではもう終わっていただろう。

 だが

 

「【ティアーズ】!」

 

 彼女は『並』に収まる人物ではなかった。

 セシリアの声に促され、2基の砲台【ブルー・ティアーズ】が飛び立つ。

 背に隠れて見えていなかった場所までは拘束が及んでおらず、動き出した銃達はセシリア()から距離をとると一斉に敵めがけて砲撃を繰り出す。

 

「わざと受けたか、だが。」

 

 ラウラもこの変化に呆けてはいない。

 セシリアに集中していた意識を次々飛び来るビームとミサイルに向ける。

 

「苦し紛れでは私には届かん。」

 

 ビームは回避、ミサイルはレールカノン(ナースホルン)ワイヤーブレード(ミティオラ)でその全てを叩き落す。有効打になり得たものは一つもなかった。

 だが視界から離れたことでセシリアの拘束は解かれ、翼を広げた鳥のようにその体と【ブルー・ティアーズ】を空に開く。

 

「行きなさい、【ティアーズ】!」

 

 残りの4基も放って、再度【スターライトMarkⅡ】と共に敵の懐へと攻め込んだ。

 

 ブレード【インターセプター】とラウラのプラズマ手刀が激突。威力ではラウラが勝るも勢いではセシリアが圧倒している。

 激突で生まれたスパークが二人だけでなく、会場の全ても明るく照らしだす。

 鍔迫り合いを演じる二人の周囲では自動操縦の【ティアーズ】がラウラを狙い、反応したワイヤーブレードが近づけまいと牽制を繰り返している。

 ようやくここでラウラの顔にも驚愕の表情が浮かんだ。

 

「こ…のおおぉぉぉ!」

「くっ、射撃型で距離を詰めるだと!?」

「時には押すのも淑女の魅力でしてよ!」

 

 縛ろうと目に力を加えるがスパークに邪魔されて範囲を特定できず、セシリアを拘束するまでに至らない。

 

(直前まで拘束されていながら、反撃の算段を整えていたとはな。)

「しかし・・・」

 

 所詮は力不足を誤魔化す悪あがきに過ぎない。

 その証拠にこの女からは更式簪と織斑一夏に感じた、圧倒的な力を感じ取ることが出来ない。

 

「特別に先に出会っただけだったか。残念だ。」

 

 驚きの顔は既に失せている。

 離れていくセシリアへ少しの失望感を抱いてラウラは後を追った。

 

 

 

 

「そおりゃあああ!」

 

 セシリアが一旦攻めるのを止めたのとは逆に鈴は圧倒的大攻勢へと打って出ていた。

 

「当たらないよ、そんな攻撃!」

 

 力任せに振るわれた青龍刀が敵を捉えることなく空を斬る。

 シャルルは次々に振るわれる凶刃をひたすら回避するだけだったが、薙ぎ払いを飛び上がって離れると攻撃に転じた。

 

「僕だって!」

 

 拡張空間からマシンガンを引き出すと鈴へと発砲。寄せ付けないための防壁として弾幕を張る。

 

「喰らうかあ!」

 

 だが鈴の勢いを止めるには貧弱すぎた。頭部などに直撃しそうな弾丸だけを払って、一直線に接近する。

 それでも射撃を続けると徐々に機体への命中率も上がる。

 シャルルが今度こそピンポイントで頭部を捉えたと思った途端、銃が見当違いの方向へ跳ね飛ばされる。

 確認する必要もない。

 接近を阻もうと必死になることを見越されて衝撃砲を当てられたのだ。

 

(しまっ・・・!)

 

 防御用の武装を引き出そうと手を伸ばすがまた遅かった。

 肩から腰へと袈裟懸けに斬り下ろされて、装甲もシールドエネルギーも大ダメージを負ってしまう。

 機体とシャルルを貫く衝撃。

 そしてここでシャルルの、彼の中にある何かのスイッチが入れられた。

 

(所詮卑しい女の娘だな、お前は。もういい私がやる。)

「あぐうあああ!?」

 

 戦いを中断して苦しみだすシャルル。

 頭を押さえてしばらくしたかと思うと急に笑い出す。

 

「うっ―――あはははは!あーはっはははあ!」

 

 【ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ】の背中に2本の略式化された機械の腕が出現。シャルルと同じマシンガンを装備すると、鈴へと銃撃を行う。

 

「数が増えたくらいで!」

 

 瞬時に崩れた姿勢から武装を展開されても鈴は動じない。青龍刀【双天牙月】を機体の前でバトンのように回転、即席の盾として弾丸を弾く。

 だが今度は鈴が遅かった。

 発声を伴わずにシャルルが呼び出した武装が機械腕へと装備、盾の脇をすり抜けて左右から挟み込んだ。

 

「こんのお!」

 

 衝撃砲をコントロール、手を離しても無理矢理回転を続けさせて盾としての機能を維持させ続ける。

 そして両手で襲ってきた武器を受け止めた。

 鈴の不運はこの時の対応を逆にしなかったことだ。

 

「あひああひひゃあ!!!」

 

 使われたのはパイルバンカー【グレー・スケール】。炸薬式で火薬の続く限り何度でも杭を打ち込める鬼のような兵器だ。

 そして鈴は・・・その杭を手で受け止めていた。

 

「」

 

 火薬の炸裂音の後の悲鳴は声にならなかった。

 

 

 

 

「あれは!」

 

 当然この成り行きを見守っていた一夏もシャルルの変貌には気づく。

 入学試験の際に簪に起きたあの異変と同じ。

 

「おりむー立っちゃ駄目だよ。」

「織斑君、いま私たちは何もできない、から。」

「一夏、騒がしいぞ。」

「それどころじゃない!」

 

 端末を取り出すと同時にコールを飛ばす・・・とまで考えたところで誰に飛ばすかを考えっていないことに気づく。

 周囲は試合のパフォーマンスか何かだと思っているようで大きく変化はない。

 

(山田先生は病欠、千冬姉はいない、ハロ組はアテにも戦力にもならない。)

 

 だからといってもここで乱入でもすればその後の混乱の方が大問題になる。

 観客席のシールドが崩れれば彼女らを守るものは何もないのだ。

 

(考えろ・・・簪を防衛に残して突っ込む?無理だ。シャルルだけならともかくラウラも俺を狙ってくる可能性がある。

 避難をさせる?みんなまだ試合の中だと思ってる。従ってくれる保障はない。

 ヒリングたちは・・・考えるだけ無駄だ。)

「くそっ・・・何で最近のシャルルに気づけなかったんだ!」

 

 最近の彼はどこかよそよそしく振る舞っているときがあった。

 大丈夫かと聞いても、曖昧に笑うだけ。しかし遠くから自分のことを見ているなど不審な兆候があったのだ。

 あれはシステムに憑りつかれたと相談するかを迷っていたのかもしれない。

 

(また・・・またなのか!また誰かが傷つくのを見てるだけで!)

 

 現状、一夏にできることは何もない。

 不気味に笑うシャルル(と操る誰か)を相手に、傷ついた体を押して戦う鈴の勝利を祈るほかには。

 

「勝て・・・勝ってくれ、鈴!」

 




先に謝っておきますが、あんまり鈴の方に描写は割けないかもです。

では次回。

――途切れがちだったどうでもいい余談――

 一応、一夏にもやれることはあります。ただし今の一夏じゃどれも無理。
 詳しくは次の時に。

 後、作者は抹茶キャラメル味が好きです。  


 しかし見事に勘違いしてるな一夏は。
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