IS×00 夢を目指す者   作:王天君

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注意、今回は甘味過多です。

ついでに一夏と全く関係ない所で別のフラグが立ったかも?


第四十一話 あなたがいてくれるから

 制服に着替えたラウラが息のかかるような距離で俺の顔を見つめていた。布一枚を隔てて接した胸は小さく上下し、トクントクンと鼓動を打つ。顔も風呂に入った後なのか赤く上気してほのかな色気を漂わせている。

 思わず合ってしまった目を逸らせなかった俺は、

 

「・・・何してんだラウラ?」

 

 無理やり絞り出した質問を問うた。

 

「静かにしろ。少し待て。」

「ここは俺のベッドだ!早く出ろ!」

 

 これではどちらがベッドの主なのかわからない。しかもラウラはそれだけ答えると眠た気に瞼を閉じ始める。

 朝になったら何を言われるか分かったものじゃない。とにかく問いただして追い出そうと肩を掴んで揺らす。

 

「起きろ、起きろって!」

「・・・一夏ぁ、どうかしたの?」

「なんでもない!シャルルはそのまま寝ててくれ!」

「・・・変なの。早く寝なよ・・・ふわぁ。」

 

 寝起きにしてもうっかりしていた。こっちが起きても大変なことになる。やがて可愛らしくあくびをしたシャルルが寝息を立てる。

 声のトーンを落としてもう一度呼びかける。

 

「それで?なんで俺の布団の中に入ってくるんだよ。」

 

 まだ黙っていたラウラがようやく口を開いた。

 

「夜に深い話をする時は布団の中が正しいと聞いた。」

「そんな風習日本にはねえよ!誰が言ったんだ!?」

「あのグレーの・・・ヒリングといったか。あの教諭にここへ来る途中に聞いた。」

(あいつめええええ!)

 

 怒りの矛先を見つけたことで頭が冷えた。ヒリングは明日にでも乾燥機に入ってもらうとして、謝った情報から入ってきたならこれ以上責めても無意味だ。

 追い出すのはいったん止めて理由を聞く。

 

「それで深い話ってなんだよ。何か言いたいことでも?」

 

 真意を問いただすとラウラは少し目を閉じて、静かに答えた。

 

「負けたせいもあるが・・・謝罪をと思ってな。済まなかった、織斑一夏。」

「謝罪?」

「出会った時から好き勝手言っただろう。気に入らないとか、嫌いだとか・・・」

「俺は気にしてねえよ。これが初めてじゃないし。」

 

 寝返りを打つ振りをしてラウラから顔を遠ざける。

 相変わらず添い寝したままのラウラは俺の服の裾を掴んだ。初対面の時とは全く違う弱弱しさがその仕草から感じ取れた。

 ここからが本題だとピンときた。

 ラウラは自分のこれまでにあった体験を話し出した。

 研究所で生まれたこと、落ちぶれたときに千冬の教えで復活したこと、急に知らない声や夢が知覚できるようになったこと、『ママ』と呼んだ誰かがいたこと、そして試合中にそれらの光景が過去の自分の記憶だと認識したことを。

 

「俺じゃなくてクラスの子に話せばよかっただろ。」

「彼らは・・・悪いが信用していない。ただの知人に話せることでもない。」

「それで俺になる理由が分からん。」

「貴様は口が堅そうだったからな。あとは・・・いやこれは関係ない。」

 

 とりとめのないことを言って会話を繋げながら、頭では内容を噛み砕こうとしていた。

 にわかには信じがたい話だ。記憶が2つあることも、それらが現実の意識の中に現れるようになることも。

 それでも疑いはしない。俺自身、【アストレア】を手にしてから不思議な体験をしてきた。

 

(刹那、ハレルヤ、ティエリア。)

 

 俺の知らない場所でガンダムを駆って戦った人達。

 声しか知らない彼らが遺したハロ。あいつが俺の元へ来た理由もいつか分かるのだろうか。

 ラウラが話していることに集中して、余計な思考を退ける。

 

「試合を終えて・・・声は聞こえなくなった。だが分からないんだ。」

「母さんといた記憶も私。研究所で成功作として育った記憶も私。」

「私は・・・誰なんだろうな。」

 

 記憶も生まれも親も、全て霞んでしまった。科学の結果で生まれたまがい物の命だというアイデンティティも二つ目の記憶の存在であやふやだ。

 そうラウラは語った。

 背中で聞く声からは表情は読み取れないけれど、悲痛な思いだけは震える手が教えてくれる。

 できる男ならこんなとき、抱きしめて愛の言葉でもささやくんだろう。けど俺にはそんな器用さはない。突き放さないように、けれど踏み込み過ぎないように心して会話する。俺に他人を背負えるほどの器量はないのだから。

 ラウラの方を向いて思いついたことを語りかけた。

 

「お前はお前だろ。難しく考えんなよ。」

「ふっ、貴様の様に気楽に考えられれば生きやすいのだろうな。」

「お前な。大体最初――」

「それは貴様が――」

 

 とりとめのない会話を続けるうちに、ラウラの声に張りが戻った。

 耳を澄ますとシャルルの整った寝息や、どこかからまだ騒ぐ声が聞こる。ここは日常の世界だ。誰もが笑っていられる場所でなくちゃいけない。だから、収まらないであろう不安を解消させるために俺は話し続けた。

 

「ふう・・・久しぶりだ。こんなに誰かと心から話したのは。」

「そりゃよかった。すっきりしたんならそろそろ・・・」

「あとひとつだけ頼みがある。」

「ん?」

 

 服を掴む力がまた強くなった。

  

「貴様があのとき、私の手を握ったのだな。」

「あのとき・・・【ディオスクリア】から引っ張り出したときか。」

「記憶の中で私は置いて行かれた時だけが強く封印されていた。私が忘れようとしたのかは知らん。だが・・・失いたくないと強く願った。夢中で手を伸ばしたんだ。」

 

 その時たまたまつかんだのが俺だった、そういうわけか。

 

「伸ばした手がやっとつながったと、確かな喜びがあった。だからかもしれんが」

 

 言いにくそうに口を閉ざした。

 どうしたのかと顔を覗き込むと、顔を真っ赤にしながら恥ずかしげに漏らした。

 

「貴様がそばにいると・・・その、安心するのだ。」

 

 しばしの沈黙。内容が内容だけに何とも言えず俺は固まり、ラウラも恥ずかしさを隠せずに顔だけが赤くなる。

 先に言葉をつづけたのは俺かラウラだったのか。

 俺はプッと笑い、ラウラは怒った。

 

「だ、黙るな!私が間抜けみたいだろう!言っておくが私はまだ貴様が嫌いだからな!」

「ははは。悪い悪い。お前も可愛いところがあったんだな。」

「うううううるさい!」

 

 寄らば切る。

 そんな雰囲気を出していたラウラから「安心する」と評価されたんだ。笑いそうになるのが当然だろ。

 混乱して聞きもしないことを主張し続けていたラウラがやっと落ち着いた。深呼吸のあと、また恥ずかしそうに目を合わせる。

 

「だからだな、その」

「そばで寝かせろって?」

 

 コクっと首だけで返事をした。小さい体をしてすがるような目で見られると子どもか妹でも見てる気分だ。そこに出ていけとは言えなかった。諦めてまた背を向け、好きにさせる。

 

「朝になったらシャルルが起きる前に戻れよ。」

「分かっている。私だってこんな、恥ずかしいこと・・・」

「いいだろ、頼ったって。俺たちは一人じゃないんだ。」

(今日、俺もそう学んだからな。)

 

 ラウラは布団の中で俺の服をまた掴む。子どもが寝るときに物を掴んで安心したがる心境が少し分かった。

 もうラウラは寝てしまったのか、落ち着いた息がかすかに聞こえた。

 

 

 

 

 服を握った織斑一夏はもう話しかけては来なかった。私もこれ以上弱さを晒さないために口を閉じる。

 不思議な男だ。

 彼を全面的には認めたくない。完璧を体現したような生き方の彼には自分のコンプレックスが刺激されるときがある。それも勝負に負けたことであらかた晴らせたが。そんな気持ちを上回るほどに彼の近くにいると心が落ち着く。

 母がそばにいたときの記憶が残っているのだろうか。

 

(記憶は少し戻った。けれどこんなのが、私だと。)

 

 記憶があっても自分のこととは受け入れきれない。受け入れるのは生きてきたすべてが嘘だったというに等しい。

 

(いつか受け入れる時が来ても・・・貴様はそばにいてくれるか?織斑一夏。)

 

 どんな時もそばにいてくれるなら、まさしくそれは幼い日に望んだ『ヒーローさん』だろう。

 頭を彼の背中に押し付けると規則正しい心拍が刻まれている。目を閉じてじっとその音に耳を澄ます。

 一拍、二拍、打たれる音が心地いい。

 そばにいる、その安心感があった。

 

(あなたが望んだとおり幸せになれるよう頑張る。だから・・・もう一度あなたに会いたい、母さん。)

 

 なぜ置いて行ったのか。記憶はどちらが正しいのか。私は知らなくてはいけない。その上で伝えよう。今の自分は幸せになれたよと。

 

「・・・ママ。私、見つけたよ。ヒーローさん」

 

 寝ぼけて薄れる意識の中で、勝手に口が動いたような気がしたがすぐに眠りに落ちた。

 

 

 

 

 次の日以降、一夏にラウラが妙に接近して過ごすようになったのを周囲は驚愕の視線で見つめる。しかし騒ぎの中心である一夏の態度が、子どもの相手をする親そのものだったため、またラウラも一夏を嫌うような言動を繰り返したので騒ぎはすぐに沈静化した。

 だが教室で寝ていたラウラが、一夏を寝ぼけて『ママ』と呼んだことで再び大騒ぎとなった。

 結果、タッグマッチの決着や【ディオスクリア】の存在は生徒たちの頭からきれいに忘れ去られることとなった。

 

 

 

 

――同日 IS学園宿直室――

 

「む・・・くぅ・・・あらら?」

 

 同じ頃、真耶は学園の宿直室で目を覚ましていた。

 どうしてここにいるかは考えるまでもない。今朝の職員会議が終わったところで倒れたのだ。そのあと誰かがここに運んでくれたのだろう。

 宿直室には畳敷きにちゃぶ台やタンスといった和室の作りだ。エアコンも温度が暑すぎず寒すぎずに調整されて心地いい。スーツも棚のハンガーにかけてあって、真耶自身はパジャマに着替えさせられていた。

 誰がここまでしてくれたのだろうと周囲を観察する。ほどなく隣の台所から物音がすると、見慣れたすみれ色の球体ロボが出てきた。

 

『オキタネ、オキタネ。』

「リヴァイブ先生。ずっと看病していてくださったんですか?」

『暇ダッタカラネ。暇ダッタカラネ。』

 

 特に気にした様子もなくお茶と体温計を渡して、またキッチンにはねていく。

 窓の外は既に真っ暗だ。朝倒れてからずっと寝ていたので、1日サボってしまったことになる。

 お茶を一口含むと暑すぎず温すぎずのいい塩梅に調節されている。寝たきりだった体には染み渡る味だ。体温計の通知音を聞き流しつつ、

 

(誰かに面倒を見てもらうなんていつ以来だろ。)

 

 ぼんやり考えて、ようやく今日が何の日かはっきり思い出した。

 

「あ!タッグマッチは!?」

『オワッタヨ。オワッタヨ。』

「・・・そうですか。」

 

 キッチンからゴソゴソ音を立てながら返答があった。

 真耶は脱力して布団に横になった。

 せっかくの学園のイベントも終わってしまった。盛り上げようと真耶なりにやってみたが、当日に倒れてしまっては本末転倒である。

 

(やっぱり織斑先生がいないと駄目ですね。私じゃとても代わりは務まらないです。)

 

 真耶と千冬は教師としてのベクトルが全く異なっている。前者が包容力に後者が統率力に優れているので、決してどちらか一方が劣っているということはないのだ。

 理屈では真耶も理解しているが、いざ困った時に必要とされるのは真耶にない力だ。真似事を試みた結果がこれでは自嘲せずにはいられない。

 落ち込む彼女に何かおいしそうなにおいが漂ってくる。台所からは刃物や鍋といった金属を使う音も聞こえてきた。

 

「リヴァイブ先生!お料理してくださっているんですか?」

『簡単ナノヲネ、簡単ナノヲネ。』

 

 布団から抜け出してキッチンを除くと、リヴァイブが丸い体とマジックハンドを起用に使って料理に向かっていた。

 

 

 

 

 寝込んでいた真耶をリヴァイブは放っておかなかった。理由はここに担ぎこんだのがリヴァイブだったので最後まで責任があると思ったのが一つ。適当に恩でも売っておくかと思ったのが一つだった。

 それで起きるまでパジャマに着替えさせたり、氷枕を取り替えたりしていた。やっと起きて恩は売れたのでもう退去して問題ないのだが、ここまで来たらもう一つくらい何かしておこうと思った。

 それでキッチンに立ち、覚えている料理を再現しようとするが材料がロクに入っていない。

 

(パスタ、なし。マカロニ、なし。パン、なし・・・文化の違いがひどいな。)

 

 イノベイター時代はクラシックに関わった地域しか知ろうとしなかったリヴァイブだ。パスタなどが中心で食を作るヨーロッパに比べると米だけなのは不安すら覚える。逆にファーストフードやらの雑多性も好きではないが。

 

(確か『カレーを入れれば大抵のものは食える』と聞いたが・・・それもなし。しょうがない、ありあわせで何とかするとしよう。)

 

 右手で熱したフライパンの油と温度を調節、左手でみじん切りにした玉ねぎとニンニクを投入。冷えた米の硬くない部分だけを入れて炒める。

 頭で冷蔵庫を開け、誰かが残したらしい白ワインを具材が焼けてきたところで注いでさらに炒める。水分が飛ぶまで炒め続けなくてはならない。

 今度は別の鍋でコンソメの元を入れてかき混ぜる。米を炒めたフライパンに加えて水分を飛ばしてあとは粉チーズやパセリを入れて完成。

 

(即席のリゾットだが。まぁこんなものだろう。さて皿を・・・)

「すごいじゃないですかリヴァイブ先生!」

『ワア!?』

 

 

 

 

 驚きを素直に言葉にすると、気づいていなかったらしいリヴァイブが飛びあがった。

 フライパンは無事だったが跳ねたリヴァイブが宙を舞う。地面に激突しそうな彼を真耶が胸で受け止めた。

 

「ふう。大丈夫ですかリヴァイブ先生?」

『驚イタヨ、驚イタヨ。』

「ごめんなさい。私が不注意で。」

(またやっちゃいましたね、私。)

 

 いつもこうだ。

 頑張ろうとすると空回りしてしまう。

 

「リヴァイブ先生もすいませんでした。今日のイベント、私が指示しないといけないのに寝込んでしまって。織斑先生だったらもっと上手くやれたはずなんですよ。」

「やっぱり織斑先生がいないと駄目なんですね。あの人がいたら・・・私なんか。」

『ヤレヤレ。ヤレヤレ。』

「え・・・」

 

 コツンとリヴァイブが頭を真耶の額にくっつけた。

 

(私はあなたがいてくれてよかったですよ。)

「・・・え、リヴァイブ先生?」

 

 きょとんと機械の目に視線を合わせても感情は読み取れない。間髪入れずに続けて頭に声が響いた。

 

(たまには肩の力を抜くことも覚えた方がいい。)

『冷メチャウヨ、冷メチャウヨ。』

「あ、待って下さい!」

 

 すぐに額から退いたリヴァイブは腕の中から降りる。どういう意味なのか理解する時間もなかった。頭上にコップとスプーンと器とフライパンと器用に乗せて、宿直室の方に戻っていく。

 幻聴?錯覚?

 

(疲れすぎて慰めてもらう幻聴が聞こえたんでしょうか?)

 

 後を追いながら考えても分からない。仕事に真面目な彼が慰めるようなことを言ってくれたのか。

 ただ、

 

(・・・リヴァイブ先生。)

 

 そばにいてくれる人がいるだけでとても胸が温かくなった。先程まで感じていた無力感をどこかに忘れたほどに。

 

 

 

 

 その後、

 

「らから・・・男の人は胸しか見てないんれすよぉ!」

『ソウカイ、ソウカイ。』

「聞いてまふかぁ!」

『聞イテルヨ。聞イテルヨ。』

 

 リゾットに混ぜた白ワインに過剰反応した真耶から、『胸が大きいのは女性に何もいいことがない』と熱弁を振るわれて辟易するのだがそれはまた別の話。

 

 

 

 

 

――同時刻 視聴覚室――

 

(なーんか学園の中から甘酸っぱい匂いがするわね。)

 

 ムカつく。

 何がムカつくって、自分が一人で暗い部屋の中で仕事しているのにそんな楽しそうなのが。

 

(恋騒ぎも見てないとつまんないっての。)

 

 彼女の趣味は他人をからかって遊ぶことだ。

 元々、アロウズに所属していた頃も出撃できない時期があった。ガンダム以外相手にしない、相手にならない以上仕方がないのだが、活動を自粛された時には退屈さがピークに達したことがあったのだ。

 いい退屈しのぎはないかと考えてもヴェーダは『仕事しろ』の答えしか返さない。リボンズやリヴァイブのワイン、クラシックは肌に合わない。

 結果、思いついたのが誰かをからかうか、遊んでみることだった。

 

(男たちも色々アピールしてきてたっけ。)

 

 気を引こうと寄ってきた男たちは決まって同じようなこと自慢してきた。車とか流行りの映画とか。全員玉砕して肩を落とすあたりも同じだった。

 あくまでお遊びなのだから、彼らが過度に期待するのは身の程知らずである。

 リヴァイブは自分のやることに難色を示したが、リボンズには好きにしていいと言われたので最終決戦の時まで幅広い交友関係を築き上げた。

 後半では経験豊富だと噂が立って、女性隊員の相談役になったりしたこともあった。助けはしたが、彼女らの恋は半分以上成就は出来なかっただろう。ほぼ全員、最終決戦の過程で戦死してしまったから。

 

(ま、人生いいことばかりじゃないわよね。)

 

 解析作業にかけているのは小さな眼帯。

 ただの眼帯ではない。あの巨大IS【ディオスクリア】を構成するパーツを封印した、謎の卵型ISの待機形態である。

 医務室に参加者が運ばれ、生徒も教室に戻した後でこっそり回収してきていた。

 

(回収中も誰かに見られた気がしたし、やっぱ放置できそうにないか。)

 

 機械で読み取ったISが情報を分析されていく。途中、いくつもプロテクトが展開されて妨害を試みてくるが数秒で突破する。

 

(出てきた出てきた。ふんふん、名前は【ハンプティ・ダンプティ】。封印機能に特化させた固定用のISなのね。)

 

 続々と現れる情報はどれもロックが掛けられるのが当然の秘密技術だった。

 ISの合体機能、シールドエネルギーの補充合算機能、内部に8つのIS(?)を封印できる機能・・・挙げていくとキリがない。

 逆によくなさそうな機能もリストアップされる。シールドエネルギーが、内蔵したコアの方は回復していないことや待機形態が存在しないことなどだ。

 【ディオスクリア】の全体図を表示したところで、特に目が留まったものが出た。

 

(両腕と両足のコア、左右で全く同じ反応。)

 

 腕に表示された名前は【ペンドラゴン】、そして脚部には【ジークフリード】の文字。反応からは左右同じものが使われていると出ていた。

 ISは量産型、軍事型を除くと基本的に同じ名前の機体は存在しない。識別のためか個体の特別性を保つためか、やたら仰々しい名前がつけられる機体は専用機であることがほとんどだ。

 前者は【打鉄】、【ラファール・リヴァイヴ】。後者は【ファング・クエイク】などが該当する。だがこの機体に搭載されたコアの名前はそのどちらとも違って見えた。

 

(量産型にこんな豪華な名前つけるわけないし、軍事型でも名前倒れよねえ。)

 

 ちょっと自分の武装に名前を付けた場面を想像してみた。

 

『いただくよダブルオー!切り裂け【エクスカリバー】!』

(・・・意外とアリ?)

 

 それほど悪くない気が――

 

(はっ!?)

 

 馬鹿な妄想にはまりかけた頭を引っ張り戻した。

 とにかくこの機体に搭載されたコアが特徴のある名前だったので検索してみる。思った通り、わずかな時間で調べた名前に行き当たった。

 

(【ペンドラゴン】、イギリスがかつて所有した第一世代IS。破壊力に優れるも量産性などの欠陥から一線を退き、現在は大英博物館にレプリカが展示されている。なお、実物は軍施設にあるとされるが詳細不明・・・。要するに行方不明ってことね。)

 

 これが事実なら【ディオスクリア】が持つコアの片方は盗難品だ。しかもそれがもう一つ生産されているということになる。

 由来を調べると【ジークフリード】はドイツのISであり、やはり現在は所在不明となっていた。

 この機体、新技術のつまった宝箱に見えた地雷だ。

 

(本物でもコピーでも知れたら国際問題ね。ウサギちゃんも責任取らされるかしら。)

 

 ひとまず機体については胸にしまっておこう。データが後に残らないよう念入りに痕跡を消しながら、退出準備をしていく。

 リヴァイブが戻り次第、今後の対応を話せばいい。あとどこに行っていたのかでおちょくれるかもしれない。

 

(でもこのコア・・・誰が作ったんだろ?)

 

 奇妙な点は名前だけではなかった。

 【ハンプティ・ダンプティ】に格納されたISコアはいずれも、シールドエネルギーが回復しない、待機形態にならない、などの共通点がある。

 ISとしての機能こそ保持しているものの、完全にはその力を扱いきれていない。出来損ないの面が色濃く表れていた。仮に名前を付ければ【疑似ISコア】とでも呼ぼうか。

 

(どこのどいつが作ったんだか。)

 

 ISのコアは篠ノ之束にしか作れない。そして彼女が製作者ならこんな欠陥のある機体にする必要はない。つまり彼女が作った可能性は低い。

 しかし疑似でも作れる人間はまずいない。世界最高峰の頭脳や知識、ロボット技術に精通した知見がいる。何より作ったのを世界に広めようとしない時点で相当の変人だ。

 そんな人間はこの世に、

 

(・・・いたわねー。一人だけ。全部の条件に当てはまるのが。)

 

 これから2世紀先にまで通じる遠大な計画を練り、未知の原初粒子とその発生機関の理論を構築、軌道エレベーターと太陽光発電システムにまで通じていた、ソレスタルビーイングの創設者―――――

 

 

 

 

 

 ――――イオリア・シュヘンベルグだ。

 




最後にまさかの彼の名前も出ましたが、真偽のほどはさておきます。

 それでは今回はこの辺で。

感想・質問・評価、何でもよろしくお願いします。


――恒例 そうでもいい余談――
 リヴァイブ×真耶、あると思います。
 
後次回はまだ展開を決めかねてるので遅れるかもしれません。多分また夢編
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