IS×00 夢を目指す者   作:王天君

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遅れて申し訳ない。とにかく前編だけ上げます。

続きは近日中に。


幕間
FRIENDS 未来より過去へ 前編


――???――

 

「ん、んん?」

 

 ラウラは身体に妙な違和感を覚えて目を覚ました。浮遊感ともけだるさとも取れない奇妙な感覚だが、とりあえず安眠を妨害するには十分だった。

 まず見えたのは街道の両脇に並ぶ街並みと、奥に広がる雄大な自然の山々だ。道は舗装されたところと自然のままになったところがあり、環境を活かした街の設計が窺えた。

 人の行き来も多く、和やかに談笑して歩く人々、登山の準備なのか大掛かりな荷物を担いだ男性、食品の看板をつけて走る宣伝用車両、と取り立てておかしなところは見えない。

 日本の風景ではないことを除けば。

 

(見た限りではドイツの――)

 

 後ろから話し声が聞こえてきたので、ひとまず横へどける。

 

『最近は電気代も高くて大変よね。』

『例の事件があったから仕方ないじゃない。』

『建て直しにはまだかかるみたい。ひょっとすると一世紀かかるって。』

『ええ!?前はあんなに早く出来たじゃない!』

『・・・そういえば何で早く出来たか覚えてる?』

『それは・・・あらどうしてだったかしら?嫌だわ、物忘れがひどくなったみたい。』

『私も時々思い出せないことがあるのよ・・・じゃああれは覚えてる?フランスのあの子の話、ほらご両親に。』

『ああ、あの子のこと。あれは酷い話だったわねえ。』

(ドイツ語・・・やはりここは祖国。)

 

 マダムっぽい服装の婦人たちが歩いていくのをかわして、道から外れた路地に身を隠す。

 建物を見るとドイツの伝統建築が使われている。軍に入ってからも幾度となく目にした風景だ。そして山の風景は首都ベルリンから離れた南部のアルプス地方であると示していた。風は冷たく、気温から考えると涼しめ夏の頃だろうか。

 

(たしか昨日も織斑一夏の布団に入ったのだが・・・)

 

 瞼を閉じたあたりで記憶が途切れている。これが夢でなければいつの間にかドイツに移動した挙句、記憶が飛んだということだ。

 

(今更記憶が抜けても驚かんが・・・動いてみないと何もわからんな。)

『気ヅイタカヨ!気ヅイタカヨ!』

 

 その時背後から機械的な声がかけられる。訓練の癖で反射的に貫手を繰り出すも標的にあたることはなく空ぶった。

 

「貴様は織斑一夏の。」

『ミテンジャネーヨ!ミテンジャネーヨ』

 

 悪態をつきながら返事をしたのは何度か見かけたことのある【ガンダム】とやらの待機形態のハロだった。

 しかし注視していると見知ったものでないことに気づく。織斑一夏が連れているのはこんなに口が悪くないし、カラーリングも黒一色に金のアイレンズと青色だったあれとはまるで異なる。

 

(私が気づく前から見ていた・・・何か事情は知っていそうだな。)

 

 ――と思った矢先にまた誰かの声が聞こえた。

 

『ムムッ、こちらからビビっと来たのであります!』

「っ!?」

 

 狭い路地でハロに注目していて、避ける暇もなく走ってきた誰かと衝突した。不思議と痛みはなかったが、突き倒された。薄情にも倒れるラウラを置いたままハロは跳ね去る。そのまま相手の少女の手元へとすっぽり納まった。

 

「ハロ殿、ようやく捕まえたでありますよ。」

『オセエンダヨ!オセエンダヨ!』

 

 カチューシャで銀髪のショートボブをアレンジした少女がいた。服は上下地味な体操着のようなもので、学校の生徒か何かだと思われる。胸にマークらしきものも入っているので組織の所属を示すタイプの制服だと判断できる。

 倒れたラウラに遅れて気づいて謝罪してくる。恐ろしいことにぶつかったのに全く気付いていなかったようだ。

 

「やや!これは申し訳ないであります!」

「いや、路地でも突っ立っていたこちらが不注意――」

「いえ!ノインが不注意だったのであります!」

 

 やや強引に自分の非だと、ノインと名乗った少女は認める。謝る間も少女からは笑顔が絶えず、その姿に太陽を連想した。元気いっぱいに敬語で話す少女は、右手を頭の前で斜めに掲げて軍人の敬礼を示す。

 しかしきょとんと動作を止めるとラウラの顔をまじまじと見つめる。

 

「お名前を聞いてもいいでありますか?」

「ラウラだ。」

「うーん。」

 

 しばらく悩むと大げさに驚いたリアクションをとった。

 

「発見、大発見なのでありますよ!」

 

 何が大発見だと問いただす前にまた新たな足音が路地に入ってくる。

 

「ノイン!この脳筋!私に走らせないでほしいの!」

「ドーちゃん!この人、マザーのそっくりさんだよ!」

「・・・ちょっとしか似てないの。」

「えー!?そっくりさんじゃん!」

(・・・今度は何だ。)

『タイヘンダナ。タイヘンダナ。』

 

 ノインに続くドーちゃんとやらは、逆に長めのストレートヘアをしていた。ノインの着ているのと同じ制服で、年は彼女と同じくらいだろう。活発さの勝るノインよりは理知的雰囲気と幼さが残る言葉遣いが出ていた。

 二人でしばらく話し合ったかと思えば、またラウラの顔を見て言い争う。どうも知っている人物とラウラが似ているらしいが、その似ているレベルの違いで揉めているようだ。先に会話に詰まったノインがラウラの手を引く。もちろんハロは脇に抱えたまま。

 

「こうなったらマザーに決めてもらうであります!」

「あ、おい待て!」

「ノイン!」

 

 背は自分より小さいノインは見た目以上に力があった。立ち止まれず引っ張られるままに通りへ戻ってどこかへ連れて行かれる。

 

「おい!貴様たち、勝手に盛り上がるな!せめて名前を言え!」

「おっとと忘れておりました!私は――」

 

 

「ノイン・ボーデヴィッヒであります!」

「・・・ドライ・ボーデヴィッヒ。」

 

 

 見知らぬはずのラウラに笑顔と無愛想で答えた二人。その顔立ちに何故か自分の顔がダブって見えた気がした。

 

 

 

――????年 ドイツ――

 

 

「・・・つまり、そのマザーという人物の持ち物がこのハロだと。」

「はいであります!」

「ペットみたいなの。」

『仕方ナクナ、仕方ナクナ。』

 

「そして今日急に窓から飛び出したので探すよう言われてあの路地に来たのか。」

『シャーネ―ダロ、シャーネ―ダロ。』

「ノインが一緒に行くって聞かないから遅くなったの。」

「だってドーちゃん、一人だと迷子になるし。」

「わわわ、私は迷子になんかならないの!」

「この前、アイ姉に言われたお使いできなかったの知ってるでありますよ~。」

「ノインー!」

 

 また揉め始めるのを道案内だけしてくれればいいので、放置する。

 歩いた先には大きな公園が作られて、その敷地内に建物があった。4階建てのコンクリート製と思しきそれには目立った装飾はなく、長く使い込まれた気配が漂っている。規模は日本の一般的学校ほど、公園もこの建物の敷地なら校庭と呼称した方が正しいかもしれない。

 周りに植えられた花や絶えず人が出入りする様子を見ると、愛されているものだとよく理解できた。

 人の波を掻き分け、大きな門を抜けて中に入ったラウラたちに鋭い声がかかる。

 

「ノイン!!淑女ははしたない仕草をしないと言っているでしょう!」

「うるせえのであります!」

「またそんな口を!」

「あれはアイ姉さま。ノインが怒られるのは日常茶飯事。」

「う、うむ。」

 

 二人とは色の違う制服を着た銀髪の女性が目ざとくノインを見つけて叱りつける。それにめげずにノインが反撃してキリがない感じだ。

 個性豊か・・・というか豊かすぎる面子に押され気味になる。あまり悪い個性の強さを見たことの無いラウラには少々耐えるのも大変なのだ。ともあれドライがノインを引っ張って移動を再開、廊下を通過して階段を何度も上がると一つの部屋に入った。

 当然というか勢いよくドアをノインが開ける、開ききらないようドライが抑え込む、と連携が出来ていた。

 

「マザー、UMAを見つけたのであります!」

「違う。ただのそっくりさんでUMAじゃない。後、そんなに似てない。」

「ノインにドライ。お帰りなさい。」

 

 中にいた人物に抱いた第一印象は深みのある老婦人だった。手入れされた長い銀髪を背中に流し、スーツで固めたその姿には未だ第一線にいる者特有の気迫がある。指や顔に走ったいくつもの皺だけが老いを感じさせる材料なほど、生命力に満ちた女性だった。

 威厳ある大机に座り、片手でペンを動かしては何やら書類を記入して、逆の手で判を押している。やっと手を止めると右眼にかけた片眼鏡を外して入ってきたラウラたちに目を向けた。

 

「それでどうしたの?ハロはいた?」

「自分が説明するであります!ハロは――」

『ココダゼ、ココダゼ。』

 

 母の名に相違なく、落ち着いた物腰で駆け込んできた二人の言い分を聞き、なおかつ情報だけ掴むと仕事を言い渡して部屋の外へと退去させる。この流れを即座にこなすには相当の年季が必要に違いない。

 そして、ノインの言葉にもうなずけるほど、マザーの顔立ちには自分の面影があった。

 退出を確認したマザーは入り口をロックすると、ラウラへ顔を向ける。ノインたちと同じでまじまじとラウラの顔に熱視線を送ったかと思うと、目を閉じて黙り込む。

 

「・・・本当にこんな時が来るなんてね。」

「おい、貴様がマザーだな?ハロといい、私が誰か分かるのか?」

 

 部屋に立たされたまま、訳も分からずに待たされるのはごめんだ。呼びかけた声に、目の前の老女はゆっくりその目をラウラに向ける。もうその目には混乱も緊張もなく、深い微笑みを称えていた。

 

「難しいわね、なんて挨拶すればいいか。ねえどう思う、ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・いえ――」

 

 向けられた目は右眼だけ。左眼にはラウラと全く同じ眼帯があった。

 

「――私の過去さん?」

 

 

 




大体いつも通りですが、今回はいつもと少し毛色が違います。
次回、終わると同時に次章への導入も入るのでお楽しみに。

 年内には投稿しますのでもうしばらくお待ちください。
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