IS×00 夢を目指す者   作:王天君

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 今回は冒頭が、一夏でなく、イクサの視点になっています。特に理由はないです。こっちの視点も少しはあった方が分かりやすいかと思ったので。

第三話、始まります。



第三話 自己矛盾

 

――Ikusa side――

 

「やっぱり追ってきたか。」

 

 一夏を倉庫の陰に隠れさせたオレは、倉庫の時と同じく目の前に並ぶ誘拐犯共に声をかけた。それなりの距離逃げたので、追手たちは全員すでに息が上がっている。

 やはり、この外見には恐怖を感じるのか、何人かは腰が引けている。無理もない。知らない人間が、いや、知っている人間が見てもこの外見は悪魔にしか見えないだろう。

 

「当たり前だ!

 あのガキ一人さらって、預かっとくだけでどれだけの金が入ると思ってやがる!」

 

 声をかけるオレに、リーダーらしき男は威勢よく声を返す。既に覆面を脱ぎ捨て、強面の顔が露わになっている。

 が、気になったのはそこではない。

 

「金が入る、預かっとくだけで、とくるとやっぱり裏に誰かいるわけか。」

「ッ、うるせえ!どうでもいいだろうが!」

 

 オレの言葉に、怒りをぶちまけるように話す。

 敵であるオレの前でベラベラ情報をしゃべるあたり、おそらく軍人上がりなどでもないのだろう。怒りや焦りで混乱している可能性も否めないが。

 金で雇われたチンピラか、それにしては全員30~40位で歳がいっている。

 傭兵崩れだろうか。

 バックにいる人間や、さらった目的についても気になるところではあるが、

 

「まあいい。後でお前らの誰かから訊けば、済む話だしな。」

 

 とりあえず、そう結論を出す。

 明らかにゲームに出てくるやられ役の様な連中だし、その程度でいいだろう。

 

「ISを使ってるからって、舐めてんじゃねえぞ、このメスがぁ!」

「いちいち台詞がやられ役だな、お前ら…」

 

 そして、マシンガンやらライフルやらを構える男達に、オレも両腰から得物を、【プロミネンスブレイド】と【プライニクルブレイド】を外して構える。

 

 

「敵は20人と少しか」

「ガンダムエクシア、目標を駆逐する。」

 

 その目に戦意と、悲しさを宿らせて。

 

――side out――

 

 

 

 

 

 

 

「すげえ。」

 

 陰から見ている俺でも分かるくらいに、戦いは一方的に進んだ。

 すなわち、イクサによる蹂躙。近距離専用の機体なので、距離を詰めようとするはず。

 そこまで考え、距離を開けようと、男達は後ろに下がろうとする。

 一方でイクサは、男たちの思考を読んだのか、そのまま中距離戦にされるのを防ぐために、相手の懐に飛び込んで、剣を振り回していた。

 倉庫脱出の時とは異なり、右手に炎の剣を、そして左手には冷気を放つ剣を持って、暴れ続ける。右手の炎で銃弾を溶かし、左の冷気を銃に叩きつけ、凍り付いた武器を破壊する。

 後は武器を無くした相手を、片端から剣の腹で殴り飛ばしたり、蹴り飛ばしたりして、一人も殺すことのないまま、無力化していく。

 一見単純な作業の繰り返しだが、戦っている男達には着実にダメージを追わせていく。

 俺がふと時計を見ると、まだ戦闘開始から、5分とたっていない。

 既に男たちはその人数を最初の半分にまで減らしていた。その残りも戦意が目に見えて鈍っており、ただ怒鳴るだけしかできない奴がほとんどだ。

 

 

「くそッ、こいつ!」

「ちょこまかと!」

「気絶した奴はほっとけ!こいつを潰すのが先だ!」

 

 逃げの姿勢をとっているために押されて、銃という攻撃手段を封じられているのだが、そのことには気づかない

 武器を無くした後は徒手空拳でイクサと戦うしかない。

 だが、そこまで武器に頼り切っていた男たちが、武器なしで勝てるはずもなく、あっさりと気絶させられて、気絶した人間の山がさらに積み重なっていく。

 ほとんどが、無駄に逃げの姿勢をして、倒されていく中で一人だけ、違う行動をした者がいた。

 

「うおおおおおおッ!」

 

 先程まで怒鳴っていたきり、姿が見えなくなっていた、リーダー格の男が、アサルトライフルを腰だめに構え、突っ込んでいく。

 

「⁉ちッ!」

 

 飛んでくる銃弾に不意を突かれたのか、一瞬イクサの動きが止まるが、右手の炎の剣ですぐさま迎撃に移る。飛んでくる方向へと、その剣先が向かう。

 男の放った銃弾は迫った順に、次々と溶けて消えていく。だが、男は止まらず、そのまま銃弾を放ちつつも、接近を続ける。

 最初は30メートル以上あった互いの距離が、リーダーが走ることによって、あっという間に埋まっていく。

 20メートル

 10メートル

 そして、5メートルを切ったところで、イクサが動いた。

 

「ここで近距離戦挑むなんて、甘く見るなよ!」

 

 流れるように接近し、右手の剣を振り下ろす。直撃すれば、確実にその命を絶つだろう。

 リーダーの身体を剣が真っ二つにするかと思われたが、

 

「まだだあッ!」

 

 斬られる寸前で、持っていたアサルトライフルを前に掲げて、剣を防ぐ。

 

「その程度で!」

 

 倉庫の外壁を切り裂く剣が、ただの銃程度でこの剣が防げるわけもなく、一瞬刃の動きを止めただけで、あっさり両断され、燃え上がってしまう。

 そのまま剣を薙ぎ払って、リーダーを気絶させようとしたらしいイクサは、しかし動きを止めてしまう。銃切断前はそこにいた敵の姿が目の前から消えていた。

 

「後ろだ、イクサ!」

 

 イクサより一瞬速く、俺は後ろに回り込んだ陰に気づいた。

 

「ッお前⁉」

「へっ、どうやらISも見えないところの反応は遅れるってのは、マジみたいだなあ!」

 

 ISにはハイパーセンサーというものが搭載されている。言ってみれば、人間の知覚領域を拡張する働きがあり、使い手は振り向かなくとも、後ろの光景を見ることもできるらしい。もっとも、人間の目は二つしかなく、視界の情報処理もそれと同じレベルが限度であるため、どうしても、普段見えない部分への対応は遅れるらしい。

 リーダーは、銃を壁にして視界を塞ぎ、その間に後ろをとった、ということなのだろう。その目論見は成功し、イクサの背後へ抜き放ったナイフを振り下ろす!

 しかし、

 

「【ダークマター】!」

 だがいくらISとはいえ、近代兵器を持っている男達にとって一方的な展開になってしまったのには理由があった。

 元々、男達は銃を使っているので、近距離戦は不利。たいして、イクサは明らかに近距

 

 イクサのかけ声で、背中の逆三角形が動いた。

 その形のまま、背中側から飛び出し、ナイフを突き刺そうとしていた男を突き飛ばした。

 

「ぎゃッ!」

 

 男を頭に乗せたまま、ソレは突き進むと、俺の隠れている近くの壁に男をふるい落した。

 さらに動きを止めず、そのブースター、とやらは空中に浮かんだまま、下向きの二辺を、鳥が羽を広げるように上へと開く。同時に背中と接続していたらしい部分が回転、背後にいる俺の方へと向けて、三角形の突起を突き出す形で変形を停止した。

 その外見は、コウモリのような姿をしている。背中のパーツを羽に、突き出した三角形を頭に見れば、だが。そう考える俺の前で、今度は突き出した三角形の中心から小さく4つの光が点灯し、目のように、動かない男を見つめる。

 

「ーーー」

 

 そこで、俺は気づいた。変形は止まったが、まだ動きは止まっていない。そのブースターは機体を今まで以上の赤さに染めたかと思うと、頭の部分に光を凝縮し始める。

 明らかに攻撃の予備動作だ。

 そして、俺もその範囲にいる。

 

「ッ、あのポンコツ!トランザムも攻撃も勝手にやるな!」

 

 イクサが背後をとられた時よりも焦った様子で、こちらに向けて走ってくる。どうやら、俺もろとも、この男を殺そうとしている機体は、彼の意思で動いているわけではないらしい。

 そんな場違いなことをぼんやりと思った。唐突に死にそうな状況になったからか、死にたくない、という気持ちもすぐには出てこない。いや、イクサが助けに来ようとしているが間に合わないのが分かっているからか。

 心臓も穏やかなもので、いつもと何一つ変わらない。ゆっくりと鼓動を刻む。

 だが、攻撃のチャージは確実に進み、光はバスケットボール程の大きさに達したかと思うと、野球ボール程に縮む。圧縮されたエネルギーが放出されるのを待ちわびるように、小刻みな振動を繰り返す。

 

(これは、死んだかもな)

「しゃがめ!ここで死なせるわけには!」

 

 イクサが俺に向けて走りながら、何かを叫んでいるが、目を開けていることも難しい光に気をとられて、俺には聞こえなかった。

 そして、その頭から粒子が放出される。押しとどめられた為か、バスケットボールどころか、俺そのものを呑み込むほどに膨らんだ粒子の塊が迫りくる。

 光が迫りくる中、俺の頭の中には、千冬姉への謝罪が浮かぶ。

 

(ゴメン、千冬姉。足を引っ張ってばかりで…)

 

 結局俺は、足を引っ張り続けただけだった。そんな後悔しか浮かばない、と思ったが、

死を覚悟して初めて、俺は自分の努力の意味が、ふと心に浮かんだ。

 それは、今まで当たり前だと思ってきた。織斑千冬の弟だから、頑張ってきた。だけど、その目的は何だっただろう。なんのために、努力してきたんだろう。

 

(俺は、俺は、千冬姉に追いつきたかったんじゃないんだ…)

 

 姉のことを追いかけて、頑張ってきた。そう思っていた。

 しかし、死を覚悟すると、そんな気持ちなどないことに気が付いた。

 姉を誇らしく思っていただけのはずが、どうして、努力を続けていたんだろう。

 それまでの後悔が消え、急に死ぬことが怖くなってくる。今のまま、自分のことが分からないまま死ぬこと、それが猛烈に恐ろしかった。

 

 目の前の粒子から少しでも遠ざかろうと、反射的に足を動かすが逃げ場所などない。このまま倉庫を盾にしても耐えられない。つまり、俺に助かる道はない。

 

(嫌だ!何もないってわかったのに、何もないまま死にたくない!)

 

 誰にも届かないとわかっていても、せめてその心の限りに俺は叫ぶ。

 生きた証をこの場所にでも、刻み込もうとするように

 

「こんなところで、死んで、たまるかぁぁぁぁぁ!」

 

 叫び声もむなしく、光は俺を呑み込む。

 そして、倉庫の時の再現のように、視界いっぱいに光があふれた。

 

 

 『赤』ではなく、『白』の光が

 




 今回はこんなところで、終わりです。
 感想・質問等なんでもよろしくお願いします。


―――どうでもいい余談―――
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そこの人、100件ぐらいになってから喜べ、とか言わない!
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