その花言葉は、なんでしょう   作:生雀

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2.『沸き上がるのは恐怖だけ』

 

 

* * *

 

「お母さん…お父さん…」

 

気づけば、暗い美術館に私一人が閉じこめられていた。

 

お母さんを、お父さんさんを、探し歩きまわってたどり着いたのは、一枚の大きなよくわからない絵。

 

端から漏れ出るように垂れた絵の具が告げた言葉。

 

『し た へ お い で よ イ ヴ』

 

「……」

 

『ひ み つ の 場 所 お し え て あ げ る』

 

「した…?」

 

 

 

“深海の世”

 

 

足を踏み入れたそこはまるで、深い暗い海の底ようだった。

 

 

暗くて、怖くて、一人ぼっちがさびしくて、

 

けど

 

 

____コツ、コツ、コツ

 

「……っあ…う、そ」

 

誰も助けに来てくれないことを、3歩あるいたそこで悟ってしまった。

 

「下に降りてきた階段が…ない」

 

怖いけど、心細いけど、泣いてしまいたいけど、

 

ただ、歩くしかなかった。

 

「……。」

 

* * *

 

『そのバラ?ちる時あなたも?ち?てる。』

 

『バラとあなたは????命の重さを知るが良い』

 

階段を降りてから右に進んだそこで、

 

手に取ったのは一輪の赤いバラ。

 

それがとても綺麗で、

 

所々漢字が難しくて読めない注意書のような張り紙なんて気にも止めず、そっとポケットにしまいこんだ。

 

 

* * *

 

 

歩いて、歩いて

 

 

「なにこの石像…動いて、追いかけて来るっ」

 

 

___パリーン、ガシャン

 

 

走って、走って

 

 

「はぁ…はぁっ、うそつきたちの部屋…?」

 

茶の服の人、緑の服の人、白の服の人、青の服の人、黄の服の人。

 

それぞれが皆、情報を伝えてくる。

 

 

 

さぁ、うそつきはだれ?

 

 

“仲間はずれが一人いる”

 

 

「あ……わかった、この人だけ誰にも同意されてないんだ」

 

 

___パリン!ガシャン!!グシャッ!

 

 

「ひ……っ!」

 

 

うそつきたちの部屋

 

 

この部屋では、うそをつく人が正しくて、真実を言う人が間違っている。

 

『うそつき!』

 

『うそつき!』

 

『うそつき!』

 

『うそつき!』

 

口を揃えそう告げる四枚の絵と、

 

ぐしゃぐしゃに壊された茶の服の人の絵からしたたる赤いモノが、そう物語っていた。

 

 

ほら、本当のうそつきはだれ?

 

 

* * *

 

『腹減った、食い物よこせ。』

 

「ぇ……」

 

『そのリンゴ、よこせ』

 

「ぁ、は、はいあげる」

 

___ザクッ、グチャッ、ジャリッ、

 

 

『うまかった。ここ、通してやる』

 

「え……ぇ、ありが…とう」

 

喋る唇に食べ物をあければ、“それ”は私を新しい恐怖へと誘った。

 

___

 

 

「あ、うん、タバコを吸う??、心の音、心の傷……赤い服の女」

 

進む度に見つけるオブジェや絵画のタイトルを口に出してみても、恐怖が和らぐことは全く無かった。

 

 

___パリン!ガシャンッ

 

 

「っまた……この絵も追いかけてくる…の!?」

 

石像が、絵がひとりでに動き、走り、私に襲いかかってくる。

 

こんな状況で、自分がなき叫ばないのが不思議だった。

 

 

「だれか……ねぇ、だれかっ」

 

 

* * *

 

飛び出してきた赤い服の女から逃げ、カギを拾って駆け込んだ場所は、本や資料でうまっていた。

 

 

なにか“この場所”について書かれたものはないのかな…

 

と探してみても、出てくるのは

多分絵かなんかの類いについての資料のようなものだけだった。

 

 

ただひとつ、『キャンバスの中の女達』という本に書いてあったこと。

 

『ここの女性はすぐに人のものを欲しがる。目をつけられると大変??である。なんせ彼女達は、自分が満足するまで??に追いかけてくるからである。どこまでも、どこまでも、どこまでも……』

 

「気味悪いのね……そんなの」

 

想像するだけで気持ちが悪くなるのを我慢して、続きを読み進めていく。

 

しかし、そのかいはまぁ…あったようで

 

『弱点があるとすれば、彼女たちは自分で扉を開けることができないことだ』

 

「ドアは開けられないの…か」

 

親切なヒントに、しかし私はため息をつく他なかった。

 

だって、“ここの女性”は人のものを欲しがって、ずっとずっと追いかけてくるのたから。

 

それはつまり、この先もずっとここから出ない限りずーっと、ずっと

 

あの気味の悪いほど綺麗な女の人の絵

を見るたび、逃げ回らなくちゃいけない。

 

ということなのだから。

 

 

こんな所で普段他の子よりたくさん勉強して、

 

『読解力』がついていたことをうらめしく思うとは、まさか思いもしなかった。

 

知らない方が気楽なことも、たくさんあるのだ。

 

ということが、たった今見に染みてよく分かった。

 

 

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