1年に1回か2回来る「重力の日」
例年通り、壁に掛けてあるものを下ろし、準備万端で迎えた重力の日。
少しずつ重力が大きくなってくる。
そしてピークにはいつもの3.6倍もの重力がかかる。

それから、俺は重力のピークを迎えたはずだったんだけど、何かがおかしい。

1 / 1
2作品目です。
1作目の「room~彼女と過ごした一週間~」を投稿してから、2週間が経ちました。
本当は、2作目は別の物語を投稿する予定だったのですが、その2作目を書いてる休憩中にこの「重力の日」を書いていたら出来上がってしまったので、短い話ですが投稿しました。
この作品は、ラーメンズというお笑い芸人の「斜めの日」というものに影響を受け書きました。

それでは、どうぞご覧下さい。


重力の日

1年に1回か2回、重力の日という日が来る。

重力が急に大きくなったり、小さくなったりする日だ。

明日はその日らしくて、ピークにはいつもの3.6倍の重力になるらしい。

ニュースでは重力についての速報ばかりだ。

小さくなるのはふわふわと体が浮いて楽しいのに、明日は大きくなるだけらしい。

つまらない。

重力が大きくなった次の日は、負担がかかっていた分、体がやけに重くなり、マッサージ店は行列ができる。

今回は3.6倍だから、相当体に負担がかかるだろう。

身動きができなくなるし、下手したら死者が出る場合だってある。

でも、自然災害には逆らえない。

無駄に歩いたりすると必ず転ぶ。

重力が2倍以上になると、全国のガスと水道が止められ、棚の上にある物を全て下ろすようにニュースで報道される。

面倒くさいから、今のうちに下ろしておこう。

壁にかかっている時計を下ろした。

今は夜の12時だ。

全部、下ろし終わったら寝よう。

明日はせっかくの日曜日だから、ゆっくりと過ごしたかったのに、忙しくなってしまう。

平日だったら、学校も臨時休校になるのに…

そんな事をネチネチと考えながら、安全を確保する。

よし、寝よう。

ピークは明日の午後3時。

その時間になったら、今、俺が寝ているベッドに戻ってこよう。

朝日に照らされ、目を覚ます。

今、何時だろう。

いつもの場所に時計がない。

仕方なく体を起こし、時計をしまった場所に移動する。

時計は9時を指していた。

ピークまで、あと6時間。

すでに重力が大きくなり始めている。

リビングに行くと、父が新聞に、母がテレビニュースに夢中になっていた。

今は、1.8倍らしい。

母が「ガスが止まっちゃう前に」と言いながら、せっせと昼食の野菜炒めを作っている。

(生野菜でいいのに)とか思っていた俺に父が「物は全部下ろしたか?」と聞いてきた。

「うん、昨日のうちにやっておいた」

「そうか…」

そんな会話をしていたら、一瞬だけグラッと地面が揺れた。

地震みたいな揺れ方だった。

母が焦ってこっちへ来て「大変!!」と言った。

火事だと察した俺と父は、急いでキッチンへと走って言ったら、さっきの揺れでこぼした野菜炒めがあった。

ガスはちゃんと止められていた。

「なんだ…」と安心した俺と父で野菜の後始末をする。

 

それからは何事もなく時が過ぎていき、とうとうピークの1時間前になった。

重力もさっきより重くなり、テレビでは2.5倍だと言っている。

ガスと水道は30分前に止められた。

部屋に戻り、最終確認をする。

部屋全体を見回し、割れ物は毛布にくるんで、万全な態勢になった。

この1時間、何をしようかと考え、取り敢えずゲーム機の電源をつける。

最近、はまっているゲームなどは特に無く、なんとなく暇を潰すという感じでやっている。

昔ハマったシューティングゲームを選び、プレイする。

全クリしてあるから、1度やったことあるステージばかりでつまらないけど、1時間潰せれば良いんだ。

ボスをボコボコにしている最中、大きめの重力が来た。

重いし、長い。

安全のため、ベッドまで這っていく。

布団にくるまった俺は、勝ち誇ったような気分になる。

でも、ゲームの中では負けていた。

変な体勢でいたら、体を痛くするから、仰向けになり体を大の字にする。

ゲームの電源を切り、重い重力に備える。

暇だ

眠たくなってきた

来た!!

 

大きな重力が体にのしかかり、いつもは温かい布団も重い。

でも、布団をかぶっていないと、体に物が降ってきたとき身を守れない。

だから、布団をかぶるように学校の授業でも教えてもらう。

いつまで続くのだろう。

体が圧迫されて痛い。

暇だ

もふもふの布団の中にいるものだから、汗をかいてくる。

暑い。暑い。とにかく暑い。

あと、どれくらいかかるのだろうか。

ピークが来てから、もう6分は経っている。

重さにも慣れてきてしまった。

結局、ピークが終わるのは27分後だった。

今回は結構長い方だった。

4時になった今、重力は1.3倍までおさまっていた。

テレビの速報を見に行く。

父も母も何も無かったようにパンをかじってテレビを見ている。

 

「負傷者28人 死者3人」

 

というテロップと一緒にヘルメットをかぶったアナウンサーが現在の街の状況を伝えている。

死者の情報を伝えるとき、俺の住んでる街の名前が挙がった。

同じ街だと身近な人が死んでしまったという可能性が有るから怖い。

友達かもしれないと恐る恐る続きを聞く。

よりによってアナウンサーは俺にとって1番身近な人達の名前を挙げた。

それは、

 

 

俺と父と母の名前だった。

 

 

意味がわからない。

俺も父も母も、今ここにいる。

ちゃんと生きている。

 

あっ、そういえば…

さっき、母が野菜炒めをこぼしたとき、俺の家は大火事になったんだっけ…

後始末したのは野菜炒めじゃなくて、焦げた家の破片だったんだっけ…

混乱のあまり、ちゃんとした世界を見れていなかったんだ。

 

死と生の間で夢を見ていたんだ。

シューティングゲームをする夢も見た。

あのシューティングゲーム、買ったばかりで全然飽きていないのに、夢の中の俺は飽きたとか言っていたな…

そして、死と生の間でピークが来たんだ。

暑いのは布団じゃなくて、火事の炎だったんだ。

 

死ぬのを認めたくなかったから、こうして魂だけ残ってんのか…?

じゃあ、今は…?

パンをかじっている父と母は何なんだ?

分かった。

走馬灯だ。

死ぬときに今まであった事を全て思い出すと聞いたことがある。

きっとそれだ。

 

じゃあ、このテレビは何だ?

何で俺たちが死んでいると報道しているんだ?

なぜ走馬灯なのに、“今”を伝えられているんだ?

 

俺は混乱している…

多分だけど、夢と走馬灯がゴチャゴチャになっているんだ。

 

 

 

俺は自分の死を認め、静かに目をつぶった。




本当は、重力が来るだけで終わらせようとしたのですが、ちょっとそれだけでは物足りないかと思い、「本当は火事が起こっていた」というオチにしました。
前書きにも書いた通り、休憩中に1時間くらいで書いた物語であり、ちょっと雑だったりしますが広い心で許していただけると幸いです。
3作目は「海」をテーマに書いているので、夏のうちには投稿したいと思います。

度々、今回のような2000文字くらいで完結する物語を投稿すると思いますので、その都度読んで頂けると嬉しいです。

連載小説も書いてみたいなぁ…

れいび

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。