Infinite Stratos 学園都市最強は蒼空を翔る   作:パラベラム弾

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二十五話

時は、少し遡り。

 

セシリアが『アルテミス』を、鈴音と簪が『アテナ』を相手にするため第1アリーナを離れてから、およそ2分と38秒。数字にすれば僅かそれだけの時間で、広大な敷地は絶死の戦場と化していた。

 

『―――通達。広範囲殲滅武装プログラム、仮称『一掃』構築完了。サブスラスター出力の18%を割り振り高速機動下での併用が可能』

 

(22秒後から集束始めろ。臨界手前で維持、射出範囲狭めて拡散率抑制。熱量が要る)

 

『指令を受諾』

 

脳内に直接響く無機質な声。一方通行の専用機『夜叉』のコア人格たる少女から伝えられた情報に対し、同じく脳内で指示を出す。

 

普段であれば持ち前の演算処理能力を存分に振るい、手ずから機体のプログラムをその場で調整している一方通行。スーパーコンピュータを軽く凌駕する彼の頭脳を以てすれば、プログラマーをダース単位で集めるより余程手っ取り早い。そんな彼が、何故わざわざ武装の調整に他者の手を借りているのか。

 

答えは単純で、そちらへ割けるだけの思考リソースが残されていないのだ。

 

一方通行が相手取っているのは、アリーナの遮断シールドを無力化した黒金の機体『機械仕掛けの女主神(デア・エクス・マキナ)』。他の無人機よりも一回り大柄で装飾もやや凝ったものになっており、隊長機のようなモノだろうと一方通行はアタリをつけていた。

 

故に、もう片方の黒紫の機体『ペルセポネ』を楯無に任せ、相手の連携を阻害しながら戦闘を開始した、のだが。インファイトの最中、『機械仕掛けの女主神』の腕部装甲から展開されたブレードが一方通行の頬を掠めた。

 

本来であれば、生身の部分へ攻撃が加わっても皮膜装甲(スキン・バリアー)によって絶対防御が発動し、シールドエネルギーの激減と引き換えに操縦者を保護するシステムが作動する。ISでの戦闘が殺し合いに発展しないよう引かれた最後の一線。だからこそ、その一線と共に一方通行の頬が切り裂かれた時、彼の中でスイッチが明確に切り替わった。

 

今まで束が関わってきた事件において、ISのシールドバリアーを貫通し得る状況はどれも『機体のエネルギー出力が高過ぎる』ことに起因している。無人機襲来事件然り、福音事件然り、だ。幸いにして一方通行以外の犠牲者は出ていないが、それも束の気まぐれの結果によるもの。

 

だが今回は違う。この機体は、『機械仕掛けの女主神』は最初から『敵対したIS操縦者を殺傷する』ことを目的として造られている。一方通行を殺す為に造られ、眼前でその力を振るっている。敵とも味方とも言えないあやふやだった関係を、明確に決定づけてしまう。

 

その境界線を踏み越えてしまえば、もう二度と元には戻らない。戻れないと知っていながら、それでも束は止まらなかった。

 

共に過ごした僅かな時間、それでも自分の事を理解してくれた数少ない同類。彼女の胸の裡を焦がす感情は紛れもなく『愛』と定義されるハズのもので、しかしそれは無償で捧げられるものでなくてはならなかったから。

 

束が彼を愛していたとしても、その愛が成就する事はない。見返りを求めれば、それは愛ではなくなってしまう。だから束は自身の心と想い人の幸福を天秤にかけた。結果などわかりきっているとしても、だ。

 

自らが創造したISを兵器として見られることを良しとしなかった束が、その信念を捻じ曲げてまで造り上げた番外機体(ロストナンバー)。たった一人の少年が、いつか英雄(ヒーロー)と呼ばれるようになるための舞台装置。

 

言い換えるなら、それはきっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

篠ノ之束から一方通行へ向けて送られた、最初で最後の(呪い)のカタチだった。

 

 

 

 

 

 

絶え間なく振るわれる両腕のブレード。絶対防御が意味を成さない以上、避けるよりも弾くか防ぐ方が安定して凌げると判断した一方通行だが、彼自身肉弾戦に長けている訳ではない。相手の斬撃にこちらの斬撃を合わせていなす事などできないし、腕部装甲で受け流せるほどの技術もない。

 

思考速度がダイレクトに反映されるVROSの反射と、高密度エネルギーの集束体である『白翼』をぶつけて凌いでいる状況。

 

しかし、それも長くは続かなかった。

 

(ッ、最高にメンドクセェ野郎だなァオイ!)

 

展開したVROSの力場にブレードが触れる。限定的なベクトル操作によって衝撃を跳ね返され、弾かれるかブレード自体が破壊される筈だった。しかしどういうカラクリか、勢いそのままに腕部ブレードが力場を通過し、『夜叉』の腕部装甲ごと左前腕を貫通した。

 

「鈴科ッ!?」

 

『義手だ、ダメージはねェ。情けねェ声出す前に篠ノ之のワンオフを再発動させる方法考えろ!』

 

半壊した観客席で戦況を見守っていた一夏が悲鳴じみた声を上げた。先の戦闘で枯渇したシールドエネルギー、回復するにはドックでの補充か『紅椿』の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)『絢爛舞踏』での回復しかない。一夏達四人が戦線に復帰できれば、護衛として動けないダリルとフォルテを含めて大幅に動きやすくなる。

 

額が擦れ合う程の至近距離。肉薄した位置から行える動作は限られるが、このまま相手の間合いに陣取るのは悪手だ。白翼の片方を彼我の隙間に捩じ込み、指向性を持たせて炸裂させる。黒金の巨体が弾き飛ばされ、その反動で一方通行自身も後方へ飛翔。距離が開き、僅かだが体制を立て直す時間が生まれた。

 

素早く機体状況を確認する。目立つ損傷は左前腕部の装甲と内部の義手だが、ステータスウィンドウに表示された赤いアラートを視認した一方通行は再度舌を打った。ブレードが貫通した前腕部を中心として、義手の回路と装甲の衝撃吸収システムに不自然なエラーが無数に発生している。恐らくは電子ウイルスの類だろうが、カウンタープログラムを組んでいる余裕はない。

 

義手の神経接続を解除。上腕部の裏にあるスイッチを押し込んで捻れば、肩口から義手が落下した。電子システムの侵食を防ぐのであれば神経接続の解除だけで事足りるが、そもそも義手自体束が作ったものだ。遠隔操作で自害を命令されるとも限らない。

 

(絶対防御が無効化されンのは、織斑の武装から引っ張ってくりゃ幾らでも説明はつく。だが『反射』すら無効化されンのはどォいうカラクリだ? 物理現象として出力されてる以上は無視することはできねェハズだが……)

 

彼が知る由もないことではあるが―――それは、此処とは異なる世界線で有り得た話。『一方通行』という超能力を直接開発した研究者が実践した『拳打が反射の膜に触れた瞬間、一瞬だけ拳を引き戻す』ことによって、反射の防御をすり抜けるという荒業。『木原神拳』とも揶揄される技術だが、やっている事はおよそ尋常ではない。

 

その研究者は己の特性と頭脳を活かして生身で体現していたが、同様の結論に達した篠ノ之束はISにその技術を組み込んだ。『一方通行』を開発した者と『一方通行』を調べ尽くした者、どちらが上かという話ではないが……少なくとも、篠ノ之束にとって実現するに困難な技術ではないことは確かだった。

 

(理屈はイイ、コッチが切れる手札を整理しろ。あのクソ兎の目的が何であれ、無人機共をスクラップにしねェと何もかもが話にならねェ)

 

『エネルギー集束完了。照準固定。対象『機械仕掛けの女主神(デア・エクス・マキナ)』及び『ペルセポネ』。射出待機中』

 

そんな折に、夜叉よりチャージ完了の報せが入る。これが逆転の一手となるかは不明だが、少なくともこのまま手をこまねいているよりはマシだろう。

 

細く息を吐き、余分な思考を削ぎ落とす。

 

『―――20秒後に纏めて吹っ飛ばす。壁のシミになりたくねェなら死ぬ気で防護壁維持してろ』

 

『いや、先輩に対する態度じゃねぇーッスよ鈴科クン』

 

『お前が言うなバカ。ほら鏡貸してやろうか?』

 

観客席で一夏達を護る防壁を張っているダリルとフォルテ。巻き添えを喰らわないよう忠告すれば、なんとも緊張感に欠ける返事が返ってくる。しかし、ダリルの専用機『ヘル・ハウンド Ver2.5』から吹き上がる炎熱が勢いを増し、フォルテの駆る『コールド・ブラッド』の周囲にダイヤモンドダストが舞い始めた。

 

彼女たちが構築する防護壁『イージス』は、熱気と冷気による分子の相転移性を利用して衝撃を吸収・拡散させる性質を有する。熱量攻撃であるレーザー兵装に対する防御手段としては無類の堅牢さを誇るだろう。

 

気だるげな言動ながらも実力は確かな二人を一瞥し、続いて少し離れた位置で戦う楯無へ回線を開いた。

 

『纏めて叩く。コッチに飛ばせ』

 

『っ了解、行くわよッ!』

 

詳細を省いた指示にも関わらず、楯無は迷いなく行動を決定する。アクア・ナノマシンを纏わせた大型突撃槍『蒼流旋』を『ペルセポネ』に叩き付け、鍔迫り合いの格好へ持ち込む。ギリギリと火花を散らして競り合う最中、僅かに手首を脱力。次いで瞬時に緊張を跳ね上げることで、ゼロ距離から相手の武器を弾いた。

 

そのままアクア・ナノマシンを相手の両肩へ付着させ、出力最大値で固定。人工関節の隙間から入り込んだナノマシンが接着剤のように硬質化し、ペルセポネの両腕を機能不全に陥らせる。反攻の芽を潰したことを確認し、『蒼流旋』の穂先を黒紫の装甲へ突き立てた。

 

いくつかのケーブルを切り裂いたのか、耳障りな音を立てて紫電が散る。『ペルセポネ』を縫い止めたまま、ジェットエンジンめいた音を立てて『ミステリアス・レイディ』のスラスターが全開で稼働する。『ペルセポネ』も押し込まれないよう抗うが、姿勢制御もろくに行えない状態では焼け石に水。

 

『機械仕掛けの女主神』が射程に入ったところで制動。腹部を蹴り飛ばした反動で距離を取る。同時、一方通行が手元から網のような物を放った。その正体は『白翼』のエネルギーを変性させて構築したエネルギーワイヤー、それを網状に組み合わせたものだった。

 

捕えられればそう簡単には抜け出せない程度の強度を持たせたものだったが、『機械仕掛けの女主神』のブレードによって容易く切り裂かれてしまう。しかし、当の一方通行の顔に焦りはない。

 

(予想通り、だが―――)

 

エネルギーワイヤーを切り払い、無人機が離脱の準備を整えるまでの約一秒。それだけあれば行動を起こすには十分だった。

 

右手を突き出す。握り込むようにして圧縮を重ねていたエネルギーの塊。周囲に陽炎を浮かばせる程の熱量を内包した破壊の極光。横目にそれを目にした楯無が、ギョッとしたように目を見開いた。

 

楯無が何事かを叫ぼうとしたと同時、極光の塊が二機の頭上へと放たれる。アリーナの天井付近まで高度を上げていく様子を確認した一方通行は、楯無の腕を掴んで自らの元へと引き寄せる。

 

「ちょっ、透夜くん―――!?」

 

何故か顔を赤くした楯無が何事かを叫んでいるが構わず、『白翼』を防御性エネルギーに偏重させて再展開。二人の周囲を護るように包み込んだ瞬間、太陽が落ちてきた(・・・・・・・・)

 

圧縮に圧縮を重ねられた膨大なエネルギーは、解放された瞬間に無数の光線となって無人機達へと降り注いだ。押し寄せる熱量はあまりにも暴力的であり、朝と昼が同時に訪れたような錯覚すら覚えるほどの光でアリーナを蹂躙した。

 

爆心地に程近い楯無は一方通行と共に『白翼』の保護の中。観客席の一夏達は、ダリルとフォルテが冷や汗を流しながら全力で展開した『イージス』によって被害から逃れたが、戦術兵器並の攻撃に晒されたアリーナは既に半壊。

 

アリーナ地面の砂地は一部硝子化し、その下にある鋼鉄製の基礎部分も赤熱して融解していた。観客席の椅子も吹き飛ばされ、一瞬で蒸発した塗装が嫌な焦げ臭さを漂わせている。

 

「……、アリーナごと吹っ飛ばすつもりかしら?」

 

「諸共吹っ飛ンでくれてンなら良いンだがな。随分とまァ高性能なガラクタらしい」

 

繭のように包まれていた『白翼』が解け、周囲の状況を確認した楯無の開口一番の言葉だった。非難の矛先を向けられた一方通行は気にすることも無く、爆心地を鋭く睨み付けている。

 

もうもうと立ちこめる水蒸気を風が攫う。現れたのは無傷の『機械仕掛けの女主神』と、その傍らで防壁を展開している『ペルセポネ』の姿だった。青白く輝く半球状のシールドに囲われた部分だけが、切り取られたように無傷で取り残されている。

 

(そこそこの火力だったンだがな。デケェ方(機械仕掛けの女主神)の耐久性がどの程度かは知らねェが、小せェ方(ペルセポネ)の障壁がウゼェ。更式が仕留め切れずにいたのはあの障壁のせいか? だとしても今ので相当エネルギーを食ったハズだが―――)

 

攻撃が通らないこと自体は想定の内ではあった。故に動揺は少なく、一方通行は更なる手を打つために思考を巡らせる。

 

否、巡らせようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の纏っていたISが、なんの前触れも無く消失していなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「は――――」

 

思考が飛ぶ。

 

脳裏に描いていた数多の手札が消え失せる。

 

疑問符に埋め尽くされた脳内をリセットするよりも早く、ISという翼を無くした彼の身体は、重力に引かれて荒れ果てた地面へ吸い寄せられた。幸いにして高度はそれ程でもなかったが、何の前触れもなく放り出された人間が受け身を取れる訳もなく。

 

ごきり、と。着地と同時、一方通行の右脚から何かが砕ける音が響いた。脳髄を焼く熱さにも似た激痛が冷静さを奪い、状況を把握する事を許してくれない。焼けた地面を芋虫のように這いずりながら、それでもなんとか顔を上げた彼の目に映ったのは。

 

此方へ突き出される無人機のブレード、その切っ先だった。

 

これ以上ないほど明確な『死』の予感。

 

一方通行が何かを思うよりも早く。

 

肉を裂く湿っぽい水音が響き、視界は闇に閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――……とうや、くん。けが、してない……?」

 

声が聞こえる。

 

だがそれは己の生命活動が停止していないという何よりの証明になる。

 

痛みはある。

 

だがそれは折れた足の痛みであって、およそ刃で切り裂かれたものではない。

 

暗い視界。

 

だがそれは何かが―――否、誰か(・・)が己の頭上に覆い被さっているからだ。

 

聞き慣れた声。

 

だがそれは先程まで隣から聞こえていた筈のもので、何故自分の頭上から聞こえてくるのだろうか。

 

「……ぁ、はは。バリアとか、あるから……だいじょうぶ、っだと、思ったん……だけど」

 

『機械仕掛けの女主神』の攻撃は絶対防御を貫通する。それを知ったら余計な心配をされるだろうから、敢えて伝えずにいた。

 

だから、それを知らない彼女はその身を楯にして自分を庇ったのだ。

 

のろのろと、緩慢な動作で顔を上げる。

 

此方を見つめる優しい眼差しは、いつもと変わらない。口から零れる鮮血と、右胸から飛び出た血塗れの刃を除けば、彼女(楯無)は呆れるほどにいつも通りだった。

 

名前を呼ぼうとした。

 

けれど干上がってへばりついた喉からは、掠れた息しか出てこない。

 

ずるり、と。刃が引き抜かれ、空いた穴と口から夥しい量の血液が噴き出した。生暖かい感触が頬を濡らす。力無く倒れ込んでくるその身体を、残された右腕で辛うじて受け止める。

 

ISが解除され、初めて触れた彼女の身体は思っていたよりも小さくて。こんな自分でも受け止められてしまう程に軽かった。

 

「ご、ぽ―――ッ! ……ぁ゛、おねーさん、ちょっと……ダメそう、かも―――ごぶっ!」

 

「……………………たて、なし」

 

どうにか絞り出したその言葉を聞いて、少しだけ驚いたように目を見開いた彼女は、やがて力無く微笑んだ。

 

「ふ、ふふ……はじめて、名前でよんで、くれた……でも、どうせなら。刀奈(かたな)って、呼んでほしい、な。わたしの……ごぷッ―――ほんとうの、なまえ」

 

「…………、刀奈」

 

「ぁ、は……うれしい……ねぇ、とうやくん。わたしが、死んでも……簪ちゃん、を……―――」

 

頬へ伸ばされた手が、だらりと垂れ下がった。

 

「…………………………………………、オイ?」

 

声をかけても、反応は無い。

 

光を失った瞳は硝子玉のようで、抱える身体から徐々に熱が抜けていく。どくどくと流れ続ける赤色がそのまま彼女の生命を表しているかのようだった。

 

このままではいけない。助けなくては。どうやって? ここから助かる方法はあるのか? まずは止血を。何故こうなった? 胸部の傷を塞ぐのが先だ。正確に情報を伝えていればこうはならなかったのか? ISの生命維持システムは機能していない。何故ISが解除された? 生体癒着フィルムで処置できるだろうか。そもそも彼女かこうなった原因は? やめろ。考えるな。奴の狙いが自分だけなら、さっさと離れていればこうはならなかったのでは? 違う、最初から伝えていればきっと。

 

結局のところ―――

 

 

 

 

 

 

全て、自分が此処にいる所為(・・・・・・・・・・)なのではないか?

 

 

 

 

 

「――――ァ゙」

 

割れるような頭痛が襲い、視界が赤く染まる。頭蓋が二つに裂けて、奥の奥から何かが頭を突き破ってくる。まるで、自分ではない自分が生まれてくるような感覚。

 

自我が壊れていく。

 

どうして自分は此処にいるのだろう?

 

どうせ―――皆不幸にしてしまうだけなのに。

 

思考が黒く染まる(・・・・・・・・)

 

項垂れたまま沈黙する一方通行へ向け、『機械仕掛けの女主神』が無造作に刃を振るった。血塗れの刃が彼の生命に届く、刹那―――。

 

その場にいた全員が、確かに耳にした。

 

まるで地の底を這いずるかのようなおぞましい響き。悪意と殺意を極限まで煮詰めて漉したような、聞くもの全てを奈落へ引き摺りこまんとするような、ノイズの混じったその声を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――i()h()b()f()()w()q()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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