とある無能力者の生き方   作:異端者

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少年とアイテム④

「オラオラァ!! 逃げるだけかぁ!」

 

ドゴドゴドパーン!! とド派手な音とともに研究所の壁に大きな穴がいくつも空く。

当然、麦野の『原子崩し』によるものだ。

その閃光が迫るたびに天谷はうまく避けている。

しかし、勝負はもう決まったようなものに近い。

合流した麦野、滝壺のはいずれも高位能力者である。

まず、麦野により火力は補われた。

そして、直接的な戦闘力こそないが滝壺には『AIMストーカー』がある。

天谷は無能力者だが『ベクトル操作』を発現しているため、居場所を探知されてしまう。

逃げることすら許されない、最悪な状況。

だが、天谷の表情にはまだ力があった。

 

(ダメージはあるし、状況は最悪だけど……)

 

天谷の狙いはただ一つ。

あえて、自分が無能力者であると気付かせること。

そうすれば、相手は油断する。そして、その隙を突く。この一点だった。

だが、いくら油断しているとはいえ相手は高位能力者である。フレンダ、滝壺はともかく、絹旗、麦野もいる状況下で下手な選択をすれば待っているのは死の一択ルートである。

 

「おいおい、逃げるだけかよ……」

 

麦野が呆れた調子で呟く。

おそらく、天谷が無能力者であることには気づいているだろう。

 

(『種』はうまくまいた。後は収穫といくか)

 

天谷は大きく空いた穴へと姿を消した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「超逃げたようですね」

 

絹旗がサラリと言う。

 

「クソッ……。ちょこまかと」

 

不機嫌そうに呟く麦野。

こういう状況は麦野は好ましくないのか、苛立ちが挙動にも出ている。

 

「滝壺。アイツ、本当に無能力者なの?」

 

フレンダがおそるおそる尋ねる。

 

「うん。力場が微弱だったからそうだと思うけど……」

 

そう言っている最中のどこかボーっとしており、暗部とは思えない脱力感がある。

 

「……無能力者に滝壺の能力はちょっと割に合わないわね」

 

とはいうものの彼女らの目的は研究所の破壊であって、無能力者の殺害ではない。ここでこれ以上追跡するのは無意味というものだろう。

麦野はそう判断すると、

 

「あんなの気にしてても仕方ないわ。とりあえず、地下区画の捜索を再開しましょ」

 

その行動が『敵』の思惑通りとは知らず彼女ら奥へと進んでいく。

 

「……あれで本当に超無能力者なんでしょうか」

 

絹旗はわずかに疑いの声をあげていた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「はぁ……。何とか、奥に進んでくれたか。運が良かったな」

 

監視室に戻っていた天谷は映像を見てほっと、ため息をつく。

電話を手に取り、再び木原病理に電話をする。

 

『はいはーい。あなたの病理ちゃんですよー』

 

「そのネタはもういいよ」

 

呆れた調子で呟く。

それより、と天谷は言葉をつなげる。

 

「あいつら、本当に撃退しなきゃダメ? 俺もう限界なんだけど」

 

『そうですか。ならいいですよ』

 

返ってきたのは意外な返答だった。

天谷はてっきり、守りきらないと結婚、とか言われると思っていたのだが。

 

『もう時間切れです。「アレ」が出てきますよ』

 

『アレ』という言葉に天谷は違和感を覚える。

確か、研究所には地下区画があったはずだ。もしかすると、そこで密かに造られていた兵器なんかが出てくるのかもしれない。

天谷はそう考えていた。

だが、学園都市の『闇』はそんな生ぬるいものではなかった。

ボゴォン!! という音が響いた。

天谷が映像を確認すると、麦野が『原子崩し』で地下への扉を破壊したようだ。

 

「な――――」

 

天谷の視界にありえない映像が飛び込んできた。

 

 

―――――――――――――――

 

ボゴォン!! という音とともに地下への扉が破壊される。

 

「いやー、手こずらせやがって。さっさと壊すもん壊して帰りましょ」

 

麦野がうんざりしたような調子で呟く。

 

「結局、無駄に時間を食ったって訳よ」

 

フレンダが答えつつも、扉の奥へ入ろうとする。

瞬間。

フレンダの体に衝撃が発生し、そのまま宙に浮いた。

 

「ガァァァァ!?」

 

突然の出来事に当のフレンダはもちろん、他の三人も茫然とする。

 

「奥に……何か、いる?」

 

滝壺が気付いたように言う。

その言葉と同時に麦野と絹旗は扉の奥へと意識を傾ける。

 

「ゴ、ホ……ハァハァ」

 

フレンダも体に走る痛みをこらえながら奥を注視する。

扉の奥で人影がわずかに揺れるのを四人が確信した時だった。

今度こそ、何の前触れもなく、四人同時に脳が揺さぶられる。

頭を人に殴られたかのような衝撃だった。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

絹旗は『窒素装甲』を展開していたため無傷だったが、三人ともダメージが通った。

 

「ちょ……。た、滝壺さん!?」

 

滝壺の意識がないことに絹旗は気付く。

滝壺は本来、直接戦うタイプではない。おそらくこの衝撃で意識を刈り取られたのだろう。

 

「クソッ! フレンダ、滝壺を連れて退却しろ!」

 

「で、でも……」

 

叫ぶ麦野に対し、フレンダはためらいの姿勢を示す。

 

「いいから。どちらにしろ意識の無い滝壺は足手纏い。現状、敵の攻撃を防げるのは絹旗。そして滝壺を連れていくのは戦力的にいってもアンタよ」

 

麦野がそっけない調子で言う。

言い方こそストレートだが、麦野の言っている事は間違っていない。

ここは、麦野の指示に従うべき、そう判断したフレンダは滝壺を肩で背負いながら引きずるように退く。

 

「ごめんね、麦野……。役に立てなくて」

 

呟くように言うフレンダに麦野は背を向けたまま言葉を返す。

 

「いいのよ。物事には役割ってのが必要なんだから」

 

 

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