とある無能力者の生き方   作:異端者

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セカンドシーズン①

天谷が目を覚まし、最初に見たのは白い天井だった。

 

(病室が……)

 

一目でそう判断する。

ふっと視界を横にやると病理がいた。

 

「起きましたか。体は痛みますか?」

 

相変わらずのうすら笑いに天谷は思わずため息をつきそうになる。

 

「アイツは?」

 

研究所であった女性。レオンの事だろう。

 

「レオンちゃんならあなたの家にいると思いますよ?」

 

「…………はい?」

 

あまりの一言に一瞬理解できなかった。

 

「多分、他にも二人ほど。っていうかあの実験の生き残り三人しかいませんし」

 

三人生き残った。

なら逆に一体何人がその実験で死んでいったのか。

天谷は視線を落とす。

セカンドシーズンの原因の一端は間違いなく自分にある。

自分が『暗闇の五月計画』で中途半端に『ベクトル操作』なんてものを発現してしまったがゆえにこの実験は行われたのだ。

 

「……実験の事。教えてくれないか」

 

天谷は神妙な面持ちで病理に尋ねた。

病理もまたその表情から何かを読み取ったのか、答えた。

 

「あなたが外に出たのは三、四年前でしたね。……その少し後で『暗闇の五月計画』のデータを基に一つの実験が始まりました」

 

「それが『セカンドシーズン』、か」

 

病理はゆっくりとうなずいてから、

 

「その実験は一方通行の『演算パターン』ではなく『自分だけの現実』を強制入力するという物でした」

 

天谷は目を閉じ病理の話に聞き入っている。

 

「能力者は一つしか能力を持てない。という事は『自分だけの現実』も一つだけ。当然、ほとんどは脳が崩壊するか何らかの障害で廃人かしました」

 

天谷は目を開ける。

その表情は渋いものだった。

 

「お前がその計画の責任者だったんだよな?」

 

「ええ」

 

病理は何でも無いことのようにうなずく。

 

「……『木原』ってのはそういうのが気に入らない。やりたい事は理解できるが共感する気はねえな」

 

「何とでも。あなたがどう思おうと私達は変わりません。絶対に」

 

「そうかよ」

 

呆れた調子で呟く。

しかし、この計画は別に病理がやらなくても誰かが目をつけていたのだろう。ならば、わざわざ病理を攻め立てるだけ無駄というものだ。

起きたことを悔いるより、これからどうするかという事に天谷の思考は切り替わる。

 

「そういえば」

 

突然、病理が思い出しように呟く。

 

「一人、来てますよ」

 

「誰が」

 

病理はにやりと笑う。

 

「セカンドシーズンの生き残りの一人ですよ」

 

「! 連れてこい! 今すぐ!!」

 

食いつくような勢いで迫る天谷。

それを見てふっと体の力を抜いた病理は、キコキコと車いすを病室の外へ。

程なくして、

 

「し、失礼します……」

 

こんこんというノックの音とともにか細く高い声が聞こえた。

開かれるドアから入ってきたのは、

 

「…………え?」

 

一方通行だった。

いや、確かに見た目は白い髪に赤い瞳なのだが。

その瞳はウルウルとしている。

服装は薄いピンクのワンピースで背がそれほど高くないのもあり、かなり女の子らしかった。

 

「あ、えっと……。す、鈴科百合子です。よ、よろしくお願いします!」

 

「……えーと」

 

おどおどした様子で頭を勢いよく下げる。

周りにねじの外れた人間が多いためか、こういうまともな事をされると逆に困ってしまう。

 

「あ、あの……?」

 

こちらをうかがうように鈴科が天谷を上目遣いで見る。

 

「あ、いや。悪い。周りにそんなまともな事する奴がいないからさ……。ちょっと焦っただけだ」

 

体に不思議な重みを感じる天谷。

鈴科はベッドの横にある椅子に腰をかける。

 

「……病理は?」

 

「病理さんなら帰りましたよ。……何か異様ににやにやしてましたけど」

 

見た目が一方通行(違いは肩までかかったロングヘアーぐらい)なので敬語を言われるとむずがゆさを覚えてしまう。

 

「そうか……」

 

病理がにやにやしているのはいつもの事なので気にしないのだが。

天谷はため息をつくと、

 

「……他の二人は俺の家にいるんだろ?」

 

「はい」

 

丁寧に答える鈴科に天谷はふっと笑った。

 

「行くか」

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