とある無能力者の生き方   作:異端者

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セカンドシーズン②

鈴科と天谷は共に家に来ていた。

マンションのエレベータ内。

 

「なあ、後の二人ってどんな奴? ……いや、能力は知ってるけどさ」

 

後ろでちんまりと立っている鈴科に尋ねる。

 

「そうですね……。レオンさんは何故か天谷さんに憧れて『執事になる!』とか言ってましたし……」

 

うーん、と鈴科は考えるように唸ってから、

 

「もう一人の方は……まあ、典型的なわがままというかなんというか……」

 

二コリと笑う。

 

「でも、二人ともいい人ですよ?」

 

そういう事を言えるお前が一番いい奴だ、と天谷は言いたかった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

天谷は全く持って、理解できなかった。

目の前には二人の女の子がいる。

一人は研究所で戦ったレオンという上品な雰囲気を纏った女性。

もう一人は、

 

「む、帰りが遅いの。まあ、気にするほどでもないか」

 

滅茶苦茶偉そうな十歳ほどの少女がいた。

しかも、何故か知らないが魔女のように真っ黒なドレスを着ていた。

 

「えっと……。うん」

 

何がどうなっている? と天谷の思考を懸命に動かすが、全くわからない。

 

「その格好で研究所からここまで来たのかよ……」

 

「なわけなかろう。病理が車で送った」

 

ため息をつきそうになる天谷に少女は返す。

 

「わが名は美空。よろしく頼む」

 

「あっそ」

 

素っ気なく答え、ソファに腰をかける。

だが内心は、

 

(ふ、ふざけるな! こんな女どもよこしやがって! 鈴科はいいよ? 何か好印象! でも美空! お前が全てを……」

 

「途中から聞こえてますよ。ご主人様」

 

わずかに笑みを浮かべるレオンとぶすーっと見るからに不機嫌そうに顔を背ける美空。

天谷の脈絡としない思考を一つの疑問へとつなげる。

 

「お前らについて聞かせろよ」

 

「何を。どこまで。そう返答させてもらいます」

 

「最初から最後まで。全てだ」

 

天谷はそう言うと、軽くほほ笑む。

 

「何も取って食う訳じゃないし、無理強いはしない。言える範囲、という意味での全てだよ」

 

天谷は後ろに立っている鈴科を見る。

 

「お前も座れよ。長くなると思うぞ」

 

「は、はい」

 

おどおどしながら座る。このおどおどしているところが彼女の性質のようなものなのだろう。

 

「じゃ、聞くぜ。……お前らの能力と強度」

 

「それを聞く意味は?」

 

レオンが探るように尋ねる。

天谷は眉をよせながら、

 

「別に。言いたくないならいい、と最初に言ってるから」

 

レオンはちらり、と美空を見る。

そして美空が小さくうなずくのを見てから、

 

「私の能力は『ベクトル生成』。文字通りベクトルを生み出す能力です。まあ、レベルは大能力者程度でしょうが」

 

「それって強くね?」

 

「まあ、そうですね。ご主人様も麦野様が倒れているのを見られたと思いますが、あれが私の強さだと思っていただいて差支えありません」

 

第四位を無傷で倒す。それがどれほどの意味を持っているかは超能力者と渡り合う事のできる天谷にはわかる。

天谷も超能力者と余裕で戦える程までの実力を持っているが、その段階に至るまで想像もつかない努力をしている。

それを目の前の大能力者は苦も無く実現する。

 

「私達もご主人様の事は知っていますよ」

 

「へ? 何で」

 

レオンはサラリとした調子で、

 

「病理様からいろいろと……」

 

(あの野郎……)

 

ギリギリ、と感情を高ぶらせる天谷に気付かないのか無視しているのか。

レオンは言葉を続ける。

 

「例えば二年前の事」

 

天谷の雰囲気がその言葉を聞くと同時に変わる。

 

「後は実験の事と……そうですね。『失敗作』……ッ!!」

 

レオンは唐突に言葉を止める。

天谷の雰囲気……いや、殺気の全てがレオンへと向けられていた。

 

「……いらぬ事を……。申し訳ありません」

 

同時に天谷の殺気がスゥ、と何もなかったかのように消えていく。

 

「……その話は、やめてくれ」

 

「はい」

 

シーンとした空気が部屋に流れる。何とも言えない雰囲気。

おろおろする鈴科。最悪な流れだ。

 

「わ、わらわも聞きたいことが!」

 

「……何?」

 

天谷が見るからに不機嫌な表情で聞き返す。

 

「あ、いや……。そう! す、す、好きな食べ物!」

 

ポカーン、と。効果音が響きそうなくらいの勢いで美空以外の全員が力の抜けた表情をする。

それに気付かないのか美空は堂々と無い胸を張っている。

 

「……」

 

「え!? いや、何だその視線。ぶ、無礼だぞ!」

 

じと目を美空へ送る天谷。それに気付いた美空はあたふたと手を振る。

 

「質問がそれに繋がってる時点で典型的なガキだな」

 

天谷は残念だと言わんばかりに首を横に振る。

 

「う、うるさい! 貴様らが変な雰囲気にするからわらわが無駄な労力を……」

 

そこまで言った美空に耳元でそっと囁く。

 

「わかってる」

 

ブフォ! と美空の何かがはじけたのだった。

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