とある無能力者の生き方   作:異端者

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セカンドシーズン③

美空の頑張りにより嫌な雰囲気は払拭された。

 

「しかし、あれだな」

 

天谷がげんなりと呟く。

 

「レオンの能力はマジでチートだろ」

 

「そうでもありません。複数のベクトル生成ができないですし」

 

「そーだそーだ。わらわの『ベクトル誘導』の方が強いもん」

 

美空が割って入る。

美空の能力『ベクトル誘導』は一定のラインに『能力の壁』のような物を張る事でその壁に触れたベクトル全てを同じ方向にそらすものらしい。

これは一方通行の『反射』のようにベクトルの有害、無害を判別する必要がなく全てのベクトルに干渉できるという利点もある。

しかし、同時に造れる壁は一つ。さらに壁の範囲もそれほど広くないなどの弱点もある。

 

「た、確かに美空ちゃんの能力はすごいですよね……」

 

鈴科がほほ笑みながら言う。

そっと頭をなでると「えへへ……」という反応は年相応な美空だった。

 

「そういう鈴科の能力って何だよ」

 

「あ、私は一応『ベクトル操作』なんです」

 

手を合わせて照れくさそうに言う鈴科。

あまり、人との会話に慣れてないのだろうか。

天谷は目を見開く。

 

「最強と同じって……」

 

「でも、演算能力が低くてデフォルトの『反射』しか出来ないんです」

 

なるほどそれで見た目が一方通行なのか、と天谷は納得した。

しかし、『反射』だけでも充分に強力な武器となる。

 

「しかし……。本当に一方通行そっくりだな」

 

「そう、ですか?」

 

キョトンと首をかしげる鈴科を見る。

その容姿は一方通行そのものなのだが、纏っている雰囲気がふわりとしていてとても本人とは思えなかった。

 

「いや、やっぱ似てないわ」

 

最強と目の前の少女を見比べるように考え、そう言う。

『セカンドシーズン』

天谷が『ベクトル操作』を発現した時点で誰かが行う事は確定していた実験。

天谷は三人の少女を見る。

この三人の人柱は間違いなく天谷が一端を担っている。

そもそも、この実験を主導した木原病理にはどんな目的があったのか。

一体、それは――――

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

「そうですね。その通りですよ」

 

木原病理は電話に答える。

 

「あなたにもわかるでしょう? ええ。ええ。その通りです」

 

研究所の一室。淡白な白い空間だった。

いつもの調子で話す木原病理の表情はわずかに喜びを示していた。

 

「わかっていますとも。そんな事。……ただこの実験は私がやらなくとも誰かがやっていたという事だけは事実なんです」

 

木原病理はふっと笑う。

 

「そんなにピリピリしないでください。彼があなたにとってかけがえのない親友だという事は承知の上です。私にとっても失うには余りにも惜しい。もちろん科学者としても、一人の女としても、です」

 

最後に木原病理はこう締めくくった。

 

「当然、来る時が来ればあなたにも『諦めて』いただきますよ? 垣根帝督さん?」

 

―――――――――――――――――――――

 

「笑わせんな」

 

木原病理との電話が切れた後、垣根はぼそりと呟いた。

 

「どうかしたの?」

 

同じ『スクール』構成員の一人、心理定規が声をかける。

 

「何でもねえよ」

 

垣根はまたぼそりと呟く。

 

「慶君の事?」

 

「……」

 

垣根は答えない。

しかし、その無言が答えを示していた。

 

「あなたは本当に分かりやすいわね。慶君の事になるとすぐ感情的になる」

 

心理定規はそう言うと、クスリと笑う。

その挙措は心理定規の年齢よりも大人びて見えた。

 

(その気持ち。わからなくもないんだけど)

 

心の中でそう呟いた心理定規はまたクスリと笑うのだった。

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