とある無能力者の生き方   作:異端者

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垣根帝督①

垣根帝督。

学園都市第二位の超能力者。

そしてその看板を支える能力『未元物質』。

垣根の能力の強大さは第三位までの能力者達と大きく差を広げている。

そしてもう一つの側面。

暗部組織『スクール』のリーダー。

その目的は危険因子の排除。

ただ、学園都市のいいように使われるだけの立場。

当然、垣根はその事が気に食わず何度も学園都市に反逆を企てた。

厳密には、学園都市統括理事長であるアレイスターに対して。

その度に彼は、天谷慶は垣根の行動を止めた。

何の思惑もなく垣根に近づいた唯一の人間。

空虚な『暴力』をただ振るう垣根に『力』を与えたただ一人の『親友』。

いずれ、闇から、抜け出す。

その為の空白。垣根もいつの間にかそういう物だと妥協していた。妥協してしまった。

この街の『闇』の恐ろしさすらも忘れ――――

 

「暑い」

 

学園都市の学生にとっては夏休みの迫る頃。

学校に行かず、無関係な垣根はうだるような暑さにそう呟いた。

余程暑さが身に染みるのか適当に『未元物質』を周囲にばら撒き、温度を調節する。

こういう身近な事にまで使える辺り、『未元物質』の万能さがうかがえる。

どこぞの第一位もベクトルを調整し、暑さを避けるのだろうが。

それでも、垣根の能力はそれこそ万能だ。言葉の通りに。

 

「いやー、暇暇。こんな事なら、慶でも誘えばよかったな」

 

天谷とは親友と認識している垣根にとって、一人でいると意外に暇だったりする。

同じ構成員の心理定規とも食事程度ならする事もあるが、どうも今はその気になれない。

 

「くっそー。やる事ねえな」

 

暗部の仕事も無い今、やる事は本当にない。

天谷の家に行くというのも考えたが、やめた。

 

(……今、行ってはいけない気がする)

 

実際にはその通りで、天谷は変な女の子三人と家で一触即発の事態に陥っている。

 

「暇なら、少し付き合ってくれませんか?」

 

後ろから突然声をかけられる。

その方向を振り向いた垣根はわずかに顔をしかめた。

 

「テメエは……」

 

垣根に後ろから声をかけたのは女性だった。

ただの女性なら垣根も多少は喜んだかもしれない。

木原唯一。

学園都市に根を張る『闇』の中心に位置する『木原一族』の中でもさらにトップに近い女性。

その女性は軽い調子で、

 

「見つけましたよ。少しよろしいですか?」

 

そう言って木原唯一はにやりと笑う。

その様子を見て垣根はわずかに警戒感を強めた。

元々、『木原』は何をしでかすか全くわからない集団だ。

その中でも、かなり質の悪い木原唯一との話など出来ればしたくはない。

ただ。

 

(こいつが厄介なのは今に始まった事でもねえ。そんな警戒は意味がねえか……?)

 

丁度、暇していた垣根にとっては相手が誰だろうと暇つぶしになればそれでいいというような考えもあった。

という事で。

 

「公園? 何でこんな場所に……」

 

学園都市第二位の頭脳は珍しく裏をかかれた。

垣根はてっきり研究所かどこかで話をするものと思ったのだが……。

 

「それで? 話って何だよ」

 

公園の木陰の涼しいベンチに腰をかけていた。

目の前では学生達も混雑している。

 

「平和ですねえ……」

 

木原唯一は目を細めながら浸るように言う。

 

「羨ましいのかよ」

 

垣根は皮肉をこめて言葉を返す。

『木原』に身を置き、『闇』に身を置く彼女がそんなはずはないとは思った。

 

「そうですね。最近、本当にわずかですが、そう思う事もあります」

 

垣根は意外な返答に木原唯一を見た。

しかし、彼女は構わず言葉を続ける。

 

「ほんの少し前まではそんな事も思わなかったです。……ですが、あなたと慶君を見ていると、少し、羨ましいです」

 

公園を見つめたまま、木原唯一は話す。

そこには学園都市の『闇』などには無関係な学生が何人もいる。

そんな表の世界を羨む。それも『木原』が。闇に生まれ闇に育った『木原』が。わずかにでも光を望んだ事が垣根には信じられなかった。

 

「……笑えねえ冗談だ」

 

「……そうでしょうか」

 

垣根はもう一度木原唯一の横顔を見る。

その目には確かに小さな光があるようにも見えた。

 

「俺も変わった。今更その言葉が寝言と言うつもりはねえよ。また、不可能とも言わねえよ。それでも抜け出すのは辛いとは言っておく」

 

垣根は持論を隠す事なく述べた。

本当にそうだと思っていたし、それが正解だとも思っていた。

 

「ありがとうございます」

 

木原唯一は静かにそう言った後。

『木原』として垣根と話す。

 

「あなたに頼みがあります。……この学園都市に『幻想御手』という物が蔓延しています。その件についての調査を依頼したいのです。『木原』として暗部組織『スクール』のリーダー垣根帝督に」

 

一気に言葉を続けたという事は拒否させる気も無いのだろう。

そして、暗部組織への依頼という事は表舞台に出せる代物ではないという事か。

 

「……わかったよ」

 

わずかに感傷的になっていた垣根は一言で受けた。

そして。

垣根の立ち去った後。

木原唯一は誰にも届かない声でわずかに呟いた。

 

「あなた達を取り巻く環境は思ったより、苛酷で絶望的なんですよ……」

 

木原唯一は笑い、悲しげな表情を浮かべた。

 

 




少し垣根主観でいきます
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