とある無能力者の生き方   作:異端者

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幻想御手①

時刻は既に最終下校時刻を過ぎている。

しかし彼ら、あるいは彼女らにとってそんなものはもうどうでもいい。

 

マンションの一室。天谷の部屋。

そこには、悠然と足を組みソファに腰をかける学園都市第二位の超能力者である垣根帝督を始め。

天谷のご同輩である黒夜海鳥。

『セカンドシーズン』の被験者である三人の女性。あるいは少女。

 

「はい、というわけで記念すべき第一回会議を始めます」

 

少しだるそうな調子で天谷は話しのきっかけを作る。

 

「何で、そんなだるそうなんだよ」

 

垣根が言葉を返す。

天谷は小さなため息をついて、

 

「わかるか親友。俺は昨日どっかのエセ執事にヒビの入った骨を攻撃されたり実験について聞いたり、今日は今日で帝督と海鳥が面倒な事件持ってきやがって引き受けて十分ぐらいで既に面倒くさい」

 

そう言って天谷はまたため息をつく。

それを見て、レオンが内心頭を抱えている事に天谷は気付かない。

 

「んでぇ? 垣根はどんくらい情報を集めたんだ?」

 

まだ興味を惹くような物がない、というような表情で天谷が尋ねる。

ああ、と垣根はスラリとした調子で、

 

「どうも気に食わねえ、というのが印象だ。あの木原唯一が食いつく物にしちゃあ情報が出回りすぎてやがって取捨選択できねえ。そもそも俺の見た情報の中に『本物』が紛れてるっつう保障もねえ」

 

その言葉に一同は息をひそめる。

様々な憶測が頭をよぎる。

そんな中、最年少の美空がド派手な黒いドレスに不釣り会いな端末を手に事務的な声を出す。

 

「そもそもわらわ達は『幻想御手』という物を頭で解決しようとしている所から間違っている可能性がある。なぜなら、既に垣根が情報の取捨選択は不可能という結論を下しているからじゃ。……ならば実際にどうするかは簡単であろう」

 

美空の年齢にあわない的確な言葉に垣根はわずかに口を鳴らした。

鈴科とレオンは知っているのか特に表情を動かさない。

黒夜は目を見開き、天谷は興味を示したのかわずかに表情に力が入った。

 

「垣根は優秀な頭脳を持っているようじゃが、その頭脳もそんな事なら宝の持ち腐れじゃ。こんなものは面ではなく点と線で挑むべきだ。どの情報を取得するかを決めれば取捨選択も難しくない」

 

事務的な声で垣根をさり気なく批判する美空。

垣根もわずかに青筋を立てるが、踏みとどまる。

天谷が目で制していたからだ。

美空は端末のデータを見つめながら、言葉を続ける。

 

「情報を鑑みるに、『幻想御手』は何らかの方法でネット上から情報が流出している。さらに最近では、『幻想御手』を売買もされている。……購入しようとした学生が金を巻き上げられるというケースもあるようじゃの」

 

「じゃあ具体的にどォすンだァ?」

 

結論が見えているのか黒夜がにやにやしながら聞く。

それに対し、美空は端末の電源を落としながら、

 

「簡単じゃ。誰かが実際に買うのが手っ取り早い。幸いこの中のメンバーでそこらの不良に後れをとる者もいないじゃろう。誰が行ってもそれほど心配する必要もない、が」

 

端末の電源を落ちたのを確認してから美空は全員を見回す。

そして十歳程の少女とは思えない笑みを浮かべてから、

 

「まあ、流れとしては……『幻想御手』を欲しがっても何の違和感もない人物が妥当じゃろう。万が一、個人情報を探られても困るしの。わらわとしては一人しかいないと思うがの」

 

全員の視線が唯一の無能力者である天谷へと向けられる。

天谷は笑いながら、

 

「面白そうじゃん。やってやろうじゃねえか」

 

 

数十分後。

結局、帰るのが面倒になった垣根と黒夜は天谷の部屋に泊まる事になった。

しかも、他に三人も増えるというイレギュラーな事態だったが天谷は冷静に対処した。

元々、一人で住むには広すぎるぐらいで、部屋も余っていたので問題は無かった。

まだ幼いというべきか。黒夜と美空はさっさと寝てしまうし、レオンと鈴科は部屋でおしゃべりと洒落こんでいる。

天谷と垣根だけが真面目に明日について考えていた。

 

「ええ、と……。これで、こうっと」

 

美空の端末をいじりながら、天谷はある事柄を進める。

『幻想御手』の取引についてだ。

どうやら、ネットで取引を持ちかけている人間はかなり素人なようで平気で自分の名前を出している。こんな事では身元特定も時間の問題だろう。

 

(どうせ、力手に入れて有頂天になってんだろ)

 

弱い人間程自分に見合わない力を手に入れると、調子に乗るというものだ。これもその類なのだろう。

 

「ところでさ」

 

端末をいじる天谷に垣根が声をかける。

 

「なんだよ」

 

天谷も端末をいじりながら答える。

 

「あの三人って『セカンドシーズン』の連中だろ?」

 

「それがどうしたんだよ」

 

垣根はコーヒーをすすりながら、

 

「いや、病理の野郎が主導してたんだろ? 別にお前があいつらと同居する必要もないだろうと思ってな」

 

天谷は端末の操作を中断し何でも無い事のように、

 

「わかってるだろうが。面白そうだから受け入れた。これだって一緒。俺の全ての行動は『楽しいかどうか』で決まる」

 

そういってパタパタと端末を見せつけるように振る。

垣根はそれを見てにやりと笑った。

 

「ところでレオンだっけ? 何でアイツに追いかけられてたんだよ」

 

「ああ……その事ね」

 

天谷はだるそうな調子で、

 

「最初俺が『研究所で負けたのは美空が手助けして二対一だったからだー』って言ったら、すごい形相で『試してみますか?』とか言うから喧嘩になって、怖くなって逃げた」

 

垣根は呆れ気味に端末をいじる天谷を見る。

脈絡としないが、要約すると天谷がレオンを挑発しそれに怒ったレオンが全力でいくもんだからビビった天谷が逃げたというところだろう。

垣根の頭には自業自得の四文字が浮かんだ。

 

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