とある無能力者の生き方   作:異端者

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少年は白い悪魔を食いちぎる①

学園都市の最終目的は『神ならぬ身にて天上の意思に辿りつく者』すなわち『絶対能力者』への到達である。

当然その事は天谷だって知っている。

むしろ知っているからこそ気になる実験がある。

『絶対能力進化実験』

天谷は『暗闇の五月計画』最後ともいうべき被験者である。

そのため思考回路や行動パターンが一方通行に酷似することがある。もちろん無自覚ではあるが。

二万体のクローンを殺害することで被験者・一方通行はレベル6へとシフトアップする。

そんなことはどうでもいいが気に食わなかった。天谷は別にクローンがどうなろうと知ったことではないが一方通行が好きではなかった。当然だ。自分が踏みとどまったにしろ学園都市の『闇』に身を浸からせる原因をつくりあげた張本人なのだから。

だから、天谷は歩く。

 

「よお」

 

天谷は友達に話しかけるような調子で声をかける。

 

「あァ?」

 

相手も気づく。まっ白な髪に赤い目、中世的な顔立ち。

学園都市の第一位・一方通行に間違いなかった。

その足元には一人の少女が横たわっている。

 

「おい人形。この場合、実験ってのはどォなっちまうンだァ?」

 

一方通行は足元の少女に話しかける。

 

「くっ……。あなたは誰、なのですか、と、ミサカは」

 

体中に傷を負いもはや立ちあがることすらできないのだろう。

何度も立ち上がろうと腕に力をこめては地面に崩れ落ちている。

 

「少なくともお前助けにきたヒーローではねえよ」

 

天谷は素っけなく質問に答える。

そして一方通行に視線を向ける。

 

「俺はそこの調子こいた『最強』をつぶしにきただけだ」

 

「ハァ?」

 

一方通行は哀れみと皮肉を込めた視線を返す。

 

(コイツも俺をつぶして最強の座奪うつもりのバカかァ? ……まァ実験中だったのは不運だよなァ?)

 

一方通行は引き裂くような笑みを浮かべる。

 

「口封じに殺す流れだよなァ?」

 

天谷は無表情のまま答える。

 

「そういう役柄はたいてい負けるんだよ」

 

「そうかよォ!」

 

先に動いたのは一方通行だった。

ベクトル操作を足に働きかけ、目にもとまらぬ速度で天谷に突進する。

その両手の指先が天谷に迫りくる。

 

(死にやがれェ!)

 

この一撃で全ては終わるはずだった。

今まで『最強』に噛みついてきたバカ共と同じように。

 

「……ァア?」

 

しかし違う。その結末へはいたらない。

触れたでけで全身から血しぶきをあげるその結末には。

 

「バカが……。わかってねェなァ?」

 

天谷はその髪で目を隠している。わずかにのぞかれた口は最初の一方通行のように引き裂くように笑っていた。

一方通行は全身から何か嫌なものを噴き出すのを感じた。自分からも相手からも。

ただ触れたとき相手に能力が作用されなかった。もっと他にやりようがあるはずなのに。

何かを恐れている自分を自覚した。

 

「俺は……俺の能力は」

 

天谷の目が一方通行へとゆっくり向けられる。

一方通行は映画のラストを見るかのようにその目を凝視してしまう。

 

「ただお前という『最強』を砕くために存在してンだよォ!」

 

天谷はその目を大きく見開き一方通行へと向ける。

強く握りしめた拳が一方通行に突き刺さる。

 

「ゴ、ガァァァァァァァァ!!?」

 

未だかつて体感したことのない痛みに一方通行はよくわからない感情と声を生む。

 

(どォなってやがる!? いきなり実験に乱入したかと思えばベクトル操作が通じねェだァ?)

 

うまくまとまらない思考を働かせながらも一方通行は距離をとる。

 

「『木原』」

 

天谷の呟いた単語に一方通行はわずかに表情を動かす。

 

「おれは多分、木原数多よりもお前に特化した能力を持っている」

 

天谷はこれは独り言だ、とことわってから、

 

「そもそも俺は『木原』よりも一方通行に特化し、一方通行よりも『木原』戦を得意とする矛盾ともいえる性質を持っている」

 

「……何が言いてェ」

 

天谷はわかってるんだろ? といった表情で答える。

 

「お前はここで死ぬってことだ」

 

天谷は一方通行めがけて勢いよく踏み出した。

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