全員が目を覚ましたのはおよそ八時半くらいだろうか。
最後に起きた天谷は目にしたのはバタバタとレベルの低い取っ組み合いをしていた。
垣根は垣根でコーヒーを飲みながら朝のニュースに目をやっている。
レオンと鈴科はキッチンで朝食を作っている。
「……だりぃー」
半ばあきらめた様子で天谷はソファにだらりと寝転がる。
家の主たる天谷が起きても、反応する者は誰もいない。ものすごく無法な事になってる。
しかも天谷の部屋にこのメンバーがいるのが当たり前のような感じがして、違和感がない。
「おい慶。昨日はどうじゃった」
今はピンクの寝間着と結構普通な格好をしている美空が黒夜との取っ組み合いを中断させ話しかける。
天谷は寝ぼけた調子で、
「何か適当に捜してたらヒットした。んでもって今日、第七学区の廃ビルに二時だとさ」
そう言って天谷はまたうだーとソファにだれる。
何かもう完全にやる気がなさそうである。
「お主……やる気はあるのか?」
「あるに決まってんだろ。なめんじゃねえよ」
そんな下らない会話をしている間にレオンと鈴科が朝食を作り終え、テーブルの上には食欲をそそるような料理達が並んでいた。
黒夜はもはやフライングで食事をしている。
それに続くように美空が席につく。
垣根がそれに続いたのを見て、天谷もふらふらと席につく。
「そういやあ」
垣根が朝食を美味しそうに頬張りながら、
「そういやよ。結局、『幻想御手』っての、仕組みわかったのか?」
天谷はサラリとした調子で答える。
「第二位様がわからねえのを俺らが理解できる訳ねえだろ。それを確かめるために今から実物をいただこうって話だろうが」
まだ眠いのか、若干イライラ気味の天谷を見て垣根は軽く肩をすくませる。
「ちそー!」
「何だ……あの挨拶」
一番早く食べ終わった黒夜がパタパタとかけていく。
何をするのかと思えば、部屋からイルカのビニール人形を持ってきた。
「いやァ……やっぱこれだよなァ」
そう言ってようやく落ち着いたと言わんばかりにソファに身を預ける。
美空も食べ終わったのか端末と格闘している。
「何やってんの?」
「見ればわかるじゃろう。最後の情報整理じゃ。最も、今更確認するような事も無いと思うが」
そう言って、カタカタと端末を操作する。
その様子が気になったのか垣根が後ろから覗き込む。
「何々……。『幻想御手の正体とは! 情報求む!』……異常に胡散臭いタイトルだなこりゃ」
頭を掻きながら、苦笑いをする。
しかもそこに書かれている情報は意味のわからない物だった。
『これは学園都市統括理事会の隠謀だ!』『学生を実験体としか思っていない科学者の遊び』など、とにかく酷い情報の乱立だった。
しかし、美空は冷静に情報を判別すべく思考を進めていく。
「確かに簡単に見分ける事はできない。しかし、今までの情報と照らし合わせていけば多少はどうにかなる」
そう言って美空はスラスラとした様子で端末の情報をかき集める。
その能力は非常に高く、垣根でも内心舌を巻くほどだった。
実際に美空により一晩でだいぶ、話しが進んだ部分はある。
「そういえば、天谷さん。……お金かかるんですよね。『幻想御手』って」
鈴科が急に話しかけてきたので天谷は戸惑いつつも、ああ、と答える。
「いくらなんです」
「へ? いや、十五万持ってくるように言われてるけど……」
キラン、と。
鈴科の目の色が変わる。
「そんなに払うんですか!? 十五万あれば一カ月人一人養えますよ! そんな事に使わないでください!」
別に払うつもりなどなく、最後は相手から無理矢理奪い、無理矢理情報を奪う事になるという事を昨日話した気がしないでもない天谷なのだが、どうも目の前の少女は聞いていなかったようで一人でブツブツと言っている。
(なんてクセの強い三人なんだ……)
頭を抱える天谷を見て、垣根はクスリと笑った。