とある無能力者の生き方   作:異端者

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幻想御手⑤

偶然は重なる、とかそういう言葉もある。

多分それは間違ってはいないだろう。

重なる時は重なってしまうのも偶然だ。

そして、ここからはその偶然の重なりが生み出す、偶然の物語となる。

 

そして、もちろんだが普通の人間にそんな事を知ることなど出来る訳じゃない。

超能力者と互角に戦う天谷だって結局、無能力者。特別な何かがあるわけではない。

 

何でもないようなワンシーンだった。

その何でも無い街並みを高級ブランドのジャケットを纏った学園都市第二位の超能力者、垣根帝督と白のワイシャツに黒のジーンズとどこか学校の制服に似た格好の無能力者、天谷慶が歩く。

 

「えーと。取り敢えずどうすっか」

 

天谷が呟く。

『幻想御手』について調査していたら、予想もつかない掘り出し物があった。

まずは『幻想御手』についての基本理論。

一つの脳波をキーとする事で複数の能力者にそれを植え付け、巨大なネットワークを構築する。これが前提。

そしてそれは何の理論を参考にしているかは『闇』に手を染める垣根と天谷にはわかる。

ミサカネットワーク。第三位のクローン体。

あれは全ての個体が同じ脳波の為、何の障害も無い。

しかし、『幻想御手』の場合は違う。

人それぞれの脳波を強制的に一つにし、構築するネットワークだ。

そして、脳波を強要され続けた人間はやがて意識を失う。

調べてみたところ、使用者は原因不明の昏倒状態に陥っているようだった。

 

「取り敢えずでオリジナル様の顔を拝むのもありかもな」

 

垣根の言葉に天谷の唇がわずかに歪む。

 

「どうだろうな。面白いようにも見えるが、あの実験自体、気に食わねえ。あんなモンで満たされる科学者様の気がしれねえよ」

 

呆れ気味にそういう天谷を見て、垣根は嘆息する。

しかし、天谷は楽しければ何でもいいという傾向がある。

現に実験で『妹達』を助けなかったのも彼女らに面白味を感じなかったからだ。

自分達を実験動物としか見れない人間には価値を示さない。単純である意味では残酷だった。

そしてそんな天谷の思考を読めるのか垣根は道を歩きながら、軽く肩をすくめる。

 

「でもまあわからなくもねえよ。んな事でどうにかなる訳じゃねえし」

 

そう言って垣根は思い出したように、

 

「そういや、他はどうすんだ?」

 

「海鳥は『手』の調整。美空は情報を整理すんだと。……あいつも良く飽きねえよな。レオンと鈴科はその辺で『幻想御手』の売買してる奴らを狩るんだと。鈴科がそんなドSみたいな事するとは思いたくないけど」

 

そう言って笑う天谷。

そこへ電話がかかる。

 

「んはーい。どちら様?」

 

『ご主人様。お戯れも程々に』

 

レオンは軽くため息をつく。

 

『それよりも私達は少々、「狩り」の範囲を広げすぎたようで……。一か所、行っていただきたい場所があるのですが。よろしいでしょうか?』

 

心をこめながらも事務的に話すレオンに天谷は少しおかしみを覚える。

とはいっても、『幻想御手』の件について一番張り切っているのはレオンと鈴科だったのは少し意外ではあった。

 

「りょーかい」

 

適当に返して、天谷は携帯を耳から離す。

 

「何だって?」

 

垣根がにやにやしながら尋ねてくる。

天谷は素っけない表情で、

 

「つまらない雑魚を狩ってくれとさ」

 

面白くないのか少しぶすーっとした表情に垣根は女かよ、と内心笑う。

しかし、そんな事を言えば鍛えられた拳が飛んでくるので絶対に言わない。

 

 

道の方向を転換した二人はまた前と同じような、廃ビルの近くへと来ていた。

強いて前と違う所と言えば、多少はビルを崩そうとした痕跡が見られる所くらいだろう。

 

「しかし、ああいう奴らはこういう場所が好きなのかね」

 

垣根は少し関心したように辺りを見回す。

ゆったりと歩く二人だが、こんなゆっくりしていてもいい状態でもないだろう。

余裕があるからか二人は口笛スキップでもしだしそうな様子ではある。

 

「まあ、こういう監視の目が届きにくい所ってのは現実的じゃねえか?」

 

周りを見回しても監視カメラ一つ見当たらない。

それを言えば、こんな廃ビルを放置している事もであるが、最先端科学の街も少し興ざめである。

垣根がわずかに目を細め、

 

「お、あれじゃねえか……つーか、不良に絡まれてんの女の子じゃねえか」

 

「本当だな。遠目じゃわからんが、中学生くらいか?」

 

呑気に歩く二人に気付いてないのか、不良は少女ともう一人の男に暴行を加えている。

その様子に明らかな不快さを滲ませる天谷。

その雰囲気を感じ取ったのか垣根もわずかにため息をつく。

そして天谷は少しいらついた調子で、

 

「三人とも……もらっていい?」

 

「冗談。俺にも少しは運動させろよ」

 

垣根は調子を確かめるように腕を振るう。

ぼこぼこと直径十五センチ程の黒い球体が一つ、二人の目の前を漂う。

 

「これは?」

 

不思議そうに尋ねた天谷に垣根は笑って答える。

 

「『未元物質』の応用みてえなもんだよ。ああいうのならいい性能試験になると思ってな」

 

垣根の元から『未元物質』が放たれた。

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