とある無能力者の生き方   作:異端者

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結末へ向けて①

一瞬。

垣根と天谷。特に、天谷の中の時間が停止する。

目の前には茶髪のショートヘアーにスレンダーな体型。何より、その制服と容姿。

学園都市第三位の超能力者、御坂美琴だった。

 

「…………っち」

 

天谷は居心地が悪いかのように舌打ちする。

数日前、『最強』をつぶしたのにも関わらず、見捨てた少女と同じ顔をした人間が目の前にいる。

垣根はその事を知っている為、にやにやと薄い笑みを張りつかせている。

目の前の少女は楽しそうに白井とのおしゃべりに興じている。

 

(闇を知らないレベル5、か)

 

天谷はもう一度、じっと少女を見つめる。

やはり、クローンの面影がある。いや、厳密に言えば逆かもしれないが最初にクローンを見た天谷としてはそんな感想が浮かんでしまう。

その時、そんな超能力者の少女。御坂美琴が天谷に気付く。

 

「この人たちは?」

 

白井はやれやれと言った様子で、

 

「垣根さんと天谷さんですの。何故か『幻想御手』の取引現場にいまして……」

 

「ふーん」

 

御坂は軽く二人を見る。

一人は顔をそむけ、一人は意味ありげに笑っている。

垣根はこちらを見た御坂をにやにやと見つめる。

 

(これが第三位ね……。生で見た方が子供っぽい印象だな)

 

何より、雰囲気が違った。

彼女には超能力者としての誇りからか、堂々とした様子だったが垣根のような『闇』の感じは無かった。

裏で動いている『絶対能力者』への進化実験など思いもよらないはずだ。

それだけにこれを知った時のショックも大きいものとなる。

 

「……慶。もう行くか。白井ももう充分だろ?」

 

ええ、と頷いた白井を見てから垣根はゆっくりと席を立つ。

最後にこう言い残した。

 

「『またな』、レールガン」

 

はっとした御坂にあえて二人は反応しなかった。

 

 

「すまねえ。助かった」

 

日も高く昇り暑さが増す中、道を歩きながら天谷が呟いた。

垣根は軽くため息をつくと、

 

「あんなの俺だってやりたくねえっつうの。……余計な労働増やすな」

 

「そういや」

 

立場の悪くなった天谷は話題を転換すべく携帯を開く。

そこには一件のメール。

 

「美空の奴からメールが……」

 

「いつアドを手に入れたとか、話をすりかえるなと突っ込みたいが、あえてスルーしてやるよ」

 

「どうもっと……」

 

メールを軽く見た天谷は面白そうに目を見開いた。

 

「何て?」

 

「犯人の特定が済んだらしい」

 

――――――――――――――――――

 

「全く。遅すぎる」

 

部屋に入ったとたん、美空の罵声を浴びた。

 

「おい……帝督」

 

「なんだよ」

 

天谷はわずかに青筋を浮かべながら、

 

「この調子に乗ったガキを痛めつけてもいいよな?」

 

「やれるものならの」

 

答えたのは美空だ。どうもこの少女は物事に集中すると他人に対し、適当になるようだ。

現に、今も天谷の言葉を適当にスルーしている。

 

「くそっ……」

 

諦めたのか勢い良くソファに座りこむ、どうも天谷は美空と話すのが苦手なようで苛立ちを覚えていた。

 

「それで? 美空ちゃんは犯人がわかったんだろう?」

 

「その事じゃが」

 

美空が驚くほど機械的な表情で言う。

 

「とある医者に頼んでの。脳波が誰のものか特定を頼んだ。……木山春生という研究者じゃったか。しかしその女。どうも過去の実験で子供の意識を失わせておる」

 

「それがどうかしたのか?」

 

垣根の問いに美空は頷く。

 

「大有りじゃ。その実験は能力の暴走を誘発させるという物じゃったが……」

 

美空は軽く目を細め、天谷をちらりと見る。

天谷は気付いているのか、よくわからない表情だ。ただ、その表情はやや複雑な物だった。

 

「その実験の主導者は……木原幻生」

 

その名前に驚きの表情を見せたのは天谷ではなく垣根だった。

木原幻生。

マッドサイエンティストの集まる『木原一族』の中でも特に残虐な科学者だ。幾多もの実験を手掛け、その度に目を覆いたくなるような結果を喜々として受け入れるような人間だ。

彼の実験で死んだ人間は数知れず。

学園都市でも最悪の『闇』を持つ人間だ。

 

「あんなジジイの遺恨がまだ残っていたとはな」

 

「……クソが。面倒に事態を絡ませてンじゃねェよ」

 

天谷がどこか一方通行のように呟いた。

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