とある無能力者の生き方   作:異端者

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結末へ向けて②

『木原』という単語に天谷はとてつもなく敏感だ。

その恐ろしさを知っているとか、ではない。単に気に食わない。それだけの理由だ。

『木原』に対してほぼ絶対的な強さを持つ天谷にとって、恐れる理由は存在しない。

だが今回の相手は『木原』ではない。

木山春生。

学園都市に多数存在する科学者の一人。

しかし、彼女は『幻想御手』の製造者である。

そして天谷達はこの事実を踏まえた上で事件の奥へと切り込んでいく。

 

「仮に、巨大な一つのネットワークを構築できたとしてそれに取り込めるか。という問題が残るわけだが」

 

垣根がサラリとした調子で呟く。

 

「わらわもそれが引っ掛かる。どうも理論に矛盾が生じる。……どこが目的で何がしたいのかはっきりせん」

 

「……それですと垣根さん達の言っていた『妹達』と理論がずれますね」

 

「……無理でしょうか」

 

それぞれがそれぞれの意見を発するが、最後の一つが足りない感じだった。

そもそもにおいて履き違えてるのでは、と天谷は思考を組み立てる。

そう思いチラリと垣根を見ると、わずかに口を歪めていた。

 

(……気付いてんじゃねえか)

 

学園都市第二位の頭脳は正体に気付いているようだった。

さすがと言うべきなのか。あえて言わない辺り意地が悪いと言うべきなのか。

やれやれ、と天谷は首を振り、口を開く。

 

「仮に、そうだとして。何の意味があるかという疑問が残るわけだ。……つまりは『幻想御手』の製造によりどんな効果が生まれるか、という事だ」

 

そこで軽く天谷は息を吐く。

 

「どうでもよくね?」

 

天谷の言葉にそれぞれがやや呆れた反応を見せる。

同時にどこか諦め、納得しているような表情でもあったが。

 

「気にしててもしょうがねえよ。……ささっと決着つけようぜ。いい加減飽きてきたし」

 

そう言って天谷はゆったりと席を立つ。

誰にも見えない位置で、その表情がわずかに歪んだ。

 

(『幻想御手』に『絶対能力進化実験』か。この街にもまだまだ楽しめそうなモンがあるじゃねえか)

 

ある意味では純粋で。それ故に他人がどうなろうとも関知しない残酷な感情が花を開き始める。

 

 

―――――――――――――――――

 

何の変哲もないオフィスだった。

部屋の隅には観葉植物。横合いにある棚には敷き詰められた資料。デスクにはパソコン。

何の違和感も無いはずの部屋に違和感を作り上げる者がいた。

艶のある金髪を肩まで垂らし青い瞳、ピンクに薄手のパーカーに太ももまで露出したパンツを履いている。一見すれば外国人にも見えそうな少女だった。

その見た目十五歳程の少女は軽くため息をつくと、服掛けにある白衣を上から着こむ。

何も言わないまま、白衣のポケットからメモリースティックを取り出すと早い足取りでデスクへと向かう。

軽い調子でスティックをパソコンに接続し、データを開く。

 

「んー。これは加点、かな?」

 

データをざっと見回した後、金髪の少女は薄い笑みを張りつかせながら呟いた。

少女の目が心なしか細まった。

 

「ええと? 天谷ちゃんの経過は良好。んでもって垣根ちゃんは想定を超える速度での成長があり、と。……『セカンドシーズン』の三人にこれという変化や動きがないのは気に食わないけど。総合的には加点だね。うんうん。これなら円周ちゃんと絡めて『第二世代』の育成も見込める。……後は天谷ちゃんと垣根ちゃん次第、かな?」

 

そこまで言って金髪の少女はパソコンの画面を止める。

ゆったりとした動作で髪を整える。

 

「木山春生の『幻想御手』に関しては予行演習だね。これに関して私が介入する事に意味はない。……天谷ちゃん達が関わった所で私の計画に支障はないからいいんだけどね」

 

彼女の話しは壮大な物なのだろう。

しかし、彼女にそんな様子は見られない。これが当たり前と言わんばかりの表情だった。

そして最後にこんな文字が画面に浮かび上がった。

 

『木原龍華』と。

 

そして『木原』と思わしき少女はパソコンの電源を落とし、メモリースティックを抜いた。

そして最後に悪魔のように妖しい笑みを浮かべながら呟いた。

 

――――さあ、ショータイムだよ?

 

 

 

 

 

 

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