とある無能力者の生き方   作:異端者

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遊びにもならないレベル①

来る七月二十四日。

太陽は際限なく地上を照らしていた。うんざりする程の暑さに苛立ちを覚えたい程だ。

そしてマンションの一室。天谷の部屋はそんな日にも平常運転だった。

天谷の部屋に三人の少女が来てからそれなりの時間が過ぎた。

恋愛沙汰に興味のない(何が楽しいのかわからない)天谷でも少女との同居生活には些かの違和感も感じた事もあったのだが。

そんな些細な思考も止められる出来事が起きる。

ド派手な黒いドレスの少女。美空の言葉で。

 

「――――どうやら、木山春生が尻尾を出したようじゃの」

 

その言葉にいち早く反応したのは、やはり天谷だった。

だらりとした雰囲気でソファに寝そべっていた体がわずかに動いた。

 

「ほうほう……面白いの。戦闘を行っているのは第三位殿ではないか。何という皮肉よのう」

 

天谷が跳ね起きる。その唇にわずかな喜びが浮かぶ。

天谷は無言のまま状況を思い起こす。

まず自然と頭をよぎったのは一方通行との戦闘。あの稚拙で救いようもない程、哀れな戦闘をしていた第一位。そしてその第一位に何千回となく殺されてきた第三位の体細胞クローン。そしてこの『幻想御手』という一つの盤の上にいる第三位。

いくつのも要素が天谷の頭をよぎる。

それら全てを噛みしめた上で天谷は結論を口にする。

 

「――――帝督を呼ぶ。……そんでもって木山をつぶす」

 

――――――――

 

物凄く唐突なクライマックスだな、と垣根は苦笑いが自然と零れるのを自覚した。

急に呼び出されたかと思えば会うなり、さっさと行くぞ、だ。

ほとんど状況説明をしなかったのは面倒だからか、それとも信用してるからか。

彼の場合、単純に前者の可能性があるのが怖い所だ。

およその着地地点に二人はゆったりと降り立つ。

緩慢な動作だったがどことなく力を感じさせる、そんな印象だった。

 

「……随分と派手な事になってんな」

 

垣根の翼にぶら下がる形でついてきた天谷がポツリと言葉をもらした。

確かに目の前の光景はなかなかの悲惨さだった。

鉄橋は瓦礫と化して崩れ落ち、所々から煙が上っている。

そんなどこぞの災害地のような中を無能力者と第二位が歩く。

二人は鉄橋の上から下へ視界を固定させていた。常にその一点へ。

幾度か爆音が二人の耳を揺さぶる。しかし、彼らは全く表情を変えない。

そして戦闘が今まさに行われている、ほぼ真上の地点で立ち止まった。

 

「なるほどね。ネットワークにある数多の脳……つまり人数分の演算能力を取り込む事で『多重能力者』を疑似的に再現してるのか」

 

天谷は興味深そうに戦闘の様子を見つめる。

純粋な能力の強度では御坂が勝っているようだが、木山はその差を能力の手数で埋めているようだった。

 

「ふぅん……。確かにオリジナルの方が劣勢だな。こりゃ」

 

同じ超能力者として面白くないのか垣根が吐き捨てるように呟く。

量より質。これが学園都市の能力開発の真理だとするなら最上級の質を誇るのが垣根を含む七人の超能力者だ。

同じ超能力者でも二位と三位の間には絶対的な壁があるとはいえ、気に食わないのも無理ないだろう。

しかし、逆に。

学園都市の底辺。最低級の質しか持たない無能力者である天谷は喜びに満ちた表情をしている。

いや、高位能力者を前に武者震いを起こす無能力者など天谷くらいのものだろうが。

ぐるぐると天谷の中に好戦的な感情が渦巻く。

 

――――戦いたい。あれだけの力を自分の持つ『最弱』で踏みにじりたい

 

こうなってしまってはもう天谷は止まらない。

 

「帝督」

 

天谷がゆっくりと。しかし、とてつもない威圧感を持った声で垣根へ言葉を向ける。

垣根はこの声色を聞いた瞬間に何が言いたいのかを理解する。

同時に諦めの表情を浮かべながら、

 

「……俺も少しは楽しみたかったんだがな」

 

「ハハッ。冗談よせよ帝督。……あンな面白そォなモンを俺が分ける訳ねェだろうがァ!!」

 

ドバ!! と。

天谷が十メートルはある道路から地上への距離を飛び降りる。

天谷は一部の例外を除けば異能の力を持つ事はない。

だが、その運動性能は通常の人間をはるかに凌駕する。生半可な高位能力者なら一瞬で打ち破れる程に。

そして何より彼には第一位との交戦で見せた類稀な戦闘センスがある。

闘争本能の塊となった最弱の天谷が二人の怪物の戦闘に参戦する。

 

――――どこかで『木原』が静かに笑った

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