一方通行の頬に鈍い痛みが走る。
今まで自分に噛みついてきたバカは数え切れないほどいた。
しかし、
「ガッァァァァアアアア!!」
ここまで何度も拳を叩きつけられたのは初めてのことだった。
いや、そもそもありとあらゆる攻撃を『反射』だけで終わらせてしまうのだからかすり傷一つ負ったことがないのだ。
(何が! どォなってやがる!? なンで『反射』が効かねェ!)
この時、間違いなく一方通行の反射は展開されていた。
にも関わらず天谷の拳はその『反射』をすり抜ける。
(焦るな……。考えろ。アイツがなンかの細工をしている事は間違いねェ。だとすれば……)
天谷は軽やかなステップで間合いを詰める。
そして再び拳を見舞わせる。
対して一方通行は、
(……集中しろ。この拳が触れる瞬間に)
一方通行は天谷の拳が触れる瞬間に集中し演算する。
パァン!! という音とともに一方通行の脳が揺さぶられる。
「どうした? このまま殴り殺されたいのか?」
天谷はにやにやしながら問いかける。
「今まで圧倒的に優位だったもンなァ? こンなボコボコにされるの初めてにきまってるよなァ?」
表情はどんどんと凶悪な笑みに変わっていく。
一方通行の頬を嫌な汗がつたう。
(まさか……。嘘だろォ? 今の感覚は……)
一方通行の第一位の頭脳はこの事実に拒否反応を示す。
(確かに……。ありえねェ話ではねェ……)
そう一方通行はその推論をありえないというのではなく、認めたくないのだ。
「どうした?」
天谷はおそらく一方通行の考えていることを予想できているのだろう。嫌味な口調で皮肉な笑みを浮かべている。
「テメェは……」
「『暗闇の五月計画』」
天谷は一方通行が何かを言う前に言葉を発する。
「知ってるだろ? それくらい。お前の演算パターンを他の能力者にぶち込むっていうふざけた実験だよ」
「それがどォした」
「でもなァ……。あの実験はそのパターンってやつに拒絶反応やら過負荷やらで死者が続出。結果、実験は頓挫しちまった」
天谷は一拍置く。
「お前のせいで何人苦しんでると思ってンだ?」
「知るかよ。ンなもン」
一方通行は顔をそむける。
その視線の先には御坂美琴のクローンである『妹達』の一体がいる。
(あれは人形だろォが。何考えてンだ)
一瞬何かがよぎるのを必死で振り切る。
今自分のいる位置を確かめる。
レベル6、絶対能力者。『最強』の先に存在する『無敵』になる。
そうすれば……
(そうすれば? そうすればなンだ?)
一方通行はそこで思考を止める。
今はとにかく目の前イレギュラーをつぶすことに集中するように自分に言い聞かせた。
同時にもう一つの違和感。
それは彼がこの実験を邪魔するその根底が見えないということだ。
彼は別に実験はどうでもいいと言った。つまり、単純に見れば『最強』の座を一方通行から奪おうという人間の一人になる。だからこそ違和感がぬぐえない。彼には『最強』をつぶすには今ではならない理由があるのか? それもこのタイミングでなければならない理由が。
「どうした?」
一方通行の頭脳がすべてを知った瞬間天谷は声をかける。
まるで、この時を待っていたかのように。
「ま、さか、テメェの能力は――――」