とある無能力者の生き方   作:異端者

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エピローグ①

「ギャァァァァアアアアアアアア!!」

 

頭には巨大な輪。胎児のような見た目だが構成されている物質が明らかに人間の物ではない。

何よりその大きさはまだ肥大化を続けている。そのサイズは十メートルを優に超すだろう。

御坂は茫然とその怪物を見つめる。

天谷は怪物を一瞥してから叫んだ。

 

「てェェェェ―――――――――とォォォォくッ!!」

 

待ってましたと言わんばかりに垣根が参戦する。

三対六枚の白い翼をかかげて大きく飛翔する。

音速並みの速度で地面に突っ込んでいく垣根を天谷は呆れ気味に見つめる。

 

「想定通りだな」

「ああ」

 

垣根のすかした言葉に天谷はうんざりと答える。

チラリ、と。天谷は垣根の横顔を見る。

その、薄く張り付いた笑みを見ながら、

 

「解析にはどれくらいかかる?」

「五分……いいや、三分もあればいける」

 

ズズ……と。

垣根の中にある何かが垣根自身を満たしていく。

天谷は懐から黒い塊を取り出した。

 

「……本来は『警備員』なんかが能力者の力場を乱して能力を阻害するタイプのモンだが」

 

天谷は鼻歌混じりに黒い塊……拳銃を手の中で弄ぶ。

 

「その力場の塊にコイツをぶち込んだら……どうなるンだろォなァ?」

 

再び、天谷のスイッチが切り替わる。戦闘モードへと。

ガンドンズパァン!! と未だにその形が定まっていない怪物に向けて乾いた音と共に銃弾がさく裂する。

しかし。

 

「……表面がわずかに削れる程度、か」

 

呟いたのは天谷ではなく垣根だった。

怪物の巨大なシルエットは形を定めつつあった。ダメージは無いようだ。

 

「……くそっ。オイ第三位!」

 

木山と何か話していた御坂は素早く反応する。

 

「御坂美琴! ……ったくあのバカといい何で…………」

 

何やらブツブツと言う御坂だが、天谷としてはどうでもいい事だ。

しかし、名前を呼ばないと面倒な気もするので、

 

「じゃあ御坂。……手ェ貸せ。俺だけじゃちょいと火力不足だ」

「当たり前でしょうが!」

 

前髪に紫電を迸らせる御坂。準備万端、とでも言いたげだった。

 

「帝督。三分だな?」

「ああ」

「……そンじゃあ、始めるか」

 

明確な意思を持たず、ただ破壊をばら撒き続ける怪物に。

第三位が。

第二位が。

そして最弱が立ちふさがる。

 

 

ズドォォォォ!! と。

御坂の電撃の槍が怪物に当たる。

しかし。

 

「うそ……再生してる?」

 

御坂の呟きは比喩では無かった。

確かに御坂の電撃により、怪物の体表は削り取られ、その内側まで侵食もしていた。

だがその電撃が止まるのと同時に。急速な速度で復元を開始したのだ。そして十秒もしない内に元通りになっていた。

 

「……複数の力場を固めた粘土細工みてェな奴だしな。ここまでは予測通りか」

 

天谷が誰にも届かない呟きを漏らす。

ゆったりとした挙措で自身の右手にある銃へと視線を移す。

怪物は御坂に気が向いているようで氷の槍や雷撃。さらには爆発、そこから生じる爆風までもが全て、御坂に向けられていた。

 

――――あと二分

 

垣根は自身の体を翼で包む事によって解析に専念していた。

学園都市第二位の頭脳はフル回転で敵の正体を探る。

 

(……対象より無数のAIM拡散力場を確認。質、量いずれもが膨大である事も確認。力場の解析を開始。……解析完了。対象に最も有効と考えられる『未元物質』の特定を開始……)

 

加速度的にその全貌を掴んでいく垣根。

御坂と天谷の役割は垣根の解析が完了するまで持ちこたえる事。

 

「御坂。お前が表面削って俺が打ち込むの繰り返しで行くぞ」

 

こんな誰とも知れない人間に本来なら従うのも難だが、そんな事を言っている場合でもない。

再び御坂が電撃を放つ。怪物の体表が削り取られるが、再生を始める。

寸前。

ガンガンドパァンズパァン!! と。

乾いた音と共に弾丸が怪物にさく裂する。

これがただの銃弾なら、大した意味を持たなかっただろう。

しかし、この場合は違う。

AIM拡散力場を阻害するように作られた銃弾はその塊たる怪物に撃ち込めばどうなるか。

無傷の状態でも表面を削り取ったのだ。ましてや御坂の電撃で体表を削り取られたのなら、

 

「ギ、ギガギャァァァァアアアア!!」

「おいおい、怪物。まだよがるには早ェンじゃねェのかァ?」

 

ここで初めて怪物に有効なダメージが通る。

AIM拡散力場の塊である怪物はいくつもの歪な目をギョロギョロと動かす。

 

「drwc羨lkmq」

「qkmd恨bzvh」

「pmzw死msbv」

 

ノイズのような声(音というべきか)に不快な表情を浮かべる。

 

(くっだらねェ……)

 

天谷の中に嫌悪の感情が噴き出す。

 

「そこまでして手に入れたかったモンはその程度かァ? お前らが抱いた『憧れ』や『嫉妬』はその程度で満たされちまうよォなモンだったのかァ?」

 

ゆっくりと。囁くように、問いかけるように。言葉が理解できているのかどうかも怪しい怪物へ向けて言葉を発する。

 

「そもそも底辺のテメェらが外付けで補った力で強くなるとか思ってンのかァ? ……依存は弱さなンだよ。だから俺は手札を増やしたし、内側への肉付けを怠らなかった。テメェらのそれは自己満足であって何一つ前へは進ンでねェンだ」

 

そこまで言って、天谷はゆっくりと息を吐き出す。

もぞり、と。怪物は何かを感じたのかわずかに蠢く。

 

「出せよ。お前らがそンな下らねェ姿になってまで手に入れたかったモンを」

 

天谷の目の色が変わる。

明らかに異能ではない何かが天谷を満たす。

 

――――あと、一分

 

「最後に遊ンでやる」

 

怪物の持つ異能の全てが天谷へと向けられる。

それに応えるように天谷は怪物へと銃口を向けた。

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