とある無能力者の生き方   作:異端者

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エピローグ②

――――あと、一分

 

垣根の解析は八割方、完了していた。後は詰めを残すのみと言ったところか。

 

(『未元物質』と対象との適合率を識別……八十……九十…………)

 

こうしている間にも天谷達は劣勢へと追い込まれている。

御坂も電池切れを起こす頃合いだろうし、純粋な身体能力と拳銃だけで戦う天谷の体力は言わずもがな、だ。

 

 

カチッ、と無機質な音が天谷の拳銃から聞こえた。

弾切れ。

その文字が天谷の頭をよぎる。

知能もろくに働かないはずの怪物は本能の部分でその隙を感じ取ったのか、すかさず攻撃を加える。

氷の槍が天谷へと向けられた。

しかし。

それは横合いから飛来した電撃に防がれる。

 

「ハァ……ハァ……アンタの相手はこっちにもいるのよ!」

 

強がりやがって、と天谷が呟く。

後少しで垣根の解析も完了するだろう。具体的には一分程度だろうか。

だが、怪物は何かを感知したのか猛攻を加えていた。おそらくここが勝負の一分となるだろう。

 

「さがれ第三位」

「御坂美琴! それにさがるのはアンタの方でしょ!」

「よせよ。もォ電池切れ寸前だろォが。……お前が『超電磁砲』を撃てるだけの体力くらい温存してもらわねェとこっちが困ンだよ」

 

その言葉に疑問を覚えつつも御坂は言葉を詰まらせる。

背中を見せ、相手も見ないまま天谷は言葉を続ける。

 

「……あれは力場の塊だ。おそらくアレ自体をまとめ上げる核のよォなモンがある。そこを撃ち抜く火力を残せつってンだ」

 

御坂の返答も聞かぬまま、天谷は駆け出す。

素早くマガジンを交換し、敵の攻撃に備えた。

ズドドドド!! と氷の槍が天谷に降り注ぐ。

しかし、天谷はそれを流れるようなステップで的確にかわしていく。かわしながらも、何発も銃弾をぶち込む。

いくつもの弾幕が交差していく。その過程の中で。

電子系統の能力だろうか。不安定にばら撒かれた高周波の槍をかたどった物質が天谷の周囲に突き刺さり、その余波が天谷の痛覚を刺激した。

 

「あ、ガァァァァアアアアアアアア!!」

 

その痛みに耐えきれたものの、天谷の体の軸がわずかにぶれた。

そしてその隙こそが致命的だった。

そして今度こそ。

天谷の正面に氷の槍が向けられた。

動けない。直撃する。無能力者に過ぎない天谷が一撃でも喰らえば致命傷となる。

 

「……クソが」

 

向かい来る槍を見つめる事しかできない。

 

 

そしてその時は来た。

サラサラ、と。氷の槍が急速に消失したのだ。

本来、氷にそんな現象は起きない。

しかし、その現象を実現する事が可能な能力者ならば、いる。

垣根帝督。

学園都市第二位の超能力者。

この世に理論上ですら存在しない『未元物質』は地球上では起きえない現象をゆうに引き起こす。

砂のように溶けていく槍を見て天谷はようやく肩から力を抜く。

 

「やっとかよ……」

 

大きなため息をついた天谷の後方……真上というべきか。真上では六枚の白い翼を羽ばたかせ、宙を舞う垣根の姿があった。

 

「何……あれ、天使?」

 

御坂の声は誰にも届かない。

かわりに轟!! と翼から烈風が吹き荒れる。その風は並みの風力使いを凌駕していた。

 

「これが『未元物質』」

 

垣根は言葉を理解しているかもわからない怪物に向け、言う。

 

「異物の混ざった空間。ここはすでにテメェの知る場所じゃねえんだよ」

 

直後。

ズドッ!! という音と共に怪物の胎児のような肉体の表面が削り取られた。

 

「ア、ギョェェェェエエエエ!!」

 

胎児のような怪物の甲高い叫びに天谷は顔をしかめる。

こうしている間にも怪物の体表はどんどんと削れていっている。

天谷は腰に手を当てながら軽い調子で、

 

「いやー。終わった終わった……。それにしても今回はそこそこだったな」

 

そして核がむき出しになる。

 

「撃ちこめ」

 

天谷の声の数秒後だろうか。

御坂が何かを叫びながら自身の代名詞ともいえる『超電磁砲』を放った。

放たれた一筋の閃光は胎児を構成する歪な肉体のほぼ中央に位置する三角柱型の核を撃ち抜いた。核を失いその形を留められなくなった胎児はその肉体を消失させ跡形もなく消えていった。

 

―――――――――――――――

 

「終わったみたいね」

 

無機質な立方体の空間で少女が呟いた。

木原龍華。

『木原一族』に属する少女。

特徴的な金髪を肩まで垂らした少女は端末を見ながら、興味深そうに舌舐めずりをする。

 

「垣根ちゃんも『翼』の方にうまく情報を入力できたみたいだし。天谷ちゃんに関しちゃ相変わらずだね。『第二世代』の先にいるだけの事はある」

 

彼女にしかわからないであろう単語を羅列させながら、目の前にある映像を見つめる。

そこには、垣根が怪物を消滅させる模様が鮮明に映し出されていた。

 

「この分なら思ったよりも早く条件を満たして第二段階に進むかな? ……その前に一方ちゃんと激突、何て展開もあり得るけど」

 

最後に彼女はこう締めくくった。

 

「どちらにしろ、私の『木原』が満たされるならそれでいいんだけどねぇ」

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