とある無能力者の生き方   作:異端者

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表裏で起きる攻防戦~予兆~

地面は無機質な光沢を放つ鉄製の床でできており、天井にはパイプが何本も伸びている。別のフロアへ移動するための階段も見られ、立体的な構造をした研究所だった。

その研究所をカツンカツンと一定のリズムで足音が響いている。

 

「……思ったよりも広いな」

 

きょろきょろとあたりを見回しながら垣根は呟く。

いくつもの階段があり、部屋の数も少なくない。なかなか、難航しそうな気配だった。

しかし。

明確な違和感を垣根が襲う。

一目、見たときは気付かなかったが地面に修正テープで引かれたような線がある。

それも一か所ではない。

少し目を凝らして見るとそれは通路に無数にあった。

まるで、何かを防ごうといわんばかりに。

垣根がトラップの存在を確信した直後だった。

ジュオ! という音とともに天井が崩れ落ちた。

崩れ落ちた天井は垣根の頭上に迫り、そして直撃した。

いや、違う。

確かに崩れ落ちた天井の瓦礫は垣根に降り注いだ。

しかし、瓦礫と垣根の間に割って入ったものがある。

それは紫電だった。『幻想御手』の時のような常盤台の制服ではなく黒を基調にした服を着ていた。帽子をかぶっていた。

その少女は冷めた声色で問いかけた。

 

「アンタは敵? それとも味方?」

 

御坂美琴。

第三位、学園都市最高の発電能力者。

そして二万体のクローンのオリジナル。つまりは大元となる素体。

その少女……御坂美琴は垣根に向け威圧するようにパチパチと電気を迸らせながら、

 

「敵か味方かって聞いてんの。さっさと答えないと問答無用で攻撃するわよ」

 

冷めた声。その声色に垣根はわずかに『闇』を感じ取る。

何も答えない垣根に対してイラつきを強め、さらに電気を纏う。

垣根はその様子に軽い調子で肩をすくめる。

 

「おいおい。もし敵だったら、助けなかった方が良かったってことになるんじゃねえの?」

「もし、敵じゃないのに死なれたら、さすがに後味が悪いと思っただけよ」

 

切り返した視線はこう言っていた。

いいから答えろ、と。

垣根は少し大きなため息をつく。

御坂はこれでかなり情を捨てているつもりなのだろうが、暗部の冷たさはこんなものではない。垣根自身、極力殺さないをモットーにはしているが結局、殺してしまうことの方が多いのだから。

 

「俺はお前とは別の目的で来ただけだよ」

「別の目的って?」

 

根掘り葉掘り聞き出すつもりなのか御坂は執拗に問いかけてくる。

垣根は呆れた調子で、

 

「実験についてってのは否定しねえが、別にお前と争うつもりもねえよ。ま、お前の目的を邪魔するつもりもねえが……」

 

チラリと垣根は上を見る。

そこには微かな人影があった。

 

「向こうは俺もお前も殺したいらしい」

 

直後。

ジュオ! という音が全方位から響いた。

修正テープのようなものが導火線のように鉄製の床、壁、天井を焦がしていく。

そしてその先には。

 

「人形!?」

 

ゾワリと御坂の背中に嫌な汗が噴き出る。

導火線が人形に到達した瞬間。

ドゴォォォォン!! という爆音が響き渡った。

御坂は突然の出来事に自身の身を守るのに精いっぱいだった。

 

「……く、アイツは?」

 

モクモクと蠢く煙で見えない。

磁力で集めたコンテナや資材の影から様子をうかがう。

 

「……痛ってえな。そしてムカついた」

「あ、アンタそれ……」

 

御坂は驚きを隠せない。

なぜなら、『それ』は『幻想御手』という物品が出回っていた時、もっと言えばAIM拡散力場の塊である怪物と戦っていた時にほんのわずかに見ただけのもの。それゆえに強烈なまでの存在感があったからだ。

御坂は忘れられなかった。

その圧倒的な存在感を誇る『天使』を。

垣根は茫然とする御坂を傍目にゆっくりと翼をしまう。

 

「つーわけだ。俺は一応、お前とあったことあるんだぜ? 第三位」

 

思い出した。

白井たちのいる風紀委員の支部にいた男。

終始、にやにやとした笑みを崩さず軽薄な口調でしゃべっていた男。

 

「アンタ……確か垣根だっけ?」

「へえ、俺の記憶ではお前が俺の名前を聞いたのは一度か二度だと思うが……さすがに記憶力がいいな」

 

下らない会話をしながらも御坂は決して警戒を解かない。

垣根を第二位と知らなくとも、彼が放つ雰囲気が警戒を解くことを許さない。

再び、爆発が二人を包む。

が、垣根は面倒そうな調子で右手を横薙ぎに振るう。

ズオン! という音ともにまき散らされた『未元物質』は爆炎と拮抗し、消滅させる。

 

「何の変哲もねえ爆発なんざ、とっくの昔に解析済みだ、バカ野郎」

 

イラついた調子で呟き、傍らの御坂へ声をかける。

 

「さっさと行くぞ第三位。互いにこの研究所に用があるなら利害は一致してるだろ。俺の目的の範囲内を侵さねえなら手伝ってやる」

「……随分と上から目線ね。アンタ」

 

不機嫌そうに呟きながらも御坂は垣根の背中を追う。

第二位と第三位の怪物が共闘を選択する。

 

「……とは言ったものの」

 

垣根は少し歩いたところで立ち止まった。距離にして十メートル足らずだろう。

御坂は怪訝な顔で垣根の背中を見る。

 

「どうかしたの?」

「……爆発兵器、か」

 

廊下の隅、器材に隠れるように置かれている人形を手に取り、内部を確認する。人形の内部には起爆物と思われる筒状の物体。

 

「……何でこの類のやつは人形に入れたがるかな」

「? 前にもあったのかよ」

 

怪訝な顔をしつつも、垣根は『未元物質』で爆弾を起爆しないようにする。

もう一度、確認するように辺りを見回す。

そこには無数の修正テープのようなものが引かれ、奥まで続いている。

まるで、侵入者を駆逐するためのトラップだ。

 

「……んでもって暗部の可能性が高い、と」

 

垣根は軽い調子で携帯を取り出すと、天谷へと電話をかける。

 

『おいおい。今度は何だ?』

 

いぶかしむような声色で電話に答えた天谷に垣根は軽い調子で、

 

「こっちに『アイテム』が出張った可能性が高い。こっちに爆発系のトラップがあった」

『フレンダ、か。……となるとこっちに別枠がいるか他の暗部が出てくるか。つーか、前者の場合、俺はまた「アイテム」とドンパチするハメになるのかよ』

 

やれやれ、と嘆息する天谷の声が垣根にも届き思わず苦笑いが浮かぶ。

通話を終わらせ、次のステップへ進むための思考を進める

周囲には御坂しかいない。

いったん退いて、体勢を立て直したのだろう。

ならば、その先には第二、第三の罠があると見るのが妥当だ。

明確な敵を確認しながら垣根は御坂にもう一度、促すように呟いた。

 

「行くぞ」

 

 

 

 

 

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