とある無能力者の生き方   作:異端者

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少年は白い悪魔を食いちぎる③

「ま、さか、テメェの能力は――――」

 

一方通行は自身の声がこれまでにないほどかすれるのを感じた。

それほどまでにこの事実は意外だった。

 

「まあ、初見でビビるのは無理ねェか」

 

天谷は適当な調子で呟く。

 

「AIM拡散力場ってのは思いの外デリケートな代物だ。たとえば空間移動系の能力者同士もそれの影響で互いの能力に干渉できない。あとは精神系能力者もだけどな」

 

一方通行には天谷が何を言いたいのか全てが理解できる。

天谷はその様子を一瞥してから、

 

「まあ、何が言いたいかというと、だ。俺は……無能力者であることは事実だが、無能力者も微弱で機器も計測できない程の力場を放っている奴がほとんど。つまり厳密には全くの0ってわけじゃないんだよ。無能力者は」

 

そして、と天谷は核心を告げる。

 

「俺の能力は『ベクトル操作』……とはいっても無能力者なんだけど」

 

一方通行は何故か目の前の少年の言葉を鵜呑みにはできなかった。

『ベクトル操作』という能力の演算は他の能力とは比べ物にならない程、複雑で繊細な能力だ。

確かに『肉体再生』など無能力者でもわずかな力を振るえることもある。もちろん様々な制限はあるわけだが。

しかし『ベクトル操作』はこの限りではないだろう。(一方通行の他にこの能力を持つ者がいないので推測の域をではしないのだが)

 

「あー……。違う違う」

 

天谷は一方通行の考えてる事を見透かしているのだろう。

何でもないような事を伝える調子で答えを出す。

 

「逆なんだよ……。同じ能力同士で、つまり『ベクトル操作』を持った二人の能力者が能力を互いに相殺させちゃうから干渉不可なんだよ」

 

この事実はおそらく誰も知らないだろう。

この実験に参加している研究員もこの実験の立案者さえ知らない。

それだけではなく一方通行の『最強』、あるいはその先にある『無敵』の定義を揺さぶられる事になるだろう。

 

(舐めてンじゃねェのか……)

 

同時に一方通行はそう思う。

確かに直接能力を使うという方法は通じない。

しかし、一方通行の能力はその辺の小石を軽く蹴るだけで人の命を奪えるほどの威力がある。

所詮は子供騙し。トリッキーな戦術と話術で話をごまかそうが結局、一方通行の圧倒的優位は動かない。

 

「だからどォした。そンな偶然一つで俺を倒したつもりなのかァ? 愉快だなァ! おい!」

 

一方通行は地面の砂利をベクトル操作で弾丸の嵐と変化させる。

目標は当然、天谷。

 

「全く……。これで本当に超能力者なのかよ」

 

失望した様子で天谷はため息をつく。

飛んできた砂利を軽い動作でかわす。

ダン!! と力強く一歩を踏み出しその勢いで一気に距離を詰める。

 

「なッ……!!」

 

にやりと天谷は笑う。

 

「仕方ねえからお前の気の済むまで遊んでやるよ。第一位」

 

天谷の拳が一方通行の顔面に突き刺さった。

一方通行は体が一瞬浮くのを感じると共に再び鈍い痛みが走る。

 

「ク、ソ、ガァ……」

 

それでも一方通行は立ちあがる。

自身の目的を達成するためには目の前の男を殺すしかないのだから。

そしてその凶悪な白い悪魔を前にして、少年は引き裂くように笑う。

なぜなら負けるわけがないから。向かってこようがどんな手でこようが結局は自分の拳がとおるから。

――――だから少年は、白い悪魔を食いつくせる。

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