とある無能力者の生き方   作:異端者

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表裏に渡る攻防戦~終~

「慶、なんですか?」

「まあ……あれから三年くらいたってるし無理ねえか」

 

絹旗に対し、天谷は軽い調子で言う。

現状がつかめていないのか絹旗はポカーンと力の無い表情をしている。

しかし、記憶の片隅にはあったようで動揺が見られる。

天谷はそこにつけいるように言葉を続ける。

 

「で? お前はどうする? 続ける? 俺としちゃお前から得られるものはもうない訳だが」

「やっぱり超舐めてますね」

 

絹旗はニヤリと笑う。

 

「敵を発見したが逃げられた。依頼は防衛だったので追う必要も超必要ないと判断した。……こういう筋書きは超どうですか?」

「悪くねえ。……この女はどうする?」

 

天谷は傍らに倒れている少女を指す。連れていくか、と提案しているのだ。

しかし、絹旗は軽く首を振る。

 

「超遠慮しときます。……今回は見逃しますが次は超殺しにかかりますよ?」

「好きにしろ」

 

超撤収しますよ、と絹旗は下っ端二人を引き連れ部屋を後にする。

部屋に残った天谷は軽い調子で少女に声をかける。

 

「アンタ、無事か?」

「……あなたは?」

「お前とは別枠で動いてるだけだよ。『学習装置』開発者の布束サン?」

「知ってたの?」

 

まあね、と天谷は答えながらモニター画面と格闘する。

布束は少し俯き加減で、

 

「ダメよ。セキュリティが厳しすぎる。侵入できないわ」

「わかってるよ。俺はお前ほど頭の出来もよくねえしな。俺がしたいのは侵入じゃなく閲覧」

 

データを閲覧していく過程で一つの情報が浮かび上がる。

最終信号。ラストオーダー、と。

検体番号、二〇〇〇一号となっているその個体を見て天谷は唇を歪める。

繋がった、と天谷は呟いた。

巨大な学園都市に渦巻く『闇』の一端。その中でもかなり深い部類に入るものに。

ミサカネットワーク。最終信号。虚数学区。

少なくともこの三つをつなげれば次のステップへと進める。

だが、それは危険もはらんでいる。

暗部は学園都市の危険因子を排除するために活動する。

つまり、学園都市の奥に切り込んでいく天谷をいつまでも静観するとは思えないのだ。一定のラインを超えて肥大化を続ければ必ず上は天谷を狙うだろう。

だからどうした、と天谷は同時に思う。

 

「イイね。俺好みに彩られてきやがった」

 

天谷は布束に対し、銃を放り投げる。先ほどの交戦でさりげなく拝借していたのだ。軽い気遣いを見せるも言葉もかけず研究所を後にした。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

垣根はゆっくりと研究所を後にする。背後には黒煙を上げる研究所。

御坂美琴は研究所の破壊に成功した。それはどうでもいい。

垣根帝督は重要な情報を入手した。

繋がるワードとワード。ちりばめられた断片的な情報は一つの巨大な情報へと変わりつつある。

求めてもいない統括理事長の『プラン』が明かされていく。

学園都市で最も堅牢な『窓の無いビル』で余裕の表情を浮かべているであろうアレイスターの目的の一端が見えてくる。

『第一候補』の一方通行ではなく『第二候補』の垣根帝督が学園都市の奥へと切り込んでいく。

 

(……俺が『かつて』求めていた直接交渉権にこんな形で近づくとはな)

 

しかし垣根はそれを求めない。今は必要ではない。今、求めているものはそれではなく、新たな刺激だ。

第一位との全力の戦い。殺し合い。

絶対能力者への道のりはわかった。第一位のこの実験における役割もわかった。もう知るべきことも必要なものもない。

計画段階は終了した。後は実行あるのみだ。

 

(さあて。いざ近づくと緊張で体が震えやがる。どっちかというと武者震いの方か? 何にしてもこのまま行けば俺は負ける。慶はそう言っていた。……対策でも練るか)

 

垣根はにやりと笑う。

戦いはそこまで来ていた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

長い長い通路が続いていた。

それは本来、表向きには公表できないような実験をするための施設なのだが今はとある少女の私有地と化していた。

 

「ふんふふんふふーん」

 

軽い調子で木原龍華は鼻歌を歌う。

金髪に青い瞳と外国人のような顔を歪めながら、

 

「これだけのことをしても無駄だったね。結局、あなたは何も変わらない、変えられない」

 

通路の中ほどで立ち止まった彼女は指紋を認証させ個室へと入る。

そこには一人の少年がいた。

木原龍華と同じ金髪だが、彼女よりは垣根帝督を連想させる髪型だった。

服装は黒のジャケットにジーンズとどっかで適当に買いました、と言わんばかりの格好だった。顔は中性的な印象を与えていた。

 

「問題無いよね? 氷室クン」

 

氷室。そう呼ばれた少年はわずかに頷いた。

木原龍華はそれを嬉しそうに、目を細めて見つめる。お気に入りの芸術品を眺めるような表情だった。

木原龍華は個室の隅にあるモニターに目を移す。

 

「数値に問題はないね。コンディションもまずまずか……」

 

もぞり、と氷室という少年が動いた。

体の調子を確かめるように、何度も手を握り、そして開く。

何の感情も感じさせない目で。ゆっくりとあたりを見回す。

 

「俺は……」

 

ゆっくりと口を開く。何かを確認するように。

 

「俺は、何を、すればいいんだ?」

「簡単だよ? 天谷ちゃんを殺せばいいの」

「どうして?」

「理由なんてないよ。……あえて言うなら因縁、かな」

「……」

 

氷室はゆっくりと顔を俯ける。無表情のまま。

何かを考えているようにも見えるし、何も考えていないようにも見える。根幹となるめいかくな思想や思考がなされていない幼児のようだった。

木原龍華はまるで機械に命令するような気軽さで、

 

「それじゃあ今日は調整に専念してイイようだったら明日にでも投下しよっか?」

「……了解した」

 

木原龍華は何かを想像してクスリと笑った。

 

 

 

 

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