とある無能力者の生き方   作:異端者

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少年と超能力者①

一方通行が無能力者に敗れる。

この事実は上層部の力で巧みに隠ぺいされ、実験もこれまで通り続行することとなった。

 

「しかし、まあ、あれだな」

 

天谷は携帯を耳に当て、気軽に呟く。

 

『あれ、とはなんだね』

 

電話の向こうから無機質な声が届く。

 

「一方通行の予行演習だったんだろ? 今回の俺の戦闘は」

 

『その通りだ』

 

「でもさ、結局、『幻想殺し』は右手だけじゃん? なのに俺は『ベクトル操作』に限り全身で無効化できるから、あんまり意味ないんじゃね?」

 

『仮に今回の戦闘により成長した一方通行が実験を最後までやり遂げたとしてもそれはそれで有益になる』

 

「あっそ」

 

成功し、二万体にクローンが殺害されてもそれはそれで一方通行が『絶対能力者』となるだけなので良し。

失敗したとしてもその失敗は別の目的に流用できるから良し。

この残酷な法則を聞いても、怒りを覚えない辺りに天谷の人間性の一部が見え隠れしている。

 

『逆に君の立場は危うい』

 

「何で?」

 

『今回の頓挫でおそらく「樹形図の設計者」に再演算を求めるだろう。その際、君も実験の枠組みに入れられる可能性がある』

 

電話の向こうのあざ笑うような声に天谷は違和感を覚える。

そして小さく笑ってから、

 

「それはあなた次第でしょうに。統括理事長殿?」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

天谷は様々な立場にある。

それは状況や事件。関わってくる人間によって大きくも小さくも変わっていく。

極めて一般的なファミレス。

その一席で天谷は数少ない『友人』と認める人間に会っていた。

 

「へえ。お前が一方通行を、か」

 

垣根帝督。

学園都市第二位の超能力者で『未元物質』、この世に存在しない物質を操る能力者である。

 

「まあ、俺の『特性』を鑑みりゃあ楽勝なんだけど」

 

「見るからにモヤシだしな。あの第一位」

 

そういってクックと皮肉に笑う垣根を見て天谷は目を細める。

 

「なんだよ?」

 

「多分、お前じゃ勝てねえな」

 

天谷は簡単に告げる。

 

「おそらく、アイツの能力に勝てる能力者はいねえよ」

 

「俺でもか?」

 

天谷は少しドリンクを飲み、間を開けてから、

 

「物体には総じてベクトルが存在する。熱量、運動量、とかな。『ベクトル操作』ってのは『自分だけの現実』にその情報を入力、解析をして行う。まあこの世に存在しない物質ってことはこの世に存在しないベクトルだから初見で反射されることはない、とは思うが」

 

「ふーん」

 

垣根はほんのわずかな、それこそ数秒だけ頭の中で天谷の言葉を吟味する。

そして笑う。

 

「お前にそう言われると自信なくなるなあ」

 

垣根は適当に何でもないように呟く。実際にはこれっぽちも思ってないのだろう。

 

「まあ、信頼してるぜ? 帝督は俺が手塩にかけて育てたレベル5の一人だし」

 

「……お前って本当に無能力者?」

 

垣根はこの疑問を何度もぶつけた事があるかのように尋ねる。

 

「ああ、そうだけど?」

 

そこで天谷の携帯が鳴った。メールのようだった。

携帯を開きため息をつく天谷に垣根が口を開く。

 

「誰から?」

 

天谷はだるそうに呟く。

 

「第五位の食峰様だよ。ったくアイツ隙を見せると、すぐに能力仕掛けてくるし、阻害用の小型装置も電力かなり食うからあんま使いたくないんだよ……」

 

垣根は軽く笑うと席を後にする。

 

「もう行くのか?」

 

「『仕事』があるからな」

 

天谷もため息をつきながらも席を後にした。

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