とある無能力者の生き方   作:異端者

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出揃う四人

「お前ら全員、一か所にまとまれ」

 

 どうしてこうなるんだ、と天谷は思う。

 

「やれやれ、強盗のようだな」

「……垣根帝督の行動パターンを解析、あえて『傍観』を選択します」

「それ、どういう原理だよ」

 

 あくびでもしそうな調子で二人の強盗を見る。

 その表情はそこそこの高位能力者のためか自信に満ち溢れている。

 この中に怪物級の人間が二人もいるとも知らずに。

 

「(……つーか、何でお前は金を下ろすくらいの事をしないんだ!)」

「(面倒だったんだ)」

「(こんなヤツの提案にのった俺は無事ですむのか?)」

 

 いくら不安がっても現状は変わらない。とにかく今は面倒を避けつつ銀行を出ることだ。

 その時、少女の声が響いた。

 

「うんうん。わかってるよ帝督お兄ちゃん。こんなとき、垣根帝督ならこう言うんだよね」

 

 その少女はシャッターを突き破って銀行に突入してきた。

 夏に不釣り合いなもこもこのセーターを着た少女だった。

 そして、天谷はこの少女を知っている。

 

「木原、円周……」

 

 木原円周は茫然とする強盗二人組に向かって円柱状の物体を投げ込む。

 直後、起爆。

 ボォン!! という起爆音と共に強盗は地面を転がる。

 そして、少女は言った。垣根帝督をなぞらえるように。

 

「俺の『未元物質』にその常識は通用しねえ」

 

 気絶した強盗を軽く足でつつき、意識がないことを確認する。

 その様子を見て、天谷は何か嫌な予感を覚え、口にした。

 

「まさか……、あいつも一緒です。何て言うつもりじゃねえよな?」

 

 対して木原練成はこれが当たり前だと言わんばかりに肩をすくめる。

 

「ああ……とは言っても、アイツの場合は純粋な人助けだよ。およそ、『木原』らしくないボランティア精神からくる。そういうモンだ」

「人助け、ねえ……」

 

 天谷は軽いため息をつき、その言葉を吟味する。

 木原円周は辺りをきょろきょろ見回してから、スマートフォンに浮かび上がるグラフを見て、うなずく。

 

「うん! これなら、大丈夫だよね。練成お兄ちゃん」

 

 心底、嬉しそうに言う木原円周だが、彼女の手に持っている物も天谷は気になっている。おそらくは『未元物質』の簡易兵器といったところだろうが、元の垣根は意識がなく生成できる状態ではないし、もし起きている間にそういう物を作ったなら、必ず天谷に言っているだろう。

 つまり、あの簡易兵器を作ったのは状況的に『善性』の可能性が高い。

 

「ったく、こんなことで大丈夫か?」

 

 珍しく自身の判断に後悔を覚える天谷。しかし、今さら悔やんでも仕方ない。

 『善性』はゆっくりと円周に近寄ると、軽いげんこつを喰らわせる。

 

「こら、それを使うのは最終手段ですよ。円周」

「むう……ごめんなさい」

 

 上目遣いでウルウルとした目を向ける木原円周に呆れを覚えながら天谷は銀行を出ようとする。

 

「どこに行くんだ?」

「ああ? ジャッジメントあたりが来る前に、ずらかるんだよ。……ここで足止めされても、面倒なだけだろうが」

 

 四人の異物は新たな場所へと移り行く。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 表向きは廃ビルってことになっているけど、本当は暗部のアジトとして使われてました、何て展開は学園都市において、かなり多い。学園都市が最先端科学技術を持っていながら、多数の廃ビルを抱えているのにはこんな背景もあったりする。

 そんな廃ビルに隠された地下区画の長い廊下を天谷達は歩いていた。

 

「……なるほどね。学園都市の監視網を逃れるために、こんな大それた施設を用意してるってわけか」

「本来は学園都市に反乱するとか、そんな思考回路の奴らが使う場所なんだけどさ」

 

 軽く笑いながら、木原練成は扉をあける。

 内部はとても殺風景な作りで、中央にテーブル一つとパイプいすが四つ。脇の方にあるのは何冊かの娯楽小説とコーヒーメーカー程度のものだった。

 天谷は軽く部屋を見回しながら、

 

「意外と何もねえんだな」

「仕方ないだろ。俺達の話を盗み聞きされなきゃいいんだし。余りもの置き過ぎると、後でややこしくなったりするし、何よりここを捨てるときに躊躇しないで済むしな。……座れよ」

 

 言われるがまま座る天谷。

 他の二人もそれぞれ席につく。木原練成だけはたったまま。

 

「コーヒーでも飲むか?」

「んなもんいらねえよ。さっさと本題に入りやがれ」

 

 焦るなよ、と木原練成はコーヒーをすすり、席につく。

 

「さて、どこから話そうか。……話したい事と話せる時間が釣り合っていないんでね」

 

 悩むそぶりを見せてはいるが、その表情は何を放すか決まっているようだった。最も、彼の場合、何を考えているかわかりづらい節はあるのだが。

 

「とりあえず、だ。今、木原数多を中心として、複数の計画が進行されている」

「計画?」

 

 木原練成はゆっくりとうなずいてから、

 

「木原数多は具体的には知らない。だが、暗部組織『アイテム』のリーダーである麦野沈利が出張っているようだったな。……アイツの目的に関しては把握している。『〇次元の極点』だよ」

 

 『〇次元の極点』という単語に天谷は眉をひそめる。

 〇次元というのは世界が一つの点で構成されているということだ。つまり、銀河も太陽も小さな点に含まれているという理論だ。当然、次元数も増えればそれらの規模も拡大していくのだが……。

 天谷はそれが具体的にどう麦野と繋がるのかわからなかった。

 

「何で、アイツなんだ?」

「秘密は彼女の能力である『原子崩し』だよ。一定の形を保たないまま放たれるあの力は間違いなく法則を歪めている。細かい理論は知らないが、そこに木原数多が目をつけたらしい。……他にも何かあるような気はするがな」

「……、」

 

 足をパタパタとさせる木原円周や静かに座る『善性』を見てから、もう一度、考える。

 麦野は第四位の実力を誇る超能力者だ。何か学園都市と事を構える場合に味方に引き入れておいて損はないだろう。しかし、第四位ほどの大物が首を縦に振るほどの条件が『〇次元の極点』だとして木原数多のサイドにはどんなメリットがある?

 

「科学者の面から見れば、『〇次元の極点』が『原子崩し』の最終到達点、『絶対能力者』って考えるなら……、おいしい話しではあるが」

「まあ、そうだな……。しかし、最大の問題はそこじゃないんだ」

 

 木原練成はチラリ、と『善性』を見る。それに応じるように『善性』も口を開いた。

 

「私と対をなす存在……『悪性』もあちら側に所属しています。その目的は『第一位をも超える創造性の獲得』です」

「……まるで、昔の帝督そのものだな」

 

 そう言いながら、天谷は一つの疑問を口にした。

 

「そういや、アイツらは何で手を組むんだ? ……いや、それぞれの利害が一致しているのはわかるが」

「簡単さ」

 

 木原練成はわずかに表情を真剣なものに変えて、言った。

 

「アイツらは手を組むことで、『樹形図の設計者』をより確実に手に入れようとしているだけさ」

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