とある無能力者の生き方   作:異端者

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防衛編~4~

「つーかよ。この私が半分ほど使い走りにされるってのは納得いかねーんだけどさ」

 

 その女性は秋物のコートを着ていた。まだ早いような気もするが、九月の夜風はそれなりに肌寒いので間違ったチョイスとは言えない。

 麦野沈利。学園都市第四位の超能力者。

 

「……まーた面倒な女だな。円周がいないとこ狙うんじゃねえよ」

 

「ああ? 近親相姦の上にロリコンかよ。救いようのない『木原』ね、まったく」

 

「女がそんなこと言うなって……習うわけねーか」

 

 木原練成は笑った。本当にそれだけだった。

 しかし、それだけで烈風が吹き、謎の斬撃が麦野沈利の頬に切り傷をつける。

 麦野は一歩も、少しも動かない。

 いや、違う。

 動く必要がないのだ。

 理由は圧倒的な演算力。

 ただ、イメージし、そのイメージを演算式に最適化させるだけでほぼ十割の力にする事ができる。

 

「これは……『〇次元の極点』か」

 

「……通常の空間系能力者が持つ、質量・距離の制限を無効にした力。これが私の最終到達点。絶対能力者ってヤツだよ」

 

 その言葉を、麦野の言葉を正しく理解していながら練成は笑みを崩さない。

 今度も予兆さえなかった。

 突如、練成が麦野の後ろへと現れる。まるで、テレポートで転移したかのように。

 

「……テメエ、その能力……ッ!?」

 

 裏拳が放たれる。麦野の後頭部に重く鈍い衝撃が走った。

 そして何となく連想してしまう。

 今の動き、テレポートしてからの動作。なぜか、あの忌々しい無能力者を意識させられた。……というより癖やフォームが彼そのもののように感じた。

 解析できた。できてしまった。

 しかし、揺らいだのは麦野の方だ。第四位の能力を持つ麦野すらも揺らぐ能力。

 それは……。

 

「……コピー能力!?」

 

「ま、安直なネーミングならそうなるな」

 

 直後。

 麦野にはなじみの深い光線が放たれた。

 

――――――――――――――――

 

 周囲は夜の光が零れている。しかしその淡い光が何となく寂しさを感じさせる。

 そんな道を歩く黒夜。

 

「スルーされてる気がするなァ……」

 

 確信を持ってそう呟く。

 

「――――なら、どうしますか?」

 

「……病理か」

 

 木原病理。『木原』一族の一人。

 彼女は涼しげな調子で言う。

 

「慶クンも苦戦すると思ったみたいでしてね? 私に頼んできたんですよ。『海鳥つれてこーい』って」

 

「……『セカンドシーズン』か。アイツら気に食わねェンだよなァ」

 

 黒夜は引き裂くように笑う。

 

「どっちがオリジナルかを教えてやるぜェ?」

 

「――――それは結構なことです、海鳥様。それでは教えてもらいましょうか」

 

「全く。小童が粋がっても小ささが露呈してしまうだけじゃぞ?」

 

 木原病理もこの状況には思わず苦笑い。

 

「まさか……読まれてました?」

 

「ご主人様が海鳥様を参戦させるのは想定内です。……最も、二対一で確実に潰すつもりだったのですが……さすがにそこはぬかりない」

 

「慶の野郎。面倒を押しつけただけじゃねェだろォな」

 

「……否定できないのは非常に残念ですね」

 

 木原病理はため息をつく。

 木のせいだろうか。夜の静寂さがわずかに蠢いた気がした。まるで、彼女らの殺気にあてられたかのように。

 直後。二つの大きなベクトルの槍が夜を二つに引き裂いた。

 

――――――――――――――――

 

「チッ……何で俺がこンな事しなくちゃならねェ」

 

 呆れた調子で呟く一方通行は大通をゆっくりと歩く。

 八月三十一日の事件で脳に障害を負ってしまった。その影響で『ミサカネットワーク』の補助がなければ、能力はもちろん話すことも歩くこともできない。さらに、能力をフルで使用できるのはたったの十五分。最盛期……あの『黒い翼』を生み出した時の一方通行からすれば考えられない程の衰退だ。今では、あの第二位に勝てるのかわからない。本質的な能力では勝利できても十五分以内に倒せる保障がないからだ。

 

(……こンな様じゃ最強は引退だなァ。第二位にでも譲っておくか)

 

 それで構わないと思うようになったのは第二位が存外強かったからか、それとも……あの無能力者との一戦も少なからず関係しているのか。

 

「つゥかあのガキはどこに行ったンだ?」

 

 表情を不機嫌そうに歪める。

 あの少女と出会ってまだ一週間ちょっとしかたっていないが、思い付きで行動し迷子になるというオチはもう両手の指では数え切れない。そして、そのツケを受けるのはいつも一方通行なのだ。

 

「クソ……いつから俺はこンなに丸くなりやがった」

 

「あー! こんなところにいたってミサカはミサカはあなたの怠慢に怒りを覚えてみたり!」

 

「……、」

 

 やはり子供の行動パターンは一方通行の演算能力でも把握できない。どうしてこのタイミングで現れるのか。

 

「ふっふっふ……そのチョーカーにはミサカネットワーク限定のGPS機能があるのだ! ってミサカはミサカは新たな切り札を見せびらかしてみる!」

 

 

 そんな二人を見下ろす影があった。

 

「見つけたぞ。第一位」

 

 彼は口元に三日月のような笑みを張りつかせ、白を基調とした体をゆっくりと動かした。

 

「さあ、殺し合いだ。俺が『第一候補』になるための生贄となってもらうぞ」

 

 直後。

 学園都市のビル群が第二位の白に埋め尽くされた。




sade練成
 
・木原練成 ・木原円周 ・木原病理 ・黒夜海鳥 ・天谷慶 ・鈴科百合子 ・『善性』

side数多

・木原数多 ・麦野沈利 結標淡希 ・『悪性』 ・レオン ・美空 

side???

・白井黒子 ・一方通行
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