麦野率いる『アイテム』は第十七学区を目指していた。
十七学区は自動化された工業施設が多く、人口は他と比べると極端に少ないといえるだろう。
当然、学生から見れば『何もない学区』となり、よっぽどの事がなければ足を運ぶこともないだろう。
「結局、今回の依頼は意味不明って訳よ」
『アイテム』の構成員の一人、フレンダが口を開く。
「意味わかんない依頼なんてこれが初めてって訳じゃないでしょ? 文句言ったって始まらないわよ」
リーダーである麦野が半ば呆れた様子で口を開く。麦野もそうは言うが、あまり納得していない様子だ。
「確かにそうですね……。こんな超小さい研究所を一つつぶすのに、統括理事長の名前が出てくるのは納得いきません」
絹旗も会話に交じる。
最後の一人、滝壺はボーっと上を眺めている。
彼女達はそれが当たり前のようで、会話を続ける。
「しかもしかも! 『電話の声』の話によるとギャラもいつもの三倍は出るらしいよ!」
フレンダは興奮気味に腕を上下に振る。よっぽど嬉しいのだろう。
「へえ、確かにそれはすごいわね」
麦野もこの事は少し気になるようである。
「こんな楽な仕事に超いつもより金を出すなんてどういう事なんでしょう……」
三人は違和感を覚えたようだが、そんな事を気にしてられるわけでもない。
いつもよりギャラが多く、楽な仕事なら喜んで受ければいいだけなのだから。
「着きました……」
運転を任せていた下っ端が車を止めて伝える。
それを聞いた四人は車を降り、研究所へと向かった。
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研究所へと入った四人は違和感を覚えた。
研究所自体は白い壁や天井。所々に電力供給のパイプ管のような物が通っており、不審な点はない。
だが、
「人の気配がないわね……」
そう誰もいないのだ。小さいとはいえ、研究所なのだから研究員の一人くらい居てもいいものなのだが。
「私達の襲撃を感知して超逃げたのでしょうか」
きょろきょろとあたりを見回す絹旗。人一人いないのはそれはそれで不気味だった。
「ったく……。滝壺は何か感じる?」
麦野は滝壺に尋ねる。彼女の能力は能力者のAIM拡散力場を感知し追跡するものだ。追跡の有効範囲は銀河系までと言われるほどなのだが、その為には『体晶』を使い能力の暴走を誘発させる必要があり長時間の発動はできないという弱点もある。
「……下の方から微弱だけど複数のAIM拡散力場を感じる」
滝壺の言葉に麦野は眉をひそめる。
「地下ってこと? そんな情報聞いてないけど……」
「とりあえず、地下への通路を探索してから仕事に超取り掛かりましょう」
あごに指を当て考える麦野に絹旗が声をかける。
「そうね。じゃあ絹旗とフレンダは東側の通路を。私と滝壺は西側を探索するわ。何かあったら連絡すること」
絹旗の言葉に迷っても仕方ないと判断した麦野は指示を出す。
彼女らは二手に分かれ、探索を開始した。
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「予想通り二手に分かれたみたいだな」
薄暗い監視室の中で天谷は呟いた。
研究所の至るところに仕掛けられた監視カメラが『アイテム』を捉えるのにそう時間はかからなかった。
「さーて、どちらから料理していくか……」
天谷は映像を見据えながら呟く。
まるでゲームを楽しむ、そんな様子だった。
(とりあえず麦野と絹旗には銃は通じない……。フレンダの爆発物にぶち込めば誘爆でどうにかなるか? でも殺すのももったいないしな……)
どうやって防ぐか、というよりどうやって倒すかを考える。まるで自分の方が相手より格上だと認識しているようだった。
(いや、銃はやめるか。滝壺に当たったら困るし……)
天谷は狩人のような目で監視室を後にした。
行き先は東ブロックだ。