「アンタに……この子を壊す資格なんてない。贖罪のチャンスも、与えない」
白い空間を御坂は強い足取りで歩く。
「この十字架は私が背負っていく。これは私の罪だ! アンタみたいな人間に生きてる価値なんて私は感じない。もしかしたら私にはアンタを殺す権利があるのかもしれない。……でも、その権利を一番持ってるのはきっとあの子たちだから……私は殺さない。これは私が壊すべきものよ」
だから、と御坂は言葉を続ける。
「アンタは……あの子の墓を暴いたあのクソ野郎を殺しなさい」
格下が、と一方通行は呟く。
でも、それが最善だとも思う。この場に第三位は場違いかもしれない。だが、それを言う権利も今の一方通行にはない。
(……第三位にまで口答えされちまうとはなァ。こりゃァ本格的に『最強』は引退かもなァ)
自身を鼻であざ笑い、軽くチョーカーをいじる。
(残り時間は三分くらいか。だがそれだけあれば充分だ。あのクソ野郎を殺すにはなァ!)
第一位は悪性へと突っ込み、第三位は自分と同じ顔をした白い少女へと立ちはだかる。
だが、『悪性』は気付かない。勝者の余裕を保ち続ける。
白い空間の外で、第五位の少女が笑ったことにも気付かずに。
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「命乞い……でもした方がいいんじゃないのかにゃーん?」
地面に倒れた木原練成を踏みつけながら麦野は笑みをこぼす。
木原練成はそれに軽い調子で答える。
「ごめんなさい、命は助けてくださーい」
「許す訳ねえだろうがクソボケ」
ゴン! と鈍い音が響き、練成の額がコンクリートへ打ちつけられる。頭全体へと広がった痛みに表情を歪ませながら、練成は思考する。
(さあてどうする……? さすがに『〇次元の極点』を使うことは演算能力的に無理だしな……原石で能力のインパクトが強いわりに限界値が低いんだよなー、俺の能力)
「オラどうしたぁ? 最後にイイ感じであがけよぉ……もっと私を楽しませろよぉ!」
練成の頬がアスファルトへと押しつけられ、いやな熱を帯びていく。
だが、麦野は一つの常識的な可能性を油断から見落としていた。
木原練成がもっとも信頼をおく人物。ただ一人、直接的な血の繋がりを感じさせる存在。
木原龍華。
「たーっく、バカ兄貴には苦労させられるぜー」
金髪の少女は麦野の背後で呟いた。間髪いれず銃声が響く。麦野は後ろも見ないまま、『原子崩し』の壁を生み出し、銃弾を防ぐ。
「美しいわねー兄妹の友情って」
「アンタには一生わかんないかもねー。……つーか死ねよ、第四位ごときで兄貴に逆らうな」
麦野は呆れた調子で答えた。
「死ぬのはテメエだ。青くせえ×××が」
「ただのビッチじゃねえの、お前。社会的にも殺してやろうか?」
互いにため息をつく。
そして、巨大な閃光と一発の弾丸が交差した。
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「オマエらは『第一世代』を甘く見た」
黒夜は手を握りしめる。
「オマエらが死ぬのが最優先だ」
レオンと黒夜の生み出した槍が激突する。周囲に風をばら撒き、粉塵が舞いあがる。
「……随分とお怒りのようで。私めがお気に障りましたか?」
「あァ! 障りまくって仕方がねェンだよ! テメェの何もかもが気にくわねェンだ!!」
ゾゾゾゾゾゾザザ! と無数の触手が集まり、一つになっていく。集められた『手』は黒夜の能力の噴出点として機能する。そしてそこから一つに集約された槍は一つよりもより強力なものになり、放たれる。
今度は、槍というよりも一つの砲弾といった方が正しいかもしれない。それほどの威力。
だが。
「まさか……これを想定していないとでも?」
また拮抗。一撃が通らない。
黒夜は露骨にいらつきを表情に出す。
「私と同じ方式……それを『手』を使わずにってかァ? とことン舐めてやがるな」
「格下相手にムキになる必要もないでしょうに」
「この……ッ!」
何度も放つ、放つ、放つ。だが、ただの一度も攻撃は通らない。まるで、弄ばれているようだ。
やがて、気付く。黒夜がレオンに勝てない最大の理由。
能力の応用性。
レオンは能力に様々な意味をこめることができる。敵への攻撃。向かってくる敵への防御。壁を壊し新たな通路を作る。そして何より、誰かを守るのが簡単だということ。黒夜の能力は『手』からしか噴出点を作り出せない上に貫通力も高くそれなりに威力もあるため味方もろとも巻き込みかねない。だが、レオンは違う。視界の中でなら、どこにでも噴出点を生み出せるレオンにはその心配がない。
もしかすると。
無能力者のくせに無茶ばかりするあの少年を守ることが黒夜よりもできるかもしれない。
(認めて……たまるか、そンなふざけたモン私がぶち壊す! 慶に一番ふさわしいのは私だ!)
「やってますねえ」
木原病理はレオンと黒夜の戦いを見つめ、ほほ笑んだ。
「お主は熱くはならんのか?」
「あいにくと……私にはそういう時期はないようで、過ぎ去った青春なんですかねえ。本当に残念です。そういう年齢ではなくなってしまって」
「そうか」
美空は少女とは思えない程、妖しく笑った。
「ならばわらわ達も始めようではないか。人外が織り成す宴を」
「そうですね……『未元物質・type,newgunner』」
木原病理がゆっくりと美空へ向けた右腕が歪に膨らんでいき、二の腕の下までが銃口に変わる。
全てを察し美空が手を横薙ぎに振るった直後だった。
無数の白い銃弾が美空へ襲いかかり、それが美空の能力によって周囲にまき散らされる。
もはや、彼女らは被害など考えないまま、己の闇をふるっていく。