とある無能力者の生き方   作:異端者

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少年とアイテム②

第十七学区の小さな研究所。その東側ブロックを暗部組織『アイテム』の構成員である絹旗最愛とフレンダは探索していた。

 

「どれくれい歩いたんでしょうね」

 

「結局、こんな事で足止め食うとは思ってなかったって訳よ」

 

東側の半ば程までふたりは歩いていた。

その間、地下につながりそうな通路は発見できず、フレンダが敵の奇襲を予測してトラップを仕掛けたりするだけだった。

 

「というか、滝壺さんの話だと地下に反応が超あったようですが、本当に能力者がいたらどうするんでしょうか?」

 

「殺すんじゃない? 麦野の事だし」

 

簡単にフレンダは口にする。残酷な一言を。しかし、元々暗部などという仕事自体、残酷なものだ。彼女達の反応は暗部としては当然だろうが、女の子としてはかなりずれてしまっている。

それに彼女らの目標は『研究所で行われている実験が何であれ完全に潰すこと』でありその被験者たる者を殺すというのも道理だろう。

 

「……しかしどこにもないですね」

 

呆れ気味に呟く絹旗。いい加減にイライラしているようだ。

 

「同感。これじゃあ明日になっても見つからないかも」

 

フレンダもため息をつきながら答える。

 

「案外そういう訳でもねえかもよ?」

 

その時、廊下の奥から声が響いた。男の声だった。

足音がゆっくりと二人に近づいてくる。

 

「……やはり、敵がいましたね」

 

「この狭い廊下じゃうまく爆弾を使えない……。結局、誘い込まれたって訳よ」

 

身構える二人を見て天谷はため息をつく。

 

(こんな女を殺しあいの場に放りこむとか……。アレイスター鬼畜すぎるだろ)

 

「どうやら、ここの人間ではないようですね」

 

「まあな」

 

天谷は答えてから軽く肩をすくめる。

 

「俺も殺しあいとか嫌いなんだけど……。まあ、しょうがねえよな」

 

パキパキと拳を鳴らしながら言う。

実際、天谷は楽しいことが好きなので殺しあいは後味が悪い(本人談)であまり好まない……というか殺したことなど一度もないのだ。

 

(死体見ても吐かないけど、自分が殺すと多分眠れなくなるだろうな……)

 

余裕な台詞を吐きつつ内心では冷や汗たらたらなのである。

相手が弱すぎてうっかり殺してしまうのではないか、と。

 

「そんじゃあ、始めるか!」

 

ダン!! と静かな通路に天谷が力強く踏み込んだ音が響いた。

対して絹旗も動く。轟!! と絹旗の『窒素装甲』が展開される。

 

(さてと、どうしたものかな……)

 

天谷は動きながらも情報から攻略法を模索する。

絹旗の能力『窒素装甲』は自身の体から数センチのラインで窒素を操るものだ。しかしその窒素は強力な防護壁となり、銃でもよほど威力がなければダメージを与えられないのだ。

つまり、

 

(力任せにせめても返り討ちにあうだけ、か)

 

一方通行に勝てたのは単にAIM拡散力場の影響で天谷に『反射』が通じなかっただけである。加えて、能力に依存した一方通行は戦い方も天谷から見れば子供の遊びに等しいものだったからである。

絹旗も能力を奪えば、か弱い少女なのだが能力があれば車も軽々持ち上げる怪力少女となる。

 

(現実的なのは演算を乱すことか? ……窒素奪おうにも空気中の割合が多すぎて奪いきれるとは限らない。それに俺には拳ぶち込む以外に方法ないし……)

 

「どうしたんですか! 逃げてばかりじゃ超勝負になりませんよ!」

 

ぶんぶんと拳を振りまわす絹旗。しかし動きは天谷から見ればかなりひどい。一方通行よりはマシといったレベルだ。かわすことなど天谷にとっては容易だ。

 

(どうせ能力使って適当に物ブン投げてたんだろうなあ)

 

そんな想像をしつつもスラリと最小限の動きで避けていく。動きは素人そのものだが万が一くらったりすれば大けが、下手すれば即死である。

 

(ここに投げれそうな物がないのも幸いしてるな……)

 

その時、

絹旗の背後、正確には通路の暗闇の奥から何かが飛んでくるのを天谷は微かに視認した。

 

「ッ!? マジかよ!」

 

それは小型のミサイルだった。

天谷はせまい通路に苦しみながらも、かろうじて横っ跳びする。

背後で鼓膜を揺さぶるような爆発音がするがそんなことに気を取られている暇もない。

隙をついた絹旗の小さな拳が目前に迫っていた。

 

「うおッ!!」

 

それを横に転がり何とか避ける。素早く体勢を立て直す。

 

「……やってくれるじゃねえか」

 

天谷はひきつった笑みを浮かべる。今のは本当に危なかった、とでも言いたげだった。

 

「あちゃー。今ので決まらないの?」

 

「あちらも超弱いというわけではないでしょう」

 

奥から涼しげに出てきたフレンダを見る。

 

(情けないな……。こんな簡単な動作にも気付かないなんて)

 

確かに、冒頭でフレンダが退いたのは違和感の残る動きだ。一対一よりも二対一の方が確実に倒せるからである。

しかし、向こうもここで決められなかったのは痛いだろう。もうこの奇襲戦法は使えない。

ということはここから本格的な戦いが始まる。

 

「楽しくなってきたな。おい」

 

「……超ここで決めましょう」

 

「結局、こうなるって訳よ」

 

――――少年は静かにほほ笑んだ。

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