とある無能力者の生き方   作:異端者

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我も迎撃は容易

「はー……終わった」

 

 御坂美琴は力なく呟くと、地面にペタリと座り込んだ。そして何故かその横に食蜂もしゃがみこむ。

 

「……なによ」

 

「こういうノリって必要かと思いましてぇ」

 

「……あっそ」

 

 もう食蜂のかなりブラックなジョークに反撃する余裕すらない。額にはいやな脂汗。『妹達』を偽物とはいえ、壊してしまったことに堪えているのだろう。

 

「……チッ」

 

 それを横で見ていた一方通行が御坂へ手を差し出す。

 

「……何のマネ?」

 

「能力はあと七分前後使える。それならオマエがこの時間にいるべき場所に連れていくことはできる」

 

「……冗談でしょ。アンタに手を借りるくらいならここで死んでやるわ。……それに」

 

 歯を食いしばり、彼女は強く、言い放つ。

 

「私にはまだやるべきことがある」

 

「……そォか」

 

 一方通行はわかっていた。自分が何を言っても彼女は聞かないことくらい。

 でも……それでも。例え無理とわかっていても。

 

(……俺に、俺に全てを押しつけてほしい。全て俺のせいにできたら……)

 

 少女は自身を責め立てる。少年が自身の力で行ってしまった全てを、こんな少女に押し付けたのか。

 少女は立ち去っていく。少しふらつきながらも、確実に歩みを進めていく。

 

「すまねェ……」

 

 その懺悔が少女に届く事はないと知りつつも彼は呟いた。

 

――――――――――――――――

 

「はぁー……」

 

 夜の交差点で麦野沈利は今度こそ勝利を確信する。目の前には倒れている練成と龍華はピクリとも動かない。おそらくは夜が明けるまでは目覚めないかもしれない。

 

「……殺しとくか」

 

 力の差が歴然だったとはいえ、少々の労働力を強いられた事は間違いない。さらに木原練成は自身の『原子崩し』を模倣してのけたのだ。第四位としてのプライドもそれを許さない。そもそも敵を見逃す理由など麦野にはない。

 右手を二人へとかざす。徐々に閃光は肥大化され『原子崩し』を射出するための演算式が組み上がる。

 しかし。

 

「……あ?」

 

 木原練成の指先がわずかに動いた。意識を取り戻したのか。……しかし麦野にとってそんなことは些細などうでもいいことだ。

 

「ったく……」

 

 練成がゆっくりと口を開く。横に倒れている龍華へと手を伸ばす。

 

「バカ……みてえに、復讐を誓って、第四位にこの様か……。情けねえよな」

 

「……」

 

 おかしい。『原子崩し』が放たれない。演算は正しい。『〇次元の極点』すら使う必要もないと思ったのだが……。

 

「何をした?」

 

「わからないか? ほら……第二位の能力でお前の『原子崩し』を出せなくした。……俺の演算能力でギリギリだったからな」

 

「テ、テメエ……ッ!」

 

 麦野には『〇次元の極点』がある。『原子崩し』を封じた程度で負けるようなこともないだろう。

 だがそれをもう一つ使えたからと言って、本当に勝てるのか? 相手はあの『木原』なのだ。一つのミスが思わぬ結果を生み出す可能性は無きにしも非ずである。

 でも、それでも……

 

「遅えよ、バカ」

 

「ホント……遅いね」

 

 おかしい。倒れてたはずの二人の声が後ろから聞こえる。なんで、どうして……

 

「まさか――――」

 

「もしかして――――」

 

 兄妹の声が重なる。だが麦野がそれを聞いたら――――負けが確定するような気がする。

 麦野は全力で後ろを振り向く。『〇次元の極点』の演算を組み立てる暇など存在しない。

 忘れていた。木原練成の能力は『模倣』だと。なぜ、目の前で見た現象しか再現できないと思っていたのか。なぜ、過去に認識阻害などの特殊な能力を記憶している可能性を考慮しなかったのか。

 

「クソ……!?」

 

 麦野が最後に見たのは笑う兄妹の姿だった。

 

――――――――――――――――

 

 結局は乱戦模様を呈してきた。当初は『悪性』と『善性』という二大戦力が中心になると思っていたが、まさか超能力者三人に大能力者一人と錚々たるメンバーをぶつけてくるのは予想外の方策だ。

 正直にいえば少々予想外のところもあったのだが、おおむね問題はないのだろう。これで『プラン』はさらなる進行を見せる。

 

「……問題は天谷慶、か」

 

 そう、不気味なのはあの少年一人なのだ。今回の抗争でほとんど姿を見せていない少年も統括理事長の情報網からは逃れられない。そんなことは天谷も承知しているだろう。しかし、その心理まで読み取ることはできない。

 彼の行動は不可解だった。コンビニでコーヒーを買ったりファミレスで夕食を食したり。まるで普段と変わりないのだ。アレイスターは頭がいい。頭がいいからこそ彼の行動は理解できない。しかし、逡巡している暇がないのも事実だ。影響力だけで実質的な力を持たない彼ばかりを気にしていては『第一候補』や『第二候補』、そして何よりあの右腕を持つ少年を見逃す可能性だってある。

 

「…………難しいな問題だ」

 

 さすがのアレイスターも……いや、アレイスターだからこそ悩む問題なのだろう。今まで『プラン』の妨げになるような人物は中核に据えている上条当麻くらいかと思っていたのだが……。やはり権力や立場だけではどうにもならない問題は存在する。それを解決するにはどうするか。アレイスターにとっては簡単ゆえに難しい問題だ。

 

「――――やはり、私が出るしかないかもしれないな」

 

 無数のイレギュラーを前にアレイスターは一つの可能性を選択肢に入れた。おそらく世界へと影響するであろう選択を。

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