Another World If -Early Days-   作:山吹 色

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その後、屋上から担架で武偵病院へ緊急搬送された天野秋義は気を失ってしまうほどの重体だった。

身体を貫いたように見えた一撃だったが、実は脇腹を深く抉っただけで5時間におよぶ大手術の末、なんとか一命を取り留めた。

しかしなぜか意識は戻らず、彼は今も病院のベッドで横になったままだ。

あの一件が終わってから一週間、僕はあの光景が頭に焼き付き、精神的に病んでしまい、ずっと部屋に引きこもっていた。

ルームメイトなのかよくわからない奴、雑賀雅とはその日以来、1度も顔を合わせていない。

誰にも会いたくなかったし、あっちも気まずかったのかもしれない。

そしてようやく武偵校へ行き、本日は教務科へ来ていた。

いわゆる一週間前の事件の取り調べなのだ。

曲がりなりにもその事件に関与した唯一の人物だからね。

しかもその担当が、一週間と三日前の編入試験の担当教官だった葛城教官。

極度の人見知りだと知って、これでは何も喋らないんじゃないかと教務科の先生方が気を回してくれたのだろう。

 

「よぅ武藤。しばらくぶりだな」

 

取調室のような狭い部屋に姿を現した葛城教官は、武偵校の夏制服・ネロに似た黒いスーツ姿だった。

しかし、あのトレードマークのような黒いロングコートだけはちゃんと着ていた。

それを脱いで椅子の背もたれに掛け、タバコに火を付けてどっかりと椅子に座り、ブーツを履いた脚を机の上に乗せて組んだ。

 

「お久しぶりです。葛城教官」

「アハハ。そんなに改まるなよ。オレと武藤の仲じゃねぇか。体調は大丈夫か?」

「まぁ、えっと、はい」

「しかし災難だったな。武偵校に編入して3日でこんなことになるとは。やっぱり人気者は違うよな」

「ちゃかすのは止めてくださいよ」

 

暢気にタバコを吹かしながらいう葛城教官。

大丈夫なのか、取調官がこの人で。

なんて思ってしまう。

 

「オレは取り調べ?事情聴取っつーのが大の苦手でよ。だから細かい事をズラズラ聞くのが面倒いから単刀直入にしか聞かねぇ。それでいいか?」

「わかりました。それなら僕の方も気が楽です」

「おう。んで大体の内容は他の連中から聞いてるんだが……確認の意味で聞き直すわ。一週間前の夜、何があった?」

 

葛城教官はその横着な態勢を直し、真顔で僕に向き合う。

僕は昨晩起きたこと、彼女、『邪眼の魔女』こと美堂蘭に襲撃され、天野秋義が僕を庇って怪我をした事。

 

「そうか。辛かったな」

「はい」

「仲間を目の前で殺られるなんてこれほど辛いもんはねーよ」

「僕は……何もできなかった。彼女を相手に、戦えなかった」

「そりゃあ仕方が無いさ。アイツは俺が知ってる数少ない、モノホンの魔女(マツギ)だからな」

 

……本物の魔女。

彼はいうのを渋りながらもそう言った。

 

「知ってるんですか、やっぱり」

「あぁ。裏業界じゃ世界レベルで有名人だ。何度か取っ捕まえようとした腕の立つ武偵が居たが、皆殺しになったっていう話も有名だぜ。頭から八つ裂きにされてな」

「皆殺し……八つ裂き……」

「そう。目を合わせた人に幻影を魅せる邪眼。そして常軌を逸した怪力。天才とも言えるバトルセンスと頭の冴え。どれをとっても並大抵の武偵じゃ敵わねぇ」

「…………」

 

なるほど。

聞いてみれば納得できる。

あの恐ろしい殺気の意味、そして本質が。

 

「奴と戦わなかっただけ、お前の判断は正しい。もしバトッたら2人ともお陀仏だったからな。そう言えば奴はお前を殺すと言ったんだな?」

「そうです。聞き間違えじゃありません」

「……そうか。奴は所属する組織から命令が下らなければ絶対に動かねぇ。奴が動いたとなると、組織全体で何か動きがあったのかもしれないな」

 

何か思い詰めたように小さくつぶやく教官。

僕に対して言ったのか気になって思わず声を掛ける。

 

「どうしました?教官?」

「何でもねぇよ。お前には関係ねぇ。いいか?ゼッテーに首を突っ込むなよ?」

「はい!」

「 わかりゃいいんだ。仕方ねーな。お前は武偵としちゃまだヒヨッコだし。護衛の1人や2人つけなきゃダメみてぇだ」

「は、はぁ」

 

背もたれに寄りかかって腕を組みながらいう彼。

それに僕は曖昧な返事で返す。

しばらく部屋の中にはなんとも言えない静寂が漂う。

 

「武藤。これは俺の経験則なんだが、アイツの性格だと今月中にお前を殺しに来るだろう」

「今月中ですか!?」

「おそらくな。それにアイツを捕まえなきゃお前は確実に殺されるだろう。言うまでもないが」

「…………」

「しかし。アイツにも弱点はある。人間ならではこそのな」

 

思い出したように唐突にいう彼。

そんな危険人物にも弱点がある事に僕は驚いた。

武偵を八つ裂きするほど怪物じみた人に弱点があるなんて。

人間ならではのって一体何なんだろう。

 

「さっきの奴の有名な話なのだが、なぜ武偵が負けたのか、敗因はなんだと思う?」

「うーん、わからないです」

「簡単な事さ。奴にサシで勝負を挑んで負けたヤツだ。サシで喧嘩をふっかけたらどう考えても完全に負けるだろ。一対一の対人戦なら奴は圧倒的に強い。見りゃ一目瞭然さ。だが相手が2人以上の複数なら勝てなくもないだろうな」

「……なるほど」

「それと聴いた話だが、邪眼には1日に使える回数に限度があるとか。あとは1度使った相手には使えないとか。そんなことを聴いたな」

 

再び背もたれにもたれ掛かり、思い出すようにいう彼。

なるほどね。

彼女は強いがゆえに常に単独行動を主体としていると仮定したら、裏を返せば協調性がないのでおそらくチームプレーで挑まれたら対応しようがない。

1人に突出し過ぎて対処できないかもしれない。

なぜならいくら天才と言われても、誰ともコミュニケーションを取らずに、しかもカバーしてくれる仲間もいないければ厳しい。

逆にこちらが複数人のチームプレーで挑めば勝てるかもしれないという考え方か。

だけど彼女の場合、普通に蹴散らしてしまいそうな気がする。

それに護衛されるのか。

なんか気が進まないな。

 

「そして護衛の件だが……誰か頼める相手はいるのか?」

「いえ、それがその……」

 

──ガシャーン!

僕が言い淀んだ時、不意に頭上のダクトの通風孔が外れ、中から人影が2つ落ちてきた。

いうまでもないが、僕の上に何の予兆も無く。

僕は情けない悲鳴を上げて下敷きになったが、向かいに座る彼は涼しげな表情でそれを見下ろす。

 

「「その依頼!あたし(ボク)が受けるわ!」」

 

耳に障る鼻にかかった甲高いアニメ声と、少年のような綺麗なアルトボイスが響き渡る。

押し潰された僕の上で、堂々と高らかに宣言する2人。

それを冷静に見てた葛城教官は半ば呆れながら、仕返しと言わんばかりに彼女達のプロフィールを語り出した。

 

「雑賀雅。武偵校狙撃科二年、Sランクで狙撃科のエース。射撃の腕前は天下一品だが性格に難あり。その為、クラスではかなり浮いている。自信過剰な傾向があり、プライドが高いので誰とも釣り合わず、いつも1人でいることが多い。誰に対しても凶暴過ぎる立ち振る舞いで付いたあだ名は怪物娘。身長148cmのチビ。スリーサイズは上から65、58、69の幼児体型がコンプレックス」

「そんな馬鹿なっ!?ってかなんであたしのスリーサイズを知ってるの!?」

「続いて九音狐太郎。武偵校超能力捜査科一年のSランクで主席。剣術を得意とする妖術師(カルドゥーン)でその実力は学年トップクラス。誰にでもフレンドリーで気取らず、常に明るい振る舞いからクラスではアイドルのような存在だがその本性は男をたぶらかす小悪魔。身長152cm。スリーサイズは上から84、65、72のロリ巨乳。男のような狐太郎という名前にコンプレックスを感じている」

「男っていうな!ボクはれっきとした女だ!」

「それでだ。ダクトにいるのは部屋に入った時点で気付いてた。お前ら2人はダクトを通って此処に何をしに来たんだ?ん?」

 

殺気に似た凄味を放ちながら2人の少女を見下ろす彼に、予想外の出来事だったらしくビビって顔を合わせて黙り込む彼女達。

彼女達は完璧に隠れてたつもりらしいが、どうやら葛城教官にはいること事態が筒抜けだったみたいだ。

 

「あぁん?ダンマリかよ。少々腕が立つからって現役の教官をなめんじゃねーぞガキ共が。何の用だって聞いてんだ?答えろよ?」

「あたしがその……武藤龍輝の護衛の依頼、引き受けたい……んです」

「ボクも引き受けたいです!」

「護衛だぁ?Sランクの武偵が2人、仲良く武藤の護衛につくってか?人気者はツライねぇ。どうする龍輝?」

 

タバコを片手にニヤニヤしながらこちらを向く葛城教官。

どちらも武偵高で数人しかいないSランクの武偵で2人も護衛してくれるなんてすごく心強い。

しかし、果たして2人は仲良くしてくれるのだろうか?

……それはないだろう。

もう既に互いににらみ合って、激しく火花を散らしてるし。

もしも2人が喧嘩になったら、止めないで逃げるしか生き延びる方法はないだろうな

はぁ、仕方が無い。

 

「2人に僕の護衛の依頼をお願いします」

「本当に!?」

「やったぁ!」

「だけどひとつ、僕から条件があります。それは……何が何でも喧嘩はしないでください。2人とも仲良くお願いします。もしもそれが出来ないなら、依頼の途中でも別の人に頼みます」

「なるほどな。そりゃあ妙案だ武藤。性格が真反対、協調性も皆無の2人が果たして仲良く依頼された護衛任務を完遂できるか。こりゃ見物だな」

 

声を上げて笑いながらそう言う葛城教官。

急遽、突き付けられた条件の内容に困惑する2人。

さぁ、どうする?

 

「わかった。コイツと喧嘩しなければいいのね」

「了承しました御主人様!簡単なことです!」

「御主人様っ!?」

「ほー……武藤?大人しそうな顔してお前もなかなかやるじゃねーか」

「葛城教官〜!!」

 

ジト目で僕を見てそう言う葛城教官。

不機嫌そうな顔で互いを見る雅と狐太郎。

こんなことで折れる2人ではないと、心のどこかで分かっていた。

まぁ、いいか。

そんなことで悩んでも仕方が無い。

 

「よし。これで事情聴取は終了だ。帰って良いぞ武藤」

「はい。お疲れ様でした」

「おう。んじゃな。あ、そうそう。何かあったらこの携番に連絡寄越せ。ほれ」

「あ、ありがとうございます」

「あとお前ら護衛2人。いつもの様にあんまり先走るなよ?今回のは知ってるとは思うが、一筋縄じゃいかねぇ相手だからな」

 

ゆっくりと立ち上がり、コートの袖に腕を通しながら胸ポケットから携番を紙に書いた物を取り出す。

そして僕に手渡し、護衛の2人に忠告して部屋を出ていく葛城教官。

彼が部屋から出ていくのを見届けると、張り詰めた緊張が解けたように溜息をつく2人。

雅さんが緊張している姿を見たのは初めてかもしれない。

へぇ、雅さんも緊張することがあるんだ。

 

「あの邪眼の魔女に目をつけられるなんて、アンタ何しでかしたのよ?」

「いや、僕だって身に覚えがないんだ。屋上で会ったのが初めてだし」

「そうなんですか?御主人様」

「狐太郎ちゃん。御主人様はもうやめてくれ」

「勢いでアンタの護衛の依頼を引き受けたものの、すごく困ったわね。よりによって邪眼の魔女が相手じゃ部が悪すぎるわ。今から何か対策を練らなくちゃいろいろとまずいと思うの」

 

机に向かい合って椅子に座り、赤茶髪のツインテールの片っぽを掴むと無駄毛を探し始めた雅がしかめっ面をしながらそう言った。

狐太郎は相変わらず小悪魔みたいな笑いを浮かべながら、僕の横にちゃっかり体育座りをする。

やれやれと頭を抱える僕。

……だが仕方ない。

命を狙われている以上、迂闊なことはできないし。

右も左も分からないど素人の僕が指示できる立場でもないので、情けないけど2人から指示を仰ぐしかない。

相手はあの『邪眼の魔女』と呼ばれた腕利きの殺し屋だ。

どんな手を使ってくるか、分からない。

 

「とりあえずここに居ても仕方ないわ。取り調べも終わった事だし。龍輝。一旦アンタの部屋に戻るわよ」

「僕の部屋っ!?なんで?授業は?」

「この場合、授業よりも任務が優先よ。心配しないで。先生にはあたしから連絡しておくわ。狐太郎、依頼を一緒に受けてる以上、アンタもついて来なさい」

「なんで貴女が無い胸を張って堂々と仕切るんです?いつからそんなに偉くなったんですか?」

「う、うっさいわね!これ以上、生意気なこと言ってると蜂の巣にするわよ!このロリビッチ!」

 

再びいがみ合う2人を見て、大きくため息をつく僕。

しかし、口で言い合うだけで互いに手は出さず、喧嘩には至らなかった。

実の所、雅の両手はスカート下のホルスターにある二つのM93Rに掛かりそうになり、狐太郎も腰に携えた日本刀に手を掛けかけていた。

……一触即発と言った所だ。

それを見てちゃんと条件を理解していたと、僕はホッと胸を撫で下ろす。

ここで喧嘩になったら、僕までえげつないとばっちりを受ける事になる。

 

「ところで雅さん?何故、今から僕の部屋に行くですか?」

「なに?そんなこともわからないの?簡単な話よ。そこをこの護衛任務の拠点にするわ」

「きょ、拠点!?」

「当たり前でしょ!アンタの命が狙われているんだから、そこをガッチリ固めて要塞化するの!そして24時間、アンタにつきっきりで監視する!これしき一般常識よ!覚えておきなさい!」

「は、はい」

 

机にその小さな体を乗り上げ、ずずいと可愛らしい人形みたいな顔を近づけ、犬歯を剥き出しにして言う雅。

その気迫に負けた僕は、身を引きながら小さく何回も頷く。

とりあえず要塞化するのはいいとして、24時間つきっきりで監視はあんまりじゃないですか?

まぁ、そうも言ってられないだろう。

それが護衛任務というものだと思うことにした。

とりあえず僕の部屋を拠点にし、要塞化すると言う事で雅と狐太郎を連れて部屋から出る。

部屋から出た直後、胸ポケットに入れていたスマホが細かく振動する。

ゆっくりとディスプレイを点灯させると、画面に虎政の名前と電話番号が表示される。

……虎政?何か用なのかな。

雅に先に男子寮の部屋へ行くように言うと、応答のボタンをスライドさせてスマホを耳に当てる。

 

「もしもし」

『よぅ、龍輝!久しぶりだな。体調は大丈夫か?』

「まぁまぁかな。どうしたの?」

『えーっと、秋義について聞きたいことがあってな。今からちょっと会って話そうぜ?』

「今から?わかった。どこに行けばいい?」

 

そう聞くと虎政は『強襲科実習棟の屋上に来てくれ』と答えた。

歩いていた僕はゆっくりと踵を返し、昇降口とは真逆の道に切り替える。

そのまま指示された通りに僕は強襲科実習棟の屋上へ向かう。

階段を最上階まで上がり、屋上のドアを開けると虎政が青い空を見上げて座っていた。

 

「虎政」

「おう。思ったよりも早かったじゃねーか。まぁ座れや」

「うん。秋義について聞きたいことがあるって?」

「あぁ。アイツ、お前を庇って敵に突っ込んでいったんだろ?」

「そうだね……僕は何もできなかった。本当に申し訳ないです」

 

虎政の横に並ぶように胡座をかき、一緒 に空を見上げて僕はいう。

不甲斐なさと情けなさを噛み締めながら。

僕が秋義の特攻を何が何でも止めていれば、あんなことにはならなかっただろうと今ですら後悔してもしきれない。

それを聞いた虎政は、穏やかな表情で笑う。

 

「俺は全く気にしてないぜ。お前は悪くねーよ。秋義はお前を守る覚悟した上で特攻を仕掛けたんだからな」

「虎政……」

「殺されかけた相棒の仕返しはしてやんねーとな。というわけでだ。邪眼とやらに対抗できるいいものがある」

「邪眼に対抗できるいいもの?」

「あぁ。俺の部屋の物置を掃除していたら使えそうな良いものを見つけてよ。それがコレだ」

 

ニンマリと口角を上げて笑った虎政は、ずっと右手に持っていた黒漆拵の太刀を僕に放り投げる。

僕は慌てつつそれを受け取り、なんだろうと思ってゆっくり鞘から抜く。

──シャキンッ。

燦々と降り注ぐ太陽の光に、鈍く輝きを放つ白刃が現れる。

綺麗に波打つ刃紋と切っ先に向かって緩やかに美しく反る刀身。

見た目は……うん。

何の変哲もない日本刀だ。

 

「これが邪眼に対抗できる?」

「おう!って知らねぇのかよ?九字兼定(くじのかねさだ)って名刀で最上業物だ」

「くじのかねさだ?」

「あぁ。九字を切るって昔の言葉があってな。邪な物を払う。魔を斬るって言う意味なんだ。そんで九字兼定は裏銘に『臨兵闘者皆陣烈在前』と九字が切られていて、魔を斬る刀って昔からの言い伝えがある。俺はそう言うのあんまり信じねぇが」

「魔を斬る……刀か」

 

虎政の話を聞きながら、ゆっくりと鞘に納めて僕はそう呟く。

何気なく空を見上げる虎政。

 

「……一か八かでさ。ソイツで邪眼ってヤツをぶった斬ってみろや龍輝?」

 

突拍子もなくそんなことを口走る虎政。

それを聞いて唖然としながら不可能だと否定する僕。

 

「邪眼を斬る?そんなことできるわけないよ。目を合わせた者に幻影を魅せる眼を相手にそんなの通用するはずが無い」

 

幻影や幻想は知っての通り、自分が現実で実際に見たものではない。

実在しない、空想の出来事そのものを実体でぶった斬るなんてそもそも無理な話だ。

ましてや相手から見させてくる夢の様なものに抗い、夢そのものを斬るなんて発想が馬鹿げている。

そんな都合の良い話があるわけない。

 

「んぁ?よくわかんないけどやってみないと分かんねぇだろ?」

「う、うん……」

「幻影か幻想か分からんが、見たものまるごとソイツでぶった斬ってやれ。秋義をあんな目に遭わせたお礼にな。ついでに魔を斬る刀の力ってものをちょっとばかし見てみてぇし。まぁ、とりあえずそれは龍輝にくれてやる。使ってくれや」

「え、くれるって?」

「持っていっていざって時に使えって言ってんだよ!2回も言わせんな」

 

いつものようにぶっきらぼうで言いながら僕の頭をぐしゃぐしゃ撫でる虎政。

そして何事も無かったように、彼は今行われている自由履修の授業へと戻って行った。

僕はもらった九字兼定を背中に背負い、強襲科実習棟の屋上から昇降口へ向かった。

武偵高の校門を抜け、男子寮の自室に向かう帰路につく前に武偵高に隣接する武偵病院に行こうか悩んだ。

正直、秋義の見舞いに行きたかった。

しかし今の僕は命を狙われていてとても危険だ。

また秋義を巻き添えにしてしまう。

そう思った僕は踵を返し、そのまま雅達が待っている男子寮の自室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued ! !

 

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