今世紀エヴァンゲリオン   作:イクス±

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お待たせしましたー!

よかれと思って今回は日常回!

よかれと思って一話で終わらせたために時間がかかってしまいましたが、
よかれと思ってなんとか十一月中に投稿することができたので
よかれと思って勘弁してください!

さぁ!よからぬ内容を読み始めようじゃないか!!


それと、ふと思いついた謎の言葉をそのまんまサブタイにした系の話があるらしいぞ?



第拾壱話「僕の綾波がこんなに可愛いはずがレイ」

「碇、何やらシンジくんがお前と会いたがってるらしいぞ」

 

「・・・なに?」

 

 

ヤシマ作戦が完遂した次の日、指令室に入ってきた冬月の言葉にゲンドウは眉を顰めた。

 

 

「何の用だ」

 

「レイの事を聞きたいそうだ・・・どうするんだ?碇」

 

 

ゲンドウはその返答を聞いて納得すると共に、思考を始めた。

真実を話すなどという選択肢は微塵にも考えず、如何にして真実から遠ざけるかを考える。

シンジの察しの良さ、頭の回転の速さにはゲンドウ自身も一目置いていた。

故に下手に誤魔化してしまえばシンジの疑いは強まり、変態的な推理力で真実に到達してしまう所まで容易に想像できてしまう。

忙しいと言って面会を拒絶し、この場を凌ぐことはできるだろうがそれはこの場限りの事。

拒絶し続ければまたシンジは疑い始めるに違いない。

 

では、どうするか。

 

 

「・・・冬月、奴をここに呼べ」

 

 

シンジの方から拒絶させてしまえばいい。

 

それがゲンドウの出した結論だった。

 

 

 

・・・

 

 

 

「・・・」

 

 

指令室へ足を踏み入れたシンジは、何も言わずに前へへと進む。

そして椅子に座って机に両肘をついて口元の前で手を組む、お馴染みのポーズをしたゲンドウの目の前まで来て立ち止まり、そこでやっと口を開いた。

 

 

「・・・父さん」

 

「何の用だ」

 

 

真面に話す気など無いと、要件を言う事を急かすゲンドウ。

シンジはそれに対した反応を示さずに話を進める。

 

 

「父さんにとって、綾波さんはどんな人なの?」

 

 

シンジのその質問に、ゲンドウはすぐには答えない。

ゲンドウの意図で作りだされる重い空気。

並の人間ならここで自ら引き、その問いを撤回するがシンジはそれを見透かしているようにゲンドウの目をサングラス越しにじっと見つめていた。

シンジに引く様子は無い。それを確認したゲンドウは十二分に間を開けてから用意していた答えを口にする。

 

 

「家族だ」

 

「っ」

 

 

ゲンドウの言葉を聞くとシンジは顔を破顔させ、そしてそれを隠すように俯いた。

俯いたまま肩を震わせ、何かに耐えている様子のシンジはしばらく経ってから声を絞り出すように返事をする。

 

 

「・・・わかった(震え声)」

 

 

そしてシンジは俯いたまま振り向き、ゲンドウに背を向けて歩き出す。

一連の流れを斜め横に立って見ていた冬月は、扉へと歩くシンジの背中を痛ましそうに見つめていた。

立っていた位置が悪かったのか俯く前の表情は見えなかったが、その心境は容易に想像できたからだ。

 

父親が息子である自分を差し置いて、他の人間の事を家族だと言って突き放す。

その事実は父親に呼ばれやって来たシンジにはあまりにも残酷な仕打ちだろう。

父親の言葉にひどく傷つき、居た堪れずに悲しみで肩を振るわせながら黙って出口へと歩くその様子を見て冬月は思った。

 

 

「(彼はもうレイと普通に接することはできないかもしれないな)」

 

 

まさにそれは、ゲンドウの思惑通りだった。

ゲンドウに手を貸す身で有りながら自身の良心に苛まれ、心の片隅ではシンジが良い意味で予想外の反応をする事に期待していた冬月だったが、それは叶わぬ思いだったと理解した。

ゲンドウもまた、去っていくシンジの背中を何も言わずに見つめる。

 

二種類の視線を背中に受けながらその場を後にするシンジ。

そのシンジの今の心境は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(だ・・・駄目だ、まだ笑うな・・・こらえるんだ・・・!))」

 

 

今さらではあるが、「破顔」というのは顔をほころばせて笑う事を指す言葉だ。

シンジは笑い出しそうになるのを堪え切れずに肩を震わせながら指令室から退出し、しばらく廊下を歩いたのちにダッシュでその場を後にした。

 

ちなみに破顔したシンジの表情を真正面から見ていたゲンドウは、絶賛混乱中である。

 

 

 

・・・

 

 

 

「綾波さんっ!!」

 

「どうしたの?」

 

 

僕は途中まで一緒に帰ろうと約束をし、予定があると言って待たせていた綾波さんの元へと走り寄り声をかけた。

綾波さんは息を切らしている僕を見て不思議そうにしながら返事をしてくれた。

 

いやそれがね?

綾波さんの扱いについて一言物申してやろうと敵地に乗り込んだらとんでも無い返事が返って来たんだよ綾波さん!!

・・・と、馬鹿正直に捲し立ててもドン引きされるだけだろうから、結論だけを伝えることにする。

 

その内容が色々アレだというのは自覚しているしずっと迷っていたんだけど、父さんの言葉に背中を押され(錯覚)僕はようやく決心がついたんだ。

僕は相も変わらず不思議そうにこちらを見つめる綾波さんに、僕は思い切ってその思いを伝えた。

 

 

「僕のことを・・・」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんと呼んでくれないかな!?」

 

「・・・?」

 

 

たっぷりと間を開けてからその言葉を言い放つ。

それに対して綾波さんは少し考えるような素振りをした後、先ほどと同じように不思議そうにこちらを見てきた。

 

綾波さんには意味が解らなかったようだ。ちょっといきなり過ぎたね。

僕は急ぎ過ぎたことを恥じながら綾波さんにその発想に至るまでの過程を説明する。

 

 

「実はね?今父さんに用事が有って会いに行ってたんだけど、ちょっと気になって綾波さんをどう思ってるか聞いてみたんだ」

 

 

本当はそれがメイン・・・というか他に用なんて無いわけだけど、あくまで他の用事が有って父さんに会いに行ったという事にする。

普通に「綾波さんの事を聞きに行った」なんて言っちゃったら嫌な思いをさせちゃうかもしれないからね。

 

 

「父さんは綾波さんの事を家族だと思ってるって言ってた・・・つまりは、僕の妹になるわけだよ!」

 

「そうなの?」

 

「そうだよ!」

 

 

わかってる。僕だってわかってるんだ。

何が「つまりは」だよ!って感じに話が飛んでしまってるのは十分理解してるさ。

でもしょうがないじゃないか・・・ほぼ私情なんだよ!

いくら綾波さんが純粋だからって、僕のキモさ爆発な内面をそのまま吐露する勇気なんて無いね!

 

このまま押し切るぞ!

 

 

「・・・そうなのね」

 

「うん!そうなんだよ!!」

 

 

考え事をしながら「そうなの?」「そうだよ!」のやり取りを某陽炎の日々の如く何度も繰り返していると、ようやく納得(?)してくれた。

よーし・・・では、もう一回。

 

 

「綾波さん!僕の事をお兄ちゃんと呼んでくれないかな!?」

 

「・・・おにいちゃん?」

 

「!!!」

 

 

僕は感動のあまり言葉を失い、そのまま無言でコロンビア(AA略)のポーズを取る。

頭の中ではガッツポーズ淫夢くんでお馴染みのUCの曲が僕の偉業を褒め称える様に鳴り響いていた。

そんな中綾波さんは、恥ずかしがる様子も無く相変わらずキョトンとした様子で僕を見るばかりだ。

 

いや、うん・・・そうだよね。家族になったんだから、僕も呼び方を変えなきゃね!

 

 

「レイ、今日から僕たちは家族だ!」

 

「ええ、そうね」

 

 

昨日の夜と同じように笑みを浮かべて綾波さ、じゃなかったレイは笑う。

嬉しそうに笑う彼女を見て僕も同じかそれ以上に嬉しくなった。

 

あー、ヤバイ・・・うちの妹が可愛すぎる。

 

 

「お願いが有ったら何でも僕に言ってくれていいからね!」

 

 

自分でもテンションがいつも以上に可笑しなことになっているのはわかっている。

だけど僕は自重なんてしないし、するつもりもない。

ここからは僕のステージだッ!最初からクライマックスだったけどね!!

 

僕が勢いで言った「もしも妹がいたら言ってみたいセリフランキング」上位に食い込んでいるであろうセリフを聞いてレイは、少し考える素振りをした後に不安そうに僕を見た。

 

 

「・・・お願い、いいの?」

 

「え?」

 

 

正直言って意外だった。

このセリフを言う全国のお兄様は大体妹にスルーされるか、もしくは無理難題を押し付けられるかの二択を選ぶことになるのだが僕はてっきりレイは前者だと思っていたのだ。

 

しかし予想外ではあるけど、悪いわけでも無い。むしろ大歓迎だ。

たとえ無理難題を言われたとしても、どんなことをしてでも叶えて見せるという意気込みを込めて勢いよく返事を返す。

 

 

「いいよ!」

 

「・・・じゃあ、お兄ちゃん」

 

「なんだい?」

 

 

僕はずいっと身を乗り出す様にして、どんな小さい声であろうと聞き逃すまいと耳を澄ませた。

するとレイは恥ずかしそうに小さな声で言う・・・なんてことは無く普通に聞いていても余裕で聞き取れるくらいの声量で言った。

 

 

「お兄ちゃんみたいに友達がほしい」

「任せろ!」

 

 

なんて可愛い願いだろうか?思わず一瞬の間も開けずに答えてしまった。

しかし、なんの問題も無い。

お約束としては何も考えずに妹のお願いに返事を返し、その無理難題を死に物狂いで何とか成し遂げようと奮闘するものだがレイに限ってはそんな事は無かった。

「任せろ!」の「ろ」の時点で解決方法が思いつく程度のお願いだ。

問題無く叶えることができる。

 

ホントに良くできた妹だよ!

 

 

「よし、じゃあ僕等の家に帰ろうか!」

 

「?」

 

「兄妹だからね、一緒に暮らしても何の問題も無いさ」

 

「そうなの?」

 

「『家族』だからね!」

 

 

僕は強引にレイを言いくるめ、二人でミサトさんの家へと続く道を歩み出した。

 

 

「・・・そう、なんたって『家族』だから、ね?」

 

 

その場を後にする時、最後に僕は指令室の方を見てそう言った。

これで少しは作戦の成功率が上がったかな?とか思いながら。

 

 

 

・・・

 

 

 

「碇」

 

「・・・なんだ」

 

 

シンジが指令室にやって来たその日の午後、再び指令室に入って来た冬月は何故か笑いながらゲンドウに声を掛ける。

それに対してゲンドウは唯でさえ厳つい顔をさらに渋いものに変え答えた。

笑顔の冬月に対して、ゲンドウは嫌な予感を感じ取ったからだ。

 

 

「葛城一尉から連絡が有ってな・・・なんでも、レイが今日から葛城一尉の所で暮らすそうだ」

 

「・・・何!?」

 

 

一瞬何を言われたか理解できなかったゲンドウは、少し間を開けたのちに椅子から飛び上がるようにして立ち上がった。

取り乱すゲンドウを面白そうに眺めた後に、冬月は態とらしく肩を竦めながら話を進める。

 

 

「承諾したのか!?」

 

「承諾せざるを得なかった・・・これもお前のせいだぞ、碇」

 

「どういう事だ!」

 

「お前がレイを『家族』などと軽はずみに言うからだ。司令のご家族をあのような場所に住まわせるわけには行きません、だそうだ」

 

「・・・!!」

 

「彼女に要らん不信感を与えては今後の計画に関わるかもしれんからな、承諾するしかなかったのだよ」

 

 

それを聞いてゲンドウは午前中に見たシンジの笑顔が見間違いでは無かった事を悟った。

もし計画通りにシンジがゲンドウの言葉で心に傷を負っていたのなら、その原因となった言葉の内容を決して人に伝えることはせずに他人を拒絶するだろう。

つまり、本来ならミサトがシンジとの会話の内容を知ることは絶対に無かったはずなのだ。

 

何故、シンジは自分の発言で傷ついていないのか。

 

 

「冬月、奴は様子はどうだった」

 

「ん?シンジくんの事かね」

 

「・・・あぁ」

 

 

それを聞いて冬月は目を細め考え込むような動作をした後に、何かを思い出したのか楽しそうに語り始めた。

 

 

「レイと二人で実に楽しそうにしていた」

 

「・・・」

 

「連絡してきたのは葛城一尉だったので直接は話していないが、後ろで二人仲良く話している声がこちらまで聞こえて来たよ」

 

 

やはり子供は元気が一番だな碇、と計画の事などすっかり忘れ唯のお年寄りになって話し続ける冬月は無視してゲンドウは頭を抱える。

とても「問題無い」などと言える状況では無かった。

どうしてこうなったのか?

 

この指令室でその問いに答えられる唯一の存在である冬月は、一人でじじ臭い事を語り続けるばかりだった。

 

 

 

・・・

 

 

 

「・・・ふー」

 

 

時は経ち、とっくの昔に日が沈み真っ暗になった部屋で、僕はベッドの側に敷いた布団に寝転がった体制のまま溜息を吐いた。

午前12時に行われた作戦だったから、アレからまだ一日も経って無いってのに動き過ぎて疲れた。

 

・・・だけど後悔はしていない。

溜息も疲れから来るものでは無く、自分の行動が齎した結果を考えての達成感から自然と零れた物だった。

 

僕のベッドで横になっているレイを横目で見ながら、僕は今日一日の行動について振り返る。

 

 

 

僕がレイを連れて家に帰り、まずしたことは家主であるミサトさんに連絡することだった。

 

子供な僕達と違って大人でしかも作戦部長であるミサトさんは今めちゃくちゃ忙しいはずだ。

しかしレイがここに住めるようにするにはミサトさんの協力が必要不可欠、この時ばかりは僕は空気の読めない子供になるしか無い。

 

ゴメンミサトさん・・・何日かはお酒を大量に飲むの見逃してあげるから・・・!

 

レイに無難な漫画を数冊渡し、読み始めるのを確認してから僕は家の固定電話からミサトさんの携帯に電話を掛ける。

そして数秒後受話器からミサトさんの声が聞こえて来た。

 

 

『シ、シンジくん?どうしたのかしら』

 

「レイをうちに住ませて貰っていいですか?」

 

 

ミサトさんは疲れているのを僕に悟らせまいと無理をして元気な声を出しているのが丸わかりだったが、僕はそれをスルーして話の内容を少しの前置きも無く伝える。

KYモードの僕には容赦なんてものは一ミリも無いのだ。

 

 

『・・・え?ちょ、え、どういうこと?』

 

「レイをうち、ミサトさんの家に住ませて貰っていいですか?」

 

『いえ、そこは別に言い直さなくていいんだけど・・・』

 

 

ええ、分かっていますとも。だけど今の僕は空気読めませんから。

 

 

『というか何時の間にレイの事を呼び捨てに』

 

「ミサトさんってレイの部屋見た事あります?」

 

『え、えっと・・・そう言えば、見た事無かったわね』

 

「でしょうね」

 

 

ミサトさんがあの状況を知ってて放置しているなんて、とてもじゃないけど考えられないからね。

 

 

『・・・ひどいの?』

 

「酷いです」

 

 

僕の言葉から大体の事は察したらしいミサトさんの言葉に、その考えは合っていると暫定の言葉を返す。

するとミサトさんは少し黙った後に真面目な声で話しだした。

 

 

『わかったわ、場所は知ってるし今やってる事をちゃっちゃと片づけて見てくるから、レイの事お願いね?』

 

「任せてください」

 

 

そう言って電話を切ると、僕は夢中になって漫画を読んでいるレイの元へと向かい同じように寛ぎ始めた。

 

そしてしばらくした後に怒った様子のミサトさんが帰宅。

あんな所にレイは住ませられない!と勢いのままに抗議の電話を掛けようとするミサトさん。

そんなミサトさんを呼び止め、僕は朝の会話の内容を軽く伝えた。

 

本当に軽く話しただけなんだけど、ミサトさんも父さんの意図を悟ったんだろうね。

先ほどと一転して心配そうになり僕に大丈夫かと聞いくるミサトさんに一体何の事かわからないと言った風に返すと、安心したのか落ち着いた様子で電話を掛けはじめた。

ミサトさんと電話の向こうの誰かの会話を頭の片隅で聞きながら、僕はわかばシューターの使い方が大分うまくなってきたレイの事を褒めまくっていたのだった。

 

 

 

・・・で、電話し終わったミサトさんからいい返事を聞いた僕達はこうやって同じ部屋で寝てるわけだね。

 

回想を始めてからどれくらいの時間経ったのかわからないが、レイを見る限りそれなりに時間は経ったと見ていいだろう。

さっきまでは生きてるかどうかが心配になるくらい何も聞こえなかったのに、今では気持ち良さそうな寝息が聞こえてくるからね。

 

これなら少し物音を立てたとしても起きないだろうと判断した僕は、そぉ~っと布団から抜け出して襖を開けて部屋から出る。

そこから忍び足で玄関まで進み、流れるような動きで靴を履き扉の鍵を開け外に出た。

ゆっくり扉を閉めた所で無意識に息を止めていた僕は、扉に寄り掛かるようにして大きなため息をついた。

 

スニークミッションも楽じゃない、と当たり前の事を考えながら布団に入る前ポケットに忍ばせて置いたスマホを取り出し電話を掛ける。

そして何回かコールが鳴った後に相手が電話に出る音と共に声が聞こえて来た。

 

 

『合言葉を言え』

 

「合言葉」

 

『よし』

 

 

いや、何が?

乗った自分もアレだけど、なんだこれ。

僕の混乱など歯牙にも掛けず電話の相手、ケンスケは感心したような声で話を続ける。

 

 

『即答とはさすがだな』

 

「まぁね、僕ってば素直だから」

 

『何言ってんだコイツ・・・』

 

 

今、電話の向こうでケンスケがどんな顔してるか手に取るようにわかる。

絶対ムカつく顔してるんだろうけど、今はスルーする。

いつも三時くらいまで起きているらしいケンスケとは違って僕は眠いのだ。

 

 

『で、何の用だシンジ』

 

「実はケンスケにしか頼めない事が有って電話したんだ」

 

『俺にしか頼めない事?』

 

「うん、やる事なんて無いくせに学校に行くのが無駄に速いケンスケにしかできない事だよ」

 

『電話切っていいか?』

 

 

 

・・・

 

 

 

次の日、僕は学校への道をレイと二人で歩いていた。

 

 

「レイ、挨拶されたらちゃんと挨拶で返すんだよ?」

 

「わかったわ、お兄ちゃん」

 

「・・・あ、結婚してくれとか言われたらしっかり嫌だって言ってね?」

 

「ええ」

 

 

そんな話をしているうちに学校へ到着。

僕が先頭で教室に入ると、いつかのパイロットバレの日みたいにケンスケの周りに人だかりが出来ていた。

その中の一人が僕達が入って来たのに気付くと、少ししてざわざわしていたみんなが急に静かになる。

すると人だかりの中からクラスの委員長が緊張した様子で出てきて、僕等の前・・・正確にはレイの前で立ち止まった。

 

 

「お、おはよう綾波さん!」

 

「・・・おはよう?」

 

 

意を決した様な表情で挨拶した委員長に、少し不安そうにしながらもしっかりと挨拶で返したレイ。

それを見て、ケンスケの周りに集まっていたクラスメイト達はレイの周りに一気に群がった。

 

 

「おはよう綾波さん!」「おはよう」

 

「おはようさん!」「おはよう」

 

「綾波!おはような!!」「おはよう」

 

「綾波ー!俺だ!結婚してくれ!!」「いや」

 

「おはよー!!」「おはよう」

 

 

我先にと挨拶をするクラスメイト達に戸惑いながらも、丁寧に返事をするレイ。

そんな様子を僕はニヤニヤと少し離れた場所から見ていると、肩を叩かれたので振り返るとそこには同じくニヤニヤしたケンスケがいた。

 

 

「いやー、大成功だなぁシンジ!」

 

「そうだね、ケンスケのお蔭だよ」

 

「そ れ ほ ど で も な い」

 

「謙虚だなーさすがだなー」

 

 

僕が学校に来る前から居たレイだが、最初挨拶されてもそのまま無視をしてしまったらしい。

『挨拶を返す』という常識をその時は知らなかったと言うのだからしょうがないのかも知れないが、それがレイがぼっちになってしまった切っ掛けでもあるのだろう。

だから今回はケンスケに協力して貰い、僕等が学校に来る前にクラスメイトへレイに挨拶をするように促して貰うことでその失敗をやり直したのだ。

 

前からレイと仲良くしたいというのはクラスの皆から聞いてたし、昨日話を聞いてレイもそう思っていた事を知った。

ならば切っ掛けさえ作れば、他に余計な事をしなくとも自然と友達はできるだろうと僕は考えた。

 

挨拶大会も終わり、クラスメイト達と多少ぎこちなくとも楽しそうに話すレイを見て、僕はその考えが間違いでは無かった事を確信するのだった。

 

 

 

 

 

 

そしてこの後、レイが僕の事をお兄ちゃんと呼ぶ事で教室が阿鼻叫喚の地獄絵図と化すのだがそれはまた次の機会に・・・

 

いや、次の機会とか無いけどね。




いやーホントにお待たせしました。

色々忙しかったと言うのもありますが、シンジくんのはっちゃけ具合を調整するのに時間を食ったというのが一番の理由ですね。

ご都合主義と言ってもそこまでハジけたものにしないようにするというか、自分の許せる範囲からはみ出さない程度に好き放題させるのに苦労しました。

ま、ンな事言っといていつかは盛大にやらかすでしょうけどね!

すでにやらかしてるとか言うのは無しですよ!


さーて次回はJA回!

速く投稿できるように頑張りますが下手したら来年になるので、気長にお待ちください!!

お疲れっしたー!!!


次話、執筆進行率・・・90%(120%で投稿)

コメント:やっとこさ・・・やっとこさここまで来たぜ・・・(2月13日)

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