そんなシンジくんの戦いが、今始まる……!
的な?
『繰り返す。総員、第一次戦闘配置、戦闘用意……』
「ですって」
「これは一大事ね……」
現在、大きな鉄板に柵が付いただけの色々とアレなエレベーターに乗っている僕達。
下を見ながらその高さに密かに恐怖する僕の隣では、ミサトさんとリツコさんが今の放送についてのんびりと話していた。
一大事だとか言ってるけど、口にした本人であるリツコさんに慌てた様子は全く見られない。
ミサトさんだってそうだ。
少し緊張しているような素振りもあるけど、それだけのようだ。
話を聞く限りでは、軍隊の持つ最大の兵器だとかいう『N2地雷』でも倒しきれなかった怪獣が今現在も暴れ続けているらしい。
なのにこの余裕っぷりは明らかにおかしい。
だとすれば、今のこの状況はNERVの人達にとって予測されていた事態ということになる。
それはつまり、この人たちは例の怪獣が来ることを知っていたという事になるのではないだろうか?
確かに知っていればこのNERVという組織の設立も、住人のほぼ完璧な避難も不思議じゃない。
さらに言えば、この第3新東京市はという場所は海から非常に近い。
あの巨大な怪獣は海から来たと考えるのが自然で、衛星からは海を進む様子が丸わかりだったに違いない。
だから怪獣が来ることだけじゃなくて、来る時期もわかっていたことは容易に想像できる。
さて、するとわからなくなってくるのは『何故そんな大変な時に僕が呼ばれたか』だ。
父さんは感情で行動するような人じゃない……と思うから、絶対に何か用があるはず。
さっきから、リツコさんとミサトさんの会話に何度が出てくる『初号機』。
もしかしたらその初号機が、僕がこのNERVに呼ばれた理由に大きく関わっていたり、なかったりするのかもしれない―――
―――と言った感じに、僕はリツコさん達の横でアニメ鑑賞で鍛えた技術である『展開の予想』を頭の中で繰り広げていた。
最初は現実の展開をアニメのように予想できるわけが無いと考え、暇つぶしに面白半分でやっていたのだが、これが結構当たるものだから今では癖になってしまっているのだ。
あ、そうだ(唐突)
さっきはサードチルドレンについて何故か誤魔化されちゃったけど、一応もう一回聞いておこうかな。
……このまま翻弄されてばっかりなのは嫌だから、今度は不意を突くような感じで。
「あ、ちょっといいですか?」
「どうしたの、シンジくん」
「セカンドやファーストはここにいるんですか?」
「っ」
僕がサードなら居て当然のはずだ。
答えてくれたら儲けもの、意味が分かったらパーフェクトだ。
「えっと、ファーストはいるけど、セカンドはここには居な「ミサトっ!」え、あぁ何でも無いわ!」
「へぇ……」
少なくとも、ただのNERVにやって来た子供の番号ではないようだ。
そんなものをここまでして隠し通すとは思えない。
うん、聞いてみてよかった。
「シンジくん? あなたはまだ部外者なの、あまり首を突っ込むのはやめて頂戴」
「わかりました」
ミサトさんを隠すようにして注意してくるリツコさんに、僕は素直に返事をしておく。
そして僕は彼女の探るような視線を横目で認識しつつ、また今得た情報を元に今後の展開の予想を始めるのだった。
「(やっぱり侮れないわこの子、報告書ではただの子供だったはずなのに……)」
とか思ってるのかな。
これだからやめられないよネ!
・・・
しばらくして、真っ暗な部屋に連れてこられた僕はここに立っていろと指示され、その言葉に従って指定の場所で棒立ちしていた。
数秒後、部屋がパッと明るくなり目の前に紫の厳つい顔が現れる。
何かあるなと予想して身構えていた僕でも、これには驚いてしまった。
「顔?これが『初号機』……?」
「そうよ……人の作りだした究極の汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン、その初号機よ」
……人造人間?
ロボットじゃなくて?
「建造は極秘裏で行われた」
建造、建造ねぇ……?
資材とか何使ったんだろう。
数字ヤバそう(艦これ脳)
「我々人類の、最後の切り札よ」
そう言ってリツコさんは言い切ったと言わんばかりに初号機の方へ向き直る。
僕はそんな彼女に棒立ち状態のまま疑問を投げかけた。
「……これの運用が、父さんの仕事なんですか?」
「そうだ」
「うわっ」
全く予想していない場所からの返答に、変な声を上げて周りを見回す僕。
い、いったい今のは何処から……?
無駄に広い場所だから声が響いて、何処から聞こえたのか全くわからなかった。
「えっと……シンジくん、上よ、上」
「あ、ホントだ」
ヤバい、ちょっと恥ずかしいや。
ミサトさんに指摘され先ほどの声の持ち主をやっと見つけた僕は、少し顔を赤くしながら目線を上げてこちらを見下ろす父さんと視線を交わす。
「例の日以来だな、シンジ」
「そうだね、父さん」
今までは母さんの命日にお墓で会うだけだったもんね。
「わかっているな?」
「うん、大丈夫」
そりゃ『初号機』の前まで連れて来られたら誰でもわかるよ。
実際に可能性としては考えてたしね……九割冗談で、が付くけど。
「ふっ……出撃」
そう言うと父さんは、もう言いたいことは言い終えたのかこちらにに背を向け窓の奥へと消えていった。
「出撃!? 零号機は凍結中のはずでしょ!?」
え、零号機なんてあるの? 初耳なんだけど。
てか紛らわしいな、零号機と初号機。
「他に道は無いわ」
「レイはまだ動かせないはずでしょ!?」
レイって人の名前なのかな。
名前からして女の子っぽいし、多分ファーストかセカンドのどちらかだね。
……そうだ、女の子に違いない、アムロなんとかさんは知らないネ!
と、バカなこと考えてる暇なんか無いか。
こうなった以上は時間が惜しい。
「リツコさん、エヴァの操縦の仕方教えて貰っていいですか」
「っ、やはりわかっていたのね」
さっきそれ聞かれて答えたじゃないですか、父さんに。
大丈夫ですから教えてくださいと言おうとすると、ミサトさんが僕の肩を引っ張って無理矢理向きを変えられる。
そしてミサトさんに両肩を掴まれ、言い聞かされるような形になった。
「シンジくん、その意味が解っているの?あなたが戦うことになるのよ!?」
そりゃそうでしょうよ、そんなのわかりきっている。
命がけの戦いになるなんてのはちゃんと理解してるってば。
正直なところ、最初怪獣を見たあの時から全て起こったことが本当に現実なのかわからずにずっと混乱していて、今もふわふわしたような感覚だ。
でも僕のゴーストがこれは現実だって囁いてるから、きっと現実なんだろう。
これから大仕事をするってのに、そんな様子じゃダメだってことはわかってる。
だけどこんな直前になってから覚悟を決めるなんて無理だし、現実味が無いからこそできる事だってあるんだ。
だから僕は今から中途半端に覚悟して盛大に自爆するよりも、ふわふわした気分のまま挑んで暴れ回る方がいい。
……『嫌な事を後回しにしている』とも言うけどネ!
とりま、ミサトさんを落ち着かせようか。
「大丈夫ですよ、ミサトさん」
「だけどシンジくん」
「僕は乗ります」
「本当に意味が解ってるの!?」
わかってるって言ってんでしょうがッ!
おっと、口調が荒くなってしまった。失敗失敗。
……さて、どうやって説得しようか。
適当に覚悟(笑)でごり押しするかな。
「……ミサトさん」
「シンジくん?」
一回俯いて、間を置いて……
そしてバッと顔を上げて、言い放つ!
「覚悟はいいですか、僕はできてます」
「っ!」
こいつには、やると言ったらやる……『スゴ味』があるッ!
的な感じで理解してくれたらうれしいんだけど、どうかな?
無いとは思うけど元ネタ知ってたら終わりだね。
ミサトさんは少しの間固まっていたが、すぐに動き出して恥ずかしそうに苦笑してから、僕の肩を放した。
「恥ずかしいところ見せちゃったわ、そうね……シンジくんの言うとおりだわ、引き留めちゃってごめんなさいね」
「あ、はい」
微妙に話しが噛みあってない気もするけど、まぁ放してくれたならいいや。
その時、大きな音と共にズシン!と大きな地震が発生する。
「ここに気づいたのね……時間が無いわ、説明するからこっちに来て」
「はい」
歩き出したリツコさんの指示に従って僕も歩く。
「(子供を戦場へ送り出すことに怯えていたミサトに、自分の覚悟を伝えることで説得した……これが普通の中学生? 冗談でしょ)」
リツコさん、何にも言わないなぁ。
説明あくしろよ。
・・・
「おい碇、お前手紙に何か書いたのか?」
「書いていませんよ、アレは色々と鋭いので」
「なんと……彼自身がこの事を予期していたというのか?ふむ……彼が諜報部の存在に気づいているという報告も、本当なのかもしれんな」
「えぇ……」
※貴様!見ているなッ!と言った感じに道で突然振り返ると偶然目に入っただけです。
・・・
僕は今、エントリープラグ、という物の中にいる。
なんでも、これがエヴァンゲリオン……エヴァのコックピットになるらしい。
『エントリープラグ挿入……完了』
無線から声が聞こえたかと思うと、少し浮いたような感覚の後にガコンと何かが嵌ったような音が聞こえた。
内容を聞く限り、今本当の意味でエヴァに乗り込んだんだろう。
『エントリープラグ注水』
ちゅうすい……注水!?
聞こえた声を漢字に変換して驚愕した瞬間、足元からオレンジ色の水が溢れてくる。
なんだこれ……アレか! アニメでよくある息できる水か、培養液的な。
念のため軽く息を止めてリツコさんの指示を待つ僕。
『大丈夫、肺がLCLで満たされれば直接血液に空気を取り込んでくれます、すぐ慣れるわ』
肺に、ってことは飲む感じじゃなくて溺れる感じで逝けばいいのか(誤字に在らず)
泳げない僕としては溺れ慣れてるから、難しいことじゃないネ!
「……んー、思ったよりサラサラしてるんだ」
『どうしたの?』
「何でもないです」
アニメとかのアレってもっとドロドロしたイメージがあったからね。
しょうがないね。
『これより、初期コンタクトに入ります』
なんだろう……あ、さっき言ってたシンクロってやつか。
僕は先ほど受けた説明を思い返しながら、自分の頭につけられた猫耳的な何かに触れる。
シンクロを助けるものらしいけど……猫耳を男の僕がつけても意味ないでしょうに。
まだ見ぬレイちゃんに期待だね。
しかしシンクロ……シンクロかぁ。
いきなりそんな事言われても、シンクロ召喚とかアクセルシンクロォォォオオ!!とかしか思い浮かばないよネ。
そういえばさっき、シンクロするときは心を落ち着かせろとか言われたなぁ。
つまり、シンクロするのは心ってことでいいんだよね? 多分。
そういえばエヴァはロボットじゃなくて人造人間だし、シンクロする心が有ってもおかしくはない……のかな?
まぁそんな理由なんて今はどうでもいいか。
とにかく目を瞑って集中してみよう。
―――……
―――なんだろう、なんか温かい。
別に、LCLの温度が変わったわけじゃ無い。
エヴァの心を感じようと集中すると、急に何かに包み込まれるような感覚がして、それが温かかったんだ。
ずっとこうしていたい……っと危ない危ない。
それはダメになるやつだ。
少し、コンタクトを図ってみるか。
僕は包み込んでいる『何か』に語りかけてみることにした。
「(んー……エヴァくん?)」
少し、反応したかな? でも気のせいかもしれない。
そんな反応じゃダメだよね、何かどうしようもない違和感があるし。
……もしかして、見た目厳ついから心があるなら男だろうと決めていたけど、違うのかな?
「(……エヴァちゃん?)」
お、さっきよりもいい感じの反応、エヴァは女性なんだね。
でも、まだちょっと違和感があるんだよなぁ。
エヴァって名前で女の子だから、勝手に金髪ロリってイメージにしてたけど、もしかして年上だったり?
「(エヴァさん?)」
おお、すごくいい感じの反応が返ってきた!
エヴァは女性で年上だったみたいだね。
うん、これならいけそうだ。
「(エヴァさん!僕に力を貸してください!)」
『信じられません……シンクロ率76.5%!』
『これならいけるわ!』
力を抜いて目を開けると、そんな声が聞こえてくる。
僕にはそのシンクロ率が高いのか低いのかわからないけど、反応を見る限りかなりいいものみたいだね。
やったぜ。
そしてしばらくして、遂にエヴァの発進準備が整ったようだ。
エヴァの乗っている台が、射出口と言う所にたどり着いたらしい。
『発進!!』
ミサトさんの声が聞こえた瞬間、ものすごい重力が僕を襲う。
っぐぅ……先に言って欲しかったんですけど……!
目を閉じて耐えていると、少ししてからすごい音と共に伸し掛かっていた重力が無くなる。
ゆっくりと目を開けると、NERVに入る前とは違い真っ暗になっている街並みが見えた。
そして僕の乗っているエヴァが立っている道路のその向こうに怪獣が、使徒がこちらを見据えていた。
どこぞのモノアイのようにビコーンとコアを光らせている様子に少し怯みそうになったけど、血に濡れて倒れた幼女が頭を過って持ち直す。
「お前は……僕が裁くッ!」
『シンジくん、死なないで』
僕のセリフに被って、ミサトさんの声が聞こえた気がした。
零号機の奇襲と自らの命を懸けたトリックで、ついに使徒へ反撃の一撃を与えることに成功するシンジ。
重傷を負った使徒は時を止めながら逃亡をはかる。
シンジはラッシュ攻撃でトドメを狙うが、それこそが使徒が仕組んだ「逃走経路」だった。
シンジに吹っ飛ばされた使徒の先には、倒れ伏した幼女の姿が……!
幼女の血を吸い回復した使徒へ怒りを燃やすシンジは、己の感情の赴くままに時の止まった世界で使徒との最終決戦に挑む――!!
次回 爆熱戦記エヴァンゲリオン 最終回
『遥かなる旅路、さらば友よ』
……なぁ~んちゃって!お菓子食って腹いt(ry