世界(政府にとって)最凶能力者 作:ウィルソン・フィリップス
漢字と簡単な英語は通じるのだが、やはり言語が分からない。
確かに自分は調子に乗って修学旅行をはぐれて、独断独自先行アメリカ横断一人旅を断行しているが、英語が通じない場所に来たつもりはなかった。
「だから、私は迷子なんです。迷子。ここはどこですか? 大使館は?!」
白人、ドイツ系なのか彫りの深そうなおじさんにボディーランゲージでこの緊急性を訴えるが何も伝わらない。精々お騒がせな外国人が来たというレベルか。うんうんと、優しげにうなずいている。
こんな田舎に大使館はないだろうし、おそらくだが大使館には一生行けなさそうな気もする。
しょうがなく地面に描いたへたくそな絵の横に漢字を書いて見せる。
『我去警察』
『i wont to go to police』
この世で一番利用者の多い言語を書いたつもりだが、このおじさまには全く通じていなかった。
スパニッシュでもかますべきなのだろうが、生憎でてくるのはサッカーチームの名前ぐらいだ。
やはりいまいち伝わっていない。文法が間違えていたのか。だが焦った頭で数日前の教室の内容さえ思い出せそうになかった。
というかそもそも、すでにここは英語圏ではないのか?
『軍』
『行政』
『役所』
色々と羅列して見せれば、軍のところでなぜかよい反応を見せる。もしかして親日かと思って、謎の忍者ポーズをいうがなぜか反応がない。
『禅』
『侍』
侍で反応があるところを見ると、これは知っているらしい。
軍と侍という言葉にどこか嫌な関連を感じながらもそれがどこからくるのか思い出せず、親切にも道案内をしてくれるらしいおじさんについて行く。
どうやら親切ダンディの名前はホルスという名前らしい。ホルスタインから来ているのか、それともか神の名前から来ているのか。前者だったら、安直でギャグみたいな名前だとツボるところだし、後者だったらキラキラしていますねというところだ。代わりに私の名前を告げたのだが、発音がしずらいらしい。
「そうだ、ジンとでも呼んでください。ジン、ジーンです」
そういうと大きくうなずいてジンと呼んでくれた。
やっぱりいいひとだ。
わが救世主ダンディ・ホルス氏は、なんと市長(仮)のところまで連れてきてくれたらしい。
いかにも農夫という格好をしたホルス氏と違って、市長はイタリアマフィアみたいなスーツを着ている。執務室未大なところに連れてきてもらったが、奇妙なことに、そこには電子機器がなかった。
電話さえおいていないのだ。ど田舎すぎるというわけではない。
必死に「phone」「talk」と連呼してみればようやく合点がいったのか、棚から受話器を出してくれた。
大きなカタツムリがついた受話器を。
「寒すぎるぜアメリカンジョークってか」
もちろん、そんなことはこの世界で通じるわけがなかった。
ここがどこかなどと、怪しい英語できくよりも確実な方法がある。
「グランドライン?」
ホルス氏の目をみていえば、やっと話が理解できてうれしいのかにこやかに彼はうなずいて話してくれた。
ここの英語っぽい別言語だろうが、さすがに何を言っているのかぐらいわかった。
『はい、ここはグランドラインです。』